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週刊スモールトーク (第605話) 頼むぞ、スペースX!~史上最大の株式上場~

カテゴリ : 人物科学経済

2026.08.12

頼むぞ、スペースX!~史上最大の株式上場~

■スペースX、上場す

頼むぞ、スペース!

投資家の熱い期待を一身にうけて、新規株式公開(IPO)したスペースX。

さすがはロケット会社、巨大な推進力で、地球の重力を振り切り、一気に宇宙空間へ・・・と思いきや、3日で失速してしまった。

あれだけ大騒ぎしたのに、株価は急落し、公開価格まで割り込む有様。公開価格とはオークションの開始価格みたいなもので、それを割り込むと、上場後に買った人は、ほとんど損している(含み損)。

人気先行で、実力がともなわないというウワサもあったが、結局、イーロン・マスクの推し活IPOだったのか。これからどうなる、それよりカネ返せ!・・・など不穏な声が聞こえてきそうだが、その前に大事なことを伝えないと。

スペースX株を買って、含み損を抱える人へ・・・今は売らない方がいい(借金取りに追われているなら話は別)。

理由は2つ。

第一に、今、売れば損が確定するが、寝て待てば、将来、損か得かは五分五分。

第二に、株式投資は未来を買うものだが、スペースXは輝く未来が待っている。

その前に倒産したら?

その確率はゼロではないが、かなり低い。

理由はカンタン。

スペースXのロケット事業と衛星インターネット事業は、国の安全保障に関わるから、何かあれば、国が助けてくれる。破綻寸前だったあのインテルでさえ、救済されたのだ。

インテル救済劇は、ニュースでも大きく取り上げられたが、何を今さら・・・遠い昔、コンピュータのハード屋だった頃「インテルは国策会社」は知る人ぞ知るだった。にもかかわらず、多くの巨大企業が、独自のCPUを開発し、インテルに挑戦した。それから50年経った今、AMD以外すべて撤退している。

大事なことを伝えたので、本題に入ろう。

スペースXの真の姿について。

■ジェットコースター相場

スペースXの新規株式公開は、異例ずくめだった。

まず、公開価格(公募価格)は135ドル。

公開価格とは、新規株式公開する際、上場前に、株式を取得できる価格だが、誰彼買えない。日本の場合、個人投資家なら、みずほ証券、楽天証券、SBI証券に口座があり、証券会社の条件にマッチした人だけが取得できる。具体的には、お得意様か、抽選に当選したか、証券会社によって違う。スペースXの株は買っていないので、詳細はわからないが、まぁ、プラチナチケットのようなもの。

2026年6月12日、スペースXはナスダック市場に新規上場した。上昇気流にのって、初値は11%高の150ドル。6月16日には最高値225ドルをつけた。ところが、その後、下落に転じ、ほぼ最低価格の公開価格135ドルを割り込んだ。高度1万メートルか成層圏かと期待したら、地面にめり込んだわけだ。あげく、7月末までに株価は、最高値の半分まで下落した。

1ヶ月で半額?

洒落にならん!

ではなぜ、こんなジェットゴースターまがいの乱高下になったのか?

まず、上場後、急騰した理由。

この時期、スペースXの株を買った人は、財務指標に目を凝らすまともな投資家ではない。宇宙とSFが大好き、イーロン・マスク尊敬している、応援してるぞぉ~・・・つまり金儲けより、推し活に近い(全員ではない)。事実、リベラル系のメディアや、財務分析を重視する真面目なアナリストは、スペースXには冷ややかだった。中には「イーロン・マスクのファンクラブによる、ファンクラブのための上場」と揶揄する専門家もいた。うまいことをいうと、苦笑いしたものだが、身銭を切った投資家は全然笑えない。

つぎに、上昇後、一転して急落した理由。

常識で考えると、数の上では、一般投資家>>推し活投資家。

よって、すぐに買いが一巡し、需給関係が「売り>買う」に転じ、急落したのである。

■株価10倍、100倍への道

では、スペースXの今後の株価は?

