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週刊スモールトーク (第212話) ナチスのサブカルチャー(7)~ドイツ人のDNA~

カテゴリ : 娯楽思想

2013.06.23

ナチスのサブカルチャー(7)~ドイツ人のDNA~

■ドイツ人のDNA

どう考えても、アメリカはドイツの天敵だ。

ドイツが戦争を始めるや、モンロー主義やら不干渉主義やらで様子見を決め込み、ドイツが優勢になると一転して参戦し、勝利をかっさらう。さらに、戦後復興が始まると、部材を大量に輸出し、空前の好景気を享受する。もちろん、アメリカに復興は不要。1865年の南北戦争以来、一度も戦場になったことがないのだから。

これが、第一次、第二次世界大戦で「繰り返された歴史」・・・

当然、ドイツはアメリカに恨み骨髄と思いきや、そんな素振りはみじんもみせない。ナチスの犯罪を反省してます、ヒトラーみたいな独裁者を二度と出しません、われわれは平和を愛する民族です、とガチでアピールしている。

実際、ドイツは外国からの移民を積極的に受け入れ、良心的な大国をめざしてきた。その涙ぐましい努力は国のスペックにも表れている。

まず、ドイツの資源。

・国土面積:世界61位

・人口:世界16位

と、人的、物的資源はまあまあ。

次に、パーフォーマンス(効果)。

・国民総生産(GDP):世界5位

・ノーベル賞受賞者数:世界3位

と、世界のトップクラス。

ちなみに、軍事力は、

・国民一人当たりの軍事費:世界22位

と、まあまあ。

これだけみると、ドイツは平和を愛する経済大国にみえる(そうなんだろうけど)。

ところが、視点を変えると・・・

資源のわりに、パーフォーマンス(効果)が異常に高いことに気がつく。つまり、
「パーフォーマンス÷資源量=資源対効果」
が高いわけだ。コスト・パーフォーマンスならぬリソース・パーフォーマンスというところだろう。

さらに・・・

第二次世界大戦が終わった時点で、世界で最も荒廃した国はドイツだった。西方から英米軍、東方からソ連軍に挟み撃ちにされ、全土が戦場となり、焦土と化したのだ。その数十年後に、世界有数の大国にのしあがったのだから、並外れた「地力」があると言っていいだろう。

では、ドイツの地力は何に起因するのか?

地政学的な要因(地理・資源)もあるが、核心はドイツ人のDNAにある。

おー、挑発的・・・へたをすると、「人種差別」にとられるぞ。

■人種差別と人種差異

でも、冷静に考えれば・・・

「ドイツの地力はドイツ人のDNAによる」は、人種差別とは何の関係もない。人種差別とは、「人種差異」をよりどころに人間を差別すること。もちろん、このような意識・行為は知性の欠落を意味するし、お互いに不幸な結果をもたらす。だから、決して誉められたものではない。とはいえ、人間の歴史をみるかぎり、人種差別がなかった時代や国は一つもない。

一方、DNAがもたらす「人種差異」は真実である。いいも悪いもない、自然の大法則なのだから。というのも、人間はいわば生物機械で、DNAという設計図に基づいて実装されている。

つまり・・・

人間に個体差があるのは、設計図(DNA)の差異による。

また、人間に個体差があるように、人種間にも差はある。たとえば、純粋な日本人で金髪・碧眼(青い目)はいないだろう。つまり、人種によってもDNA(設計図)は違うわけだ。

もちろん、DNAは肉体だけなく、パーソナリティ(精神面)にもおよぶ。たとえば、日本人、中国人、韓国人は姿格好は似ていても、考え方がまるで違う。尖閣諸島問題、竹島問題の対応をみても明らかだ。つまり、人種間においても、目の色同様、パーソナリティ(精神面)にも違いがあるわけだ。もちろん、それを決定しているのはDNAである。

すると、こんな反論がでるかもしれない・・・日本人、中国人、韓国人の考え方が違うのは、DNAではなく、教育・文化のせいでは?

