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スモールトーク雑記

■所得税か消費税か?  2012.03.31

少し前、TVで討論会をやっていた。テーマは、ズバリ、所得税か消費税か?

現在、日本の財政赤字(国の借金)は天文学的で、いつデフォルト(破産)してもおかしくない。返済はムリなので、せめて、増やすのはやめようと、国は増税をもくろんでいる。問題は方法、つまり、所得税と消費税、どっちを重くするか?

ということで、今、旬なテーマではある。司会者はなぜかアメリカ人(有名な学者?)、コメンテーターに、眞鍋かをり、竹中平蔵、さらに、アメリカ、日本、中国の大学生も参加していた。ただし、ハーバード大学みたいな有名校ばかり。

ところが、肝心の中味は・・・

ぬるくて、ミーハー。一般ウケを狙って、わざと核心をはずしている。視聴者をバカだと思っているのだろう。

たとえば・・・

慶応の女子学生が、私は、たまたま本が好きだったから今がある。だから、今の私は「運」。社会の成功者も運あってのことで、実力で稼いだわけではない。だから、たくさん稼いだら、その分、社会に還元すべき。なので、所得税に賛成!

すると、ハーバードの男子学生が、あなたは努力したから今がある。だから、運ではなくあなたの実力・・・とフォロー。

なんのこっちゃ?

互いに、人生のマシな中継点(学歴)を、自慢し合っているだけ?一部マジだろうが、偽善の臭いがプンプンするし、その程度の善意なら、社会に出たとたん、一刀両断にされるぞ。

なんとも、ぬるくて、底の浅い議論、見ていて、吐きそうになった。酔っぱらっていたせいでは?あ、そうだった・・・

良い大学を出たら、良いスタートがきれるが、社会に出てしまえば、あとは実力だけ、外資系なら、実績のみ。

何が言いたいのか?学生なら、学生らしく、本音で来い!

一般論として、高所得者なら、「消費税>所得税」の方が得。

だから、自分が高学歴で、将来、高所得者になると思ったら、正々堂々、「消費税」をぶちかませばいい。そのほうが、よっぽど、清々しい。

というわけで、なんとも後味の悪い番組だった。だから、酔っぱらっていたせいだって。はいはい・・・

では、ここであらためて、消費税と所得税、どっちが良いか?

じつは、このテーマ自体が不毛なのだ。どっちが良いかって?「誰にとって」を忘れていません?主語がなければ、良いも悪いもないので。

つまり、消費税か所得税のどっちが良いかは、高所得者か低所得者による。そこで、まず、高所得者の定義から始めよう。

これまで、年収が多いほど、給与所得控除額も増えた。ところが、今回の税制改正では、年収が1500万円を超えると、控除額は頭打ちになる。

ということは、高所得の目安は年収が1500万円あたり?そこで、話を簡単にするため、年収1500万円以上を高所得者、それ以外を低所得者とする。(僕は低所得者・・・)

つぎに、所得税と消費税のどっちが良いか?高所得者、低所得者別に考えてみよう。ただし、ここでいう「良し悪し」は、倫理観でも、実額でもなく、相対的な「損得感」。ここをお忘れなく!

まず、「所得税>消費税」の場合。

所得が増えるほど、所得税は急増するので、高所得者にとって「損」。一方、その分、低所得者の税負担は減るので、低所得者にとって「得」。

また、消費税のウェイトが低いので、消費による税額が減る。これは、低所得者にとっては「得」。

なぜか?

所得に関係なく、生活必需品は必要なので、消費税額が少ない方が、低所得者にとっては負担が少ないから。

つぎに、「消費税>所得税」の場合。

所得税のウェイトが低いので、高所得者の税負担が減り、低所得者の税負担が増える(相対的に)。なので、高所得者は「得」、低所得者は「損」。

また、消費税のウェイトが高いので、消費による税額が増える。前述したように、所得に関係なく、生活必需品は必要なので、低所得者の負担は重くなる(高所得者に比べ)。

さらに、高所得者が、贅沢品さえ我慢すれば、高所得者と低所得者の税(消費税)は同じになる。(どんな金持ちでも1日1000食はムリ)

なんじゃそりゃ?所得税の差がちょびっとで、消費税が同じ?ビンボー人をバカにしてんのか!