短期的には、売り圧力と買い圧力が交錯し不安定になる。だが、中長期的には大きく上昇するだろう。

多くの投資家やアナリストは、10倍は絶対ムリと断言するが、これにはビックリだ。40年の投資歴からいうと、スペースXは、10倍どころか、100倍も射程に入っている。

小難しい理屈抜きで、説明しよう。

GPUの王者エヌビディアは、1999年に上場したが、そのとき株を買っておけば、今はドルベースで5400倍。為替を考慮すれば、さらに1.5倍。この10年だけでみても、ドルベースで80倍、為替を考慮すると140倍だ。

極端な特例で、一般論を論じるなって?

特例ではありません。

1997年に上場したアマゾンは、現在、ドルベースで3100倍。この間、為替レートが円安にすすんだので、円ベースでは4000倍。

1986年に上場したマイクロソフトは、ドルベースで5000倍。

同じく1986年に上場したAppleは、2200倍。

2004年に上場したグーグルは、350倍。

2020年に上場したパランティアは、わずか6年で20倍。

エヌビディアが特例じゃないことは明らかだ。

あ~、上場時に買っときゃよかった。そうすれば、毎日貧乏とはいわないが、時々貧乏な現状を回避できたのに・・・これを後の祭りという。

けれど、投資には注意が必要だ。

ボーナス50万円をベットして、200倍なら1億円で、嬉し嬉し!

でも、5000倍なら、25億円・・・人生も心も一変し、不幸になるかもしれない・・・これをイソップ童話の「すっぱい葡萄(やっかみ)」という。

というわけで、今スペースXの株をもっている人、これから買う人は、最低10年ガチホの一択です。ただし、投資は自己責任で、1%の失敗の責任はもてませんから。

ここで、大きな声では言えないので、小さな声で話そう「株式投資のほぼ必勝法」。

大きな本屋に行くと、株式投資の専門コーナーがあり、ノウハウ本でいっぱいだ。ところが、そのほとんどが、「運」を「勝利の方程式」に転化している。なので、真に受けるとえらい目に合う。そこで、カンタンで効果的な投資方法を紹介する。

(1)20年以上成長し続ける分野に絞る(今はAIしかない)。

(2)その中で、ナンバーワンではなくオンリーワンになる見込みのある会社に絞る。判断基準は、他社がカンタンに越えられない強力なモート(堀)をもっているか、その一点に絞る。現在の収益や財務はどうでもいい。株式投資は「今」ではなく「未来」を買うことなのだから。

(3)上記の条件をみたす数社に投資して、寝て待つ。売り時は、現金が必要になったときと腹をくくる。

そうすれば、20年、30年かかるかかもしれないが、100倍、1000倍になる銘柄が必ずでてくる。そうなれば、あとは全滅しても、おつりがくる。株式投資は、大物一発当てれば、あとはどうでもいいのだ。

ここで、庶民の株式投資を総括しよう。

金持ちは分母が大きいので「分散投資」は理にかなっている。だけど、投資額10万円なら、100~1000倍にしないと意味がない。つまり、庶民は集中投資しかない。ただし、時間を味方にする必要があるので(20~30年)、余剰資金でやること。

■当面の株価

というわけで、スペースXの未来は明るいが、当面の株価は安定しない。

売り圧力と買い圧力が交錯しているからだ。

まず、売り圧力をみてみよう。

上場しても、当面は、市場で売買されるスペースXの株は、総発行済み株式数の5%にすぎない。残る95%は、インサイダーといわれる内部関係者が保有し、一定期間、売却できない。これをロックアップという。それが、8月6日以降、年末までに段階的に解除され、最終は2027年6月に解除される。このインサイダー株は、すでに買われた株なので、買い圧力にはならず、売り圧力にしかならない。

さらに、市場が、株価は下がると判断すれば、空売り勢力が売り浴びせるだろう。

空売りとは、証券会社から株を借りて、まず、売りから入る。株価が下ったところで買えば、安く買って高く売ることになる。現物買いは、買ってから売るから、順番が逆になるわけだ。

株価が下がっても儲かるので、必勝法にみえるが、たいていは、ひどい目にあう。なぜなら、現物買いの最大の損は、株価がゼロになること。一方、空売りは上がると天上知らずだ。株価が10倍になれば10倍の損、100倍になれば100倍の損になる。つまり、損に上限がないのだ。しかも、時間を味方にすることができない。一定期間、損が続くと強制的に精算され、損が確定するからだ。株式投資で自己破産するのは、ほとんどがこれ。