はい、でも、その教育・文化を作ったのは人間です。だから、行き着くところはDNA

【追記】

2013年6月26日、中国科学院の徐書華研究グループは中国の漢族と日本人は外見は似ているものの、遺伝子レベルでは比較的明確な差異が存在していることを発見した。

■適性検査

心理学では、人間は「パーソナリティ(知能+性格)」によって分類される。じつは、それを定量的に測定する検査もある。入社試験でおなじみの「適性検査」だ。ニッチな市場だが、日本では、リクルート社の「SPI」と、SHL社の「GAB」が二分している。いずれも、知能と性格を項目別に定量化する方法をとるが、方向性に違いがある。性格面ではSPIは心理学を、GABは統計学をベースにしている点だ。

SHL社には、「GAB」の他にソフトウェア技術者に特化した「CAB」がある。SHL社の分析官によれば、的中率は60%程度らしいが、会社で使った経験からいうと、的中率は90%を超えると思う。

適性検査の目的は、単に資質を見抜くのではなく、その人の行動を予測することにある。つまり、知能と性格を分析することで、人間の未来を予測するわけだ。ここで、具体的な検査項目を、SHL社のCAB(ソフトウェア技術者向け)から引用しよう。

【知能】

①計数理解:単純な計算能力

②直観的推理:法則性を発見する能力

③プログラミング:コンピュータ言語への適応能力

④構造理解:事象や現象の背後にある構造や関係を推理する能力

【性格】

①人との関係:自己主張、人付き合い、他人への配慮

②考え方:関心領域、思考形式、物事の進め方

③感情・エネルギー:不安感情、物事のとらえ方、エネルギー

最近、心の病気が大流行だが、その原因の一つ「ストレス」に強いか、弱いかまでわかる。もちろん、ストレス耐性が高いほど、心の病気になりにくい。当然、採用する側にとっては、重要なパラメーターだ。さらに、追加料金を惜しまなければ、どんなストレスに強くて弱いか、そして、順当にいけば、どんな職業、どんな役職につくかまで予測できる。

ところで、自分自身のテスト結果は・・・ほぼ100%的中。しかも、
現実の人生=検査が予測した人生
コワイコワイ。

本来、知能も性格も先天的なものである。ところが、性格は環境によって変わることもあるという。ただし、「③感情・エネルギー」だけは例外。生涯を通して変わることはないという。具体的には、

・行動力

・競争性

・上昇志向

・決断力

この4つは、「心のエンジンの排気量」というところだろう。そういえば、カードゲームで成功した社長さんがこんなことを言っていた。
「採用で一番重視するのはバイタリティです。なぜなら、鍛えようがないから」

さて、ここでドイツ人のDNAに話をもどそう。

ドイツ人はリソース・パーフォーマンス(資源対効果)が極めて高い。より具体的には、少ない資源で、経済と科学の分野で大きな成果をあげている。

つまり・・・

ドイツ人は論理的思考に長け、真面目で勤勉で、労を惜しまない。その結果、ヒト・モノの量的ハンディを克服し、最上の成果をただきだしたというわけだ。

では、ドイツ人のパーソナリティのDNA、つまり、知能と性格を個別にみていこう。まずは、「知能」から。

■ドイツ人の知力

国民の総体としての「知力(知能)」は、まず科学力に現れる。

では、ドイツの科学力は?

20世紀初頭から第二次世界大戦にかけて、ドイツの科学力は世界を圧倒した。

たとえば・・・

病院で自分のカルテをのぞくと・・・なんと、ドイツ語!じつは、20世紀初頭、「医学のメッカはドイツ」のなごりなのだ(若い医者は日本語だが)。

さらに、現在、ミクロ世界最強の理論体系「量子力学」の功労者をみると・・・

【創成期】

・原子模型:ニールス・ボーア(ユダヤ系デンマーク人)

・量子論の父:マックス・プランク(ドイツ人

【完成期】

・行列を使って体系化:ヴェルナー・ハイゼンベルク(ドイツ人

・微分方程式で体系化:エルヴィン・シュレーディンガー(オーストリア人)

【応用期】

・原爆の父:ロバート・オッペンハイマー(ユダヤ系アメリカ人)

【他の分野】

・相対性理論:アルベルト・アインシュタイン(ドイツ生まれのユダヤ人)

・コンピュータの父:ジョン・フォン・ノイマン(両親はユダヤ系ドイツ人

・現代数学の父:ダフィット・ヒルベルト(ドイツ人

というわけで、8人のうち5人がドイツ系(青色)。つまり、ドイツ人は「地頭」がいいわけだ。

さらに、昔、機械の電子制御を生業にしていた頃・・・

ナチス・ドイツが開発したV2ロケットのスペックをみて、脳が沸騰した。プロペラ飛行機がフラフラ飛んでいる時代に、どうして、こんなものを作れるのか?

V2ロケットは、成層圏を突き抜け、マッハ3で飛行し、300kmかなたに着弾する。今で言う大陸弾道弾だが、それを70年前に実現していたのである。

そして、ここが重要な点だが・・・

V2ロケットは自立飛行するため、「姿勢制御」と「加速度制御」を自動的に行う必要がある。姿勢制御とは、ロケット本体の姿勢を正しく保つこと。これをミスると、キリモミで空中分解するか、墜落する。一方、加速度制御とは推進力を制御すること。これをミスると、失速するか、速度が出すぎて空中分解する。だから、わずかのミスも許されない。とはいえ、精巧なセンサーやコンピュータがない時代に、どうやって?