ということで、高所得者は「得」、低所得者は「損」。

最後に総括すると・・・

高所得者にとって、「消費税>所得税」が良い。低所得者にとって、「所得税>消費税」が良い。

繰り返すが、ここでの「良し悪し」は、倫理観でも、実額でもなく、相対的な「損得感」。

しかし・・・

この論法には落とし穴がある。

単純な倫理観から、弱者に優しい社会こそが正義、格差是正すべし!と意気込んで、「所得税>消費税」を断行したとしよう。

すると、2つの矛盾が生じる。

まず、第一の矛盾。

一般に、高所得者は経営者、サラリーマンなら事業責任者が多い。なので、事業を拡大し、社会的価値を生むほど、雇用を創出するほど、高所得=重税、つまり、社会からペナルティを課せられる。これって、矛盾してません?

もちろん、ペナルティなんて、思っちゃいけませんよ、「たくさん納税→たくさん社会貢献→いっぱい誇りに思ってね!」という(屁)理屈もあるが、納得する金持ちは少ないだろう。立場が逆なら、容易に想像がつくはず。

まぁ、ここまで来たら、共産主義か資本主義か、はっきりすべきだろう。

ちなみに、資本主義は、「能力に応じて働き、成果に応じて取る」

一方、共産主義は、「能力に応じて働き、必要に応じて取る」(共産主義の父マルクス先生によれば)

つまり・・・

大飯喰らいの怠け者なら、共産主義万歳!働かずして、大飯が食えるから・・・

これを良しとするか否か、つまり、資本主義か共産主義か、はっきりさせるべきだ。もっとも、今は共産主義の国はほとんどない。中国?とんでもない。「日本は、中国より、よっぽど社会主義」は今や常識。

つぎに、第二の矛盾。

格差是正の大号令のもと、「所得税>消費税」をゴリ押しすれば、高所得者は面白くない。

昔のように、高所得税率(最高税率93%)が復活すれば、シンガポール、香港など海外脱出組が増えるだろう。それに、日本で起業する人も減る。(最近、知人の社長がシンガポールに移住)

じつは、ここに大きな問題がある。高所得者ではなく、低所得者にとって。

一般に、経営者や起業家は、雇用を生むので、彼らがいなくなれば、雇用が減る。これは、低所得者にとっては大ごとだ。失業すれば、税金が高い安い、なんて言ってられない。つまり、低所得者のプラスを狙ったもりが、ヘタをすると、マイナスになる。

それに、個人的には、代表取締役が高いサラリーを取って当然、と思っている。もし、会社が破綻したら、社員は職を失うだけだが、代表取締役はそれだけではすまない。「会社の借金=個人の借金(連帯保証)」なので、自己破産するしかない。

もちろん、会社が破綻したからといって、納めた税金が戻ってくるわけではない。にもかかわらず、高所得者からできるだけ税金とって、所得を平準化しろって?これって、逆差別では?

ところが、日本人にはこんなカンカクがない。ヒステリックに高所得者を非難し、痛めつけるだけ。かつてのホリエモンパッシングのように。

彼らが雇用を生みだし、社会貢献していることを、すっかり忘れている。

雇用を生む、社会的価値を生む、だけでは不十分で、追いはぎまがいの税金まで、むしり取ろうと言うのだから。しかも、失敗したら自己破産。経営者でなくて本当に良かったわ・・・

だから、「格差是正=弱者救済」を標榜するなら、安易に、「所得税>消費税」に突進するのは危険だ。

話は少し変わるが・・・

個人的には、「所得税か消費税か?」より、もっと重要な議論があると思っている。若者の雇用だ。

先日、ストレス耐性テストのセミナーに参加したとき、驚くべき話を聞かされた。日本の大手企業が、中国人と日本人をいっしょに面接できないのだという。日本人があまりに見劣りするので。いわゆる「ゆとり世代」の問題だ。

だが、若者は悪くない。では、「ゆとり教育」を決めた国が悪い?そうでもない。あの時代、子供達の心が疲弊し、様々な問題が起こったから、ゆとり教育を始めたのだから。結果論的に責めるのは酷だろう。

うまくいかなければ、修正すればいいだけのこと。実際、国は、ゆとり教育を是正している。

何がいいたいのか?

競争力を失った日本の若者を教育し、若者を雇用するために、税金を使って欲しい。そして、若者が夢を感じる国にして欲しい。

そして、もう一つ。高齢者が抱える巨額の金融資産を、実体経済に回す仕組み(投資)を作って欲しい。そうすれば、新しい雇用がうまれ、経済も活性化するから。

若者の社会教育、高齢者の金融資産の活用、この2つを、「消費税か所得税か」論議にからませたら、良いアイデアが生まれると思うのだが。

by R.B

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