■貧乏防衛Ⅰ・インフレの恐怖 2015.08.09
銀行預金の半分を・・・といっても、サラリーマンなので、大した額ではないのだが、サクッっと解約した。
理由はカンタン、今後、日本はインフレになるから。
アベノミクスは、賛否両論あって、論評の数は評論家の数よりも多く、内容もうさん臭いし、そもそも、経済予測なんて当たった試しがないので、鵜呑みにできないのだが、一つだけ確かなことがある。
政府はインフレに本気!
おいおい、政府が物価を上げてどうする、バカじゃないのか?は遠い昔の話。たしかに、昔は、放っておくと、インフレになった。だから、バブルがはじけるまでは、政府の経済政策はたいてい「インフレ抑制」。
ところが、科学技術が進歩して、生産性が向上し、さらに、中国みたいな人件費の安い国が大量生産するものだから、世界中にモノがあふれ、「モノの価値=物価」が下がってしまった。
(数量が多いものほど価値は低く、少ないものほど価値は高い)
物価が上がらないと、企業の売上が増えないし、給料も増えない。つまり、万年不況・・・
そこで、安部政権は、不況を脱するために、誰でも思いつきそうな、でも、ちょっと危険な方策を打ち出した。
インフレターゲット、物価を強引に引き上げる金融政策である。
ふつう、需要量(買いたい人)>供給量(売りたい人)なら、モノ不足になるので、物価は放っておいても上がる。
でも、現実は、需要量<供給量
というのも、20年におよぶ不況で、庶民はサイフのヒモを締めているし、若者はモノを買わないし、そもそも、人口が減っているのだから、需要が増えるわけがない。
一方、中国のような巨大な供給口があるので、供給は増えるばかり。
というわけで、需要量<<供給量は鉄板。だから、物価は下がって当たり前。
そこで、安倍政権は、需要量>供給量をあきらめて、別の方法をとることにした。
カネの量>モノの量
市場に大量のおカネをバラまいて、物価を押し上げようというのだ。
それで上がる?
先の経済原則、数量が少ないものほど価値は高い、を思い出そう。
もし、カネの量>モノの量なら、カネの値打ちが下がり、モノの値打ちが上がる、つまり、相対的に物価が上がる。
でも・・・実際に売り買いがないと、成立しないのでは?
だってそうじゃないですか。
モノよりカネが増えたので、物価を上げます!と言い張っても、誰も買わなければ、値下げするしかないですよね。
だから、カネが増えようが、モノが減ろうが、売買があって、初めて価格は決定する。
というわけで、需要がない以上、何をどうしようが物価は上がらない。たとえば、米の値段が1/2になっても、ごはんを2倍食べる人はいないでしょう。
ところが・・・
それがどうした!と、言わんばかりに、日銀は目標を高らかに宣言した。
「インフレ率2%」
これは、毎年、物価が2%上がることを意味する。
そして、日銀は市場に大量のカネをバラまいた。新規発行量を上回るペースで、市場から日本国債を買い入れたのである。日銀が市場から国債を買えば、その代金が市場に流入する。つまり、おカネが増えるわけだ。
その結果、日銀の資産はGDPの60%に達し異常事態となっている(欧米は20%)。政府・日銀の本気度がわかるというものだ。
これが、ニュースでよく見聞きする「金融緩和」である。
市場に大量のおカネが流通すれば、モノを買う動機が生まれ、需要が増えて、物価も上がるというわけだ。
しかし・・・
増えたおカネが、モノやサービスに使われるとは限らない。先の「米の値段が1/2」の話と同じで、給料が2倍になっても、ごはんを2倍食べないでしょう。
では、カネはどこへ行く?
いわずとしれたマネーゲーム。
たとえば、株、原油・農産物の先物取引、はたまた、サブプライムローンみたいなインチキ証券など。
そんなもの買ってどうする?
買いたいモノやサービスがないのだから仕方がない。
それに、マネーゲームなら、おカネが増える可能性もある。(減る可能性もある)
というわけで、カネが増えても、モノやサービスの取引が増えないのなら、物価は変わらない。
そこで、政府は、インフレを促進するため、さらなる手を打った。大企業に賃上げ圧力をかけたのである。
サラリーマンの収入が増えれば、購買意欲が高まり、需要量>供給量、結果、物価が上がるというわけだ。
それにしても、政府はなぜそこまでしてインフレに執着するのか?
