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週刊スモールトーク (第345話) トランプがゆく(2)~核の傘と日本~

カテゴリ : 人物社会経済

2017.01.22

トランプがゆく(2)~核の傘と日本~

■アメリカファースト

次のカードは・・・「クラブの4」か「ジョーカー」か?

アメリカ合衆国大統領トランプのことだ。

答えは・・・誰にもわからない。トランプ自身もわからないだろうから。

でも確かなことがある。

2017年1月20日(米国時間)、ワシントンで大統領就任式が行われた。そこで、トランプ新大統領は「米国第一主義(アメリカファースト)」を高らかに宣言した。

つまり、今後、アメリカはパクス・アメリカーナからアメリカファーストに舵を切る。「世界の平和」ではなく「アメリカだけの平和」へと。

パクス・アメリカーナ・・・一聴するといい響きだ。アメリカのパワーによって、世界に平和と秩序がもたらされる。事実、第2次世界大戦で、パクス・アメリカーナは連合国側に幸福をもたらした。

ところが・・・

負けた側の日本とドイツには屈辱と去勢・・・君たちは悪の枢軸なのだから、何も言う資格はない。モノ作りと金儲けに励んでいればいい、というわけだ。たとえば、外交、日本はどんな理不尽なことをされても、黙って我慢している。

結果、日本は・・・

国家のビジョンと戦略が描けない指導者と、ヘドニズム(享楽主義)にも劣る目先の安穏だけを求める「末人」の国になってしまった(すべてはないが)。

だから、パクス・アメリカーナが平和と秩序をもたらすかどうかは、国と民族による。

アメリカファーストに話をもどそう。

主導するのは、言わずと知れた、第45代アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプだ。

トランプは、365日、言いたい放題、やりたい放題(紙飛行機ではなく)。ところが、外交の素人ということで、何をやっても許されている(今のところ)。

しかも・・・

言うことが1分ごとに変わる(矛盾だらけ)。それにあわせて、株も為替も乱高下・・・ハタ目でみていると滑稽(こっけい)だ。どうせ変わるのだから、何もしない方がいいではないか。

事実、今回の大統領選で、投資家は開票日とその翌日に、2度損をしている。まさに往復ビンタ。経緯が面白いので、機会をあらためて紹介しよう。

■トランプ式思考法

というわけで、トランプは世界中から恐れられている。何をしでかすか予測不能、これから世界はどうなるやら・・・

しかし心配無用。

トランプは3つのパーソナリティで支配されている。それさえ呑み込めば、言動は予測できる。ただし、最終的に何がおこるかは予測不能。なぜなら、

未来は、トランプの言動とその時点の世界情勢の相互作用で決まるから。

で、肝心のトランプのパーソナリティだが・・・

1.思考の連鎖が短い(深く考えない)

2.合理主義(常識やルールは無視)

3.功利主義(ただし目先の利益)

たとえば・・・

世界の平和なんかドーデモいい、アメリカさえ良ければオッケー。戦争やりたきゃ、お好きにどーぞ。アメリカは関係ないもんね(モンロー主義)。

でも・・・

これを第二次世界大戦でやっていたら、今のアメリカはない。地球上から星条旗が消えていた可能性もある。

というのも・・・

アメリカは参戦しないので、目先の損失は避けられる。ところが、連合国側の戦力が半減するので、枢軸側が勝利する。結果、今とは全く違った世界になる。ナチスドイツがヨーロッパ全土とロシアを支配し、大日本帝国が中国とアジアを支配するAnother World(もうひとつの世界)だ。

さらに、ナチスドイツと大日本帝国が連携して、アメリカを挟み撃ちする可能性がある(ヒトラーはアメリカが大嫌いだった)。その場合、アメリカに勝ち目はない。というのも、この世界ではナチスの原子爆弾が完成しているから。

くわえて、ナチスドイツにはV2ロケット(長距離弾道ミサイル)もある。もし、核爆弾の小型化に成功すれば、現代のICBM(大陸間弾道ミサイル)にいたる。ナチスドイツが史上初の核ミサイル保有国になるわけだ。一方、アメリカは戦争をしないので、原子爆弾も長距離弾道ミサイルも核ミサイルもナシ。これでは勝ち目はないだろう。

