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週刊スモールトーク (第74話) 宇宙家族ロビンソン(1)~僕らが愛した昭和40年代~

カテゴリ : 娯楽

2006.11.27

宇宙家族ロビンソン(1)~僕らが愛した昭和40年代~

■昭和40年代

昭和40年代、日本はとても貧しかった。田舎の道はほとんど砂道で、雨が降れば水びたしになった。車が走ることなど想定されていなかったのだ。目に入るのは、山、田畑、カラス。たまに、キツネやタヌキが道ばたを駆け抜けた。おやつといえば、柿、栗、サツマイモ。年中、腹ペコだった。冷やっこが一番のご馳走で、そのときはご飯はいつも5杯、決まってお腹が痛くなった。学校の校舎は木造で、廊下を走ると、ミシミシ音がした。そのため、教室を抜け出すには、忍び足が必要だった。夏休みになれば、セミ採りの網を握りしめ、山でセミやチョウを追いまわした。不思議なくらい採れなかったが、世界のすべてを忘れるほど夢中になった。たまに、家族で海水浴に出かけたが、前日は興奮して眠れなかった。何もかもが不足していたが、すべてが宝石のように輝いていた。昭和40年代は、そんな時代だった。

毎日が貧乏だったある日、海外SFドラマ「宇宙家族ロビンソン」が始まった。宇宙船、レーザー銃、ロボット、宇宙人、どれも見たこともないものばかり。画面はモノクロで、どんな色か検討もつかなかったが、彩色された現実よりも現実感があった。自分が住むこの世界に、セミ採りや海水浴より面白いことがあることを知った。夜空の星々は、手の届かないかなたにある星図ではなく、身近な、実体をもったものへと変わっていった。宇宙船さえあれば、広大な宇宙を旅し、星の上に降り立つことができるのだ。

こうして、「宇宙」は貧しい田舎少年の夢の象徴となった。さっそく、父にねだり、小さな天体望遠鏡を買ってもらった。安物の屈折望遠鏡で、筒がきちんと固定できず、徐々に傾いていき、やがて星が視界から消えるのだった。それでも、「望遠鏡」と「宇宙家族ロビンソン」は、田んぼと山以外何もない田舎の少年にとって、至高の宝物となった。

■家族愛

宇宙家族ロビンソンはそれまでのSFドラマとは一線を画していた。計器で埋めつくされた操作パネル、透明チューブに巨大電気コイル、奇怪なマッドサイエンティストなど、SFお決まりのギミックはさておかれ、「人間愛」がテーマだった。今から思えば、宇宙家族ロビンソンは、舞台を宇宙に置き換えた「名犬ラッシー」や「大草原の小さな家」だったのかもしれない。ほぼ同時期に放映された「宇宙大作戦(元祖スタートレック)」も、ある意味ヒューマンドラマだったが、同じ人間愛でも、カーク船長、副長スポック、ドクターマッコイのひねくれた大人の人間愛?

いずれにせよ、宇宙家族ロビンソンとスタートレックは、SFといえども、
成功の秘訣は人間の泣き笑い
を証明した。もちろん、このルールは現代も生きている。世界でヒットするのは、決まってハリウッド映画。あくびがでるほど芸術的なフランス映画や、情緒モードと挑発モードしかない日本映画と違って、ハリウッド映画は「人間の泣き笑い」を突いている。

宇宙家族ロビンソンには、親の子に対する慈しみ、子が親に抱く敬愛、兄弟愛、隣人愛、そして異性愛、つまり、「人間のすべて」がそこにある。信頼しあえる家族や友人や恋人と語らい、互いの価値観を理解し合えたとき、人間は大きな喜びをえる・・・I’m not alone.

