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スモールトーク雑記

■ガジェット~幻の名作~ 2009.11.14

いつの時代でも、どんな世界にも、「不運な作品」は存在する。シナジー幾何学の「ガジェット」も、そのひとつだろう。

1997年、PCゲーム市場はすでに氷河期に入っていた。その頃、僕は、ゲーム事業を担当していたが、事業も気分も、風前の灯火だった。

どんな問題にも解決方法はあるが、問題全体が崩壊していると、方法は2つしかない。撤退か死か?

もちろん、その前にやるべきことはやった。まずは、販促。問屋に頼らず、自分でショップ営業をしたのである。「すみません、ウチのGE・TEN切れてますけど、追加注文いただけませんか?」「あー、考えとく」不毛な日々だった。

ある日、ショップの一角で、面白い販促を見つけた。PCを使わず、ビデオ一体型TVでデモを流している。場所は取らないし、操作も不要。しかも露出度は高い。それが、「ガジェット」だった。

店員に聞くと、ガジェットは、シナジー幾何学が開発・販売し、ツクダシナジーがショップに卸しているという。こんな丁寧な販促をやってくれる問屋はない。さっそく、アポをとって、ツクダシナジーを訪問した。

担当者は乗り気だったが、どうしてものめない条件があった。他の問屋には一切卸さないこと。これはさすがにキツい。

すでに取引のあったソフトバンクとソフトウィングは、販促の助けにはならないが、かかえるショップが桁違いに多い。最終的な販売本数では、ツクダシナジーを上回るだろう。結局、この話は破談になった。

そのあと、秋葉原にもどり、ガジェットのデモを眺める。いいなぁ・・・これも何かのご縁、「ガジェット・完全版」を買うことにした。

「ガジェット・完全版」は、初版の「ガジェット」を一から作り直したものだという。洒落たパッケージには、プロデュース:粟田正憲(シナジー幾何学代表)制作:庄野晴彦(映像作家)と小さく書かれていた。

メディアはCD-ROMで、WindowsとMacで再生可能なハイブリッドタイプ。なので、プログラムはハードウェアに依存するネイティブコードではなく、Directorベース。当然、インタラクティブ性とリアルタイム性は、スポイルされている。

ユーザーに許されたオペレーションは3つ、1.周囲を見渡す。2.アイテムをとる。3.話しかける。

ユーザーのアクションにあわせ、ストーリーが分岐し、演出ムービーが流れる。言ってしまえば、動画の電子紙芝居。ところが、僕は、この手のゲームは好きではなかった。

期待もせず、ガジェットを起動、すぐに、オープニングが始まった・・・

ビルの合間を8ミリ映写機が無音で落下している。感情のない英語のナレーション、日本語の字幕スーパー、それだけ・・・

ところが、それを見た瞬間、僕はガジェットの虜になった。

by R.B

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