■イーロン・マスクの「AI脅威論」 2018.06.06
テスラ・モーターズのイーロン・マスクが、「AI脅威論」をぶち上げた(今に始まったことではないが)。
AIが第3次世界大戦を引き起こすというのだ。
筋書きは・・・いずれ、AIは制御不能になり、世界戦争が勃発し、人類は滅亡する。
これにグーグルのエリック・シュミットがかみついた。
「イーロン・マスクは完全に間違っている」
挑発的なキャッチだが、根拠は・・・AIが人類にもたらすメリットは、リスクをおぎなってあまりある。
と、意外とひかえめ。それはそうだろう。ひどい「だまし絵」だから。
人類を滅ぼしかねない「巨大リスク」が、卑近な損得勘定「メリット>リスク」にスリ替えられている。
原発は、電気代が安くつくから、メリットが大きい。だから、「原発事故のリスク」は忘れよう、と言っているようなものだ。福島原発事故であれだけの大惨事が起きたのに、もう忘れた?それとも、米国では報道されなかったのかな?
正気の沙汰とは思えない。
一方、情報漏洩問題で「時の人」となったフェースブックのザッカーバーグはこう言っている。
「このテーマ(AI脅威論)については、悲観的になりすぎないようにする必要がある」
悲観的か楽観的かは、AIリスクの「真偽」とは関係がない。論点が完全にずれている。
もっとも、彼らは確信犯だ。グーグルもフェースブックも、AIが否定されたら、商売あがったりだから。
お気づきだろうか?
PCやスマホを使うたびに、グーグルやフェースブックに「無料」で個人情報やデータを提供し、巨万の富を生んでいることを・・・そんな企業や責任者がオピニオンリーダーなのだ。
だまされたくないですよね。
では、どうすればいい?
あんな立派な人が言っているのだから間違いない・・・ではなく、自分のアタマで咀嚼(そしゃく)すること。そのためには、脳を鍛えなくては!
そのヒントは「東ロボくん」にある。
東ロボくんは、東大合格をめざしたAIで、最終的な偏差値は57.8!
MARCHや関関同立は合格圏内だが、東大はムリ。あともう少し・・・ところが、2016年にプロジェクトは解散してしまった。
なぜか?
「読解力」の壁が立ちはだかったから。
現在のAI(東ロボくん・IBMのワトソン)は、文意を理解して、問題を解いているわけではない。過去データを機械学習して、検索と計算で推論しているだけ。このような統計学的AIでは、東大はムリなのだという。
でも・・・
あんな荒っぽい力技で「偏差値57.8」はマジで凄い。どうやって作ったのだろう。
東ロボくんのプロジェクトリーダー、新井紀子さんは、自著「AIVs.教科書が読めない子どもたち」の中で面白いことを言っている。
AIは文意を理解できないから、人間にはかなわない。でも、安心してはいけない。今の子どもたちは教科書が読めないから・・・ひょっとして、子どもだけではない?
そういえば・・・大学に入学したとき、オリエンテーションで、主任教授がこんなことを言っていた。
「今の学生は、旧制高校時代の学生より、アタマが悪い。もっと本を読みなさい」
カチンときたが、最近の社会人をみていると、同じことを感じる。理由はカンタン、脳に入るデータが、テキストからビジュアルに変わりつつあるから。活字離れがすすみ、漫画さえ読まれないのはあたりまえ(吹き出しはテキスト)。一方、YouTubeなど動画サイトは大繁盛だ。
新井紀子さんも言っているが、読解力を鍛えるには「読書」しかない。
文章は、同じコトバでも文脈によって意味が異なる。それを見極め、文意を理解するには、経験と知識、読解力が必要だ。毎日、スマホでくっちゃべって、写真やムービーを眺めていれば、読解力も思考力も退化するのはあたりまえ。
批判しているのではない。読解力がないと、だまされると言いたいのだ。
この世は詐欺師であふれている。それがインターネットを介して、恐ろしいスピードで拡大している。
そして、ここが肝心・・・
本当の詐欺師は、詐欺師のような姿形をしていない。社会的地位と名声があって、ニッコリ笑って優雅に話す人・・・コワイワイ。
by R.B