BeneDict 地球歴史館

BeneDict 地球歴史館
menu

週刊スモールトーク (第459話) 国際金融資本(2)~日露戦争とユダヤ資本~

カテゴリ : 歴史経済

2020.10.16

国際金融資本(2)~日露戦争とユダヤ資本~

■資本原理主義者が支配する世界

人間は陰謀論を好む。

「世界を動かしているのは国際金融資本」もその一つ。

もう一歩踏み込んで、「国際金融資本=ユダヤ資本」とする向きもあるが、これはあやしい。ロックフェラー家は国際金融資本と目されるが、ユダヤ人という話は聞いたことがないので。

一方、国際金融資本が世界の政治・外交・戦争に影響を及ぼすことは確かだ。

問題はその影響力がどの程度か?

そこで、その「程度」を歴史視点で検証してみよう。

まず、国際金融資本とは?

神様よりお金持ちな大財閥の複合体。

大財閥?

複数の業種、複数の企業を、特定の一族が支配すること。日本なら三井、三菱、住友が有名だ。三大財閥と目される大財閥で、明治時代以降、急速に台頭したが、戦後、米国GHQにより解体された。

世界に目を向けると、時代はさらにさかのぼる。

15世紀、ヨーロッパではフィレンツェのメディチ家、アウクスブルクのフッガー家が台頭した。ともに、時代を代表する財閥だが、地域限定で「国際金融資本」には程遠かった。

ところが、近代以降、世界に影響をおよぼす大財閥が登場する。それが現在の国際金融資本へと続く。中でも、有力なのが、ロスチャイルド家とロックフェラー家。いずれも、超がつくほどの大金持ちで、莫大な財産は世襲される。

彼らの利害は必ずしも一致しないが、最大公約数が存在する。国家を超越したグローバリズム(グローバル化)だ。資本主義の原理のもと、世界を一体化し、巨大な市場を創造し、地球規模で富を吸い上げる。つまり、国境がないもう一つの世界地図が存在するのだ。

この世界では、すべてのモノ・コトはマネーに換算される。マネーが唯一無二の世界基準だからあたりまえ。交換手段にすぎないマネーが過大評価されるのは、そのためだ。事実、政治も外交も戦争も日々の暮らしも、カネ次第。

というわけで「地獄の沙汰もカネ次第」は本当かもしれない。賽銭箱にカネを投げ込む人が後を絶たないから。一般庶民までが資本原理主義に加担している?

ところで、そのマネーを牛耳るのは誰か?

資本原理主義の総元締め「国際金融資本」。彼らが世界のパワーバランスを左右するのは自然の摂理だろう。

ただし、誤解もある。陰謀論が主張するように、国際金融資本は「一強」ではない。たとえば、ナチスドイツのヒトラーも、ソ連共産党のスターリンも、中国共産党の習近平も、ロシアのプーチンも、日本の安倍元首相も、国際金融資本家の言いなりにはなってはない。彼らに共通するのは「自国ファースト」、つまり「愛国者」なのだ。

現在、世界には2種類の闘争が存在する。国家間の戦いと「グローバリスト(国際金融資本)Vs.ナショナリスト(愛国者)」の戦いだ。

■日本を救った国際金融資本

ところで、一つ不思議なことがある。

「国際金融資本」というコトバが、日本でほとんど聞かれないこと。世界を動かし、歴史をつくる巨大勢力なのに、なぜか?

モリ・カケ・サクラや検事の賭けマージャンで、大騒ぎする国だから、しかたがない?

そうかもしれない。

ただし、弁解の余地はある。日本はユーラシア大陸の東の果て「極東」に位置する。辺ぴな田舎国なので、国際金融資本は関係ない。歴史や国際情勢にうとくてあたりまえ?

ノー、現実は真逆。国際金融資本は日本に深くかかわっているのだ。歴史を変えるほどに。

たとえば、日露戦争

1904年、日本とロシアが、満州と日本海で戦った。直接の原因はロシアの南下政策。ロシアが、不凍港をもとめて、満州と朝鮮半島を支配しようとしたのだ。もし、満州と朝鮮半島がロシアの支配下に入れば、日本は日本海をはさんで、大国ロシアとにらめっこ。日本の安全保障は大きく脅かされる。一方、不凍港を持たないロシアにとって、南下政策は国家安全保障のキモ。

というわけで、日本もロシアも国の安全保障がかかっている。だから、死んでも?妥協できない。戦争しか道はなかったわけだ。このような原因と結果は、歴史上枚挙にいとまがない。つまり「戦争は外交の延長」なのである。

ところが、日本は人口、GDP、工業生産力、すべてにおいて、ロシアに劣っていた。しかも、日本は明治維新を終えて36年しかたっていない。国はまだ貧しく、相手は大国ロシアなので戦費もハンパない。事実、日露戦争の戦費は19億円で、当時の日本の国家予算の5倍!

