■尖閣諸島の中国漁船衝突事件 2010.09.26
2010年9月7日、尖閣諸島沖で、日本の巡視船と中国漁船が衝突、中国人船長が逮捕された。
中国政府はただちに反応した。丹羽・中国大使を呼びつけ、猛烈に抗議、東シナ海のガス田開発を再開、閣僚以上の交流を停止、交流行事を次々と中止、レアアースの日本への輸出停止、そして、日本企業フジタの社員4名を拘束した。
そして、9月25日、那覇地検は、「日中関係を考慮する」という理由で、中国人船長を釈放した。政府に非難が浴びせられると、菅首相は、「あれは、沖縄地検の判断、政府は関係ない」と言い切った。
え?
ローカルな地検が、「日中関係を考慮」なんて政治判断をする?どこのバカがこんなウソを信じる。すぐにバレるのに、平気をこんなウソをつく。しかも、無責任極まりない責任転嫁。恥を知るべきだ。
中国側は、船長の釈放を確認すると、今度は、日本側に謝罪と補償を求めてきた。菅首相は、この妥協で、問題が解決すると思ったのだろうが、なんという愚かさ。
中国側にしてみれば、船長を拘束されていることが、唯一の弱みだったのに、それをこちらから解消してあげたわけだ。弱みがなくなった中国は、今後はやりたい放題、とは考えなかったのか?これが、自慢の”政治主導”なら、”官僚主導”にもどしたほうがいい。
少し前、民主党の代表選で、小沢氏と菅氏が争った。両人とも、権力志向が強いが、これは政治家として当然のことである。しかし、この2人には決定的な違いがある。小沢氏は、意外に潔いところがあるが、菅氏は権力に執着するタイプだ。これは、日本にとって憂慮すべき事態である。
今回の愚挙によって、中国は味を占めて、さらに日本領深くに侵出し、石垣島の支配権まで要求するかもしれない。中国は、東南アジア海域でも同じ事をやっているからだ。かつて、「日本はアメリカの属国」と言った有力代議士がいたが、これでは、「日本は中国の属国」でもある。では、アメリカと中国の利害が対立したら、日本はどっちのご主人様の顔色をうかがうのだ?
・・・
これが、GNP世界第2位、世界最高水準の技術を有し、世界有数の軍事力をもつ国家?御大そうに抱えこんだマネーも、テクノロジーも、軍事力も、なぁ~んの役にも立たない。これ、本当に主権国家?
もちろん、すべての責任は、菅首相にある。外交の最終決定権は、首相にあるからだ。
今回はっきりしたことは、この人は体験からしか学ばないことだ。政治、経済、軍事、なんであれ、指導者は「歴史」から学ぶものだ。「体験」から学んでいては国が滅ぶ。菅さんも、歴史を勉強しておけば良かったのに。東工大の受験科目に社会はなかった・・・なるほどでも、次の話は、「社会」というよりは「常識」ですよ・・・
1938年3月、ドイツは威嚇だけで、オーストリアを併合した。さらに、ヒトラーは、チェコスロバキのズデーテン地方の領有も主張。チェコにしてみれば、青天の霹靂(へきれき)で、何に付いた話かもわからない。
ところが、イギリス首相のネヴィル・チェンバレンは、ヒトラーを刺激し、事を荒立てることを怖れた。忍耐も我慢もなく、まともな外交もせず、簡単に、ヒトラーに屈したのである。どこかの首相そっくりだが、それが、どれほどの代償を支払うことになったか。
1938年9月29日、ドイツで、ミュンヘン会談が開催された。出席者はドイツ首相ヒトラー、イギリス首相チェンバレン、フランス首相ダラディエ、イタリア首相ムッソリーニ。不思議なことに、当事者のチェコスロバキアが招へいされていない。
そして、その会談で、ズデーテンをドイツに譲ることが確定したのである(ミュンヘン協定)。もう領土を要求しないというヒトラーの言葉を真に受けて。ウソのような話だが本当だ。ミュンヘン会談を終え、イギリスに帰国したチェンバレンは、カメラの前で、誇らしげに、署名された協定文書をかかげた。
その一年後、ドイツはポーランドに侵攻した。さすがのチェンバレンも、やっと、ヒトラーの野望に気づいた。ヒトラーの望みは、「生存権の拡大」、つまり、「ヨーロッパの征服」にあったのだ。こうして、第二次世界大戦が始まったのである。
イギリスのチェンバレンは、立派なひげを生やした紳士だったが、外交官でも、首相でも、指導者でもなかった。戦争を避けたい一心で、愚かな妥協を受け入れたのである。未来を見通す力、問題解決能力、胆力、何一つ備わっていなかった。
そして、このチェンバレンの外交ミスが、ドイツに領土と時間を与え、さらに、「侵略しても、イギリスは何もできない腰抜け」とヒトラーに思わせたのである。その結果起こったのが、第二次世界大戦だった。
与えられた強大な権限、後世に与えた影響を考慮すれば、チェンバレンの妥協は、万死に値する。政治家というものは、それくらいの”責任”と”覚悟”をもってやるべきなのだ。明治維新の政治家をみれば、それがヒシヒシと伝わってくる。
第二次世界大戦が始まると、イギリスでは、チャーチルが首相になった。早くから、ヒトラーの野心を見抜いていた人物である。チャーチルの指導のもと、イギリスはジョンブル魂を発揮、ドイツ空軍の猛爆撃にも屈しなかった。そして、最終的に、勝利を勝ち取ったのである。
イギリス人は賢い。もし、チェンバレンが首相だったら、イギリスはドイツに降伏していただろう。外交は、行き着くところチキンレース。土壇場で物を言うのは、教養でも知識でもない、「胆力」である。
さて、ひるがえって、日本と中国。今回の尖閣諸島沖の衝突事件で、日本人は、中国の方が悪いと思っているだろう。なんて理不尽なことをする国なのだと。だが、それは的が外れている。
地球には、有史以来、覇者の大原則がある。1.「生存権(領土)の拡大」を目指す。2.闘う気力のない国、弱い国は、外交で脅す。3.外交がダメなら、武力制圧(戦争)する。
ミュンヘン会談から第二次世界大戦への道筋、今回の「尖閣諸島沖の中国漁船衝突」の経緯も、この大原則に従っている。そして、重要なのは、どこの国でも、大体こういう考え方をしている、ということだ。そもそも、明治維新以後、日本は何をやったか?富国強兵をかかげ、勝ち目のない大国ロシアに挑み、勝利した。その後も大東亜共栄圏をめざし、ひた走った。その結果はどうだったか?不幸だった?そうかもしれない。だけど、そんなことにはお構いなく、「生存権の拡大」を狙う国は必ず存在する。
中国もしかり。日本みたいな気力も胆力もない国はなめてかかろう、ガンガン行こうぜ、は歴史の必然なのである。だからこそ、人も国家も力を持たなければならない。日本は、そういう現実を忘れている。
その象徴が、日本の現政権だ。何かと言えば「議論、議論」とはしゃぐ、サラリーマン議員、目をおおいたくなるような素人外交、市民運動出身がウリで、目がウツロな首相。あげく、外交戦略は、アメリカと中国の属国?
これで本当にいいのだろうか?
その昔、極東の小国ながら、強大な欧米帝国に挑んだ心意気を思いおこすべきだ。日本を守ってくれるのは、日本だけなのだから。
by R.B