■ロビンソン夫婦

宇宙家族ロビンソンに登場するのは、ロビンソン一家、パイロットのダン・ウェスト少佐、環境観測ロボットフライデー、そして某国破壊工作員ドクタースミス。中でも、子供心に憧れたのがロビンソン夫妻だった。ロビンソン一家の柱、ジョン・ロビンソンは、大学教授。しかも、ハンサムで背が高く、筋骨隆々、その上、思いやりがあり、優しかった。妻、モーリンロビンソンは、美人で聡明、愛情に満ち溢れ、良妻賢母の鏡だった。そして、この二人は、いつも小綺麗なコスチュームに身を包み、スマートで、どんな逆境にあっても、互いに信じ合い、愛し合い、それを言葉と行動で示すのだった。

アメリカ人の夫婦はなんて仲がいいのだろう。それが不思議でならなかった。田舎のどこを捜しても、あんなスマートな夫婦などいなかった。後に、アメリカ人の方が離婚率が高いと聞かされても、タチの悪い誹謗中傷だと信じて疑わなかった。田舎の少年にとって、アメリカは豊かさと優しさの象徴で、人生の目標でもあった。すべて宇宙家族ロビンソンに刷り込まれたのだが。

■ドクタースミス

舌先三寸ペテンの天才ドクター・ザックレー・スミス。身勝手で、計算高く、卑劣で、平気で嘘をつく。くわえて、臆病で、生来の怠け者。宇宙で苦境にあえぐロビンソン一家を、破滅の縁まで追いやることが主な仕事だった。名前にドクターがつくので医者なのだろうが、まともな医療行為は見たことがない。設定では42歳だが、どうみても50代。某国スパイとして、出発直前のジュピター2号に乗り込み、破壊を目論むが、脱出に失敗。ロビンソン一家とともに、宇宙をさまようことになった。

シリーズ前半では、融通の利かないロボットフライデーをあやつり、悪業を重ねる不気味な悪党だったが、後に、身勝手と臆病がウリの怠け者に変身。悪事に余念がないが、憎めないじいさんというキャラに変わった。たいていは、フライデーとウィルと行動をともにし、いつの間にか宇宙家族ロビンソンの主役になっていた。

■ダン・ウェスト少佐

ダン・ウェスト少佐は、ロビンソン一家の長女ジュディに想いを寄せるタフガイで、ジュピター2号の主任パイロットである。筋金入りの軍人で、なまくらで、身勝手で、嘘つきのドクタースミスが大嫌いだった。責任感が強く、正義感もあるが、どこか、ヤンキーなところがあって、ドクタースミスを何かにつけて、いじめるのだった。ところが、宇宙家族ロビンソン全83話の中で一度だけ、ダン少佐とドクターに友情が芽生えたことがある。サードシーズン第64話「宇宙の原始人(The Space Primevals)」である。残念なことに、このエピソードは日本未放映で、この事実を知る人は少ない(当たり前?)。

あるとき、ダン少佐とドクタースミスは、爆発処理を誤り、洞窟の中に閉じこめられてしまう。そのとき、岩間から落下しそうになったダン少佐を、なんとドクタースミスが助けるのである。洞窟の酸素が減っていき、2人の命は風前のともしび。その時、2人に友情が芽生える・・・

ダン少佐:
「酸素が減っている」

ドクタースミス:
「とっくに、気づいてますよ」

ダン少佐:
「ドクタースミス」

ドクタースミス:
「え?]
「ドクターを付けて私の名を?」

ダン少佐:
「うん」
「命の恩人だし・・・」
「色々と考えさせられてね」

ドクタースミス:
「私も思いにふけっていました」
「ダン」

ダン少佐:
「あと何時間かな、ドクタースミス?」

ドクタースミス:
「ザックレーと呼んで・・・」

ダン少佐:
「僕たちは、理解を深めて、友達になろうとしなかった」
「君は怠け者で、自分勝手で卑劣で、臆病で嘘つきだったからな」

ドクタースミス:
「ずいぶんだ」

ダン少佐:
「誤解しないで。悪口じゃない」
「それは過去の事だ。今はもう違う」
「助かるかどうか分からないが」
「ここで築いた僕たちの友情は、不変だよ」

ドクタースミス:
「ありがとう」
「これまで言えなかったことを、私も告白します」
「あなたは、短気で、いつも威張り散らしていた」
「ユーモアのセンスは幼稚で、私を中傷してばかり」
「でも今は友達の友情がわいてきました」
「よければ・・・」
「友人として握手を」

