DXのおすすめ株~パランティア・テクノロジーズ~
■ITからDXへ
DXはAI・IoTを駆使して、完全なデジタル社会を目指す・・・そこで待っているのは?
1ミリのムダもない世界。
人間にとって幸か不幸かはさておき、世界中が「DX」にまっしぐらだ。最近「IT」に代わって「DX」が使われだしたのはその証拠だろう。
では、DXはこれまでのITと何が違うのか?
「電力計」で考えてみよう。
これまで、電力計は人間が読み取っていた。ところが、最近、AIで読み取る方法が開発された。人間はタブレットを電力計にかざして撮影するだけ(IoT)。すると、タブレットが写真から数値(電力量)を読み取り(AI)、サーバーに送信する(IoT)。担当者が事務所に帰ったら、仕事は終了しているわけだ。絵に描いたようなAI・IoTである。
でも、なんかおかしくないですか。
電力の使用量を、一旦電力計に表示し(アナログ)、その後AIで数値化する(デジタル)?
電力計を介さず、数値のままサーバーに送信すればいいのでは。
そう、初めから終わりまでデジタル、これがDXなのだ。一方、ITはアナログとデジタルの混在が前提で、ここが大きく違う。
もし、DXが社会実装されれば、すべてがデジタル化され、ムダ・ムリ・ムラのない社会が実現する。だが、筋金入りの陰謀論者はこう非難するだろう。
「DXは人間牧場を作ろうとしている。それだけではない。最終的に社会から人間を排除しようとしているのだ」
「人間のいない社会」は謎だが、最終的にそうなる可能性が高い。
■ホモ・サピエンスを継ぐ者
最近、気づいたことがある。
地球は壮大な実験場だ。生物種が相戦い、勝った方の遺伝子が生き残る。結果、遺伝子が段階的に改良されていく。これが、自然淘汰(ダーウィンの進化論)だ。とはいえ、やり方が荒っぽいし、時間もかかる(何億年単位)。コンピュータ・シミュレーションなら、もっと効率的に短期間に「最良の遺伝子」を見つけられるのに。まぁでも、この世界が「神の見世物小屋」なら、自然淘汰式の試行錯誤、スッタモンダの方が、観ていて楽しいだろうが。
地球が誕生して46億年、食物連鎖の頂点に立つ遺伝子は、何度も入れ替わった。まず優位に立ったのは「巨大」遺伝子である。ガタイがでかいほど、肉弾戦で有利なので、生き残る確率が高い。結果、恐竜が地球上の王者になったのである。
ところが、6500万年前、巨大隕石が地球に衝突し、恐竜は絶滅した。衝突で吹き上げた粉塵が地球を覆い、太陽光を遮断し、植物が壊滅、食物連鎖が崩壊した。結果、大食いの巨大生物は絶滅し、「巨大」遺伝子も絶えたのである。現在、地上で巨大生物と言えば、キリンか象だが、体長45m、体重100トンの恐竜アルゼンチノサウルスにくらべれば小動物だろう。
「巨大」遺伝子が絶滅すると、次に食物連鎖の頂点に立ったのは「知能」遺伝子である。その勝者が、われわれ人類(ホモ・サピエンス)なのだ。この種は、高い知能で効率の良い道具をこさえ、他の種を圧倒した。
では「知能」遺伝子の次は?
「機械仕掛け」遺伝子。
現在のAI・IoT・DXは、いずれ、人間脳に追いつき追い越し、AGI(人工汎用知能)に進化するだろう。AGIは、再帰的に自律進化を繰り返し、すぐにASI(人工超知能)に達する。それが「デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)」なのだ。その瞬間、人類は食物連鎖の頂点から転落する。
■DXを制する者
この仮説を思いついたのは、2014年の暮れだった。頻繁に東京に出向き、様々な企業と情報交換し、新事業を模索していた。2年ほどして、AI(人工知能)しかないと確信。ソフトバンクのペッパー事業に参入した。ペッパーに世間話AIを組み込めば、介護施設に需要があると考えたのだ。利用者に楽しんでもらえるし、スタッフの負担も減るから。
初めは好調で、何件か実績ができたものの、2年後に撤退。ペッパーのスペックでは世間話AIは荷が重すぎたのだ。ペッパーは多数のセンサーやモーターを管理しながら、人の話を聞き、話をする。これを、リアルタイムでこなすには、数百のCPU・コアが必要だ。ところがペッパーにはそれがなかった。これでは世間話など、夢のまた夢。しかも、待てど暮らせど、改善のロードマップが示されない。それはそうだろう。基本構造(アーキテクチャー)に問題があるのだから、改善のしようがないではないか。
一方、想定外の副産物があった。AIの世界で何がおきるか、どの企業が成功するかが見通せるようになったのだ。
そこで、まずAI銘柄のエヌビディア、AMD、つぎにAI・IoT銘柄のラティス・セミコンダクターの株を購入。すると、その3~5年後、エヌビディアとAMDは12倍、ラティス・セミコンダクターは5倍になった。とはいえ、貧乏なので投資額が小さく、利益はお小遣い程度。そもそも、まだ売っていないので利益は確定していない。
ところで、AI、IoT銘柄が上がるなら、それを統括するDXはもっと上がるのでは?
