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スモールトーク雑記

■英語が必要なこれだけの理由 2010.12.26

日本では、「英語が苦手でねぇ」が、好意的に受けとめられる風潮がある。特に、高齢者や中年層。この親にしてこの子あり、若者が英語を軽んじるのはあたりまえ。

「英語が苦手」は、高速道路を片目をつぶって運転するようなもの。これは脅しではない。インターネットは、情報のハイウェイ(高速道路網)だ。情報が伝わる速度も量も、紙メディアとは桁違い。くわえて、世界のウェブページの半数が英語、とくれば、情報ハイウェイを疾走するには、英語は欠かせない。

具体例をあげよう。

今話題のウィキリークス(WikiLeaks)は、国や企業の機密情報をすっぱ抜くウェブサイトだ。すでに、120万を超える機密文書をデータベース化しているという。その中にはきっと、ドキドキする機密情報もあるに違いない。個人的には、「ロズウェル事件」あたりが公開されれば、狂喜乱舞、たぶん、徹夜で読む。ところが、問題が一つ、すべて、英語なのだ。

10年ほど前、絶頂期だったマイクロソフトが、DVD版「エンカルタ総合大百科」をリリースした。キーワード検索もできるし、ムービー再生も可能、紙の百科事典よりずっと使い勝手が良かった。マイクロソフトも自信満々で、雑誌広告にくわえ、インターネットのスポンサー広告も出していた。ところが、数年前に販売中止。ウィキペディアに取ってかわられたのである。

ウィキペディアは、ウェブベースの百科事典だ。紙の百科事典と比べても、正確さでひけをとらないし、DVD百科事典と比べても、更新スピードで圧倒する。しかもタダ・・・これに優る百科事典はない。

そのウィキペディア(Wikipedia)だが、本家本元は英語。

だから?

日本版もあるから、そっちを読めば?

わざわざ、英語で読む必要がある?

いや、それがあるのだ。

たとえば、電気工学のカリスマ「ニコラ・テスラ」。エジソンの大人げない妨害工作にあい、実績に見合った名声を得られなかった技術者である。一方、知る人ぞ知るで、電気自動車(EV)トップのテスラモーターズの社名は、彼の名に由来する。

さて、この不遇のテスラを、ウィキペディアで調べてみよう。検索キーワードは、日本語版:ニコラ・テスラ英語版:NikolaTesla。その結果は・・・

情報量で、英語版は日本語版の4倍もある。であれば、日本語版にどんな意味が?

問題はもう一つある。”量”ではなく”質”。

今から30年ほど前、球体を回転させて浮上する「球体飛行船」が開発された。球を回して、空を飛ぶ?摩訶不思議な話だが、流体力学の「マグヌス効果」で簡単に説明できる。そこで、「マグヌス効果」を、ウィキペディアの英語版と日本語版で比較してみよう。

キーワードは、

日本語版:マグヌス効果

英語版:Magnus Effect

その結果は・・・情報量は英語版の方が若干多い程度。ところが、内容に大きな違いがある。

マグヌス効果とは、野球のボールに回転を与えると、球筋が曲がる現象(カーブやシュート)。

たとえば、球が時計回りに回転しながら、左方向に水平移動するとしよう。そのとき、球体には、上方向の力(浮力)が発生する。前述の球体飛行船は、この原理で浮くわけだ。じつは、日本版ウィキペディアの説明はここまで(2010年12月時点)。

ところが、英語版には、浮力を表す次の式が載っている。

F=S・W×V・・・①

F:浮力(ベクトル)

S:回転体の表面の空気抵抗に関係する係数(スカラー)

W:回転体が回転する角速度(1秒間に回転する角度:ベクトル)

V:回転体が水平移動する速度(1秒間に移動する距離:ベクトル)

×:外積(ベクトルの演算の一つで、高校で習う)

ベクトル:大きさと方向を表す。

スカラー:大きさだけを表す。

ところで、この式に一体何の意味が?

じつは、「マグヌス効果」の説明は①式で必要十分なのである。本来、力には、「大きさ」と「向き」があり、それを一撃で表すには①式しかない。逆に、①式がないと、不十分な情報と言わざるをえない。

これは一例にすぎないが、英語版と日本語版では情報の質も量も違う(原典が日本語なら別だが)。そもそも、日本語版が英語版の直訳とは限らない。というわけで、グローバルな情報を得るなら、英語版で読んだほうがいい(ウィキペディアに限らず)。

小さなITベンチャーを経営する社長が、こうぼやいていた。

「今流行の『クラウド』をやるなら、英語は必須ですよ。だって、先端情報は英語しかないんだから。翻訳を待ってたら、商売にならないし、でも、今さら英語と言われてもなぁ・・・」

「最新情報=英語」は、なにも、ITに限った話ではない。ビジネスもしかり。熾烈を極めるビジネス現場で、古い情報を眺めていてもしかたがない。勝負を決めるのは、新しい情報をいかに速くゲットするか!

というわけで、英語をマスターするしかない。

日本ほど、海外文献が母国語に翻訳される国はない(たぶん)。だから、たいていのものは、日本語で読めてしまう。だから、日本人は英語が苦手なのだ。

僕は昔、英語に何度もチャレンジしたが、結局、ものにならなかった。英会話スクールに2年も通ったのに、身についたのは、「外人に気おくれしない」だけ。英語を日本語なみに読めるよう、ウィキペディアの英語版に挑戦したが、すぐに挫折した。

では、英語はどうやって学べば良いのだろう?

月並みだが、中学校や高校の勉強が大切だと思う。もちろん、学校の授業だけではダメ。「精読」と「速読」の両方が必要かもしれない。たとえば、学校の教科書は、精読モードで、英語の原書は、速読モードで。

高校時代、原書で勧められたのは、イギリスの作家サマセット・モームだった。「月と六ペンス」が有名だが、彼の作品は全般的に平易で面白い、と言われている(僕にとっては十分難しかった)。ポイントは、問題集みたいに断片を精読するのではなく、原書一冊読むこと。

一方、ヒアリングは、映画やドラマを英語で視聴するのが良いといわれる。一見、妙案に思えるが、これが意外に続かない。同じものを何度も観る気にならないからだ。

なので、どうせやるなら、ストーリーより世界観で選んだ方がいいだろう。僕は「スカイキャプテンワールド・オブ・トゥモロー」』の世界観が好きなので、字幕を英語にして視聴している(5回目で、少し聞き取れるようなったような、ならないような・・・)。

ということで、英語上達の近道は、英語をシャワーのように浴びること。ただ、ラジオやテレビの英会話は、量が少ないので、「シャワー」にはならない。

英語は習得するのに長い年月がかかる。だから、毎日継続するしかない。若者は、「英語が苦手」を公言するおバカな親など相手にせず、英語を真剣に学ぶべきだ。誰のためでもなく、自分の実りある人生のために。

by R.B

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