というわけで、国の安全保障は「虫眼鏡」より「望遠鏡」で見たほうがいい。ヘタをすると国が滅ぶから。

ところが、トランプ式思考法は10年先より1分先をみる。もっとも、10年先を心配していたら、明日、巨大隕石が地球に衝突するかも・・・

これは絵空事ではない。

たとえば、1999年に発見された小惑星「ベンヌ」は、2135年に地球に異常接近する。衝突するかどうかビミョー・・・というから恐ろしい話だ。ベンヌは、直径487メートルなので、大気圏で燃え尽きることはない。そのまま地球に衝突すれば、広島型原爆の200個分。都市が壊滅するレベルではない。

というわけで世界は複雑だ。虫眼鏡がいいか望遠鏡がいいかは状況による。

とはいえ、アメリカファーストは行き着くところアメリカの国益。だから「納税者=アメリカ人」にとっては頼もしいかぎりだ。耳ざわりのいい建前ばかりで、何もできない、どこぞの野党よりマシ。

そもそも、政治家・評論家・マスコミが、きれいごとばかり並べるのは、大衆に嫌われたくないから。政治家は選挙に勝ちたい、評論家はTVに出て有名になりたい、金儲けしたい、マスコミは視聴率をあげたい。

もし、大衆に嫌われたらすべてを失う、と考えているのだ。つまり、私利私欲しか頭になく、(損得をこえた)信念も考えもない。これがニーチェのいう「末人」なのだ。

しかし、末人に徹するなら、そろそろ気づくべきだろう。

建前だけでは大衆の支持は得られない、むしろ嫌われるかも・・・

その分かりやすい例が、2017年1月の「トランプ大統領」だ。本音しか言わない下品なトランプが、建前しか言わない上品なヒラリー・クリントンに勝ったのだから。

そもそも、トランプは、大統領選に立候補したときから、本音しか言わなかった。

そのため、毎度のお騒がせ候補、泡沫候補、道化師・・・とさんざんだった。

ところが、フタをあければ「トランプ大統領」。

マジか!?

が世界の反応だった。当事国のアメリカでさえ、仰天したのだからムリもない。

しかし、不自然なことには理由がある。「トランプ大統領」もしかり。

■ポピュリズム(大衆迎合主義)

トランプは、ちまたで言われるように、話題性とポピュリズム(大衆迎合主義)で大統領になったわけではない。

まずは話題性・・・

そもそも、トランプは「話題性」を狙ったわけではない。言いたいこと言っていたら、マスコミがとりあげて、世間が面白がって、話題になっただけ。もちろん、「話題性=有利」とはかぎらない。国民に嫌われる「話題性」なら逆効果だ。つまり、選挙で勝つ要件は話題性ではなく、国民の共感。

つぎにポピュリズム(大衆迎合主義)だが・・・

そもそも、ポピュリズムって何だ?

大衆の不安や恐れをあおって、体制を倒すこと?

もし、そうなら、日本の野党も立派なポピュリズムだ。

貧困にあえぐ若者と中年と老人(ぜんぶ?)のために、消費増税反対!

ーーー消費税をガチで上げないと、今の赤ん坊世代にシワ寄せがいく。赤ん坊が成長したら貧困にあえいでもいいと? その頃は自分たちは死んでるから、あとは野となれ山となれ!?

さらに・・・

国防費をあげるなんてとんでもない、中国と韓国・北朝鮮との問題は平和的に解決しましょう。

ーーーアタマ大丈夫? 歴史を勉強しましょう。近代以降、初めから戦争をふっかけた国はない(あのナチスドイツでさえ)。外交で解決できないから戦争になる。戦争も恫喝も威嚇も嫌がらせも、外交の一手段にすぎない。つまり、戦争は外交の延長にある。そして、重要なのは、戦争は勝ってなんぼ。負けたらどんなことになるか、太平洋戦争で学んでしょう。だから、国防は国家の最優先事項。

