■不況克服 2010 2010.01.01
2010年元旦。
この日が来ると、誰もが、今年こそはと、何かを誓う。そして、1年経つと、今年こそは・・・
何十回繰り返しても、年があらたまるたびに、新鮮な気持ちで、懲りもせずに、誓うのである。人間は元気な生き物だ。
そして、「片町」も、金沢で一元気な繁華街だ。東京や大阪にくらべれば、こぢんまりしているが、活気はあるし、たぶん、日本海側では、一番華がある。昔から、小京都といわれ、知る人ぞ知る全国区。
というわけで、接待は必ず片町を使う。「近江町市場」から入る魚は新鮮で、県外のお客さんなら、たいてい喜んでくれる。
ところが、もっと喜んでもらえることも・・・
二次会でクラブに行くと、皆さん、ウットリした面持ちで、
「金沢の女性って美人ですねぇ」
金沢はフーゾクの規制が厳しく、下品な店は少ない。なので、こういうところで満足してもらっている。もっとも、下品な店が大好きなお客さんもいる。それはそれとして・・・
僕は社用以外で、片町に飲み行くことはない。今時のクラブは、客のほうが気を遣って、女の子を楽しませている。はた目で見ると、どっちが客かわからない。だから、身銭を切ってまで行く気はしない。クラブで女の子と話すより、代行の運転手さんと話す方が、楽しいこともある。
前回の運転手さんも、なかなか面白い人だった。
「運転手さん、最近、景気どうですか?」
「そりゃもう、最悪やわ・・・」
「去年のリーマンショックの時より?」
「悪い、悪い。客は半分以下や。まだ悪なっとるし、来年は、もっと悪くなるわ」
んー、「悪」の連発・・・
金沢ナンバーワンの繁華街が、まだ底を打っていない。昨年末の忘年会は、一次会のみが多かったという。都心部では、回復の兆しがあるが、地方の景気はまだ降下中。
僕は、思い切って、難しい質問をしてみた。
「何で、こんなに景気が悪いんですかねぇ?」
気の利いた答を期待したわけではないが、その答は驚くべきものだった。
「みんな、ダラ(金沢の方言で「バカ」)やからや。先のことばっかし考えて、今を楽しんどらん。遊び方も知らんしね。ダラやわ」
運転手さんは、懐かしそうに続けた・・・
「わしら若い頃は、質屋に行って、カネつくってから、飲みに行ったもんや。一次会はテキトーに切り上げて、二次会からが本番や。場末のキャバレーで飲んで騒いで、あー、楽しかったわー」
「は、それりゃ、すごいですね。でも、将来のこととか、お金のこととか、心配にならなかったですか?」
運転手さんはキョトンとして、
「わしらの時代は、カネはなくても、何とかなると思うとった。将来のこと?そんなもん、考えたこともなかったわ」
この運転手さんは、昭和21年生まれだという。彼が就職した頃は、高度経済成長のまっただ中、明日を心配する必要などなかったのだ。僕は、今回の大不況の原因が、分かったような気がした。
昔は、今よりずっと貧乏だったのに、みんな、明日を信じて、楽しく暮らしていた。ないカネを使い切り、それが経済を発展させたのである。
ところが、今は、老いも若きも、明日を憂い、老後の年金に思いをめぐらせ、汲々と生きている・・・
これは不可解だ。今は、昔よりずっと豊かなのに、誰も楽しいとは思っていない。僕が、この運転手さんと話し込んだのは、彼が元気印だったから。笑いは、幸福をよびこむ。そして、人も。
明日を考えることは、もちろん、大切だけど、今日を楽しむことは、もっと大切なのでは?
2010年元旦、年も改まったことだし、今年こそは・・・
by R.B