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スモールトーク雑記

■東日本大震災・2011年4月10日 2011.04.10

ソフトバンクの孫社長が、東日本大震災の義援金として、個人で100億円、さらに、引退までの役員報酬全額を寄付する、と発表した。ところで、100億円ってどんなお金?

1億円住宅を建てて、軽井沢に5000万円の別荘買って、アウディA4クアトロ(580万円)買って、1日の小遣い10万円!(毎晩飲みに行ける)しめて、1億円+5000万円+580万円+10万円×365日=1億9230万円こんな生活を毎年続けたとして、100億円÷1億9230円=50年使い切るのに50年もかかる。

つまり、ビジネスや復興事業ならともかく、個人で使うぶんには、無敵の金額だ。だから、100億円を個人で寄付する人は、やっぱり偉い。

また、楽天の三木谷社長も、個人で10億円寄付するという。三木谷さんは、新潟県中越地震でも1億円寄付している。その他、資産家、有名人の寄付が相次いでいる。そんな中、「ニュースステーション」の元ニュースキャスターの久米宏さんが、2億円寄付したという(イチローでさえ1億円)。しかも、コメントは一切ナシ。

久米さんが、「ニュースステーション」のニュースキャスターだった頃、阪神淡路大震災が起こった。その時、久米さんの一存で、CMをスキップして報道を続けたことがある。”熱い”人だ、そのときそう思った。つねに、反体制派を標榜し、物議をかもすことの多い人物だったが、有言実行、彼は「言葉の重み」を知っている。

ところで、原発事故を引き起こした東京電力は?歴代の会長や社長が、退職金を返納したとか、寄付したという話はきかない(あったら失礼)。それどころか、逆の話がある。

各地で被災者の受け入れが進む中、東北電力は、自社の敷地内の体育館に「240人」を受け入れた。さらに、中部電力も、社宅「650世帯」と保養施設「90室」を提供する方針だ。

ところが・・・

当事者の東京電力は、多数の施設を所有しながら、提供したのは、社宅「24世帯」のみ(3月31日時点)・・・

さらに、東京電力系の某リゾートホテルでは、部屋を提供したものの、料金を取っているらしい。いわく、「直接お申し込みいただいた方は、大人お1人さま1泊3食で6000円、市役所から要請を受けた方は無料」被災者を馬鹿にしているのか?

東京電力に当事者意識はない、そう言われてもしかたがない。東電の経営陣は、たぶんこう思っている・・・これは天災だ。百歩譲って、人災だとしても、歴代の経営陣が政府と組んでやったこと。それを、事故が起きた時の役員の責任されてはたまらん。

言動を見るかぎり、そう考えているとしか思えない。日本では、こういう連中のことを、「当事者意識がない」と言っている。

この会社の体質を見ていると、人間の醜悪な部分を見せられたようで、不快な気分になる。と同時に、こんな会社に危険な原発を任せていたという事実に、恐怖を覚える。

では、東電はどうすれば良かったのか?事故が起きた以上、悔いてもしかたがない。やるべきことをやる、それだけだ。まず、東電の施設から社員を出し、部屋を空け、被災者をうけいれる。東電系のホテルも被災者を無料で受け入れる。原発現場周辺に、強力な対策本部を設置し、役員が陣頭指揮をとる。ただし、社長も同席すべきだろう。東京でのマスコミ対応は、会長にまかせておけばいい。

これだけでもずいぶん違う。少なくとも、東電は当事者意識があるし、やるべきことをやっている、国民にはそう映ったはずだ。それを、常識や些末な事情にとらわれ、英断できなかったのは、東電の経営陣の無力さを物語る。もし、東電のトップが、ソフトバンクの孫さんや、楽天の三木谷さんだったら、東電の未来は変わっていただろう。東電の不幸はここにある。

4月5日、北茨城市沖で捕れた小魚「コウナゴ」から、暫定規制値を超える放射性セシウムが検出された。漁業協同組合は当面の間、コウナゴ漁を中止するという。当然の処置だろう。