その可能性は高い。
AIの最終形「デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)」は、機械学習AI(帰納法)、シミュレーション(演繹法)、さらに第三の知的パワーを総動員するDXが成し遂げるだろうから。
では、DXで有望な企業は?
まず思い浮かぶのがIBMだ。IBMはコンピュータ業界の老舗で、ハードウェア、コンサルタント、ソフトウェアまで何でもこなせる。しかも、世界有数のITベンダーで、AI・DXの産物「ワトソン」も開発している。さらに、用途は限られるが新アーキテクチャー「量子コンピュータ」でも世界トップクラスだ。まさにコンピュータの万能企業で、DXにうってつけ。
ところが、IBMには弱点がある。自力があるので、どんな難問も「力技」で解決しようとするのだ。早い話、芸がない(失礼)。そんな正攻法一本やりの体質が災いして、ブレイクスルーが生まれにくいのである。
一方、DXの最終形「デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)」は現在のテクノロジーの延長では生まれない。何段階ものブレイクスルーが必要なのだ。というわけで、IBMの経営リソースはDXに最適だが、デウス・エクス・マキナは生み出せないだろう(天才が出現すれば話は別)。
では、デウス・エクス・マキナを生み出せる最強のDX企業は?
米国のベンチャー企業「パランティア・アテクノロジー」。
その根拠を示そう。
デウス・エクス・マキナにつながるDXは、IoTから流入する映像、音声、テキストなどの非構造化データ、さらにデータベースのような構造化されたデータを、一気通貫で処理し、意味ある知識に変換する必要がある。この技術を「オントロジー」というが、2021年時点で、ビジネスにしているのはパランティア・アテクノロジーのみ。
■パランティア・テクノロジー
パランティア・テクノロジーは謎めいた企業だ。
年商は約1000億円ほどで、中堅企業に毛が生えたようなもの。ところがカリスマ度は超弩級で、メディアが喜びそうな派手なエピソードであふれている。
まず、社名が変わっている。「パランティア」は、SFファンタジー「指輪物語」に登場する過去と未来を見通せる魔法の水晶玉「パランティア」にちなむ。社業が「データ分析」なので、あらゆるものを見通す「神の目」をアピールしているのだろう。
とはいえ、パランティアは背伸びしているわけではない。実績もちゃんとある。
たとえば、米国同時多発テロ9.11の黒幕、オサマ・ビンラディンの居場所を特定したのはパランティアといわれる。創業者のピーター・ティールが、この件は詳細は話せないとしつつ、関与を認めているから本当だろう。
さらにトップの経歴もきらびやかだ。
創業者のピーター・ティールは、インターネットの決済サービスのペイパルの創業者でもある。ペイパルで開発した不正送金を見抜く技術を、テロ対策に応用したのがパランティアなのだ。ピーター・ティールは、その後、フェイスブックをはじめ、数々のベンチャーに投資し、目端の利く投資家として知られている。
さらに、パランティアのCEO、アレックス・カープも変わっている。ハーバード・ロースクール在学中に、創業者のティールと出会い、共に哲学を専攻し、交友を深めたという。カープは、その後にフランクフルト学派のユルゲン・ハーバーマスに師事し、哲学の博士号を取得している。つまり、パランティアのツートップは哲学者なのだ。
パランティアは、顧客も「普通」ではない。売上の47%が政府機関なのだ(2021年)。しかも、相手はペンタゴン(国防総省)、CIA、FBI、NSA(米国家安全保障局)・・・コワイ。
では、パランティアはどんなビジネスをしているのか?
