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スモールトーク雑記

■破綻したアニメ制作 2011.03.06

久しぶりに大阪に出張した。金沢から大阪まで、特急サンダーバードで3時間弱、所要時間は「東京-大阪」とほぼ同じ。

ただし、サンダーバードを利用する場合、注意が必要だ。「指定席」より「自由席」がおすすめ!なぜか?

この沿線には、加賀温泉と粟原温泉があり、必ず温泉旅行客が乗っている。そのほとんどが、有閑おばさんグループ、(おじさんグループは皆無)、年金生活者ツアー、老人会、つまり、一丁上がりのお気軽身分(失礼)。

乗車するやいなや、座席を回転させ、4人セットで、酒を飲んだり、大声でしゃべったり、もう宴会が始まっている。うるさいのなんのって。「携帯電話が他のお客様のご迷惑になるので・・・」なら、あのバカ騒ぎもなんとかして欲しい。こっちも、電車賃払ってるんだから。ということで、JRに強く要望する。団体旅行客とビジネス客を別車両にしてくれ。

だけど、こんなことを言うと、「差別発言」とかになるんだろうなぁ。だから、僕は現実的に対処している。「指定席」でなく「自由席」に乗ること。温泉旅行客は必ず「指定席」に乗るので。

大阪駅に着いて、構内をみわたすと、何か様子がおかしい。駅がデカくなったような・・・

駅の外に出ると、周辺も一変している。見知った場所なのに、ここはどこ、私はだれ?という感じ。どうやら、大阪駅周辺は大改装中らしい。

ところで、今回出張したのは、知り合いの会社から相談をうけたから。進行中のアニメ版権の映像開発が破綻したらしい(最近よくある話)。ディレクターによると、ある会社にアニメ制作を発注したところ、1.品質は専門学校の生徒なみ。2.制作スピードが異様に遅い(1週間でショボイ人物1体)3.リテイク(直し)のレスポンスが遅い、または、応じない。4.ガミガミ言い出したら、音信不通になった(おいおい)。

というわけで、この外注を切ったらしい(そりゃそうだろう)。当然、新たな外注先が必要になり、こっちにお鉢が回ってきたというわけ。さっそく、社内のディレクターに声をかけたが、目が血走っている。進行中の案件が炎上中なのだという。ムリに仕事を押し込めば、「死んでくれ」というようなものだ。

そこで、知り合いのアニメ制作会社に頼むことにした。版権と仕様を確認し、候補を3社にしぼりこんだ。今回の出張は、その結果を報告するため。

それにしても、最近、この手の話が多い。日本のアニメ制作会社は、社内にディレクターだけおいて、案件ごとにアニメーター(作業員)を集めることが多い。つまり、「発注元→元請け→下請け→孫請け・・・」ゼネコン&土建業界そのまま。

このスキームで問題が発生すると、発注元は元請けに文句を言う。以下同様に、元請けは下請けに、下請けは孫請けに、それぞれ文句を言う。正しく伝わるわけがない。もちろん、レスポンスも最悪。

しかも、最近は、「孫請け=中国」が増えている。理由は?もちろん安いから。ただし、品質に問題アリ。たとえば、1.品質そのものが悪い。2.品質は悪くないが、日本のテイストではない。

そこで、リテイク(直し)の嵐となるわけだが、意図がうまく伝わらない。たとえば、「車はベンツのように」と指示すると、まんまベンツを描いてくる。しかも、ご丁寧にベンツのマーク入りだ。「これベンツやろ。頼んだのはベンツの”ような”車!」と、押し問答が始まる。でも、言うだけムダ、元々、文化が違うんだから。

そんなドタバタを見て、新しいビジネスを思いついた人がいる。日本企業と中国企業の間をとりもつ会社だ。つまり、「日本企業→とりもち会社→中国企業」もちろん、ただの仲介なら昔からある。ポイントは、「とりもち会社」が制作のディレクション(制作指揮)まで行うこと。当然、このディレクターに要求されるのは、1.日本語ペラペラ2.中国語ペラペラ3.コミュニケーション能力抜群4.アニメーターをアゴで使える

これで問題解決?とんでもない。言葉の問題が解決しても、「ベンツの問題」はクリアされていない。

問題はまだある。この「とりもち会社」のディレクターのお値段だが、日本価格。もちろん、中国人の人件費分は安くなるが、品質の問題で時間をロスするので、こっちの費用がアップする。グロスでみると価格は日本と変わらない、が個人的な感想。

とはいえ、日本のアニメ・CG業界が安泰というわけではない。この業界は小さな会社が乱立し、安い価格で受注し、切った張ったの商売を続けている。淘汰と寡占は時間の問題だ。(すでに兆候はある)

打ち合わせが終わると、この会社からタクシーチケットをもらった。ご協力に感謝、というところ。タクシーで大阪駅に向かう途中、大阪駅の大工事を思い出し、運転手さんに話をふった。僕:「大阪は景気がいいみたいですね」運転手:「最悪ですわ」「北新地の店なんか、1/3が店じまいですわ。町がなくなると心配する人もいてはります」

大阪の北新地と言えば、東京の「銀座」。日本を代表する繁華街だ。その1/3が消失?大阪、大丈夫かなぁ?ところが、タクシーの数は逆に増えているという。当然、一人あたりの取り分は減る。ちなみに、この運転手さん、日当が2000円だという(時給にあらず)。そのうち、タクシーの運転手は年金生活者しかできなくなる、とぼやいていた。

それもこれも、東京一極集中のせいだ。広告代理店の友人によると、ヨーロッパのデザイン会社は、ミュンヘンやハンブルグのような大都市には存在しない。大部分が田舎町の森の中の一軒家。日本だけが、都心の高層ビルに入っていないと信用されない・・・

おかしな話だ。デザインの出来が家賃に比例するとは思えない。それに、「国のリスク」という点で大きな問題がある。政治も経済も人も東京に集中し、そこへ大地震が起きたら・・・都市文明の怖さはここにある。

先日、不吉な一文を目にした。30年以内に、東京に直下型地震が起きる確率は70%。それ以来、東京の地下鉄に乗るたびに、自分にこう言いきかせている。お前はもう70%死んでいる・・・

by R.B

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