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週刊スモールトーク (第362話) メタボの原因と対策(1)~血圧と血糖値~

カテゴリ : 社会

2017.06.04

メタボの原因と対策(1)~血圧と血糖値~

■メタボ警報、発令

肌寒い昼下がり、総務から不吉なメールが届いた。

「メタボリック警報が出たので、再診を受けてください」

そういえば、前回の健康診断で血圧と血糖値が高かったような。

このクソ忙しいときに・・・来年の健康診断でいいじゃん、ブツブツ言いながら総務に行くと、美人の女子社員に丸め込まれてしまった。

「強制ではないんですけど、お医者さんが会社まで来てくれるので、待ち時間ナシ、おカネの負担ナシ・・・」

そして、ニッコリ笑って、

「注射もナシです」

とつけくわえた。「注射嫌い」を知っているのだ。

そんな微笑ましい経緯があって、再診を承諾した。

その日は、凍てつくような寒い日だった。

来社したのは40歳ぐらいの女医。目がクリンとカワイイのに、大きなマスクをしている。マスクをとった素顔に興味がわいたが・・・さすがに言い出せない。

「女医、中小企業でセクハラされる!恥知らずな役員が女医にマスクを取るよう迫った模様・・・」

なんて書き立てられた最後、吹けば飛ぶようなチリツモ・キャリアがマジで吹き飛ぶ。チリがチリに帰るわけだ(シャレにならん)。金沢の街はせまい。知床に逃げるしかないではないか・・・

何の話?

メタボ再診の話。

女医は全国健康保険協会から来たという。

全国健康保険協会?

初めて聞いたが、実在する組織である。

企業を訪問して、生活習慣病、とくにメタボ改善を指導しているという。ところが、話の前後がわからない。気にはなったが、経緯を聞いてもなんにもならない。診察は始まっているのだから。

女医は、体重計と血圧計を持参していた。自動車で移動するとはいえ、あんな華奢な身体で、こんな重いもの持ち歩くとは、医者も大変だ、と感心したりする。

彼女は慣れた手つきで、血圧と体重を測定した。結果は前回の健康診断と同じ。

メタボにからむデータは4つある。今回の実データとあわせて開示すると、

1.腹囲:85.2cm(男性:~84.9cm、女性:~89cm)

2.血圧:95/149(~84/~129)

3.空腹時血糖:119(~99)

4.中性脂肪:101(~149)

※()は適正値

まともなのは、中性脂肪だけ。あとは全滅。

女医は、淡々と、しかし、断固たる口調で言い切った。

「今の数値ですと、将来、脳梗塞、心筋梗塞になる確率は、ふつうの人の9.7倍です」

9.7倍!?小数点以下1桁まで・・・コワイ

というわけで、メタボリックシンドロームを宣告されたのである。

メタボリックシンドロームは別名「メタボ」、すでに、国民的キーワードになっている。

メタボには3つの段階がある。

1.メタボリック該当せず(メタボではない)

腹囲が該当しない。腹囲は該当するが、血圧、血糖(空腹時血糖)、脂質(中性脂肪)のいずれも該当しない。

2.メタボリック注意報(メタボ予備群)

腹囲が該当し、血圧、血糖、脂質の1つに当てはまる。

3.メタボリック警報(まんまメタボ)

腹囲が該当し、血圧、血糖、脂質の2つ以上に当てはまる。

※一般財団法人石川県予防医学協会の資料から引用

ちなみに、今回の診断結果では、「腹囲」と「血圧」と「血糖」が該当する。つまり、バリバリの「3.メタボリック警報」!

■モナカ4つ

まず、腹囲と血糖だが、ふつうに考えれば原因は「肥満」。

ところが、女医によると、高血圧も「肥満」が原因だという。

とはいえ、体重は64kgで、肥満度を表すBMIも適正値。だから、ゼンゼン肥満ではない。

一体、どうなっているのだ?

