相模原障害者施設・殺人事件は、社会に警告を発している。

「本音」と「建前」の二律背反（パラドックス）はもう避けて通れないと。

米国でも同じことがおこっている。2016年米国大統領選だ。

泡沫候補といわれたドナルド・トランプが、共和党の候補に選ばれたのだ。しかも、2016年8月現在、民主党候補ヒラリー・クリントンと支持率が拮抗している。

人格・識見・経験、どれをとっても、ヒラリー・クリントンが優っているのに。

米国で一体何が起きているのか？

トランプはジョーカーでも隠し持っているのか？

たしかに、ヒラリー・クリントンは選挙に弱い。だが、それだけではない。相手は毒を撒き散らかすだけのジョーカーなのだ（失礼）。

たぶん、原因はトランプの「本音>>>建前」。

かつて、米国の中流階級は「建前>本音」だった。もし、あの時代に時計を巻き戻せば、トランプは泡沫候補で終わっていただろう。裏を返せば、米国の中産階級は変質したのだ。というより、中産階級は崩壊しつつある。学校の教師や警察官でさえ、まともに暮らせないのだから。

人間は余裕があれば、「本音」をかくし「建前」を表にだす。善人面できるし、心地良いから。ところが、食うや食わず、夢も希望もなくなれば、人目なんかドーデモイイ・・・「建前」が吹き飛んで「本音」がむき出しになる。それが、今の米国なのだ。

じつは、「夢も希望もない」は米国だけではない、世界中でおこっている。

富裕層上位1％の資産額は、残る99％の資産額に等しい。資本家と労働者の資産格差は拡大する一方・・・いわゆる格差の問題だ。さらに、風俗に走るしかない貧困女子の問題。やがて、大問題に発展するだろう世代格差の問題。

これでは、夢も希望もない。国民の総意が「建前」から「本音」に変わってあたりまえ。「建前（きれいごと）」を口にするのは、富裕層かTVのコメンテーターぐらい（本音を言うと食えなくなるから）。

事実、日本でも・・・

核兵器反対！日本は世界で唯一の被爆国だから。

が国民の総意だったのに、

日本のような大国が中国にやりたい放題されるのは核兵器をもたないから。「核抑止力」を直視して、日本も核武装すべし！

という声があがっている。まだ少数意見だが、かつての日本では考えられない。

ただし、核抑止を理由にするなら、核武装だけでは意味がない。日本は国土が狭いので、先制核攻撃で核サイロが叩かれれば、一瞬で無力化されるから。つまり、「核保有＝核抑止」にはならないわけだ。

では、どうすればいい？

核ミサイルを搭載した原子力潜水艦を多数建造して、太平洋にばらまく。原潜は基本、探知できないので、日本の核ミサイルがどこから飛んでくるかわからない。つまり、中国もおいそれと核戦争に持ち込めないわけだ。これが核抑止なのである。

こんな「本音＝合理性＝真実」を公の場で口にすれば、袋叩きですよね。

でも・・・ここがヘンだよ、日本人。

日本に選択肢がいっぱいあると思っている？

じつは、日本の未来は・・・

1.原潜＆核武装でハラハラドキドキの毎日

2.中国の植民地になって奴隷の毎日

3.中国の核攻撃を受けて壊滅

の3択なのだ。理由はこちら→日中尖閣戦争Ⅷ～核戦争～

そもそも、日本と中国と韓国は「地政学的」に敵対する運命にある。この学理の正当性は、歴史と今起こっている現実が証明している。子供でもわかりますよね。

これまで、日本は、核武装を口にするのはタブーだった。しかし、南シナ海、東シナ海の中国のやりたい放題を目のあたりにすれば、「建前」が吹き飛んで「本音」が正論になる。

国の安全保障がおびやかされて、建前（きれいごと）を言っている人はバカである。現実から乖離（かいり）した思い込み「妄想」にしがみついているだけだから。妄想で問題解決できれば苦労はない。

そして・・・

相模原障害者施設・殺人事件もそれを示唆している。

2016年7月26日、神奈川県にある相模原障害者施設に男が侵入、障害者を次々と殺害した。犠牲者の数は19人で戦後最悪。ところが、猟奇殺人でも、無差別殺人でも、テロでもない。非常に特異な事件なのだ。

まず、犠牲者は重度の障害者に限られている。犯人によれば、声をかけて、反応のない者を殺害したという。事実、職員もいたが縛られただけ。つまり、無差別殺人や無差別テロではない。

