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週刊スモールトーク (第316話) 21世紀の資本主義(3)~Airbnb(民泊)~

カテゴリ : 社会経済

2016.01.16

21世紀の資本主義(3)~Airbnb(民泊)~

■ホテルから民泊へ

欧米を中心に、ジミな資本主義が広がっている。

「シェアリングエコノミー」・・・直訳すると「共有経済」。

読んで字のごとく、商品を「所有」するのではなく「共有」する。

具体的には、遊んでいる資産(家、マイカーなど)や、空いた時間を活用してお金儲けする。商品をシェア(共有)するため「シェアリングエコノミー(共有経済)」とよんでいるわけだ。

このような「私物で小遣い稼ぎ」はこれまでにもあった。ただし、ほとんどが私的な取引。ところが、「シェアリングエコノミー」は一般に広く公開されたビジネスなのだ。

すでに成功例もある。世界規模で拡大している「Airbnb(エアビーアンドビー)」と「Uber(ウーバー)」だ。

まずは、Airbnbだが、「民泊」を支援するサービス。

「民泊」とは、個人の持ち家やマンションを宿泊施設として提供すること。たとえば、子供が成長して独立すれば部屋が空く。そこで、空いた部屋をホテル代わりに使うわけだ。

でも、子供が遊びに来たら泊まる部屋がない・・・は無用な親心。子供は独立すると家に寄りつかなくなるし、たまに来ても日帰りですよ。

というわけで、民泊の提供者は、空き部屋を有効活用できるし、小遣いも稼げるので、一石二鳥。

一方、「民泊」は利用者側にもメリットがある。ホテルや旅館よりも安く宿泊できるから。

そこで、「部屋の提供者」と「部屋の利用者」をマッチングするウェブサービスが登場した。それが「Airbnb」なのである。

二つ目の成功例はUber。車の「ライドシェア(相乗り)」を支援するサービスだ。

元々、スマホを使ったタクシーの配車サービスだったが、一般のマイカーも利用できるようになった。

具体的には、一般人が所有するマイカーをタクシー代わりに使う。ただし、マイカーそのものを貸し出すわけではない。オーナーが自分で運転してお客を運ぶ。複数客の「相乗り」もあるので、「ライドシェア」とよばれている。そのドライバーと利用者をマッチングするウェブサービスが「Uber」なのだ。

欧米では、AirbnbとUberはすでに市民権を得ている。しかも、ニッチなマーケットではなく、マスマーケットとして。そのため、既存のホテル・旅館やタクシー会社は警戒感を強めている。

というわけで、資本主義に新しい潮流「シェアリングエコノミー」が始まった。それを牽引するのが、Airbnb(民泊)とUber(車の相乗り)なのである。

では、この2つのサービスを個別にみていこう。

■Airbnb

Airbnb(エアビーアンドビー)は「民泊」を仲介するサービス。具体的には、ホスト(家を貸す側)とゲスト(家を借りる側)をマッチングするウェブサイトを運営している。

ホストは空いた部屋で小銭を稼げるし、ゲストはホテルや旅館よりも安く宿泊できるので「win-win(ウィンウィン)」・・・といいたいのだが、そうでもない。

ホテルや旅館は、商業施設なので、会社のルールで運営されるが、民泊はホストの腹一つ。もし、ホストが性悪だったら、どうするのだ?

サービスが悪いどころか、金品を奪われるかも、いや、命だって危ないぞ・・・と妄想で頭がいっぱいになり、おちおち寝ていられない。

東南アジアに出張しまくりの知人は、就寝中に天井からでかいトカゲが落ちてきて、おちおち寝ていられない、とボヤいていたが・・・

どっちがマシ?

究極の選択だが、それは問題ではない。宿泊料を払っているのに「寝ていられない」ことが問題なのだ。

一方、ホスト側にも不安はある。民泊は個人宅なので私有財産がたくさんある。ゲストが犯罪者なら、財産を持って行かれるかも・・・

というわけで、「win-win」どころか「lose-lose」になりかねない。

そこで、Airbnbでは、ホストもゲストも、事前に個人情報を登録することになっている。電子メールや電話番号はもちろん、政府が発行する身分証明書のスキャンも必要だ。さらに、宿泊料はもちろん、周辺情報からゲストのユーザーレビューも公開されている。

一方、Airbnbは、安いだけがとりえではない。個人経営のペンションのように「アットホーム」をウリにすることもできるのだ。

というわけで、Airbnbはすでにビッグビジネスになっている。現在、192カ国の33,000の都市で、200万以上の宿が提供されている。これは、世界最大ホテルグループの客室数を凌駕するというから、ホテル業界がビビってあたりまえ。

■日本のAirbnb

ところで、日本はどうなのか?

2015年、Airbnbを利用して日本に宿泊したのは100万人。ところが、ホストの数はパリの6万6000、ニューヨークの4万3000にくらべ、東京は1万と少ない。

日本を訪れる観光客が少ないから?

とんでもない!