振り子ジャイロと歯車計算機で!

つまり、すべて機械式で実現したのである。安易な電子制御に慣れた自分にとって、目から鱗(うろこ)、発明の神髄を見せつけられた気がした。じつは、このV2ロケットを開発したのが、「ドイツ人」技術者ヴェルナー・フォン・ブラウンだった。戦後、彼はアメリカ合衆国に移住し、NASAでサターンロケットを開発し、人間を月に送り込んだ。

ドイツの科学力、恐るべし!

ところが・・・

先の科学者リストで「ユダヤ系」学者に注目!なんと4名もいるではないか。じつは、ノーベル賞受賞者にドイツ国籍のユダヤ人が非常に多い。だから、「ドイツ人は頭がいい」に、ユダヤ人が貢献していることは確かだ。

元々、ドイツはユダヤ人がひいきにする国だった。だから、ドイツに住むユダヤ人が科学や経済に貢献したことは想像に難くない。ところが、ナチスが政権をとると、
「ユダヤ人はドイツに害を及ぼす」
と決めつけ、迫害した結果、ナチスが「悪のシンボル」にされ、ドイツが害されたのは、皮肉としかいいようがない。

■ドイツ人の性格

つぎに、ドイツ人の「性格」。

その昔、ドイツ人気質を目の当たりにしたことがある。バスで、チューリッヒからイタリアに入った時のこと。運転手のハルトゥングさん(ドイツ人)が、国境のゲートで料金を払うと、なんと、釣り銭がアメ!

そこで、怒り心頭のハルトゥングさんは、次のゲートで料金をアメで払おうとした。すると、今度はイタリアの係員がキレて、大げんかになった。何を言っているのかサッパリだったが、およそ見当はつく。

イタリア人にしてみれば、
「釣り銭(少額)はアメでOK」

ドイツ人にしてみれば、
「釣り銭がアメでOKなら、おまえらの国ではアメもカネと同じだろ。料金をアメで払って何が悪い!」

イタリア人のアバウトさと、ドイツ人の理屈っぽさを実体験した次第だ。

さらに・・・

その後、ローマのホテル「Ritz」に着いた時のこと。いよいよ、ハルトゥングさんとお別れだ。フランクフルトからの5日間のお付き合いだったので、最後に、
「Dankeschen(ありがとう)」
とピントはずれの日本語的な挨拶をすると、
「Wiedersehen(また会いましょう→さようなら)」
と返してくれた。

そこまでは良かったのだが、その後、ハルトゥングさん、ホテルの前でバス止めたまま、バスの中を掃き始めた。後ろは、車が数珠(じゅず)つなぎで、クラクションの嵐だ。ところが、ハルトゥングさん、全く動じる様子はなく、せっせと掃除を続けている。仕事が終わったらその場で掃除、が彼または会社のルールなのだろう。これぞドイツ人気質!?日本人は逆立ちしても真似できませんね。

というわけで・・・

ドイツ人は頭がいいし、真面目で頑固で妥協しない。誰が何と言おうとおかまいなしだ。ハルトゥングさんのように。だから、何をやっても結果が出るのだ。

その分かりやすい例が、第一次世界大戦と第二次世界大戦だろう。じつは、この2つの大戦には3つの共通点がある。

第一に、ドイツが主役だったこと。

第二に、ドイツはあと一歩の所で、アメリカに勝利を台無しにされたこと。

第三に、戦争の根本原因が民族対立にあったこと。

■ヨーロッパ大陸の力学

地政学の視点から、ヨーロッパ大陸の力学をみてみよう。ここで言うヨーロッパ大陸とは、西はスペインから東はロシアのウラル山脈まで、さらに地中海以北をさす。西欧、東欧、北欧、さらに、ロシアの1/3を含む広大な地域である。ここには、地政学の父、ハルフォード・マッキンダーがいうところの「ハートランド」が含まれる。そのマッキンダーの説によれば・・・

「ハートランドを支配するものがユーラシア大陸を支配し、ユーラシア大陸を支配するものが世界を支配する」

つまり、ハートランドを含むヨーロッパ大陸を支配する国が出現すれば、その国が世界を征服する!?もっとも、必ずというわけではない。たとえば、その国がアメリカ合衆国なら、やらないだろう。議会が許さないだろうから。

しかし、中国だったら?

