■ガンジス河でバタフライ 2010.11.28
ある夜のこと、半醒半眠で、テレビを見ていると、ヘンなドラマをやっていた。
あの長澤まさみが、就職面接を受けている。
面接官:「志望動機は?」
長澤まさみ:「・・・(焦って言葉がでてこない)」
面接官:「はいっ、もうけっこうですよぉ。ごめんね、高野さん(長澤まさみ)。あとがつかえているから」
長澤まさみ:「インド・・・」
面接官:「え?」
長澤まさみ:「がっ、ガンジス河でバタフライしたいですっ!」
面接官:「わたしはね高野さん、志望動機を聞いたんです。それはわかるよね」
長澤まさみ:「はい」
面接官:「残念ながら、うちはガンジス河でバタフライする会社じゃないんですよね」
長澤まさみ:「はいっ、でもしたいんです!ていうか、しました。わたし、ガンジス河でバタフライしましたっ!」
面接官:「さっき、し・た・い・って・・・」
長澤まさみ:「したんです!ちゃんと写真もあります!」
面接官:「どこに?」
長澤まさみ:「現像・・・現像にだしてるんです!」
こうして、高野てるここと長澤まさみは、インドに旅立つことになった。
シーンは変わって、インドのとある空港。長澤まさみが空港の外に出ると、インド人の一団がこっちを見ている。
インド人:「リキシャ(乗り合いタクシー)乗る?安いよ!安いよ!安いよ!」
長澤まさみ:「けっこうです、歩いて行きます」
インド人:「500ルピーね。だいたい日本円で1500円ね」
あんまりしつこいので、観念した長澤まさみが、ホテルの住所を見せて「わかりました。ここに連れて行ってください」
ところが、どういうわけか、インド人たちもリキリャに同乗する。そして、リキシャの中で・・・
インド人:「ちょっとボッてみようか」「そうだな」「1000ルピー!」
長澤まさみ:「えっ、ちょっと待って、さっき、500ルピーって言ってましたよね」
インド人:「あなた800ルピー、荷物500ルピー、あわせて1300ルピー」
長澤まさみ:「えっ、1000ルピーじゃないんですか!」
インド人:「日本語わからないからぁ~」
リキシャがホテルにつき、長澤まさみ、1300ルピーを払うことに。そして、ホテルの看板を見て驚く。
長澤まさみ:「あの、ホテルの名前ちがうんですけど」
インド人:「ノープロブレム、ノープロブレム」
・・・
このあたりで、ドラマにクギ付けになっている自分に気がついた。目もすっかり覚めている。ところが、せっかく、はまったのに、この日放映されたのは前編のみ。そして、1週間後に放映されたであろう後編は、見逃してしまった。
「ガンジス河でバタフライ」は、メーテレ(名古屋テレビ)開局45年周年記念で制作されたスペシャルドラマ。
原作:たかのてるこ
脚本:宮藤官九郎
主演:長澤まさみ
共演:塚本高史、中谷美紀、竹下景子
と、それなりに力が入っている。
主人公の高野てるこ(長澤まさみ)は、何のとりえもない平凡な女子大生。それが、就職面接で、志望動機を突っ込まれ、あらぬ事を口走り、それがために、インドに旅立つことになった、という設定。ところが、そんな彼女を待っていたのは、想像を絶する異世界だった。
トイレに紙がないので、手でウンコをふかなきゃいけない。ところが、食事も手で食べるので、ウンコは左手で、食事は右手で、がインド式。とはいえ、人によって利き腕は違うわけだし、寝ぼけまなこで、右手でウンコを拭いたら、その後どうする?
問題はそれだけじゃない。ホテルのシャワーは水しかでないし、街を歩けば、お金をせがまれたり、ボラれたり・・・てるこ(長澤まさみ)は、すっかり落ち込んでしまった。
そんな時、てるこは、ハンサムな日本人と知り合う。ところが、気を許したとたん、荷物を持ち逃げされてしまう。旅行者相手の詐欺師だったのだ。それでも、列車の中で、インド人の家族と仲良くなり、
家に招待され、インド人の温かみを知る。
そして、クライマックスは、長澤まさみ本人による「ガンジス河でバタフライ」。しかも、服を着たまま・・・これは凄い。普通の人なら、2、3回水をかけば沈んでしまう。
それに、海外旅行のバイブル「地球の歩き方」によれば、ガンジス河では絶対に泳がないでください・・・みんな、洗濯したり、身体を洗ったり、何が流れているかわからない(死体も?)。なんかのはずみで、水をゴボっと飲みこめば、ただではすまない。長澤まさみが、こんな根性のある役者だとは思わなかった。
また、ストーリーは、主義主張のたぐいは皆無で、理屈っぽいところは一切ない。物語は、コミカルに、スルスルすすんでいき、ひたすら楽しい。
じつは、「ガンジス河でバタフライ」は、視聴率こそイマイチだったが、顧客満足度はかなり高い。脚本が良いからだろうが、長澤まさみの演技も光っている。演技というか、天然というか、とにかく、ハマリ役だ。
彼女の屈託のない大笑いは、バカッぽくて可愛いし、困り果てた様子は、天然にリアルだし、泣きじゃくる姿は、どこか微笑ましい。
ということで、東京に出張するたびに、秋葉原の中古DVDショップをチェックしていた。後編を観たい一心で。
そしてついに、行きつけの中古ショップで、DVD「ガンジス河でバタフライディレクターズ・カット版」を発見した!価格は2000円ちょっとで、アマゾンの中古より安い。迷わず、ゲット。家に帰って、
2回も観てしまった。
この手のドラマは中味は空っぽなのに、なぜか心がなごむ。やっぱり、人生に疲れているのかなぁ。
by R.B