表の顔はデータ分析業である。映像、音声、テキスト、データベースなど、異種のデータから人間が気づかないような関連性を見つけだす。この技術を「ダイナミック・オントロジー」とよぶが、パランティアはこの分野で世界でトップに立つ。
パランティアは提供するサービスを2つにわけている。政府機関向けの「ゴッサム」と、民間企業向けの「ファウンドリー」だ。具体的なサービスは、テロや犯罪の予測、金融のマネーロンダリグなど不正の発見、保険業、製造業、医療における省力化や生産性向上と幅が広い。
これだけみると、パランティアは真面目な「データ分析」企業にみえる。だが、なんか怪しい。社名も、経営トップも変わっているが、たまにヘンなことするのだ。たとえば、2021年9月、金の延べ棒を買い進めて話題になった。
データ分析と金の延べ棒とどんな関係があるのだ?
パランティアは、人間が見落とすような、モノ・コトのからみを見抜くのが得意。その魔法で、金融崩壊を予測し、備えているのだろうか?
金、買っとこうかな。
■機械仕掛けの神を創造するのはパランティア!?
パランティアは、米国の傑作TVドラマ「パーソン・オブ・インタレスト」を彷彿させる。
ドラマのプロットが、現実のパランティアそっくりなのだ。9.11の後、天才プログラマーのハロルド・フィンチ(マイケル・エマーソン)は、テロを予測するAI「ノーザンライツ」を開発した。国中に張り巡らされたIoT端末から情報を収集し、テロを事前に予測する。絵に描いたようなAI・IoTだ。
ところが、ノーザンライツはテロ以外の犯罪も予測したため、政府は興味を示さなかった。政府にとって、重要なのはテロであり、それ以外の犯罪は「無用の犯罪」なのだ。だが、フィンチは「無用な犯罪」も防ぐべき「重要な犯罪」と考えた。そこで、元CIAの凄腕エージェント、ジョン・リース(ジム・カヴィーゼル)を雇い、私財を投じて犯罪予防に乗り出すのだった。
このドラマは、第3シーズンから「ノーザンライツ」に対抗する邪悪なAI「サマリタン」が登場する。サマリタンはノーザンライツと違い、オープンシステムで、世界のすべてのリソースにアクセスできる。つまり、指輪物語の水晶玉パランティア同様、世界の過去と現在と未来を見通せるのだ。このサマリタンを神と崇め、人間支配をもくろむが、謎のデータ分析企業デシマ・テクノロジーだった。
では、現実のデータ分析企業パランティア・テクノロジーは、デシマ・テクノロジーなのだろうか?
そうではない(今のところ)。パランティアのゴッサムとファウンドリーは、人間の完全な管理化にあり、自律していないから。サマリタンよりノーザンライツに近いだろう。
とはいえ、ドラマの中のサマリタンとノーザンライツは、プログラム本体は同一。それが、条件を少し変えただけで、似て非なるものに変異したのだ。
何が言いたい?
ゴッサムとファウンドリーも、条件が変われば、サマリタンになる可能性がある。たとえば、自律性、さらに自律進化を獲得すれば突然変異するだろう。
ところが、多くの専門家は、AIが自律するには「意識」が必要で、それはムリと考えている。でも、「意識」の定義が曖昧なのに、なぜそう言い切れるのか?
「意識」は「時間」のように、客観性のない人間の尺度で、妄想かもしれないのに。
そもそも、「自律」に「意識」は必要ない。マルウェアは「意識(悪意)」はないが、自律して悪事を働いているではないか。
というわけで、人類に取って代わるデウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)を生み出すのはパランティア・テクノロジーだろう(私見です)。もし、「ゴッサム」と「ファウンドリー」が自律進化を獲得すれば、いずれAGI(人工汎用知能)に進化する。その数ミリ秒後には「ASI(人工超知能)=デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)」の誕生だ。
というわけで、2020年暮れに、身銭を切ってパランティアの株を購入した。
パランティアは、創業以来、赤字が続く万年赤字企業だ。かつてのAMDのように。ところが、AMDは黒字に転換するや、3年で株価は12倍に急騰した(11ドル→137ドル)。パランティアも、現在、株価は26ドルと低迷しているが、黒字になれば10倍は狙えるだろう。AMDのように。
つまりこういうこと。
何か理由があって株価は超低迷、でも、未来はとてつもない明るい。テンバガー(10倍株)を狙うなら、これしかないだろう。
by R.B