普通にやるだろう。チベット侵略、尖閣諸島、南沙諸島、西沙諸島の海洋紛争、インド、ブータンの国境紛争を見れば明らかだ。

もっとも、ヨーロッパ大陸を征服する可能性があるのはアメリカでも中国でもない。フランス、ドイツ、ソ連の3国だ。実際、フランスはナポレオンが、ドイツはヒトラーが、ソ連はスターリンが挑戦している(いずれも成功しなかったが)。

さらに、第一次世界大戦と第二次世界大戦に限れば、可能性があったのはドイツとソ連(ロシア)だ。そして、ドイツはゲルマン人の国家、ロシアはスラヴ人の国家である。

つまり、2つの世界大戦の根っこには、
「ゲルマン人Vs.スラヴ人」
が潜んでいる。

■ゲルマン人Vs.スラヴ人

具体的にみていこう。まずは、第二次世界大戦から。

ナチスドイツの指導者アドルフ・ヒトラーは、極端な人種差別政策をとった。それを階層で表すと、

1.金髪・碧眼(青い目)のアーリア人(ゲルマン人)

2.ラテン人(南ヨーロッパ)

3.スラヴ人(東ヨーロッパおよびロシア)

4.ユダヤ人

ところで、アーリア人とゲルマン人って、どう違うの?

アーリア人とは、9000年前の発祥地で特定される人々で、人種として存在するわけではない。曖昧で抽象的な概念だ。また、ゲルマン人はアーリア人の一派とされ、ドイツ北部、デンマーク、北欧、イギリスに住む人々で、DNAによっても特徴づけられている。

ヒトラーは、このアーリア人(ゲルマン人)を最高位においたのだが、その下位は・・・大目に見てもらえるのは、「2.ラテン人」ぐらいで、あとは、奴隷か抹殺の2択。実際、ドイツがソ連を征服した暁には、ウクライナからウラル山脈までを直轄地とし、そこにドイツ人を入植させ、スラヴ人を奴隷として使役するつもりだったのである。

ありえない?

ヒトラーが自ら著した「わが闘争」には、
土地だけをゲルマン化すべし」
と明記されている。意味するところは、スラヴ人は劣等民族なのでゲルマン化できない。だから、土地をゲルマン人に与え、スラヴ人を奴隷として使役すべし・・・

というわけで、第二次世界大戦の核心は、ドイツとソ連の戦い、つまるところ、
ゲルマン人Vs.スラヴ人
の民族戦争だったのである。

でも、第一次世界大戦の原因は、オーストリアとセルビアの対立だったのでは?

たしかに・・・

この戦争は、オーストリア=ハンガリー帝国の皇太子夫妻が、サラエヴォでセルビア人に暗殺された「サラエヴォ事件」に起因する。だから、
「オーストリア=ハンガリー帝国Vs.セルビア」

それと、ゲルマン人とスラヴ人とどんな関係が?

じつは、オーストリア=ハンガリー帝国はドイツ人(ゲルマン人)とマジャール人の国、一方のセルビアはスラヴ人の国である。

ところが、セルビアの民族主義者たちは、オーストリア=ハンガリー帝国の南部はスラヴ連合国家に吸収すべし、と主張していた。さらに、1908年、オーストリア=ハンガリー帝国はボスニア・ヘルツェゴビナを併合したが、この地に住むセルビア人はオーストリアに反発していた。

つまり、「ゲルマン人Vs.スラヴ人」の民族対立が、
「オーストリア=ハンガリー帝国Vs.セルビア」
という国家間の対立、さらには、オーストリア=ハンガリー国内の民族対立まで引き起こしていたのである。

さらに、ややこしいことに、スラヴ人国家の盟主を自認するロシアはセルビアの民族主義者たちを支援していた。つまり、オーストリア=ハンガリー帝国にとって、セルビアだけでなく、ロシアも天敵だったのである。

一方、ゲルマン民族の盟主を自認するドイツ帝国は、オーストリア=ハンガリー帝国を無条件で支援し、白紙委任状まで渡していた。つまり、オーストリアが望めば、ドイツはいつでも、どの国とでも戦争をする・・・

そんな緊迫した状況で、オーストリア=ハンガリー帝国がセルビアに宣戦布告したのである。瞬く間に、宣戦布告のドミノ倒しが始まった。まずは、
「ドイツ&オーストリアVs.セルビア&ロシア」
ところが、事はこれですまなかった。ドミノ倒しは果てしなく続き、ヨーロッパの主要国を巻きむ大戦争にまで発展したのである。

《つづく》

参考文献:
・わが闘争(上・下)―民族主義的世界観(角川文庫)アドルフ・ヒトラー(著),平野一郎(翻訳),将積茂(翻訳)

by R.B

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