そんな金、どこにある?

お国にないなら、海外で調達するしかない。そこで、日本全権の高橋是清は、ロンドンで1000万ポンドの外債を発行しようとした。ところが、どの銀行も引き受けてくれない。それはそうだろう。「極東の島国」日本が、大国ロシアに勝てるはずがないではないか。しかも、負けたら最後、日本の債権は紙クズ。そんなアホな投資する銀行、どこにある?

ところが、高橋是清はしぶとかった。わずかな人脈を頼りに、駆けずりまわり、ついにキーマンにたどり着く。世界有数の国際銀行クーン・ローブ商会のトップ、ジェイコブ・シフである。

シフは、ユダヤ人を迫害する帝政ロシアに敵愾心を燃やしていた。シフ自身がユダヤ人だったのである。シフは天敵ロシアと戦う日本を助けるため、高橋是清の申し出を受け入れた。それを機に状況は一転する。シフの紹介で、ニューヨークの銀行団が残り500万ポンドを引き受けてくれたのだ。こうして、日本は第一回目の資金調達に成功した。

ちなみに、クーン・ローブ商会は1977年、リーマン・ブラザーズに併合される。さらに、そのリーマン・ブラザーズは、2008年9月15日、突然破綻。100年に一度の金融危機といわれたリーマン・ショックである。栄枯盛衰は世の習い、は歴史が証明している。

■日本を破滅させた国際金融資本

話をもどそう。

日本が日露戦争で勝利できたのは、国際金融資本のおかげ。

カネがないのにムリヤリ開戦すれば、初戦で勝利しても、資金が尽きた時点でゲームオーバー。満州も朝鮮半島もロシアのもの。さらに、日本はロシアの植民地になった可能性もある。その場合、現在の日本とは別の世界になっていただろう。つまり、クーン・ローブ商会(国際金融資本)は日本に影響を及ぼしたのではない。日本の歴史を創ったのである。

その強大なパワーから、日露戦争の黒幕は国際金融資本という説もある。話としては面白いが、ちょっとムリ。というのも、日露戦争の原因は本当はとても複雑なのだ。発端は日清戦争までさかのぼるのだから。

というわけで、世界は国際金融資本「一強」ではない。歴史もしかり。歴史には、無数の分岐点があり、それぞれの分岐点には無数の選択肢がある。その中の1つが選択された時、その時点の歴史が確定する。その長大な連鎖(時空連続体)が歴史なのだ。

日露戦争は2つの事実を示唆している。

第一に、日本は今も昔も国際金融資本の強い影響を受けている。第二に、戦争もカネ次第。

じつは、後者は戦国時代にもみてとれる。織田信長があれだけ成功したのは、信長の資質によるが、金持ちだったことが大きい。あの強大な資金力がなければ、カネで兵を雇う「募兵制」は成立しなかっただろう。

他の戦国大名は農民をかりだす「徴兵制」だったから、兵数は領内の農民の数に限られた。さらに「兵=農民」なので、農繁期には戦さができない。ところが、織田軍は専門兵なので、カネでいくらでも雇えるし、年中戦える。だから、信長は戦術で失敗しても、戦略で勝利したのだ。結果、日本の半分を征服し、天下布武にリーチ。ところが、明智光秀の謀反で歴史は一変してしまった。

つまりこういうこと。

戦争はカネ次第。それは歴史が証明している。

一方、国際金融資本は、いつも日本の味方だったわけではない。日本を破滅に追い込んだこともあるのだ。1941年に勃発した太平洋戦争である。

あの戦争で、日本は大敗し、原子爆弾まで落とされた。主要都市は廃墟と化し、国民は食うや食わず。ドイツ同様、国は崩壊した。その遠因が国際金融資本にあることは、あまり知られていない。

《つづく》

by R.B

関連情報