■韓国の背中を見る日本人 2010.10.17
将来、有機ELが、液晶にとってかわるのは見えている。ところが、先行していたはずの日本企業が、次々と撤退している。なぜか?、韓国・サムスン電子にとてもかなわないから・・・かつて、アメリカは、短期的成果を追求し、日本は、長期的視野で経営する、と言われたが、それも遠い昔。
そして今年、日本企業が国内で韓国人を新卒採用しているという。日本のぬる~ぃ「おゆとり様」世代より、ガッツのある肉食系韓国人のほうがいい、というわけだ。日本企業は日本まで見捨てている。
この現況を総括すれば、韓国○、日本×、となる。もっとも、日本では、自分を卑下するのが美徳とされ、それを煽(あお)るほど注目される。たとえば、「日本は、経済で中国に負ける」「日本は、外交・軍事でも中国に惨敗し、尖閣諸島を失う」「次に、石垣島・沖縄まで失い、最後は中国の一省になる・・・」まるで、オオカミ少年だが、本当になる可能性は高い。
先日、ある開発プロジェクトの懇親会があった。メーカーが主催し、開発会社4社が一堂に会した。そこで、僕の隣に座ったのが、韓国人の李(イ)くんだった。
彼は、日本のJ社のメインプログラマーで、入社2年目。本プロジェクトのソフトウェアの1/3を担当している。韓国の大学を卒業後、来日し、J社に就職したのだという。つまり、日本での生活は2年。
ところが、日本語はペラペラ。日常会話はもちろん、技術打ち合わせも問題ナシ。日本語で書かれた技術仕様書も、スラスラ読みこなしている。漢字は書くのは苦手らしいが、読むのは問題ないという。
「日本語が上手ですね。ここまでくるのに何年かかりました」「2年です」
はいっ?2年!
日本では、中学・高校で6年間も英語を学ぶが、しゃべれる人はほとんどいない。やっぱり、現地で暮らさないとダメなのかなぁ、と思いつつ、能力と意識の差のような気もする。
彼は、打ち合わせ会議でも、質問に対する回答が速い。観察していると、質問が終わる1秒前から、口が動き出す。しかも、言葉にムダがなく、内容は核心を突くものだ。日本人のように、回りくどい言い方はしない。
「この仕様で大丈夫ですか?」「はい、大丈夫です。11月の中旬までにはアップします」
「△△の仕様変更の件は、どうですか?」「ご希望の11月末に、すべて完成するのは難しいです。でも、良い方法があります。確認が必要な部分だけ、11月末にアップし、御社の確認をとります。そうすれば、御社の作業は止まりませんし、残り部分は弊社が並行して進めるので、全体スケジュールは守れると思います」
昔、伝説のベンチャー企業にいたとき、社長からこれを徹底的に仕込まれた。「結論から言え」「聞かれたことだけ答えろ」「回りくどい説明はするな」「できない、で終わらせるな」李くんを見ていると、あの”熱い”時代を思い出した。
韓国では、大学を1年終えた段階で、徴兵される。李くんも、2年2ヶ月、軍隊で過ごしたという。
「徴兵は厳しかったですか?」「はい、厳しかったです。夜、徹夜で歩哨(ほしょう)に立つのですが、あからさまな居眠りが見つかると、処罰されます。お前が居眠りしているときに、北(北朝鮮)が攻めてきたらどうするんだ?お前の命だけではすまないぞ、というんです」
僕は、李くんに聞いた。「徴兵で得た一番の収穫は何ですか?やっぱり、ガッツ?」「いいえ、両親への感謝の気持ちです」
「夜、歩哨に立っていると、他にすることがないので、いろんなことが頭に浮かぶんです。でも、眠いし、寒いし、難しいことは考えられないです。子供の頃、可愛がってくれたお父さん、お母さんのことを思い出すんです。そして、徴兵が終わって、家に帰ると、両親への感謝の気持ちで一杯になるんです」・・・何かコメントしなければと思ったが、一言も出なかった。
宴席での李くんの言動は、社会人2年生とはとても思えないものだった。周囲に合わせ、生ビールを1杯、韓国のマッコリを愛想で一杯、あとは、ずーっと、ウーロン茶。深酒をさけているのだ。
その後、李くんは会場を回りながら、行く先々で、「このような席に招待していただいて感謝しています。私は韓国人なので、これを機会に、日本の人たちと心の距離を縮めたいと思っています。これからもこういう席がありましたら、是非、声を掛けてください。よろしくお願いします」
異国に移り住んで2年で、もうこのレベル?
その後、李くんの上司と話したが、「李は本当に優秀です。プログラムは完全にお任せですね。習得が速いんで、ビックリですよ。これまで、言葉の問題があったので、打ち合わせには出さなかったのですが、もう大丈夫ですね。僕はタダの付き人ですよ、ハハハ」
あっ、そういえば・・・ウチの2年生はどうした?去年入社したプログラマーのことだ。会場を見渡しても、どこにもいない。彼の上司を見つけ出し、「おい、Sが見あたらんぞ。まさか、外でゲロ吐いてんじゃないだろうな。ちょっと、見てきてよ」「了解」
と、そのとき、取引先の営業マンが僕に歩み寄ってきて、耳元でささやいた。「すみません。御社のSくんですけど、外で、ゲロ吐いてます」
結局、先の営業マン(ウチのお得意様)に、ホテルまで送ってもらうことになった。
そして、車の中・・・
よだれを垂らして、酔いつぶれたウチの2年生を見て、もう一人の2年生を思い出していた。日本語を巧みにあやつり、会場をさっそうと歩き回る李くんを。
by R.B