景気を良くして、国民を幸福にしたいから?
そうなると本当に良いですねぇ~、でも、本音は別の所にある。
国債、つまり、国の借金を目減りさせるため。
インフレになれば、貨幣価値は下がる。だから、国の借金はチャラ!とは言わないが、実質目減りする。
たとえば、100万円の国債を発行し、10年後に償還するとき、「100万円+わずかな利息」を返金するわけだが、インフレで、100万円の価値が半分になっていたら、実質、返金するのは50万円!
政府はラッキー&ハッピー!でも、買い手(金融機関と個人)はたまったもんじゃない。
新手の詐欺にも見えるが、政府はこれを狙っている!大きな声では言えないから、小さな声で言うけど、ホントだぞ。
ただし、政府に悪意はない。
財政赤字=国の借金=国債を減らそうとしているのに、そのどこが悪い。責務に忠実なんだから尊敬しろ、というわけだ。(言ってないと思うけど)
とはいえ、悪意があろうがなかろうが、国の借金がどうなろうが、誰が損をしようが、・・・・自分だけは損したくない!
ですよね。
ところが、もっとコワイ話がある。
インフレで物価が上がっても、給料が上げればなんとかなる。でも、給料が上がらなかったら?
これが恐怖のスタグフレーション。
貧乏がさらに貧乏になる、最悪のパターンなのだが、これがすでに始まっているのだ。
マジか・・・
ただし、あなたが大企業の社員か公務員なら、この話は忘れていい。
というのも・・・
大企業は余力があるし、国や地方自治体は税金を上げればいいのだから。つまり、給料は上がる。
しかし、労働者の63%が占める中小企業は、賃上げはカンタンにできない。売上、利益が上がらないのに、給料だけ上げたら、どうなりますか?倒産します。
じゃあ、キリギリスさんのように(アリさんではなく)、質素倹約して、貯金に励んだらどうだろう。銀行利息が物価の上昇率なみになれば、なんとかなるかもしれない。
なんともならない。
2015年の銀行金利は平均0.02%。この場合、100万円を10年預けても、利息は1600円也(税金も考慮)。はぁぁぁ~、なめとんのか!
問題はそこではない。
日銀が目指す物価上昇率は2%、銀行利息は0.02%、つまり、物価は、銀行利息の「100倍」の速度で上昇する!(政府の思惑どおりいけば)
これって・・・
たくさん貯金すればするほど、長期間貯金するほど、損するってこと?
そうですね。
これが冒頭の、「銀行預金の解約」の理由なのである。
さては、なんだかんだ言って、政府の「インフレターゲット」を信用しているな?
ノー!
先の理由から、何をどうしようが、カンタンにはインフレにならない。
ところが・・・
カンタンにインフレにする方法がある。
今起こっている「円安・ドル高」だ。
これで、輸入商品と、原材料が輸入品の国産品は、みんな値段が上がる。(けっこう多い)
実際、為替レートは、2012年から2015年の3年間で、「1ドル76円→1ドル120円」つまり、37%も円安になっている。
だから?
1ドルの外国商品を買う場合、以前は、76円払えばよかったのに、今は120円!つまり、たった3年間で、37%値上げ!
だから、物価上昇の強力な要因になるのだ。
しかも、円安・ドル高で物価が上がっても、上昇分は、すべて輸出企業(外国)に入り、日本企業が潤うわけではない。(便乗値上げする輸入業者はのぞく)
これが、物価は上げるけど、給料は上がらない、最悪のスタグフレーションなのである。
さらに、円安・ドル高は別の災いをもたらす。安全なはずの、銀行預金、生保系貯蓄商品などの円建ての金融資産を目減りさせるのだ。現実に、3年間で37%も目減りしている。
しかも、円安・ドル高は今後さらに進む。
最悪・・・
というわけで、銀行預金を解約した一番の理由は、政府のインフレターゲットではなく、円安・ドル高!
by R.B