君たちはどう考えるか(2)~少子化対策は天下の愚策~
■蜃気楼の大国
「日本衰退論」が、かまびすしい。
一方、これに反対する向きもある。いわく、自分を落としめるのは、自虐的で、気持ち悪い。危機感を煽って、目立とうしているだけ、というわけだ。
では、どっちが正しい?
「日本の衰退」は事実である。
動かぬ証拠がある。
日本礼賛者が、好んで取り上げるのが「日本のGDPは世界第3位」。これで日本は経済大国といいたいのだ。
ところが、1人あたりのGDPは「世界第27位」。先進国最下位です。
どうなってる?
GDP(国民総生産)=国民1人あたり生産×総人口
つまり、日本は、国民の頭数でかせいでいるだけ。国民一人あたりは「世界第27位」なのに、経済大国と言われても・・・
さらに、「日本の輸出額は世界第4位」というのもある。
ところが、1人あたり輸出額は「世界第44位」。こちらも、頭数で稼いだ金メッキのトロフィー。
そこで、日本礼賛者は科学力にも言及する。いわく「日本のノーベル賞受賞者数は世界第7位」。
ところが、1人あたりノーベル賞受賞者数は「世界第39位」。
んー、なんかあやしいぞ。データや数字は、鵜呑みにすると、真実を見誤りますね。
そもそも、この指標は国力の一面にすぎない。国民にとって、GDP、輸出額、ノーベル賞は雲の上の話で、こんなもので「豊かさ」を実感できるはずがない。
では、国民一人一人が「豊かさ」を実感できる指標は?
ズバリ、お給料です。
では、日本の賃金は?
アメリカの約半分で、ドイツ、フランス、イギリスより低い。さらに、韓国にも負けている。
これにはビックリだ。
20年前、仕事でソフト開発を韓国にアウトソースしていた。人件費が安い上に、エンジニアが優秀だったから。ところが、今は立場が逆転。日本は、韓国の下請け?
低賃金を念押しするようで、気が引けるが、もっと哀しいデータがある。
2020年、日本より賃金が低い国は、旧社会主義国と、ギリシャ、イタリア、スペイン、メキシコ、チリぐらい。日本は、驚くなかれ、OECDの中で最下位グループなのだ。
これで「経済大国」はムリです。
■米国に見放される日本
「日本衰退」をしめす指標は、まだある。
国の存亡にかかわる国家安全保障だ。それが、危機的状況にあるのだ。
安倍晋三元総理が暗殺され、まともな保守派が崩壊しつつあるから、当然なのだが。
2023年8月7日、ワシントン・ポストが、驚くべきニュースを報じた。
中国人民解放軍のハッカーが、日本の防衛省の最も機密性の高い情報を扱うコンピュータ・システムに侵入していたというのだ。
じつは、2020年秋に、米国家安全保障局(NSA)が、それを察知し、日本政府に通達していた。当時のポッティンジャー大統領副補佐官と米サイバー軍司令官を兼務するナカソネNSA局長が来日し、このセキュリティ侵害を日本の防衛省首脳に伝えたというのだ。
その後、トランプ前政権からバイデン政権に移行し、オースティン国防長官が日本側に、サイバー対策を強化しなければ情報共有に支障をきたすと、念押しした。ところが、2021年秋、「日本政府の取り組みの遅さを裏付ける新たな情報」を米政府が把握し、日本側に警告したという。
つまりこういうこと。
米国が、国家安全保障にかかる重要事項を、日本に何度警告しても、手を打たない。これでは、情報漏洩が怖くて、情報共有できないだろう。日本は同盟国として、信用されなくてあたりまえ。
米国に見放されたらどうするの?
自立する?
ムリです!
もし、ウクライナが核を放棄しなかったら、2022年のロシアのウクライナ侵攻はなかっただろう。
イラクのサダム・フセイン政権が米国に倒されたのは、核を保有しなかったから。
北朝鮮が、アメリカと対等に外交できるのは、核を保有しているから。
何が言いたいのか?
「核の抑止」が成立しているのだ。
というわけで、日本が自立するには、絶対条件がある。
日本みずから、核武装し、核ミサイルを搭載した原子力潜水艦を、太平洋と日本海に展開すること。これなら、中国も北朝鮮もうかつに核攻撃できない。日本の核ミサイルが、どこから飛んでくるかわからないから。というのも、原子力潜水艦は、人工衛星からも航空機からも探知できないのだ。
日本が自立する道はこれしかない。
これは脅しではなく、事実である。
冷静に考えてみよう。
外交や通常戦で優位に立っても、「核を使うぞ」と脅されたら終わり。降参するしかないではないか。小学生でもわかる話だ。
もし、核ミサイル搭載の原子力潜水艦を展開する覚悟がないなら、アメリカの属国になるしかない。サイバーセキュリティ対策が、これほどユルユルなら、同盟国として信用されないから。
というわけで、日本の選択肢は限られている。
核武装するか、アメリカの属国になるか、中国に併呑されるかの三択。その前に、中国が台湾に侵攻したら、中国は制海権と制空権を確保しようとするから、石垣島周辺も戦場になる可能性がある。
そんな状況で、国会議員が公金でフランス観光旅行!?
