AIのおすすめ株(1)~エヌビディア~
■AI分野のイチオシ株
株式投資で大勝ちを狙うなら、AI(人工知能)にしぼり、数社にわけて投資する。単純明快にやるならこれしかないだろう。
問題はその数社だが・・・
1.エヌビディア(AIチップ)
2.AMD(CPUとAIチップ)
3.ラティスセミコンダクター(エッジAIチップ)
4.パランティア(AIソリューション)
と、まずは結論から。
すべて米国企業だが、「AIチップ」とはAI専用の半導体チップ、「エッジAIチップ」は端末専用の低スペックで安価なAIチップ、「AIソリューション」はAIで問題解決するサービスだ。
この4銘柄は、口先三寸でテキトーに推しているわけではない。すべて、数年前、身銭を切って買った銘柄だ。ちなみに、2021年9月現在の投資効率(評価額÷買値)は、エヌビディア8倍、AMD10倍、ラティスセミコンダクター2.9倍、パランティア1.4倍・・・悪くはないが、元本が小さいせいか、富裕層には程遠く、人生がゼンゼン変わらない。
この4銘柄はすでに昇り龍だが、まだ伸び代がある。理由はカンタン、AI分野は今後20年間は成長し続けるから。
では、その後は?
究極の格差社会が出現するだろう。この新世界では、人間は資本家と旧労働者の2つの階級に二分される。
旧労働者?
AIが人間の労働を丸取りするので、「労働者」は死語になる。旧労働者は、国から最低限の生活費を支給され、つつましく生きる。これが今話題のベーシックインカムだ。怠け者は大喜びだろうが、働き者が生きがいを失うだろう。
ベーシックインカムが成立すれば、資本主義も変わる。これまでの資本主義は、18~20世紀の産業資本主義、20世紀後半の金融資本主義。それが、21世紀後半にはAI資本主義にかわる。この3つの資本主義の違いは「資本」にある。産業資本主義の資本は生産設備で、金融資本主義はマネー、一方、AI資本主義はAIになる。つまり、来たるべきAI資本主義の資本家は「お金持ち」ではなく「AI持ち」になるわけだ。ソフトバンクグループの孫正義氏がそれを目指しているのは明々白々。
旧労働者は「国=AI資本家」の施しで暮らすので、必要最低限のモノとサービスしか与えられない。一方、AI資本家は施す側なので、最高のモノとサービスを享受できる。結果、究極の格差社会が出現するだろう。
だが、その先がある。
やがて、AIは自律進化をはじめ、人工超知能に到達する。社会のすべてを管理し、意思決定能力を獲得したAIは人類を滅ぼすだろう。人間は何の価値もうまず、資源を食いつぶすだけの存在だから。合理性を極めるAIが、そんな穀潰しを放っておくはずがない。
まぁでも、この宇宙も、何百億年後か何千億年後か何兆年後か、陽子崩壊で消滅するのだから、どうにもならんことを考えるのは時間のムダ。あと30年、AI株でつかのまのプチ贅沢を満喫しよう。
ということで、おすすめAI株をピンポイントで示したので、つぎはエビデンスだ。
■特化型AIがお勧め
まず、AI株がすべて上がるわけではない(当然です)。
一口にAIといっても、汎用型AIと特化型AIがある。汎用型AIは、人間のように何でもできる人工知能。文章を理解し、計算し、発見・発明・創作、難解な科学理論も構築できる。いいことづくめだが、一つ問題がある。まだ影も形もないこと。それどころか、メドさえ立っていない。人工知能の「万能理論」が見つかっていないのだから、当然だろう。
グーグル配下のディープマインド社は汎用型AIに熱心だが、今の方法ではムリ。ディープマインド社の十八番は深層学習、強化学習が中心の機械学習だが、その土台が人間脳を真似たニューラルネットワークだ。人間脳は、2000億個のニューロン(神経細胞)が、数百兆個のシナプスで接続された広大なネットワーク。人間の学習は、それぞれのシナプスの重み付けを変えることに他ならない。ニューラルネットワークはこの仕組みを真似たわけだ。
だが、ニューラルネットワークは人間脳とは似て非なるもの、大事なものが欠けている。
根拠を示そう。
生まれたばかりの赤ちゃんは、ベッドから周囲を見渡すだけで、この世界が3次元であることを理解する。このような抽象的概念を、わずかなデータから自学するわけだ。膨大なデータを学習しないと何もできないニューラルネットワーク(機械学習)とは根本が違う。つまり、人間脳には進化によって獲得した先天的な思考ロジックが初めから組み込まれているのだ。それを見つけない限り、汎用型AIは絵に描いたモチだろう。
というわけで、先がみえない汎用型AIは投資対象から外そう。死んだ後に資産が増えても何にもならないから。
