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週刊スモールトーク (第352話) 確率のウソ(3)~確率の正体を暴く~

カテゴリ : 社会科学

2017.03.12

確率のウソ(3)~確率の正体を暴く~

■地震とカジノ

地震予知で・・・

「10年以内にマグニチュード8以上の地震が発生する確率20%」

は何の意味もない(南海トラフ)。

「1年以内に99.99%」ならすぐに引っ越しだが、「10年で20%」で一体何をしろと?

そもそも、確率は「ん万回試したときの事象の比率」にすぎない。「次の1回」を予測する指標ではないのだ。

事実、発生確率が高いとされる「関東」と「南海トラフ」はいまだに起こらず、発生確率が低いはずの神戸と熊本に大地震が発生した(1995年1月・阪神淡路大震災、2016年4月・熊本地震)。

だから、地震予知では「ん万回の確率」より「次の1回」が重要。

ところが、この世界は奥が深い、その逆もあるのだ。

「次の1回」はドーデモよく、「ん万回の確率」がすべてという世界。

一体どこの世界?

カジノ・・・

カジノといえばラスベガスだが、スケールではマカオの方が上。カジノ収益で4倍の差をつけているのだ。ちなみに、その上がりのほとんどは中国人が貢いでいるという・・・

中国人は、小難しいカードゲームには目もくれず、「大小」にあけくれる。「大小」とは、3つのサイコロの出目で勝ち負けを競うゲーム、早い話、丁半バクチだ。

夜どおし大騒ぎで興じ、大勝ちしようものなら、ホテルの部屋に帰ってドンちゃん騒ぎ。その雄叫びは分厚い壁を突き抜け、ホテルの回廊にこだまする・・・皮肉でも、推測でもない、すべて実体験なのだ(マカオのホテル)。

とはいえ・・・

それをのぞけば、マカオはいい国だ。

基本、カジノの街だが、観光地としても秀逸。というのも、面積あたりの世界遺産の数は世界一なのだ(1日あればすべて観光できる)。

マカオは華やかな歴史に彩られている。

16世紀なかば、ポルトガルは、中国の明朝からマカオの居留権をえ、19世紀末に植民地化した。その後、1999年に中国に返還され、現在は特別行政区になっている。

そのため、マカオの街並みは、ポルトガル風と中国風が混在し、独特の世界観をかもしだしている。

そして、何より料理がうまい。

なかでも、ポルトガル料理は最高だ。日本では、スペイン料理のオマケ的存在だが、ビミョーに違う。ポルトガル料理の方が、甘辛ひかえめで田舎風、庶民的な味がする。日本人の口にあうと思う。

一番のお気に入りは、お米をトマトで煮込んだリゾット・・・何度も食べても美味しい(2回やろ)。

■確率は黄金の数字

話をカジノの確率にもどそう。

カジノは、言わずと知れた「胴元(カジノ)Vs.客」の壮絶なマネーバトル。

ただし・・・

客に勝ち目はない。たまに勝つこともあるが、回数をこなせば必ず負ける。

回数をこなせば必ず・・・

ちょっと待てよ。

回数をこなせば必ず=100%的中、って確率のことでは?

ひょっとして・・・

胴元が勝つ確率>客が勝つ確率

に設定されている?

ビンゴ!

だから、回数をこなせば、客が負けてあたりまえ。

そして、ここが肝心なのだが・・・

胴元は回数をこなせる立場にある。毎日、客をとっかえひっかえ、ほぼ「無限回」できるから。つまり、最終的には勝敗は確率に合わされ、胴元が勝つ。

では、客に勝ち目はない?

ノー!

必勝法はないが、大負けしない方法がある。2、3万円勝ったら、さっさとやめること。そのお金で、ポルトガル料理を食べれば、そりゃもうご機嫌。

要は欲をかかないこと。それさえ守れば、楽しいマカオの旅になるのだ。

ちょっと待った!

わざわざマカオまで行って、2万円勝ってやめる?