2人が、宇宙家族ロビンソンシリーズ最初で最後の固い握手をかわす。ところが、それも束の間、事件が解決して、宇宙船に戻るころには・・・

ダン少佐:
「さあ、行こう、ドクター」

ドクタースミス:
「クタクタで歩けない」
「探検車をここまで迎えに・・・」

ダン少佐:
「歩いて行くんだ、ザック!」

むろん、「ザック」はドクタースミスの蔑称で、2人の関係はふたたびに元にもどるのだった。宇宙家族ロビンソンでは、この二人のかけあいが、ブラックスパイスだった。

■ロボットフライデー

正式名称は「惑星移住計画惑星アルファセントリーⅣ探検用環境観測ロボットB9モデル・マーク3」(とても覚えられない)。チタニウム合金製で、25トンの物体を持ち上げることができ、10万ボルトの電撃も可能だった。危険が迫ると「危険!危険!きわめて危険!」と警告する危険感応回路まで備えていた(何をもって危険なのかは不明)。ところが、その仰々しい名前と、ものものしい装備のわりには役立たずで、ウィルとドクタースミスの話し相手が主な役まわりだった。アメリカでの放映では最初から最後まで「ロボット」と呼ばれたが、日本では、TBSが一般公募した「フライデー」が正式な呼称となった。

ロボット・フライデーは、宇宙家族ロビンソンが始まった頃、ドクタースミスの手先となって、ロビンソン一家を窮地に追い込む一方、無機質で、無感情で、融通がきかない機械という設定だった。遠くに「ガオーッ」という怪獣の音がして・・・

ウィル:
「あれは何だ?分析しろ!」

フライデー:
「音響です」

その後、ドクタースミスの悪事、ウィルの純真さとロビンソン一家の家族愛に触れることで、感情ロボットとして成長をとげていく。宇宙家族ロビンソンシリーズ中盤では、すねたり、ふてくされたり、高度な?感情をもつにまでになる。宇宙家族ロビンソンの登場人物の中では、ドクタースミスに次ぐ、人気者だった。

このフライデーとドクタースミスの掛け合い漫才が、宇宙家族ロビンソンのウリの一つになったが、予定では、この2人は登場人物には含まれていなかった。番組プロデューサのアーウィン・アレンが、CBSテレビの重役たちにPRするために制作したパイロット版「No Place To Hide」を観ると、フライデーもドクタースミスも登場しない。このパイロット版は本編からみればかなり淡白で、2者の役割がいかに重要だったかがわかる。宇宙家族ロビンソンを成功に導いた立役者は、フライデーとドクタースミスだった、と言っても過言ではない。

■ロビンソン一家の子供たち

ロビンソン一家の子供たちは、長女のジュディ、次女のペニー、長男のウィリアム(ウィル)。ペニーとウィルは歳が近いため、よくいっしょに遊んでいた。ウィルは聡明な科学少年、ペニーは音楽と動物と読書な好きな女の子、という設定だったが、ペニーの方がウィルより知能が高い、というウワサもあった。たとえば、第28話「宇宙の変身」の中で、次のような会話がある。

ペニー:
「ねえ、ウィル。このあいだ、負かされたチェスの仕返ししたくない?」

ウィル:
「ぼくがペニーに負けた?」

ペニー:
「忘れたの?」

ウィル:
「でもそんなバカな」

ペニー:
「なにがバカよ。また今日も負かしてやるから」

ウワサは本当だったようだ。また、ウィルは、アメリカの古き良き時代の男の子として描かれていた。つまり、男は男らしく、いざとなれば、か弱き女性を身をもって守る。そのため、姉のペニーを女だと思って、意識的に、見下そうとするのだった。一方、ペニーの方もそれがちゃんと分かっていて、核心を突く反撃を忘れなかった。

ペニー:
「なによ、偉そうに」
「ほっぺたに、カミソリの傷跡なんかつけちゃって」
「ヒゲもはえてないのに、大人ぶって」

しかし、そこは歳の近い子ども同士、すぐに仲直りするのだった。これが、ウィルとペニーの基本的な関係である。

一方、長女のジュディは、子供たちの中では、一番影が薄かった。そのためか、ジュディが主役になったのは、第41話「謎の竪琴」の1回きり。ダン・ウェスト少佐に、ほのかな思いを寄せる、控え目で優しいお姉さん、という役どころ。ところが、ジュディには驚くべき秘密があった。

