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週刊スモールトーク (第478話) 投資の三大原則「長期・積立・分散」のウソ

カテゴリ : 社会経済

2021.07.09

投資の三大原則「長期・積立・分散」のウソ

■Amazonの奇跡

人生は、案外シンプルなのかもしれない。

西暦2001年にAmazonの株を50万円買ったら、2021年には3億円。ウソみたいだが本当の話。この20年間のAmazonの株価をみてみよう。2001年9月に1株6ドルだったのが、2021年7月には3600ドル。

3600ドル÷6ドル=600倍

50万円×600倍=3億円

計算に間違いはなさそうだ。

ビックリのハイリターンだが、ローリスクの極みでもある。最大のリスクは、Amazonの破綻だが、その可能性は極めては低い。それに、万一破綻しても損失は50万円ですむ。こんなローリスクで、600倍のリターンなら、究極のローリスク・ハイリターンと言っていいだろう。

くわえて、株式投資は敷居が低い。証券会社で口座を開設し、買い注文を出すだけ。しかも、出金は1回限り。50万円は痛いが、1年がかりで積み立てるか、ボーナスでなんとかなるだろう。これで一生分の収入をゲットできるなら、やらない手はない。タイムマシンがあればの話だが。

ただし、重要なことが一つある。

20年間、売らないこと。ところが、これが意外に難しい。もし、株価が2倍になったら、たいていの人は小躍りして売る。さらに、10倍になったら、みんな売るだろう(一部の悪魔のような投資家はのぞいて)。

50万円が500万円!

おーマジか!

でも待てよ、ここで欲をかいて、暴落したら元も子もない。それに、10倍になろうが100倍になろうが、株は現金化しない限り、絵に描いたモチ。その場かぎりの評価額だ。だから株は打ってナンボ・・・こんな真っ当な論理で、99%の投資家は売却する。後々、600倍になるとはつゆ知らず。

ん~、でも、だまされないぞ。Amazonみたない奇跡から、普遍的ルールをでっちあげようとしている。さては、何かもくろんでいる?

ノー。

証券マンではないので、投資家がふえても何の得にもならない。いつものように、世界を合理的に鳥瞰しているだけ。それに、Amazonは奇跡でも例外でもない。

たとえば、パソコンのOSとOfficeの覇者マイクロソフトは、この20年で10倍になっている(26ドル→270ドル)。さらに、スマホの覇者アップルは20年で260倍(0.5ドル→130ドル)。AIチップの覇者エヌビディアは20年で266倍(3ドル→800ドル)。検索エンジンとオンライン広告のグーグルは17年で500倍(54ドル→2500ドル)。じつは、IT、半導体のような成長株(グロース株)は、20年で10倍はザラ、100倍超も珍しくないのだ。

とはいえ、長期保有で損することもある。たとえば、東京電力。福島第一原発のメルトダウン(炉心溶融で、株価が1/10に暴落し、10年たっても復活する気配はない。原子力事故としては、チェルノブイリ原子力発電所事故と並ぶ最悪のレベル7。しかも、廃炉作業が終了するのは、2041年から2051年だという。10年も幅があるのは、先が見えない証拠だろう。

さらに、東京電力は多くの訴訟をかかえ、会社の損失は自立再建のレベルを超える。しかも、電力需要が急増する要因はなく、新規事業で一発逆転も難しい。天才が出現するか、奇跡がおきないかぎり、株価低迷は続くだろう。

というわけで、長期保有は有効な戦略だが、銀の弾丸ではない。例外のない規則はないのだ。株式投資は、いきつくところ、Amazon(幸運)と東京電力(不運)の玉石混交だろう。

なんかメンドー臭そう。それに勝負してコケて、ドカ貧になったらどうするのだ。やっぱり、勤労所得と年金で、地味に生きるの一番かな。

ところが、それも怪しくなっている。

■ジリ貧を避ける方法

現実を鳥瞰してみよう。

2019年、金融庁の報告書が物議を醸し、日本中が大騒動になった。老後年金2000万円問題である。老後、公的年金だけでは2000万円不足するというのだ。ところが、老後どころか、目先も怪しくなっている。日本の経済は低迷し、この20年間、勤労所得は上がっていない。そこへ、新型コロナ・パンデミックが発生し、日本経済を直撃。企業の業績が悪化し、ボーナスは3年連続減少中。失業者は増え、廃業も珍しくない。こんな状況で、どうやって2000万円も貯めるのだ?

解決策はない?

座してジリ貧を待つ、をのぞけば策は2つある。

まず、来るべきベーシックインカムに賭ける。2050年頃までに、人間の労働はAIとロボットに奪われるだろう。マシンは正確性、網羅性、スピードにおいて人間を凌駕するから。しかも、1日24時間、1年365日、文句一つ言わず働く。

いやいや、人間にしかできない高度な知的労働は残るでしょ?

それは的外れ。

人生を振り返ってみよう。これまで、一番の難問を解いたのは学生時代では?

つまり、人間の仕事の99%はルーチンワークなのだ。AIに遠く及ばないRPA(ロボットによる業務自動化)でさえ、事務処理の仕事を奪おうとしている。結果、金融機関で大量リストラが発生したのは周知だ、さらに、クリエイティブなジョブ、さらに戦略・戦術の立案までAIがこなそうとしている。

というわけで、人間はマシン(AI&ロボット)が生む価値を消費するだけ。でも、働かなくてもいいから、人間はハッピーでは?