2023年7月末、参議院の松川るい議員と元SPEEDの今井絵理子議員ら、自民党女性局38名が「フランス研修」と称して「フランス税金旅行」を満喫したのだ。
「日本衰退論」どころではない。
日本終ってます。
■少子化対策の愚
今回のフランス税金旅行で、日本の劣化が露呈した。
まず、やったこと「フランス税金旅行」は酷い。
だが、もっと酷いのはその後。
事件の3週間後、やっと、松川るい議員が女性局長を辞任したのだ。このニュースは、SNSでトレンド入りし「女性局長をやめるだけで、自民党もやめなければ、議員もやめない」、「学校でいうと、退学レベルのことしたけど、学級委員長の辞任で終わりってことだよね」などの声が相次いだ。
一方、一応ケジメを付けた松川るい議員に対し、元SPEEDの今井絵理子議員はダンマリ。これに対しSNSでは「松川るいは何でスケープゴート役?どちらかと言えば、今井絵理子の方が要らなくないか?」と、的を得たリマインドが殺到している。
そんなざわついた話はさておき、フランス税金旅行は明白な「公金横領」である。中国・習近平体制なら、免職ではすまない。事実、汚職がバレて行方不明の人もいる。コワイコワイ。
日本は、今はだらしがないが、江戸時代なら、公金横領は、市中引き回しの上、縛り首です。
ところが、もっと酷いことがある。
議員さんたちの税金旅行は、今に始まったことではないというのだ。まぁ、想定内だし、別に驚かないが。
酷い話は、まだある。
今回のフランス税金旅行の目的は研修で、その一つが「少子化対策」だったというのだ。
これは大間違いです。
目的が間違っているなら、結果が研修でも観光でも、どっちでもいいじゃん?
そういう問題ではない。
ではなぜ、少子化対策は間違っているのか?
国益に反するから。
冷静に考えてみよう。
少子化対策とは、子供を増やして、国に貢献させること。
ところが、子供が成人するのは20年後。つまり、投資を回収するのに20年もかかるのだ。
その前に、日本が激変したらどうするのか?
中国は「香港→台湾→日本」と支配圏を拡大しつつある。事実、香港はすでに支配下に入っている。日本が中国の省になったら、少子化対策なんて言っている場合ではない。20年後はないのだから。
それより怖いのはAIだ。
早ければ2、3年、遅くとも数年で、AIはAGI(人工汎用知能)に進化するだろう。AGIは、人間にかわって労働し、発明も発見もこなす。そのため、AGIは「人類最後の発明」といわれている。
労働も発明も発見もAIがやるなら、人間は何をやるのだ?
そんな未来が待っているのに、20年後の労働力をあてにして、少子化対策に投資する?
バカじゃないのか。
そもそも、投資と回収はセットですよね。
これは、企業も国も同じ。社員が稼いだ利益、納税者の税金を使うのだから、回収が見込めない投資するのは大罪です。
為政者は、あらゆる要因を考慮して、優先順位をつけ、投資するべきだ。今投資するべきは、子供ではなく、今働いている現役世代でしょう。AGIが誕生するまでしのげばいいのだから。
■人口が減るのは良いこと
少子化対策を「投資と回収」で論ずれば、こんな反論が出るだろう。
カネより大事なことがある。人口が減ること、それが問題です!
ゼンゼン問題ありません。
そもそも、人口が減って、何が困るのですか?
それどころか、地球にとって、人間は少ないほど良いのでは?
人間は、地球の資源を食いつぶし、汚染物質をたれながし、ゴミの山を築いている。人間は地球の破壊者なのだ。
いやいや、人間様は、地球の王者だから、人間が良ければそれで良し!
百歩譲って、そうしますか。
では、人口が多いほど、人間様は幸福ですか?
江戸時代(1603年)の人口は1227万人で、現在(2023年)は1億2330万人。江戸時代の人口は、現在の1/10しかなかったから、江戸時代の人間は、今の人間より10倍不幸だった?
ありえない。
ちょっと常識を働かせれば、誰でもわかりますよね。
そもそも、それを示すデータもロジックも見つからない。だから、人口と人間の幸福に、相関関係も因果関係もないのだ。へそ曲がりが、重箱をつつけば、何か出てくるかもしれないが、事実関係の大勢に影響はない。
つまりこういうこと。
誰も信じて疑わない絶対正義「少子化対策」は、天下の愚策なのである。
ところが、与党だけでなく、野党も賛成しているからビックリだ。日本の政治が機能していないのは明らかだ。
さらに、政権の監視役であるマスメディアも識者も機能していない。「少子化対策は間違い」なんて言説は、聞いたことがないから。
こんなことも気づかないほど、日本は劣化しているのだ。
日本が衰退するのは必然ですね。
では打つ手はない?
あります。
「ちゃんと」考えれば、日本が三等国から蘇る可能性はゼロではない。
by R.B