アメリカで宇宙家族ロビンソンの放映は3年に及び、その間、育ち盛りのペニーはどんどん大きくなり、少女のあどけなさは消えていった。また、母モーリン・ロビンソンも肥満と老いが進み、サードシーンに入ると、メークの苦労が目立つようになった。ところが・・・ジュディこと、マーター・クリスティンは、シリーズ最後まで、全く老けることなく、美人で優しいお姉さんのままだった。

■アメリカ西部開拓史

宇宙家族ロビンソンの原題は「Lostinspace(宇宙の迷子)」。ストーリーは、1997年10月16日、アメリカのアルファ基地から始まる。深刻化する地球の人口増加問題を解決すべく、宇宙移民第1号、ロビンソン一家が地球を出発しようとしていた。人間が生存できる唯一の惑星アルファセントリー星へ向けて。もし、ロビンソン一家が成功したら、最終的に1000万所帯を宇宙に移民させる計画だった。

ロビンソン一家は、アルファセントリー星までの5年半、ジュピター2号の冷凍チューブで仮死状態にされる予定だった。食料と酸素を節約するためである。ところが、想定外のドクタースミスの乗船が、すべてを狂わせた。重量オーバーで、ジュピター2号のコースが狂い、原題どおり、宇宙の迷子になったのである。宇宙船の修理、物資を補給するため、未知の惑星に降り立ち、危険を乗り越え、生き抜いていくロビンソン一家。宇宙家族ロビンソンは、舞台を宇宙に見立てたアメリカ西部開拓史ともいえる。それが、ファーストシーズン第3話「宇宙の孤島」にはっきり出ている。

ロビンソン一家は、やっとの思いで、ある惑星に着陸。そこで、新たな生活基盤を築こうとしていた。このエピソードの最後に、隊長のロビンソン博士が、寝室で、日誌をつけるシーンがある。なぜか道具は、紙とボールペン・・・

未知なる惑星での、最初の夜を迎えている。
先はわからないが、現状は良好だ。
空気と食べ物はあるし、宇宙船で寒さも防げる。
今、私たちは、アメリカ大陸の開拓者の心境を味わっている。
それは神への感謝の気持ちだ。

宇宙家族ロビンソンのストーリーの芯には、西部開拓時代のフロンティアスピリッツとキリスト教の教えがある。今のアメリカのドラマではすっかり失せてしまったが。

■無情の愛

宇宙家族ロビンソンの主役は、たいていは、ドクタースミス、ウィル、そしてフライデーだった。まず、降って湧いたように、事件が起こり、それをドクタースミスが地球帰還への願望にからませ、話をややこしくする。自分だけ地球に還りたい一心で、仲間を売る。手に入れたところで、使い道のない金品に目がくらみ、ロビンソン一家を裏切る。飲み水がなくて、明日の命も知れぬ中、貴重な水をシャワーで使いきる。どうして、こんなのがいるんだ、見捨てればいいのに、と子供心に思った。

人のいいウィルは、ドクターに簡単にダマされるし、フライデーはそれを防ぐのに無力だし、ダン少佐はドクターをののしるだけ。ところが、最後は決まって、ロビンソン一家はドクターを許すのだった。たとえ、ドクターが、自分が地球に帰還する見返りとして、ロビンソン一家全員の命を差し出した後であっても。これは無上の愛であり、キリスト教の教えそのものである。

宇宙家族ロビンソンには明確なフォーマットがあり、17世紀ヨーロッパの演劇「コンメディア・デ・ラルテ」によく似ている。コメディアデラルテは、「職業俳優による喜劇」という意味で、大きく2つ特徴があった。ストーリーの組み方が同じであること、そして、登場人物が類型化され、固定されていることである。極論すると、どれもこれも似たような話で、登場人物も同じ。これは、日本の長寿番組「水戸黄門」、吉本新喜劇にもあてはまる。もちろん、宇宙家族ロビンソンにも。