つぎに、上げ圧力。

期待の星の株価が急落すれば、安値で拾おうと、虎視眈々狙う投資家がいる。

第一のハードルは、公開価格135ドル。これを割り込むのを待ち受けていた投資家がいたはずだ。ところが、公開価格をあっさり割り込んだあげく、107ドルまで下落した。そこで、100ドルを割ったら買おうと待ち受ける投資家がいる。さらに、欲をかいて、適正価格の30~60ドルで待ち受ける投資家もいるだろう。

つまりこういうこと。

スペースXの株価は、下げ圧力が大きいが、ある程度下がると、上げ圧力が急増する。株式投資ではありがちな話だ。

■イーロン・マスクとジュール・ヴェルヌ

ところで、これほど人気銘柄が、なぜ一直線で上がらないのか?

話はカンタン、財務状況がよくないから。

スペースXの最新決算をみてみよう。

2026年8月4日に発表した四半期決算は、売上高が前年比92%増の78億ドル(約1兆2300億円)。三つある事業のうち、衛星インターネット「スターリンク」が66%増、ロケット打ち上げ事業が29%増、生成AI「Grok」などのAI事業は247%増。

これだけみれば、素晴らしい決算だ。

ところが、設備投資がかさみ、純損益は5億4100万ドル(約850億円)の大赤字。ただし、赤字額は、前年同期からほぼ半減しているが、そこは、プラス材料になっていない。

なぜか?

投資家が懸念しているのは「過剰投資」だからだ。スペースXにかぎらず、エヌビディアやハイパースケーラー(超大手クラウド事業者)が驚異的な決算を発表しながら、株価が下落するのは、ここに起因する。

スペースXの過剰投資ぶりをみてみよう。

売上が78億ドルに対し、設備投資は183億ドル。本来、積極投資は企業の成長に欠かせないが、程度がある。売上の「2.3倍」も設備投資して、回収できるのか、と心配になるわけだ。中でも大きいのが、AI事業向けの設備投資で総額158億ドル。前年比でなんと「21倍」だ。しかも、AI事業は、アンソロピック、OpenAI、Googleの後塵を拝していおり、しくじったら、どうするのだ、というわけ。

だが、この懸念は根本が間違っている。

AIの世界は、今後、エージェンティックAIが、大ブレイクする。その場合、データセンター(計算資源)が、現在の10倍、100倍あっても足りない。だから、ハイパースケーラーが、兆円単位の設備投資をしているのだ。それを、過剰投資だとか、元がとれるかなんて、ピント外れもいいとこ。さらに、スペースXが、AIモデルで負けたら、計算資源を他のハイパースケーラーに貸し出せばいい。莫大な利益がでるだろう。

設備投資が21倍、それがなにか?

というわけで、専門家は、一部のアナリストやエコノミストをのぞいて、読みが甘いと思う。AI投資は、プログラムを書かないと見えないところがたくさんある。それに気づいていないのだろう。

それ以前に、スペースXは、そんなありきたりの尺度で測れる企業ではない。

おそらく、東インド会社、フォード、IBMを越えて、歴史上最強、天下無双の企業になる。そんな「歴史の尺度」でしか測れない桁外れの企業を、赤字、過剰投資・・・終わってます。

というわけで、スペースXの器(うつわ)は計り知れない。というか、じつのところ、創業者イーロン・マスクの器なのである。

彼はSFが大好きなので、そこにヒントがありそうだ。

ここで、独断と偏見に満ちた私的飛躍をしよう。

SFの父といえば、フランスの小説家ジュール・ヴェルヌだ。そこで、ヴェルヌの仮想鏡を想定し、イーロン・マスクの姿をのぞいてみた。

すると、共通点が・・・

この二人は、科学と社会の架け橋なのだ。具体的には、科学を大衆に説明し、社会に浸透させる使命を背負っている。ヴェルヌは科学を物語ることで、マスクは社会実装することで。

この使命が生み出すパワーは巨大である。

その第一の証明が、ヴェルヌの100編近い傑作小説、それに続くのがマスクの科学帝国なのである。

《つづく》

by R.B

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