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スモールトーク雑記

■塩サイダーと悩めるスペイン人 2012.01.28

日曜日の夕方、会長から電話があって、メシ食うから、片町(金沢の繁華街)に出てこいという。わが社の悩めるスペイン人デザイナーの件らしい。

待ち合わせ場所にいくと、会長ではなく、社長がいる。

「あ、社長も呼ばれたんですか?」

「そうなんですよ」

1年前に就任したばかりの39歳の若い社長だ。創業期から、会長と苦楽をともにしたバリバリの生え抜きだが、会長と血縁関係はない。

その直後、会長から電話・・・30分ほど遅れるので、よろしく、とのこと。

ん~、何をするにも中途半端な時間だ。せっかちな性分なので、ボンヤリ過ごすのは耐えられない。さて、困ったな・・・

すると、社長が、

「軽く一杯やりませんか?近くに、いいバーがあるんですよ」

「お、いいですね」

と、意見が一致、その店にむかった。

店の名は「セントルイス」、片町のど真ん中にあるジガーバーだ。午後5時なので、お客は1人もいないが、雰囲気はまあまあ。

この店は、「ご当地」塩を使ったカクテルがウリなのだという。社長に薦められるまま、「しおハイボール」をたのむ。これが・・・びっくりするほど・・・うまい!

感動していると、バーテンダーが、「しおサイダー」をサービスしてくれた。これも・・・マジでうまい!

訳を尋ねたところ、奥能登の「あげはましお」を使っているからだという。

アゲハマシオ?

待ってましたとばかり、バーテンダーの口調がなめらかになった。

いわく・・・

能登半島の珠洲市(すずし)に、「塩田村」という所があって、そこで、500年間、同じ製法で塩がつくられているという。それが、「揚げ浜(あげはま)式」。現在、この製法で塩を作っているのは、ここだけらしい。

後で、調べたところ、揚げ浜式とは、

・塩田(砂浜)に海水をまいて、日干しにする。

・塩田が乾いたら、砂を箱の中に入れる。

・箱に海水を入れ、海水濃度を上げる。

・海水を窯で煮て、塩を抽出する。

・塩を3日間放置して、アクをとる。

と、かなり手間ヒマがかかりそうだ(実際かかるらしい)。そのぶん、甘みと辛みと深みがあって(どんな塩や?)、ミネラルが豊富で、添加物も一切ナシ(とのこと)。

さらに、この揚げ浜塩で作った「しおサイダー」は、石川ブランドに認定されているという。まぁ、有り体にいえば、ご当地グルメ。

バーテンダーが言うには、この「揚げ浜塩」を使っているので、カクテルにコク出るのだという。カクテルに”コク”?

ようわからんが、確かにうまい。

このバーの人気メニューは、塩田マルガリータ、春待桜(ロングカクテル)、しおハイボール等々・・・

たかが塩、されど塩、バーで塩に感動するとは思わなかった。

30分後、能登ダイニング「ごっつお」に行く。魚料理の専門店なのだが、食材はすべて近江町市場からくるので、新鮮でプリプリして、うまい。とくに、「のどぐろ」は絶品だ(いつもあるとは限らない)。

店にはいると、会長とスペイン人デザイナー、それに・・・会長そっくりの老紳士がいた。聞けば、会長の弟だという。どうりで似ているわけだ。

ところで、なんで会長の弟?

スペイン人デザイナーのP.Bは、会長の弟の紹介で入社したのだが、最近、仕事で悩んでいるという。そこで、わざわざ、大阪から様子を見に来たのだという。ということで、今回の会食は、P.Bを励ます会!

P.Bは、スペイン人だが、おじいさんがドイツ人なので、「陽気なスペイン人」というわけではない。日本人よりずっと、まじめで、ナイーブ。

しかも、「仕事で大切なのはコミュニケーション」を真に受けて、ヒマさえあれば、周囲に声を掛け、愛想をふりまいている。疲れますよね。

ところが、日本人スタッフにしてみれば、それがメンドーなのだ(陽気な金沢人は少ない、たぶん)。勘の良いP.Bは、それに気づき、深く悩んでいるわけだ。

P.Bは優秀なデザイナーで、Maya(CGツール)を使いこなし、アニメーションのセンスも抜群。しかも、大阪大学・大学院で、「バーチャルリアリティ」を学んでいる。さらに、スペイン語(ポルトガル語)、英語、ドイツ語、イタリア語、日本語を操り、歴史にも精通するインテリだ(バスク人の歴史では完敗した)。

だから、田舎の金沢人とはかみ合わないのである。良かれと思って、コミュニケーションを取ろうと頑張ったら、ウザイ?

やっとれん・・・

ということで、P.Bにはこう言い聞かせている。

「日本人は君ほどスマート(賢い)ではないし、ナイーブ(ガラスの心臓)でもない。だけど、みんな君のことが大好きなんだよ」

一方、日本人スタッフには、

「P.Bは、みんな思ってるようなオチャラなラテン人じゃないぞ。じいさんはドイツ人で、まじめな人間なんだ。それに、遠い異国で1人頑張ってるわけだし、彼の想いを受け止めなきゃ」

と説得している。

会社に、もう一人、外人(コロンビア人)がいるが、彼は日本語がほとんど話せない。だから、何も語らず、笑顔でカバー。仕事はできるし、ハンサムで優しいので、会社の人気者だ。

ヘタにアクションかますより、黙ってニコニコしている方が得?

ん~、あわん話や・・・外人が日本の田舎で働くのは難しそうだ。

by R.B

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