■宇宙家族ロビンソンの運命の真実

宇宙家族ロビンソンの主役ドクタースミスは、ジュピター2号の招かれざる客であり、ロビンソン一家の鼻つまみ者、嫌われ者、そして疫病神だった。ところが、ここに知られざる事実がある。ドクタースミスはロビンソン一家の命の恩人だったのだ・・・

この事実は、宇宙家族ロビンソンサードシーズン第77話「時間商人(Time Merchant)」の中で明らかにされる。ウィルは宇宙粒子を捕まえる実験をしていて、誤って宇宙人を捕えてしまう。この宇宙人は、時間を管理する時間商人クロノスだった。怒ったクロノスは、ウィルを自分の時間工場に連れ去る。そこで、ロビンソン博士はウィルの救助に向かうが、そのどさくさに、ドクタースミスはクロノスのタイムマシンで過去の地球にもどってしまう。ジュピター2号がまさに地球を出発せんとする時空に。もちろん、ドクタースミスはジュピター2号には乗らず、愛しの地球で暮らそうとする。つまり、自分だけ助かろうというのだ。

一方、ロビンソン博士にとっても、その方が都合が良かった。ドクタースミスさえ、ジュピター2号に乗らなければ、重量オーバーでコースをはずれることもなく、無事アルファセントリーまで行ける。ところが、一人気をもむウィルは、心配そうにロビンソン博士に尋ねる。

ウィル:
「このままだと、どうなるの?」

ロビンソン博士:
「ドクタースミスがジュピター2号に乗船しなければ、問題ない」
「予定どおり、アルファ・セントリー星に行くよ」

クロノス:
「いや、未知の小惑星に衝突する。つまり、皆の命もそこで終わる」

ロビンソン博士:
「彼が乗らなかったら、だな」

クロノス:
「乗らないでしょう。彼が望み通りしか動かないのは明らかだ」

ロビンソン博士:
「乗船するよう伝言を送れないか?」

クロノス:
「実現不可能な夢です。送っても聞かないでしょう」

つまり、ドクタースミスが乗らなければ、ジュピター2号は、出発早々、小惑星に衝突し、全員が死亡するのである。こうして、フライデーは、ドクタースミスをジュピター2号に乗船させるため、タイムマシンで、ドクタースミスのもとに行く。そこには、地球に帰還し、長年の夢がかなって、ご機嫌のドクターがいた。フライデーは、さっそく、ドクターにジュピター2号に乗船するよう説得する。もちろん、他人のことなど知っちゃいねえ、のドクターは聞く耳を持たない。

フライデー:
「良心ニ訴エタイノデス。アレバノ話デスガ

ドクタースミス:
「皮肉はやめろ。これでいいんだ」
「私の体重が加わって、コースを外れたわけだろ」
「これで、無事、アルファセントリー星に着くさ」

フライデー:
「イイエ。4ヶ月以内ニ、宇宙船ハ消滅シマス」

ドクタースミス:
「バカな。デタラメだ」

フライデー:
「本当デス。未知の小惑星トノ衝突ヲクロノス博士ガ予測シマシタ」

ドクタースミス:
「でも助けられない」
「ここに残って、人生をやり直すのが私の務めだ」
「お前も一緒に残ってくれ」

フライデー:
抑エガタイ感情ガアリ、私ハ皆ト運命ヲ共ニシマス」

ドクタースミス:
「待って。行かないでくれ。私と一緒に人生をやり直そう」

フライデー:
代償ガ高スギマス

ドクタースミス:
「分かってる」
「私も立派でありたいが、弱くてもろい人間だから、ダメなんだ」
「こんな自分を変えたいが、どうにもならない」
「許してくれ」

フライデー:
許シマス

フライデーは、ジュピター2号に乗船するべく、その場を去る。部屋に備えられたモニタには、ジュピター2号の中の様子が映し出されていた。ペニー、ジュディ、ウィルが入った透明チューブは、不気味な光線とともに、冷凍状態に。それを見たドクターは苦渋の表情に変わり、大声で叫ぶ。

