■IBMサミット2016・ロボットのディストピア 2016.06.18
「IBM Watson Summit 2016」で見た未来・・・ロボット&人工知能が人間の仕事を奪うディストピアな世界。
ここでロボット&人工知能を「対話型ロボット」とよぼう。人間より優れた身体と知能をもつ機械仕掛けの生命体だ。だから、人間の仕事を奪うのはあたりまえ。
10年~20年後、人間の仕事の49%が奪われるというリポートがあるが、かなり控え目な予測だ。最終的にはすべてロボットに持って行かれるから。それもそんな遠くない未来に。
ところで・・・
対話型ロボットが人間の仕事を奪ったら、人間はどうやって食べていくのか?
ロボットが稼いだ価値(富)をわけてもらうしかない。問題はその分配方法だ。
すべての人間に平等に分配すれば、お金持ちは黙ってはいないだろう。ロボットを所有するのはお金持ちで貧乏人ではないから。自分の所有物(ロボット)が生んだ富を没収されるのだから、怒ってあたりまえ。公平かもしれないが、公正とは言えないだろう。
さらに、留意すべきは、ルールを決めるのは権力者、つまり、お金持ちだということ。
だから、平等分配はありえない。とはいえ、お金持ちにしてみれば、革命が起こって財産を没収されたら、元も子もない。そこで、折衷案がとられるだろう。
まず、「ベーシックインカム」が採用される。働かなくても最低限のお金が国から支給されるシステムだ。
これにくわえ、ロボットの所有台数に応じて、所得が加算される。これなら、お金持ちも文句は言わないだろう。所得を丸取りされなくてすむし、下層階級より贅沢できるし、革命も起こらないから。
結果・・・食べていくだけの下層階級と、ロボットを所有し贅沢な暮らしをする上層階級に二分化する。
フリッツ・ラング監督の映画「メトロポリス」のディストピアが現実になるわけだ。
ただし、違いもある。
「メトロポリス」では、下層階級は過酷な労働を強いられるが、われわれの未来は、下層階級は働かなくてすむ。働くのは対話型ロボットだから。
怠け者は大喜びだけど、働き者は意気消沈、どっちがいい?
そりゃあ、働かなくてすむのだから、われわれの未来に一票!
ちょっと待った、冷静に考えてみよう。
フランスの経済学者ピケティは著書「21世紀の資本」の中で、こう書いている。
世界中で格差が拡大している。
根拠は・・・
資産の増加率>給与所得の増加率
過去300年間の税務資料にもとづく相関関係なので、信ぴょう性は高い。では、この不等式は何を意味するのか?
給与が増えるより、資産が増える方が速い!
つまり、資産家(お金持ち)の資産はどんどん増えるが、給料取り(貧乏人)の資産は鳴かず飛ばず・・・格差が拡大してあたりまえ。
ところが、ロボットが人間に代わって働くようになると、格差はさらに拡大する。
理由はカンタン、
金持ちの富の増加=資産の増加+給与の増加(ロボットの労働対価)
貧乏人の富の増加=0(資産も給与も「永遠の0」なので)
目も当てられない・・・
貧富の差がとんでもないレベルに達するのは明らかだ。では、究極の格差社会とはどんな世界なのだろう。
まず、下層階級は「ベーシックインカム」。国から支給される最低限のお金で、食って飲んで寝るだけの人生。
一方、上層階級は資産とロボットが稼ぐ給与で、贅沢三昧の人生。豪奢な住居や別荘に住んで、ハイテクを駆使した便利で快適な生活が送れる。
さらに、遺伝子テクノロジーで不老長寿を獲得できるかもしれない。もちろん、ベーシックインカムは医療保険の対象外。
つまり・・・
対話型ロボットを支配する者が、富を支配するのだ。このプロセスは2段階をへて進行する。
第一段階は、対話型ロボットの開発と生産を支配する者が勝者となる。
第二段階は、対話型ロボットを所有する者が勝者となる。
そして・・・
第二段階で決まった勝ち組と負け組は、永遠に逆転しない。
これまでは、起業、発明、発見、革命・・・と、貧乏→金持ちへの逆転の道が残されていた。ところが、来るべき世界では、仕事も発明も発見も革命も、すべてロボットがやる。つまり、決定と行動の主体は人間ではなくマシンなのだ。だから、負け組の人間に逆転のチャンスはない。
つまりこういうこと。
人間が働かなくすむ世界は、ユートピアではない。格差が極限まで拡大した、逆転の可能性がない究極のカースト社会なのだ。
by R.B