こんな本音を口にすれば、国民から嫌われる。嫌われた最後、干されるか失業するか、どっちにしろ食べていけない。だから、大衆ウケを狙っているわけだ。しかも、信じ込ませるために、不安と恐怖をあおって・・・これを「ポピュリズム(大衆迎合主義)」と言わずして何と言う。

ところが、最近、本音を言う政治家・評論家・マスコミが増えている。ちょっとロジックおかしいな、と思うことはあるけれど、「国家百年の計>私利私欲」で考えていることはたしかだ。

本来、政治家やオピニオンリーダーは「総合的国益」で語るべきだ。そのためには、優先順位をハッキリさせなければならない。というのも、国の資源(ヒト・モノ・カネ)は限られているから。つまり、国政の最重要課題は「資源の最適分配」なのだ。

たとえば、老人か赤ん坊か?

タイタニック号が、まさに沈まんとしていたとき、救命ボードに乗るのを拒否した老人がいた。若い世代に「命」を譲ったのである。

老人は幼年、青春、壮年と十分生きてきた。これから人生を切り拓く若者、まだ十分生きていない子供、人生が何かもわからない赤ん坊、こんな「人生これから」の世代に譲るのは「人の道」だろう。もちろん、総合的国益にもかなう。

■アメリカの核の傘

「資源の最適分配」でもっとも重要なのが、国防か生活か・・・

本音なら国防、建前なら生活(状況が把握できていない→後者)。

で、答えは?

総合的国益なら国防。生活がどんなに豊かになっても、他国に占領されたら元も子もないから。

重大な事実がある。

中国は、太平洋のどこかに境界線を引いて、西側は中国、東側はアメリカ合衆国が支配する・・・これを本気で狙っている。これに対抗できるのは、ファンタジーな平和主義でも、コスパの悪い軍国主義でもない、「核の抑止」だけ。

それを示唆したのが、2012年に勃発した尖閣諸島問題だ。

もし、中国が尖閣諸島を占領したら、通常戦では日本が勝利するかもしれない。しかし、中国が「核を使うぞ」と脅した瞬間、すべてご破算になる。何を要求されるかわからない。尖閣諸島と沖縄ですめばいいのだが。

ありえない?

中国に征服されたチベットの現実は?

だから、日本が、国の「主権と安全」を望むなら「核の抑止力」が必要条件になる(十分ではない)。具体的には「核ミサイル+原子力潜水艦」を保有すること。

ちょって待った!

そのために、アメリカの「核の傘」があるのでは?

「核の傘」というのは、アメリカの核が日本を守ってくれること。もし、中国が日本に核を使うなら、アメリカが中国に核ミサイルを使うぞ、というわけだ。

本当にそんなうまい話ある?

冷静に考えてみよう。

アメリカが、日本を守るために、中国に核を使う?

中国から核攻撃される危険をおかしてまで?

ありえない。

そもそもアメリカ国民が許さないだろう。

事実、トランプはうっかりそれを口にしてしまった。「日本の核容認」発言である。日本は自前の核で守ってね、アメリカは関係ないから。

これに対し、日本は唯一の被爆国の面目にかけて反論した。

日本が核をもつなんてトンデモない!

でも・・・これおかしくない?

被爆国であることと核保有国であることと、どんな関係があるのだ?

むしろ、こんな考え方もある。

「日本は原子爆弾を落とされたから、もう二度と落とされないために、核を保有する」

これが「核の抑止」なのだ。

そもそも、日本が核を保有したところで、世界の滅亡を早めるわけではない。すでに、無数の核が存在しているから。

日本は、ヒステリックな被害者意識は捨てて、現実を直視する時期にきている。

人類が核戦争を回避する方法は2つしかない。

1.核兵器を地球上から一掃する(衛星軌道上になければいいのだが)

2.みんなで核を持って核の抑止に賭ける(弱小国でも核の報復があるので手出しできない)

中途半端な核の削減は何の意味もない。一発でも発射されたら終わりだから。

つまりこういうこと。

核は「大量破壊兵器」ではない。人類の行く末を左右する「新しい何か」なのだ。

こんな単純かつ根源的なことが理解できない愚者が牛耳るのが日本・・・「平和ボケ大国」と言われてもしかたがないだろう。

アメリカさん、あんたの核と若者の命で日本を守ってよ。おカネなら出すから。

こんなノー天気なことをしゃあしゃあ言うのだから、トランプもアメリカ国民も怒ってあたりまえ。これは平和ボケではない。確信犯的、究極の自己中だろう。もしくは、真性の認知症!?