ドクタースミス:
「ペニー、ジュディ、愛しのウィル・・・」
「ダメだ!放っておけない」
「待ってくれ!私も行く!」

こうして、ドクタースミスはジュピター2号に乗りこみ、宇宙の歴史は元にもどり、ロビンソン一家の旅もつづく。それにしても良くできた脚本だ。ムダな台詞は一つもない。この短いシーンには、宇宙家族ロビンソンの運命、メンバーの心の絆が凝縮されている。宇宙家族ロビンソンでもっとも好きなシーンの一つだ。ところが、この77話が入ったサードシーズンは日本では放映されていない。

■宇宙家族ロビンソンLDBOX

宇宙家族ロビンソンは、40年前に放映されたドラマだが、今でも観ることができる。DVDコレクターズボックスなら、ファーストシーズンセカンドシーズン、日本未放映のサードシーズンを含め、全作品を観ることができる。一方、同じアーウィンアレンのSFドラマ「タイムトンネル」は、未だにDVDが発売されていない(2006年現在)。LD版は出たが、すでに廃盤になっている。

ところで、「宇宙家族ロビンソン」はDVD版ではなく、LD版(レーザーディスク)がお薦めだ。昔、パイオニアLDC株式会社からでた「宇宙家族ロビンソンBOX」である。Vol1からVol6まであるが、全部そろえると、20万円をゆうに超える。もちろん、日本未放映のサードシーズンを含め、最終回まですべて収録されている。

ところが、LDプレイヤーが店頭から消え、LD版も絶版、オークションで入手するしかない。そんな状況で、なぜLD版にこだわるのか?ズバリ、LD版ならではの大判のカーラー解説書。これは本当に素晴らしい。

大手広告代理店の友人に見せると・・・

「これ、すごいですよ。思いっきり、金かけてますね。データも細かいし、デザインレイアウトもいい。豪華カラーグラビアで出版したら、5000円は軽くとれるでしょう。もう売ってないんだし、これ絶対、プレミアもんですよ」

この宇宙家族ロビンソン「カラー解説書」の最大のウリは、大判であること。縦横295mmもある。全エピソードのストーリーのあらすじが掲載され、カラーのグラビアもふんだん。ドラマのカットはもちろん、当時、発売された宇宙家族ロビンソングッズ、プラモデルまで紹介されている。また、少年マガジンなど雑誌を飾った懐かしい2色刷りの誌面も載っている。そして、マニア心をくすぐる技術情報。ドラマに登場するジュピター2号、宇宙探検車、電磁バリア、レーザー銃、さらに、サードシーズンから登場する小型宇宙艇スペースポッドの三面図まで載っている。これを見ていると、ジュピター2号や電磁バリアが、シリーズとともにバージョンアップしているのが分かる。マニア必見。

また、解説本の重箱をつついていると、思わぬ発見もある。宇宙家族ロビンソンのテーマ曲はジョンウィリアムズだが、あの「スター・ウォーズ」、「ジョーズ」のJウィリアムズである。ということで、LDより解説本のほうが宝。映像コンテンツは劣化しないが、紙媒体の寿命はわずか700年。どっちが大切かは明らか。

そして、肝心の映像だが、LDプレイヤーが消えるのが怖いなら、バックアップ機をまとめ買いしておけばいい。それに大きな声では言えないが、LDにはコピーガードがかかっていない。個人使用に限るが、パソコンのハードディスクにコピーし、編集すれば、「宇宙家族ロビンソン・プライベート・データベース」のできあがりだ。しかも、ハードディスクなので、クリック一発、ランダム再生も可能。DVDはコピーガードされた上、ディスクの入れ替えが必要で、こんな芸当、逆立ちしてもできない。

さらに、検索機能をつければ、「宇宙家族ロビンソン映像アーカイブ」のできあがり。これは宇宙家族ロビンソンの全時空につながる「魔法の扉」・・・そして、その向こうにあるのは、僕らが愛した昭和40年代・・・

《つづく》

参考資料:
「宇宙家族ロビンソンBOX」パイオニアLDC株式会社

by R.B

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