一方、漁業関係者にとっては、はた迷惑、ではすまない。新聞報道によると、「東電にコップで水(放射能汚染された海水)をかけてやりたい」とコメントしたという。また、東電と国に補償を求めるというが、今後、こんな話が続出するだろう。

たとえば、東京電力の株価は大震災前の「1/6」。大暴落どころか、紙切れに近づいている。電力会社の株は「安定」が唯一の取り柄、そのため、富裕層では、電力株は安定資産として受け継がれてきた。

東電の株を相続した子孫たちは、親からこう言い含められている。「電気がなくなることはないし、東電がつぶれることもない。だから、東電の株は安定した資産。決して、目先のことで売り買いしてはならない」

それが、1ヶ月足らずで1/6?シャレにならん、一体、どうしてくれる!株主にしてみれば、気持ちの持って行き場がない。

ということで、今後は「株主訴訟」もありうるだろう。「株主訴訟」とは、株で大損こいた株主が、役員個人を相手に損害賠償を求めること。問題は、役員に過失があったかどうかだが、ほじくれば、いくらでもでてくるだろう。

たとえば、津波対策を怠ったこと。想定外の津波だった、はもう通用しない。過去に同じ場所で、もっと大きな津波が起こっているからだ。これで想定外と言い切るバカはいない(原発の利害関係者をのぞく)。つまり、予想できたのに対処しなかった・・・裁判で負ければ、東電の役員は自己破産するしかない。(金額が半端じゃないので)もっとも、すでに、資産を保全しているだろうが。妻に財産を譲渡して、離婚するとか、方法はいくらでもある。

今後、放射能汚染が拡大する可能性が高い。今でも、原発から放射性物質が出ているので、減るわけがない。とくに、土壌汚染は蓄積なので、増える一方だ。

自主避難地区(半径20km~30km)の住民が、一旦、避難した後、帰郷を始めている。避難所の生活はつらいし、家も心配だし、政府が主張するように、「ただちに健康に影響はない」。だが、これは非常に危険である。

たとえば、国際原子力機関(IAEA)の測定では、原発から20km離れた福島県浪江町付近の大気の放射線量は、161uSv毎時(3月21日)。政府いわく、ただちに健康に影響はない・・・「時間」を忘れていないか?

たとえば、このままの状態が1年続くと、161uSv毎時×24時間×365日=1410mSvこの数値だと、「吐き気、嘔吐の症状がでる」(放射線と被ばく影響の表)つまり、「ただちに健康に影響する」

放射性物質の放出がつづくかぎり、土壌汚染は進む。結果、何万、何十万の人間の土地が奪われ、それが何十年、何百年もつづく。土地そのものが汚染されているので、復旧作業ができないからだ。被災者の苦難は筆舌に尽くしがたい。

そんな思いで、東京電力の会長の会見を見ていると、無性に腹が立つ。カメラと記者を威圧するような目、この人の表情には、罪悪感のカケラもない。これが東京電力のトップなのだ。

犯人捜しはやめよう、終わったことはしかたがない、これからが大切・・・などと分かったようなことを言うのはやめよう。人間は、時として、悪を憎む激しい感情が必要だ。でないと、こういう連中はまた同じ災いをもたらす。

人間は極限状況で、本性を現すものだ。加害者でもないのに、わが事のように苦しみ、援助を惜しまない人、加害者でありながら、人ごとの連中。人間は多様だ。

だが、被災者は、こんな引いた見かたはしてくれない。やがて、彼らは自分たちの故郷が永遠に失われたと悟り、怒りと憎しみをつのらせるだろう。(特に半径20km圏内)

こんな状況で、被災者が、「すべて水に流そう」と言ってくれるはずがない。東京電力の経営陣は覚悟が必要だ。悪いことは言わない。今のうちに、全財産を寄付するなり、原発現場に行くなり、やれることをやっておいたほうがいい。

by R.B

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