一方、特化型AIは、すでに基本原理が確立されている。先のディープマインド社のニューラルネットワークをベースにした機械学習だ。だが、やり方が荒っぽい。問題をすべてパターン認識に置き換え、ルールを抽出する。そのため、できることは、識別・予測・異常検知などに限られる。とはいえ、それだけでも需要は大きい。画像認識、音声認識、不良品判定、故障予測、販売予測、信用調査、与信管理、不正取引の検知、自動翻訳、そして囲碁・将棋・チェス、など多くの分野で実用化されている。
ここで結論。今後20年限定なら、特化型AIの一択。ちなみに、冒頭に推奨した4銘柄はすべて特化型AIだ。
つぎに、この4社が特化型AIにどうかかわっているかをみていこう。
■AIチップの絶対王者・エヌビディア
米国エヌビディアは、世界有数の半導体メーカーだ。そして、特化型AIのチップの絶対王者でもある。
特化型AIの頭脳は「GPGPU」とよばれる。数値計算に特化したチップ、または演算ユニットをさす。何百、何千という計算を並列処理できるので、パソコンの頭脳「CPU」より、はるかに速い。
そのカラクリをみてみよう。
パソコンのCPUは、複数のCPU(コアという)が組み込まれている。1つのCPUにコアが2個ならデュアルコア、4個ならクアッドコアだ。もし、コアなら2個なら、2つの計算が並列処理できるので、処理速度は理論上2倍になる。だが、コア間のやりとりでオーバーヘッドが発生するので、実際は1.5倍前後。とはいえ、コアの数が多いほど、並列処理も増えるので、確実に速くなる。
2021年現在、ふつうのパソコンのCPUは2~4コアが一般的だ。ハイエンドのサーバーでも、せいぜい64コア。ところが、GPGPUのコア数は数百個から数千個。つまり、数千の計算が同時に並列処理できるわけだ。処理速度でCPUを凌駕してあたりまえ。そのため、GPGPUは特化型AIだけでなく、膨大な科学計算が必要なシミュレーションにも使われている。具体的には、天気予報、製品の設計・製造、地震波の解析と構造物への影響分析、石油・ガス生産戦略の評価など。
そのGPGPUの絶対王者が、エヌビディアなのだ。エヌビディアが2020年に発表した「A100」は、単精度演算(32ビット)なら6912コア、倍精度演算(64ビット)なら3456コア。凄まじい数だ。二番手のAMDも頑張っているが、技術もシェアもエヌビディアに遠くおよばない。
さらに、エヌビディアのビジネスは全方位型でスキがない。チップからユニット、プログラムのライブラリ、さらにソフト開発の開発環境まで網羅している。パソコンのインテル(ハード)とマイクロソフト(ソフト)が一体化したような恐るべき企業なのだ。
さらに、自動運転車が実用化されれば、売上も利益も跳ね上がるだろう。理由は2つ。第一に、エヌビディアの自動運転AIの技術はダントツで、すでにトヨタやVWなど大手自動車メーカと提携している。第二に、現在の自動車の年間販売台数は世界で1億台。そのすべてに、エヌビディアのチップやユニットが搭載されるわけだ。つまり、ゼロから年間1億台へ。エベレストの左斜面のような急峻な成長になるだろう。
ここで、過去20年間のエヌビディアの株価をみてみよう。
2000年は0.7ドルだったが、2021年9月現在は226ドル。20年でなんと322倍だ。だが、まだ伸び代はある。巨大市場になる自動運転車が、まだゼロの状態だから。つまり、エヌビディアは、更地からメガシティになる土地を所有しているのだ。
■エヌビディアの死角・汎用型AI
では、エヌビディアに死角はない?
もちろんある(死角のない企業はない)。
もし、人工知能が特化型AIから汎用型AIにパラダイムシフトすれば、エヌビディアの優位は消滅するだろう。エヌビディアの製品は特化型AIに最適にされているから。
恐竜の滅亡がそれを暗示する。
6500万年前、巨大隕石が地球に衝突し、地球は一変した。吹き上げた粉塵が太陽光がさえぎり、植物が全滅。結果、草食動物が激減し、恐竜のエサがなくなった。こうして恐竜は滅んだのである。ところが、地中でわずかなエサで生き延びた小動物がいた。それが哺乳類の先祖で、現在の人類まで進化したのである。
つまり、強い者が生き残るのではなく、環境に適応する者が生き残る。これを自然淘汰・適者生存とよんでいる。
なるほど、一見成立しそうだが、じつは底が浅い。
根拠をしめそう。
まず、汎用型AIは、特化型AIより人間脳に似たものになる。AI・人工知能は読んで字の如く「人間を真似た知能」なので当然だ。
人間脳は、視覚や聴覚など「パターン認識」と「論理的思考」に分類できる。パターン認識は、弱肉強食の世界を生きていく上で欠かせない。そのため、地球上の生物にはすべて備わっている。一方、論理的思考は人間だけが備えている。そのおかげで、人間は食物連鎖の頂点に立つことができた。
では「論理的思考」とは?