そんな威勢のいいことを言ってるから、大負けするのだ。

ズルズルやっていると、ミニマムベット(掛け金最低)でも10万円は負ける。マックスベット(掛け金最高)なら、数十万円前後。負けが込んで我を忘れると200~300万円・・・ホントだぞ

ただし、これは日本人の話。

マカオの主役、中国人ともなると、負けっぷりが凄い。一晩で「1億円」負ける人もいるというのだ(現地で聞いた話)。さすが、大陸生まれの大陸育ち、太っ腹ですね(そういう話ではない)。

もっとも、それが「死に金」というわけではない。カジノやホテルで働くスタッフの給料となり、生活をささえているから。だから、立派な社会貢献(スった本人はそんなつもりはないだろうが)。

というわけで、カジノに出陣する前に、カジノ必勝法(大負けしない方法)をご覧あれ。

ここで、カジノの確率を整理しよう。

確率は、試行回数が多いと「99.99・・・%」的中する。

だから、試行回数が無限の胴元(カジノ)にとって、確率は「黄金の数字」なのだ。

だってそうではないか。

ほんの少しだけ、

胴元の勝つ確率>客の勝つ確率

に設定しておけば、経営が成り立つのだから。

つまりこういうこと。

確率は、「次の1回」はサッパリだが、「ん万回」なら九分九厘的中する。

よけい確率がわからなくなった・・・

■確率論の大家・ラプラス

確率には、数学的確率と統計的確率がある。

数学的確率は理論で計算した「理論値」。統計的確率は実験で得た「実験値」。

統計的確率は実験まんまなので、数学的確率にフォーカスしよう。

まずは、確率論の大家ラプラスの理論を紹介する。

ラプラスによれば「数学的確率」とは・・・

「どの事象も、他の事象より起こりやすいと期待させないとき、それに好ましい場合の数と、すべての可能な場合の数に対する比である」

?!?

これは忘れていい。ラプラスは天才の世界の住人だが、カンタンなことを難しくいう天才でもあるから。

そこで、ラプラスのチンプンカンを、まるっとまとめると・・・

コインを投げると、出目は「表」と「裏」の2つ。よって、起こりうるすべての事象は「表+裏=2」。つぎに、コインをマジマジ眺めると、とくに表が出やすいとか、裏が出やすいとかがなさそう。その場合、

表が出る確率=表が出る事象の数÷すべての事象の数=1÷2=1/2

あたりまえじゃん・・・そんなカンタンなことを、なんでこんな難しくいうの?

そりゃあ、数学だから。

というわけで、ラプラス大先生の理論によれば、表が出る確率は「1/2=0.5」。

そこで、実際にコインを投げてみると・・・

表がつづけて3回出たり、1回も出なかったり、確率「1/2」にはほど遠い。

ところが、2万4000回投げると表が出る回数は1万2012回(統計学者カール・ピアソンの実験)。

誤差「1/1000」で確率「1/2」に合致する。

つまり、確率は「1回」ならあてにならないが、「ん万回」なら100%的中するといっていいだろう。

じつは、ここに「確率の正体を暴く」ヒントがある。

■確率の正体

そこで、ズバリ、確率の正体とは?

確率は「未来予測の指標」ではなく「スペック(仕様)」なのだ。

コイン投げで説明しよう。

コインのスペックは、重量、体積、形状、材質といろいろあるが、「表と裏どっちが出やすいか」もスペックの一つ。それを表す指標が確率なのだ。

コインは、表と裏がシンメトリック。だから「表と裏は同等に出やすい」がスペックなのである。

ただし、実際にコインを投げると、その時の状況で、表が出たり裏が出たり、「スペック(確率)」と一致するとは限らない。

ところが、回数が多いと「現実」は「スペック(確率)」に収束する。

このような「現実」と「スペック」の関係は枚挙にいとまがない。

たとえば、陸上100m走・・・

100年に一度のスーパースターのウサイン・ボルト。最近の実績から「ボルトのスペック(仕様・性能)」は9.8秒前後と考えていいだろう。

ところが、あんな天才でも、走るたびにタイムはバラつく。

調子がよくて追い風なら自己ベスト「9.58秒」を切るかもしれない。一服盛られて向かい風なら10秒台。靴のヒモがほどけてスッテンコロリンなら、20秒台もあるだろう。

つまり、天才ボルトでも、「次の1回」はスペックどおりとは限らない。しかし、何十回、何百回も走れば、必ずスペックに収束する。

これが「確率(スペック)」と「次の1回(現実)」の関係なのだ。

というわけで・・・

「確率」は、未来を予測する魔法の数字ではない。人間、動物、機械、自然・・・この世界の「カタログ・スペック」なのである。

《完》

by R.B

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