■初夢と予知夢 2012.01.09
予知夢は本当にあるのかもしれない。
大学4年の秋、研究室の教授が推薦してくれた電機メーカーに内定した。地味な会社だったが、入ってみると、仕事は面白かった。
それに、会社の寮にいたので、オフは同期や先輩とワイワイガヤガヤ、学生時代のように楽しかった。
ところが、2年経って、親から、金沢にUターンするよう懇願された。父が病気になり、心細くなっているという。(じつは歯茎にウミがたまっただけ)
手回しのいいことに、地場のコンピュータ会社を見つけ、面接の段取りまでしている。1週間後、東京支店で、社長の面接を受けてくれという。
しかし・・・
会社は辞めたくなかった。その頃、海中を映像化する装置を開発していたが、IC(集積回路)で実装された基板を、LSI(大規模集積回路)に1チップ化するプロジェクトが進行中だった。こんな面白い仕事を投げ出す理由はない。
とはいえ、これ以上、親には苦労をかけたくなかった。子供の頃から、好きなことしかやらない性分で、わがままで、内気、そのくせ、喧嘩っ早かった(ケンカそのものは弱い)。
そんなアブナイ息子をみて、まともな社会人になれないのでは、と母はいつも心配していた。一方、父は、「あー見えても、大丈夫、たぶん」と信頼してくれていた(たぶん)。
その両親が、帰ってきて欲しいと懇願している。これを断ったら、人間じゃないな、と思った。だけど、会社も辞めたくない・・・逡巡とは無縁の性格なのに、この時は、死ぬほど迷った。
この会社の面接の当日、夢をみた・・・
大きな木造帆船がある。僕はその船に乗る。仲間もいっしょに乗る。やがて、船が出航する。海ではなく、空に向かって。
船から見下ろす世界は絶景だった。見るものすべてが、歓声を上げるほど、美しく、壮大で、感動的だった。
やがて、周囲が一変し、薄暗い街の中に立っている。華やかな世界は消え、仲間もいない。旅は終わったのだ。深い孤独感が心をおおう。
そこで、目が覚めた。
朝、面接に向かう途中、夢のことを考えていた。これから行く会社に入れば、素晴らしい人生が待っている。しかし、最後には孤独に落とされるのだ、と。
結局、Uターンすることに決め、先のコンピュータ会社に転職した。アップルが「AppleⅡ」で大成功し、それを、IBMのDOS/Vが追い抜く、コンピュータが今よりずっと”熱い”時代だった。
転職したコンピュータ会社は、いわゆるベンチャー企業だった。創業社長は、東大卒業後、キャリア官僚になり、日立に転職した技術者だった。日立時代は、エレクトロニクス研究のメッカNTTの電子総合研究所に派遣され、日立第1号の大型コンピュータを開発している。その後、生まれ故郷で、創業したのである。
社長は頭が切れるし、世の中がまだ8ビットCPUの時代に、この会社は16ビットCPUを採用していた。CPUが8ビットと16ビットでは、技術的に天地の差があった。優れたリーダーとハイテク、すべてが刺激的だった。
2年後、この会社は倒産したが、次々とオファーが来た。当時、16ビットマシンを設計できるエンジニアが少なかったからである。(能力ではなく経験)
この頃、僕には夢があった。コンピュータを丸ごと一式設計すること。その願いは、次に転職した会社で叶った。夢で見たとおりの素晴らしい人生・・・
ところが、最後の予言も適中した。1人ぼっちの開発者・・・(自ら望んだことではあったが)開発には成功したものの、”その日暮らし”のアリエッティ。孤独でビンボーな人生・・・絵に描いたような予知夢だった。
そして、2006年1月2日、初夢を見た。あのホリエモンと商売の話をしている。(ホリエモンとは一面識もない)
2006年1月3日、初夢第2幕。雪の中に両手をつっこむと、お宝がある。3回手をつっこんだら、3回とも、ごっそりお宝がつかめた。いい感触だ。
2006年1月5日、初夢第3幕。住んでいる金沢から、実家(能登)まで続く、長い地下通路がある(現実にはない)。この通路は歩行者専用で、通路内の環境問題から、自転車が通れる日とそうでない日があった(現実ではない)。僕が行くと、たまたま通れない日だった。そこで、空を飛んで実家に向かう。
長い鉄橋があったので、その上を飛び越えた。ところが、気がつく、と水の中。あわてて、水面に浮かび上がろうとするが、どれだけ上がっても水の中。このままじゃ、死ぬ・・・そこにホリエモンが現れて、水の中から助け出してくれた。
それにしても、なんで、ホリエモンなのだ?しかも、現実と錯覚するほどリアルで、3部作という念の入れよう。ははぁ~、今年は、ホリエモンのご縁で、3回宝をゲットして、リッチになる?おー、今年はいい年になるぞ!
ところが・・・その18日後の2006年1月23日、証取法違反容疑で、ホリエモンが逮捕されてしまった。あらら・・・
ところが、この年の9月、旧知の社長に誘われ、彼の会社に入社した。
あれから5年経って、この会社は、社員は17人から、35人に、売上も2倍に増えた。業界ではけっこうイケてるデベロッパーに成長したわけだ。
とはいえ、「3回のお宝」は心当たりがないし、僕自身、全然リッチじゃない。だから、2006年の初夢は予知夢かどうかは、微妙。
ところで、2012年の初夢は?
2012年1月4日の夢。街の中で、会社のデザイナーと話をしている。ビルが爆発し、炎につつまれる。それを見て、僕はデザイナーに言った。「あれは、アドビのActionScriptだな」デザイナーが答えて、「たしかに、JavaScriptじゃないですね」
「ActionScript」とは、Flashのプログラミング言語、「JavaScript」とは、HTML5(厳密にはHTMLすべて)のプログラミング言語、どちらも、ウェブで派手なビジュアルを可能にするツールだ。ビルの鮮やかな炎が、ActionScriptで作られたという意味(たぶん)。
そこで、トイレに目が覚めて、つづいて、初夢の第2幕。
急峻な坂道の上に立っている。僕は横にいた先のデザイナーに言った。「これくらい急峻なら、坂道を滑走すれば、空が飛べるな。ちょっと、やってみよう」
坂道で加速して、手を広げると、宙に浮いた。やがて、小さなビルに軟着陸。そのビルは、ActionScriptの開発会社だった。いつの間にか、デザイナーが横に立っていて、「やっぱり、ActionScriptですね」
そこで、目が覚める。今年、ウェブサイトのリニューアルで、JavaScriptを使うつもりだったけど、ActionScriptを使え、ということかな?
まぁ、そんなこと、ドーデモいいわ。マヤの予言によれば、「2012年12月人類は滅亡する」というのに、なんとも、悠長な初夢だ。
by R.B