そもそも、1日1食の「ファスティング」を実践しているから、太るわけがない。

女医にそう言うと、こんな質問が返ってきた。

「なるほど・・・では、辛いもの、お好きですか?漬物とか」

「あ、漬物大好きです」

「たくさん食べますか?」

「たくあん5切れぐらい」

女医は、クリンとした目をクリンクリンにして言った。

「2切れにしてください。5切れは多いです。それだけで、一日の塩分摂取量を超えてますよ」

塩分の取りすぎは、高血圧の原因になるのだ。

つぎに、女医は血糖値に注目した。

「空腹時の血糖値119は高いです。125を超えると、糖尿とみなされますよ」

と言いながら、女医は首をかしげた。

「おかしいですね・・・1日1食で、肥満していないのに、どうして血糖値が高いんでしょう。甘いもの、好きですか?」

「え、まー、嫌いではないです」

女医はたたみかける。

「間食してませんか?」

心当たりがあった。

「午後、空腹で我慢できなくなったら、ポカリ飲んでます」

女医は鋭く反応した。

「あれ砂糖水なんですよ。砂糖のスティックが5本分入ってます」

「5本!!!」

これで、女医の「クリンとした目」は「疑惑の目」に変わった。そして、顔をのぞき込むようにたたみかける。

「他に、間食してませんか?」

余罪を疑っているのだ。

ダメだ、医者はだませない、これだけは言いたくなかったが・・・

「朝食の代わりに、モナカ食べてます」

「朝食の代わりに、モナカ!?!」

「いくつです?」

「4つ」

女医の眼球は飛び出さんばかりだった。

「モナカって・・・あんこですよね」

低く重い響きがあった。

「いえ、モチが入ってるのもあります、これが美味しんですよ、ハハハ」

女医はニコリともしなかった。

「そこではなく、モナカ、4つ」

女医の目は完全にロックオンしている。きれいな目だ・・・

「モナカ、やめます」

「その方がいいです」

女医はほっとした様子で言った。

1日1食と言い張って、毎朝、モナカ4つ食べてる、この人アタマおかしい・・・そう思った違いない。

■血糖値が上がる原因

女医は、血糖値が高い原因を2つ指摘した。

ひとつは「モナカ4つ」。

「甘いもの=糖分」なので、これは当たり前。ところが、もう一つの原因は・・・

「ファースティング(1日1食or2食)」

1日1食といいながら、モナカ4つ・・・ではなく、「欠食(食事を抜くこと)」が血糖値を上げるというのだ。

なんとも不思議な話ではないか。

食べる量が減れば、そのぶん、糖分の摂取量も減る。だから、血糖値は下がるのでは?

そう言うと、女医はカバンから分厚い資料を取り出した。その中に、血糖値の変動データがあった。1日1食、1日2食、1日3食の、1日の血糖値の変動グラフである。

まずは、1日3食のグラフ・・・食後に、血糖値は緩やかに上昇し、緩やかに下降する。この変動は、日に3回起こるが(食後)、変動幅が小さい。

ところが、

1日1食と1日2食は、変動幅が大きい。とくに、「1日1食」は凄まじい。食後、血糖値は急上昇し、なかなか下がらない。インシュリンが分泌され、血糖値の上昇を抑えようとするが、下がりきらないのだ。

インシュリンはホルモン物質の1つである。血糖値が急上昇すると分泌され、血液中の糖質を筋肉や肝臓に蓄える。さらに、中性脂肪に変えて蓄える。つまり、血液中の糖質を減らし、血糖値を下げようとするわけだ。ところが、血糖値の上昇が急すぎると、対応が追いつかず、血糖値はなかなか下がらない。

というわけで、欠食は血糖値を上昇させ、肥満にもつながる(中性脂肪が増えるから)。だから、いいことナシ。

でも、

1日1食より、1日3食の方が摂取カロリーが多いのは確か。それでも、血糖値は下がるのだろうか、そんな疑問を投げかけると・・・

女医はよどみなく答えた。

「朝と昼は何を食べますか?」

「軽くすませたいので、パンがいいです」

「それなら、ゼンリュウフンかライ麦がおすすめです」

ゼンリュウフン?

■全粒粉とライ麦パン

パンは小麦から作られる。主成分は表皮、胚芽(はいが)、胚乳(はいにゅう)の3つ。

つまり、

小麦=表皮+胚芽+胚乳

ところが、

白いパン=胚乳

表皮と胚芽が取り除かれている・・・表皮と胚芽は食物繊維を多く含み、血糖値の上昇を抑えるのに。一方、胚乳はほとんど糖質。つまり、白いパンはすべてのベクトルが「血糖値上昇」に向かっている(美味しいけど)。

一方、

全粒粉のパン=表皮+胚芽+胚乳

小麦のすべての成分を含んでいる・・・だから、全粒粉パンは血糖値に優しいわけだ(血糖値の上昇を抑える)。

ではなぜ、食物繊維は血糖値の上昇を抑えるのか?

食物繊維は、糖質の体内への吸収を遅らせるから。結果、血糖値の上昇が穏やかになり、インシュリンの分泌も少なくてすむ。

というわけで、女医は「ゼンリュウフン(全粒粉)」のパンを薦めた。ライ麦パンも食物繊維を多く含むので、OKだという。

じつは、この関係は米にもあてはまる。

米は稲の実から作られる。主成分は、糠(ぬか)、胚芽(はいが)、胚乳(はいにゅう)の3つ。

つまり、

稲の実=糠+胚芽+胚乳

ところが、

白米=胚乳

糠と胚芽が取り除かれている・・・糠と胚芽は食物繊維を多く含み、血糖値の上昇を抑えるのに。一方、胚乳はほとんど糖質。つまり、白米はすべてのベクトルが「血糖値上昇」に向かっている(美味しいけど)。

一方、

玄米=糠+胚芽+胚乳

稲の実のすべての成分を含んでいる・・・だから、玄米は血糖値に優しいわけだ(血糖値の上昇を抑える)。

つまり、パンと米は相似なのである。具体的には、

白いパン=白米=血糖値↑

全粒粉パン=玄米=血糖値↓

女医が言うには、

「カンタンに言うと、見た目が「白色」より「茶色」がいいんです」

なるほど、わかりやすい。

総括すると、

小麦・米=炭水化物=食物繊維+糖質

糖質は血糖値を上昇させ、食物繊維はそれを抑える、明確なメカニズム(自然界の法則)が存在するわけだ。メカニズムが明確なら、因果関係も明確。つまり、身体に悪いことをすれば、現実に身体はおかしくなる。ヘタをするとあの世行きだ。

というわけで、メタボ対策・其の一、血糖値の上昇と肥満を防ぐためには、

1.甘いものは控える

2.1日3食

3.米は玄米、パンは全粒粉・ライ麦

これなら、なんとかなりそうだ。

《つづく》

by R.B

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