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週刊スモールトーク (第413話) 米中新冷戦(1)~アメリカの一人勝ち~

カテゴリ : 戦争歴史経済

2019.02.02

米中新冷戦(1)~アメリカの一人勝ち~

■米国の未来

米国(アメリカ)の一人勝ち・・・それが来るべき世界だ。

まずは軍事力。

米国の軍事費は世界一。2017年は「6100億ドル」で、2位の中国に3倍の差をつけている。

さらに、米軍は通常兵器から核兵器までスキがない。局地戦から全面核戦争まで戦えるわけだ。とはいえ、核兵器は全面核戦争に直結するから、おいそれとは使えない。一方、通常兵器はコスパが悪いが、ふつうに使える。その「使える」通常兵器で米軍は世界最強だ。とくに、陸軍と空軍の無類の強さは、1991年の湾岸戦争と2003年のイラク戦争で証明された。イラク陸軍が誇る機甲師団が、米軍の攻撃ヘリ「AH-64アパッチ」に壊滅させられたのだ(アパッチは陸軍所属)。

つぎに経済力。

米国の名目GDPは「19兆4850億ドル(2017年)」。なんだかよくわからない金額だが、「世界のGDPの1/4」といればピンとくるだろう。もちろん、ダントツの世界一。18世紀、大英帝国は産業革命で、世界の工業生産の半分を占めたが、それに匹敵する独占だ。

もちろん、こんなあからさまな成功には理由がある。一般に経済力を決定する要因は、

1.人口

2.資金

3.イノベーション

の3つ。

「人口」が多いほど、生産と消費が増え、GDPも増える。一方、お金が不足すると、生産と消費がとどこおるので、「資金量」は重要だ。さらに、人口と資金が十分でも、未来が安泰というわけではない。未来は「新しい価値」によってしか生まれないから。つまり「イノベーション(技術革新)」が欠かせない。

この3つの経済要因で世界を俯瞰すると・・・

現在、先進国で人口が増えているのは米国だけ。

長期にわたり、移民を受けいれてきたから。そもそも、アメリカ合衆国の始祖「ピルグリム・ファーザーズ」はイギリスからの移民なのだ。アメリカ大陸の先住民族は北米はインディアン、南米はインディオとよばれるが、ともにヨーロッパ系白人ではない。

そして、世界中のマネーが集まるのも米国。

経済規模が大きく、投資先として魅力があるからだが、ドルが基軸通貨(事実上の世界通貨)であることも大きい。実際、貿易の半分がドルで決済されている。そのため、ドルの需要は大きく、「各国の通貨→ドル」の換金圧力が高く、結果として、資金が米国に集中する。

さらに、イノベーションは米国の独壇場だ。

17世紀、フランスのデカルトは「機械論」を主唱した。「世界の仕組み」を機械の歯車、つまり、原因と結果の連鎖で説明しようとしたのだ。そこから西洋合理主義が生まれ、ヨーロッパの科学技術が劇的に進歩した。17世紀フランスの土木建築(ヴォーヴァンの要塞)、18世紀イギリスの機械工業(ワットの蒸気機関)、20世紀ドイツの医学・物理学・化学である。ところが、第二次世界大戦後、ほとんどのイノベーションは米国で生まれている。

つまり、米国経済はダントツ、はあたりまえ。

■米国の地政学

さらに、米国には地政学的アドバンテージもある。

日本やイギリスが、これまで独立を保てたのは、四方が海に囲まれているから。陸軍が陸上を移動するのはカンタンだが、海を渡るのは危険だ。敵の攻撃と自然の脅威にさらされるから。さらに、一旦、上陸しても、海を経て兵站(兵と軍需物資の補充)を維持する必要がある。その難しさは歴史が証明している。

13世紀、中国の元朝が日本に侵攻した。歴史に名高い元寇である。元軍は一時優位に立ったが、台風のせいで、一夜にして、海の藻屑と消えた。もし、朝鮮半島と日本が陸続きだったら、日本は元に征服されていただろう。

それは、船が脆弱だった昔の話では?