このように、自分の血を流さず、カネで国を守る方法を「傭兵制」という。これで、歴史上いくつの大国が滅んだことか。

かつて地中海を支配したカルタゴ、それを征服したローマ帝国、いずれも、傭兵制になって国が滅んでいる。

日本は、いつのまにか、非現実的で独りよがりな国になってしまった。周囲には、爪をとぐ国がいくつもあるのに。このままでは国が滅ぶ。現実を見すえて、問題解決に集中するべきだろう。

じつは、このような現実主義、問題解決主義に徹するのがトランプ大統領なのだ。

本音しかいわず、自国の利益しか考えないトランプ。決して誉められたものではないが、現実を理解せず、たとえ理解できても隠蔽し、自分の生存期間限定の安穏をもくろむ・・・そんなこっすい「日本の大人」より、よっぽどすがすがしい。

■ヒラリーが負けた理由

トランプの本音は、混じりっけなしの純度100%。その源泉は、ビジネスマンの損得勘定にある。

その象徴がアメリカファーストだろう。

それを非難する国もあるが、他国にとやかくいわれる筋合いはない。納税してくれるアメリカ人の利益を優先して何が悪い。アメリカファーストに文句があるなら、アメリカに納税しろ、というわけだ。

事実、トランプ式アメリカファーストは凄まじい・・・

世界の平和がどうしたというのだ?

アメリカが平和なら、他の国が戦争しようが、滅びようが、知っちゃいねぇー。他人の戦争に、なぜ、アメリカの若者が血を流す必要があるのか!

(アメリカの若者にとってあたりまえ)

日本が「アメリカの核の傘」がないと困るって?

バカこけ!核がそれほど重要なら、自分でもてよ!

(ごもっとも)

アメリカとメキシコの国境に壁を作る。もちろん、費用はメキシコ持ちだ!

(万里の長城じゃあるまいし効果はないと思うけど・・・)

工場を海外に移転するなら国境税をかけるからな。

(フォードとトヨタが脅されている)

アメリカ人の雇用が増えれば他はドーデモいい。

(アメリカは完全雇用に近いので意味はないと思うけど・・・)

というわけで、一部、ご愛嬌もあるが、(アメリカの)国益を考えていることは確かだ。

こんな本音の「有言実行」に、眉をひそめて”みせる”人がいる。十分な所得を得ているインテリ層、エリート層だ。その代表がヒラリー・クリントンだろう。

ヒラリーは弁護士、ファーストレディ、閣僚としての赫々たる実績をもつ。くわえて、知性と教養にあふれ、聡明で有能、品もある。間違っても(人前で)本音はいわない。だから、インテリもエリートもメディアも、最終的にはヒラリーが勝つと信じていたのだ。

ところが、アメリカの庶民は違った(中産階級以下の人々)。

「トランプ大統領」が確定する前、TVで面白い番組をやっていた。

2人の子供を育てた白人女性(中産階級)がTVに向かってこう訴える。

「わたしたちが納めた税金を、移民の生活費や教育費にあてるのはナットクできない。アメリカ人が納めた税金はアメリカ人のために使うべきです。なんでよそ者に使うのか」

じつは・・・

移民を受け入れて、生活を保護し、教育すれば、やがてアメリカの労働力になる。だから、最終的にはアメリカの国益になる。ところが、総合的国益より、目先の自分の取り分が大事・・・これがトランプとアメリカ国民の合意なのだ。

というわけで、先の白人女性にしてみれば、トランプの「アメリカファースト」は救いの言葉に聞こえただろう、いや神の声かも?

ヒラリー・クリントンが負けた理由がここにある。

 《つづく》

by R.B

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