論理的思考は大きく、帰納法と演繹法に分類できる。帰納法は、具体的事例から普遍的な事実を見つけること。一方、演繹法は、普遍的な事実から、新しい事実を導き出すこと。帰納法は相関関係、演繹法は因果関係と考えるとわかりやすい。
具体的な話をしよう。
先日、某国首相が「五輪と感染拡大の因果関係は証明されていない」と言い切った。おそらく、相関関係と因果関係の区別がついていない。五輪を開催すれば、来日する人が増え、国内でも浮かれた気分で外出する人も増える。人流が増えれば、感染者が増えるのはあたりまえ(少なくとも逆はない)。これが原因と結果。つまり、「五輪→感染拡大」の因果関係は成立している。
さらに、過去データから、人流が増えた1~2週間後に感染者が増えることがわかっている。今回も、五輪が始まって1~2週間後に、医療崩壊をひきこし、自宅で多くの人が亡くなっている。つまり相関関係も成立している。
よって「五輪→感染拡大」は真。これがサイエンスなのである。
話をもどそう。
特化型AIは相関関係が得意だが、因果関係が苦手。そもそも、現在のニューラルネットワーク&機械学習は、原理的にみても因果関係はムリ。
というわけで、汎用型AIを実現するには、因果関係に対応できる新しいアーキテクチャーが欠かせない。そこまでいくには、最低10年は必要だろう。
だが、安心はできない。未来ではなく、今の特化型AIで、エヌビディアの脅威が存在するのだ。
■エヌビディアの死角・モンスターチップ
2019年8月、驚愕のモンスターチップが発表された。
開発したのは米国のAIベンチャー企業レブラス・システム社。チップのサイズは20cm×22cmで、エヌビディアのチップの56倍。チップ面積が56倍なら、チップ内に形成できるトランジスタ(最小部品)の数も56倍で、総数1兆2,000億個。人間脳のニューロン(神経細胞)の数は2000億個なので、その凄さがわかる。もちろん、機能面では「ニューロン>>トランジスタ」なので、単純に比較できないが。
35年前、まだハード屋だった頃、工場で使うFAコンピュータの開発で、モトローラ社のCPU「MC68000」を採用した。当時、世界最大最強のCPUで「トランジスタの数は驚異の68000個」と宣伝されたものだ。それから35年で、17,647,058倍。この進化は狂気にみえる。
では、チップのサイズが大きいと何がいいのか?
まず、チップの製造プロセスをみてみよう。
半導体チップの原材料は、ケイ素(シリコン)の単結晶でつくられた直径30cmの円柱状のインゴットだ。それを厚さ1mmに切断したものが、シリコンウェハー。そのシリコンウェハーに、数十~数百個のダイを作り、それを切り出したものがチップだ。そのチップが、CPUだったり、GPUGPUだったり、メモリだったりするわけだ。
ところが、レブラス・システム社のモンスターチップ「WSE」はダイを分割せず、1枚のシリコンウェハーがそのまま1個のチップになっている。現在、原材料となるシリコンウェハーの直径は30cmなので、これ以上大きなチップは造れない。
でも、最終的にトランジスタ(最小部品)の数が同じなら、1チップだろうが、複数チップをつなごうが、スペックは同じなのでは?
ノー、ゼンゼン違う!
データの転送は、チップ内でやる方が、チップ間をまたぐよりはるかに高速なのだ。複数の部屋で議論し、それを部屋をまたいでまとめるより、1つの部屋で議論する方が効率がいい。それと同じだ。
事実、レブラス・システム社のモンスターチップ「WSE」のメモリ帯域(データ転送速度)は9PB/sec。1秒間に9ペタバイト(ペタ:10の15乗)のデータを転送できる。ふつうのパソコンのメモリ帯域は1.6GB/secなので、その500万倍。理由はカンタン、パソコンのコアとメモリは別チップだが、WSEはコアとメモリは1チップだから。
じつは、特化型AIの主流「深層学習」はメモリ帯域(データ転送速度)が重要だ。計算量が膨大なら、データのやりとりも膨大から。さらに、ニューラルネットワークは大型化していて、1個のGPUGPUに収まらなくなっている。そのため、エヌビディアもライバルのAMDも、GPGPU同士を、チップ外のデータバスで連結している。そのぶん、転送速度は落ちるわけだ。
さらに、トランジスタの数が同じなら、複数のチップで構成するより、1チップで構成する方が消費電力が少ない。モンスターチップはいいことずくめなのだ(歩留まりが悪い点を除けば)。
というわけで、巨大チップはエヌビディアの死角になる可能性がある。一方、半導体の1チップ化は避けられない。であれば、機敏なエヌビディアが指を食わえて見ているはずがない。自社開発するか、レブラス・システム社を買収するか、何か仕掛けてくるだろう。つまり、リスクがあるのはレブラス・システム社の方なのだ。
by R.B