陸軍の渡海が危険なのは今も変わらない。

たとえば陸では無敵の「戦車」。海上では哀しいほど無力だ。船上を走り回って、戦車砲一発ぶちかましても、なんにもならないから。ところが、魚雷一発で船もろとも海中にブクブク。

だから、制海権を完全に確保しないと、陸軍の海上輸送は危険なのだ。裏をかえせば、島国は侵略されにくい。

それは第二次世界大戦でも証明されている。

1945年5月2日、首都ベルリンが陥落し、ドイツは降伏した。西方からの米軍、東方からのソ連軍に挟み撃ちされたのである。ドイツは陸続きで、守備するドイツ軍は疲弊し、妨げるものは何もなかったのだ。

一方、日本は違った。

太平洋戦争末期、米軍は日本本土上陸作戦「ダウンフォール作戦」を計画していた。まず、制空権と制海権を確保し、日本本土を封鎖する(オリンピック作戦)。つぎに、日本本土へ侵攻し、重要地域を制圧し、東京を占領する(コロネット作戦)。総兵力は、史上最大の作戦といわれる「ノルマンディー上陸作戦」を上回る。驚くべき事実だが理由がある。

日本はドイツと違い、四方が完全に海なので、上陸前に制海権と制空権を完全に確保する必要がある。上陸前(海上)の陸軍は非力で、上陸時は守る側(日本)が圧倒的に有利だからだ。さらに、日本の地形は複雑なのでゲリラ戦を展開しやすい(後のベトナム戦争のように)。くわえて、米国は民主主義の国だ。若者がたくさん戦死すると、政権を維持できない。だから、犠牲を最小限に食い止めるため、大兵力が必要だったのである。

ところが、現実世界では、日本本土決戦は行われなかった。その前に、日本が無条件降伏したから。原因は定説の「原子爆弾の投下」と「ソ連の参戦」で間違いないだろう。

ただし、「原子爆弾」には謎がある。

■五分後の世界

広島・長崎に投下された原子爆弾は、米国のマンハッタン計画で製造された。ナチスのV2ロケットに匹敵する巨大プロジェクトだが、その詳細を描いた名著がある。リチャード・ローズの「原子爆弾の誕生(※)」だ。上・下巻1400ページからなる大作で、報道界の最高の賞「ピューリッツァー賞」を受賞している。政治と技術の両面からの膨大な記述は、読む者を圧倒する。

その誌面からヒシヒシ伝わってくるのが・・・あんな超ハイテク、「真空管の時代」に作れるわけない。なんて「不自然」な産物なんだろう。

もし、「自然」に考えて、1945年に原子爆弾が完成しなかったら、「日本本土決戦」は歴史年表に刻まれていただろう。

では、その後の日本は?

それを描いた面白い小説がある。村上龍の歴史改変SF「五分後の世界」だ。

 広島、長崎、小倉、新潟、舞鶴に、5個の原子爆弾が投下され、それでも日本が降伏しなかった世界。日本本土決戦が行われ、日本の人口が26万人に激減した世界。この「もう一つの世界」では、日本は巨大地下都市を建設して、現在も「戦争中」。

戦争に負けて良かった?

そうとも言い切れない。

「五分後の世界」はディストピアではない。行き過ぎた軍国主義でも、利己的で軽薄な民主主義でもなく、人間性と合理性を重んじる、真っ直ぐで、力強い世界だ。そんな「もう一つの歴史」をリアルに描いている。小説というよりシミュレーション文学に近い。そんなジャンルあったかな?

話を島国にもどそう。

じつは、米国も海に囲まれている。ふつう、島国といえば、こじんまりだが、アメリカ大陸はその名のとおり大陸。いわば「巨大島」で、地政学的には最強だ。

さらに、米国にもう一つアドバンテージが追加されたた。米国が、ロシア、サウジアラビアを抜いて世界最大の産油国になるというのだ。頁岩(けつがん)から油を取り出す「シェールオイル」が採算ベースに乗ったのだ。

つまり、こういうこと。

軍事と経済で、顕在力も潜在力もトップ、くわえて、世界最大の資源国。さらに、地政学上のアドバンテージまである。まさに無敵の「巨大島国」だ。

ところが、最近、米国を脅かす大国が台頭した。中国である。

《つづく》

※原子爆弾の誕生(上・下) リチャード ローズ (著), Richard Rhodes (原著), 神沼 二真 (翻訳), 渋谷 泰一 (翻訳) 出版社: 紀伊國屋書店

by R.B

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