日本を訪れる外国人観光客は、この3年間で2倍に急伸している。しかも、2015年は1973万7400人で、3年連続で過去最高を記録。2000万人を突破するのは時間の問題だろう。だから、訪日旅行客相手のインバウンドビジネスは大盛況なのである。

ところが・・・

そのあおりをくって、ホテルの宿泊料金は高騰するわ、予約は取りにくいわ、ビジネスマンは大迷惑なのだ。

ではなぜ、宿泊施設が不足している日本で、Airbnbは普及しないのか?

「旅館業法」が民泊を制限しているから。民家やマンションを有償で貸し出す場合、旅館業で定められた規定をクリアし、届け出が必要になる。ところが、Airbnbのホストのほとんどが無届け。

なんで?

メンドー臭いから。

人を宿泊させるのに、なんでわざわざ届け出なきゃいけないのだ?

日本は規制が多すぎる。だから、日本はダメなんだ。なんでもかんでも「お上」!の古い体質は江戸時代とかわらない。そして・・・

「規制緩和」の大合唱へとつづくわけだ。

でも、本当にそうだろうか?

東日本大震災で福島第1原発がメルトダウンし、日本は放射能汚染列島の崖っぷちに立たされた。

当事者の東京電力は「想定外でした」の一言で免責になった感があるが、今回のような大津波は過去に一度ならず確認されている。それでも想定外と言い切るのだから・・・そんな輩(やから)のために「規制」は必要でしょう!!

国の規制がないと、企業は「利益>安全」、つまり、私利私欲に走る。人の命より、自分の給料の方が大事というわけだ。だから、危険きわまりない原子力を、安価に作ろうとする、結果、チープな原発ができあがり、福島第1原発事故を引き起こしたのである。ところが、原発事故はそれだけではすまない。後遺症が何千年、何万年もつづくのだ。

■規制緩和の幻想

こういう取り返しのつかない愚行を見るにつけ、人間というものを深く考えさせられる。

人間の本性とは一体何なのか?

性善説か性悪説か?の問いかけが生まれたのも不思議ではない。

もっとも、この問いは意味がない。

意味があるのは、法律や制度やルールをつくるときぐらい。どちらを採用するかで結果は大きく違うから。

ところで、正解は?

性悪説!

だってそうではないか?

性善説をとるなら、法律や制度自体がナンセンス。争いごとが起こるはずがないから。

というわけで・・・

規制を「緩和する」という発想は間違っている、「適切に行う」べきなのだ。

では、民泊は規制すべき?

「規制を適切に行う」なら、民泊は「Airbnb」のしばりで十分だろう。

もし、ユーザーレビューに、

「朝起きたら、1万円なくなってたよ~ん」

なんて書き込まれたら最後、もう誰も泊まらない(タチの悪いジョークであっても)。他にも宿泊施設はいくらでもあるから。つまり、競争原理が働いている限り、滅多なことはないのだ。それに、個人情報はバレバレなので加害者はカンタンに特定される。

そもそも、民泊を規制するなら、他に規制する対象はいくらでもあるだろう。

ところが、民泊もいいことづくめとはいかない

マンションの民泊で、マナー悪すぎの中国人が住民に迷惑をかけているのだ。夜な夜な宴会を開いて大騒ぎするわ、共有スペースにゴミをまき散らかすわ・・・

しかし、これは民泊の問題ではないだろう。ふつうのホテルでもよく見かける光景だから。ホテルで中国人が大声でわめき合っているのでケンカかと思ったら・・・ふつうに話をしてました。

だけど、ホテルなら一晩我慢すればすむが、マンションで生活している人はたまらない。明日仕事なのに、毎晩大宴会なのだから。

そこで、提案。

マナーの悪い客には重い罰金刑を課す。さらに、民泊の規制は廃止!

じつは、その試みも始まっている。

東京大田区で、国の「国家戦略特区」を活用し、2016年1月に「民泊」が始まるのだ。また、長旅が好きな人に人気の「ゲストハウス」も東京の観光地を中心に増えている。

これらは、外国人観光客の急増、それにともなうインバウンドビジネス(外国人観光客相手のビジネス)の隆盛による。

さらに、今後は、観光客は東京・大阪から地方都市に分散していくだろう。東京で普通のホテルに2万円払うなら、地方の豪華な宿に泊まる方が得だし、地方には、都市部にはない魅力的な観光スポットがあるから。

そうなると、インバウンド市場は、観光客数3000万人、市場規模5兆円も視野に入ってくる。アベノミクスの成長戦略の一つ「観光立国」が現実になるのだ。

当地、金沢も、北陸新幹線のおかげで、観光客が増えたが、最近は、外国人も目立つ。もちろん、ひときわ目立つ、おっと失礼、ひときわ元気なのは中国人だが・・・やっぱり分譲マンションを買うのはやめとこう。

《つづく》

参考文献:
・これからのお金持ちの教科書、加谷珪一(著)出版社:CCCメディアハウス
・ビジネスモデル2025、長沼博之(著)出版社:ソシム

by R.B

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