それはビミョー。

まず、人間は働かずに食うので、贅沢は許されない。国から支給される施し額は、必要最低限の生活費に限られるだろう。つまり、基本的人権は「生存権」のみ。怠け者はさておき、意識高い系、真面目な人は満足しないだろう。つまり、万人がハッピーというわけではないのだ。

一方、マシン(AI&ロボット)を所有する資本家は、みんなハッピーだ。自分のマシンが稼ぐ価値で、贅沢な食事、極上の娯楽、最高の医療サービスを享受できる。さらに、マズローの欲求段階の頂点「自己実現」も思いのままだ。つまり、ベーシックインカム社会では人間の格差は極大化する。

ジリ貧を避けるもう一つの方法は、リスク資産への投資。社会人になったら、一生懸命働いて質素倹約、貯蓄に励み、まとまった資金ができたら、リスク資産に投資する。もし、Amazonのような幸運をつかんだら、定年を待たずにリタイア。これが、今若い世代で人気の「Fire(早期退職)」だ。

最近、株式・投資信託への投資が増えているという。原因は2つ。まず、金融庁の「年金だけでは2000万円不足」報告書が老後の不安をかきたてたこと(紛れもない事実だが)。つぎに、投資の敷居が下がったこと。1万円程度の少額で投資できるし、スマホでカンタンに売買できる。さらに、3つの情報を入力するだけで、最適な投資をリコメンドしてくれるサービスもある。

というわけで、投資のサービスは百花繚乱(ひゃっかりょうらん)。ただし一つ共通点がある。「長期・積立・分散」だ。投資の世界ではなかば常識で、「投資の三大原則」といわれている。金融商品を扱う会社も、投資の専門家ファイナンシャルプランナーも、これに異を唱える者はいない。

だが、この三大原則にはウソがある。

■長期・積立・分散のウソ

長期・積立・分散は、普遍的な原理原則ではない。

まず、長期・積立から。

高齢者に長期・積立・・・ふざけてます?

野村證券の調査によると、株式または投資信託を保有する日本の投資家は2700万人で、平均年齢は61歳だという。半数が高齢者なのに、長期・積立!?

だが、短期売買がいいというわけではない。短期売買とは、株価のわずかの変動を突いて売買する薄利多売方式。プロやAIは、それが専門なので、四六時中、株価に張りつく。しかも専門知識が豊富なので圧倒的に有利だ。特にAIは、超高速取引といって、1秒間に1000回以上の取引ができる。一般投資家に勝ち目がないのは明らかだ。

積立も矛盾がある。株式市場は、誕生してから長期間上がり続けている。であれば、一刻も早くまとめ買いした方いい。安く買えるので、キャピタルゲイン(売買差益)が増えるから。とはいえ、まとまった資金がないなら積立も悪くない。というわけで、積立も場合による。普遍的な原理原則ではないのだ。

そして最後に分散。もし、一本釣りでコケたら全滅。そこで、リスクを減らすため、複数の分野、銘柄に分散投資するわけだ。たとえば、ハイテク株とコモディティ株、成長株(グロース株)と割安株(バリュー株)、日本と米国とアジアという具合。

これなら安心?

とんでもない!

冷静に考えてみよう。

どんなものにも見さかいなく飛びつく、無節操で強欲な愚か者、ダボハゼ、とは言わないが、あれもこれも投資するのは効率が悪い。利益が出る銘柄もあれば、足を引っ張る銘柄もあるから。リスクは分散されるが、儲けも相殺されるわけだ。たとえて言うなら、ルーレットで赤と黒を賭けるようなもの。投資は本来バクチなのに、何をやっているかわからない。本末転倒だろう。

さらに、分散投資は暴落に弱い。分散投資は平均値(インデックス)を買うようなもの。市場全体が下がればいっしょに下がる。一方、市場が暴落しても、下がらない分野、銘柄もある。そこに集中投資すれば、損失は最小限に食い止められる。つまり、集中投資こそが最大のリスクヘッジなのだ。孫子の兵法「攻撃は最大の防御なり」に相通じるかもしれない。

つまりこういうこと。

本命に保険をかけるために、分散投資するのは本末転倒。それに、原資は限られているから効率も悪い。

ではどうすればいい?

驚異的な成長が見込める分野に集中し、3~5の銘柄に分散投資すればいい。更地からメガシティに発展するような分野だ。今なら、人工知能(AI)しかない。超成長分野なら、投資した銘柄のうち、1つや2つは大成功するだろう。Amazon、アップル、エヌビディア、グーグルのように。1つの銘柄が100倍超なら、残り全滅でも大きな利益がでる。それどころか、すべて大化けする可能性もある。

というわけで、「長期・積立・分散」にはウソがある。キャッチーな語呂合わせや、大雑把な傾向をうのみにして、突っ走るのは失敗のもと。誰がなんと言おうが、自分の頭で考え考え抜いて、その結論に従うべきだ。それで大失敗しても、あきらめがつくから。

by R.B

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