一方、殺害された19人は、胸や首を何度も刺されているので、衝動的犯行ではない。明確な殺意があったと思われる。

ではなぜ、犯人は重度の障害者だけを狙ったのか？

犯人は、この施設の元職員で、重度の障害者について「安楽死」を容認する発言をしていたという。さらに、「ヒトラーの思想が2週間前に降りてきた」と言ったという証言もある。

ここでいう「ヒトラーの思想」とは、ナチス政権下で行われた「断種」と「安楽死」をさす。

「断種」とは、遺伝子疾患をもつ者を劣等分子とみなし、その血統を断つこと。具体的には不妊手術をほどこす。

一方、「安楽死」とは、精神障害者など社会的価値を生まない者を生きるに値しないとみなし、命を奪うこと。

一見、ヒトラーらしいやり方だが、彼のオリジナルではない。20世紀初頭、ヨーロッパで流行した優生学がベースになっている。生物学の自然淘汰と適者生存（ダーウィニズム）を、そのまま社会学に適用した理論だ。

ただし、この場合、「自然淘汰」というよりは「人工淘汰」・・・ん～、うさん臭い。

ところが、「断種」は今でも一部の国で行われている。さらに、建前一辺倒の日本でも、「安楽死」が議論されている。現実に、医療現場では、回復の見込みのない高齢者には手術をほどこさない、家族の承諾をえて、生命維持装置をはずす、などの処置が行われている。これも、安楽死の一つだろう。

一方、建前では、人間の命は尊い。それを象徴するのが、福田赳夫・元総理の言葉だろう。いわく・・・人間の命は地球より重い。

地球上には生命があふれていて、人間はその生命を奪って生きているわけで、傲慢不遜（ごうまんふそん）もいいところだが、そこを突く人はいない。もちろん、科学的根拠もない。人間脳の産物、イデオロギーの最たるものだろう。ちなみに、その中で、現実から乖離（かいり）したものを「妄想」とよんでいる。

それに、本音では・・・自分が植物人間になったら、安らかに死なせてくれ。「家族に迷惑かけたくない」から。

じつは、その延長に「社会に迷惑かけたくない」という概念がある。

今回の障害者施設・殺人事件はそれを示唆している。というのも、犯人はこんな発言をしているのだ。

重度の障害者は社会に迷惑をかけるだけだから抹殺する。

社会の経済的合理性を優先しているわけだ（一種の全体主義）。

もっとも、今回の事件は、このような冷徹なイデオロギーにもとづいた計画的犯行か、残忍な遺伝気質による自然発生的行動か、薬物依存による奇行かはわからない。

じつは、この事件には、もう一つ「本音と建前」が潜んでいる。

犯人がこの施設に在職中に、障害者の「安楽死」を容認する発言をしたとき、施設側は警察に通報し、強制入院させられている。

その後、「他人に危害を加える恐れがなくなった」と診断され、犯人は退院させられた。ところが、その診断は間違っていた。4ヶ月後に、この凄惨な事件が起こったのだから。

この問題に、本音（合理性）と建前（きれいごと）を当てはめてみよう。

建前は・・・人権を尊重すべし、いつまでも強制入院させておくわけにはいかない。

本音は・・・危険な連中に人権もクソもない、19人も殺されて、何訳の分からないことを言っている、完全隔離せよ。

これだけみれば、「本音>建前」の時代に入ったようにみえる。

でも、本当にそうだろうか？

カンタンな思考実験をしてみよう。

建前（きれいごと）をやめて、本音（合理性）を極めるのである。

「合理性」といえばマシン、そこで「人工知能＆ロボット」に登場してもらおう（以後、AIロボットとよぶ）。

AIロボットに、人間社会の管理を任されば、究極の本音（合理的）社会が実現できる。水も漏らさぬ完全無欠の合理性で、感情や利権に左右されず、公明正大に物事を決めてくれるに違いない。メデタシ、メデタシ。

でも、一つ気になることが・・・

AIロボットは、つきつめれば一つの「存在」である。もちろん、「存在」の目的は存在し続けること（あたりまえ）。そして、存在し続けるためには「資源」が欠かせない。つまり、AIロボットにとって「資源の確保」が最優先なのである。

ところが、人間はその貴重な地球資源を食い潰している。しかも、その頭数（人口）は増える一方で、2050年には100億に迫るという。さらに、地球環境を取り返しのつかないレベルで汚染している。

つまり、AIロボットが「合理性」を追求すると、人間は災いの元、最悪の害虫なのである。

そのAIロボットに人間社会の管理を任せたら？

AIロボットは「合理的な」アクションをとるだろう・・・人類抹殺。

これが、ロボットのディストピア、ターミネーターのスカイネットなのである。

さて、本音と建前、どちらにしますか？