BeneDict 地球歴史館

BeneDict 地球歴史館
menu

スモールトーク雑記

■月は資源でいっぱい 2018.04.29

黄昏れゆく宇宙開発・・・かつて「21世紀最大プロジェクト」といわれたのに、今は見る影もない。

1980年代の科学雑誌は、「月面基地」、「宇宙ステーション」、「宇宙工場」、「火星探検」・・・少年のココロがときめくコトバであふれていた。ところが、21世紀に入っても、火星探検どころか、月面基地もない。

月の裏側に、ナチスの月面基地があるというウワサもあるが、映画「アイアン・スカイ」のパクリだろう。

月への道のりは長い。

地球から38万kmも離れ、月面まで4日はかかる。しかも、人間や着陸船のような重い荷物を打ち上げるには、最低「50メガニュートン」の推力が必要だ。もちろん、そんな巨大ロケットは存在しない。重力を振り切るのは、それほど難儀なのだ。

振り切るより、重力を打ち消したら?

UFOじゃあるまいし・・・

ところでなぜ、月なのか?

資源の宝庫だから。

月面の砂(レゴリス)や岩石には、シリコン、鉄、アルミニウム、チタン、マグネシウム・・・多くの資源が含まれている。さらに、地球上にほとんど存在しない「ヘリウム3」もある。

中国が「月面基地」の建設をもくろんでいるという。ヘリウム3が核融合の燃料になるからだ(月面核融合)。

核燃料や金属はいいけど、酸素は?

じつは、月には酸素もあるのだ。

大気もないのに?

イエス。

月面の砂や石には「酸化物」が含まれている。酸化物とは、酸素とくっついた化合物のこと。たとえば、

酸化鉄=鉄+酸素

これに水素を反応させると、

酸化鉄+水素=(鉄+酸素)+水素=鉄+(酸素+水素)=鉄+水

なんと、水がとりだせる。つぎに、水を電気分解すると、

水=酸素+水素

つまり、月面から酸素が取り出せるわけだ。

人間は酸素がないと、数分ももたない。それに、ロケットの燃料を燃やすためには酸素が必要だ(燃焼=酸化)。

というわけで、月面は資源がいっぱい。

でも、資源なら、地球にもあるけど(ヘリウム3を除く)・・・なぜ、月なのか?

月の重力は地球の1/6しかない。つまり、地球から運ぶより、月から運ぶ方が楽ちんなのだ。ロケットエンジンが小さくてすむし、燃料も少なくてすむから。

とはいえ、月の資源を地球に持ち帰って、加工して、再び宇宙に送り出すのはナンセンス。地球の資源を使うのと同じだから。

そこで・・・

地球の赤道上空3万6000kmに、必要最小限の宇宙工場を建設する。つぎに、月の資源をそこに運んで、加工して資材をつくる。それで、宇宙工場を拡張していくわけだ。

巨大なソーラーパネルをならべれば、電力も自給自足できる。余った電力は、マイクロ波に変換して、地球に送ればいい。受信したマイクロ波を電気エネルギー変換すれば、電力として使える。ちなみに、ソーラーパネルの原料のシリコンも月面に豊富にある。

宇宙船が「月←→宇宙工場」を往復するようになれば、燃料補給ステーションや整備工場も必要になるだろう。

宇宙工場にはもうひとつ利点がある。重力がないので、高品質の合金や医薬品が製造できるのだ。

ここまでくれば、「1980年代の科学雑誌」は現実になる。つぎは、いよいよ火星探検だ。

by R.B

関連情報