■NECの放射能リストラ? 2012.03.03
福島第1原発事故以来、日本はおかしくなってしまった。いや・・・元々おかしかったのが、あの事故で、露見しただけかもしれない。
2月28日、農林水産省は、今年の「コメの作付け」方針を発表した。「1キログラム当たり100ベクレル超えた地域は作付け制限する」を撤回し、「100ベクレル超でも、条件付きで作付けを認める」
え、なんで?
福島県内の農家が打撃をうけるから・・・
やっていることの意味が分かっているのだろうか?
消費者の安全より、生産者の都合を優先する!?
言ってしまえば、
人の命より金儲けが大事・・・
こんなバカな国があるだろうか?
しかも、マスコミも世論も見て見ぬふり。国全体が狂っている、としか思えない。
そして、日本の異常はまだ続く・・・
2012年2月、NECが大規模なリストラを発表した。グループ全体で1万人を削減するという。じつは、NECは、2009年にも2万人をリストラしている。あわせて、3万人?小さな市の人口だ。
そこで、経営成績をみると、
2008年:4兆6000億円
2009年:4兆2000億円(9%↓)
2010年:3兆5000億円(17%↓)
2011年:3兆1000億円(12%↓)
全くぶれることなく急降下、しかも、3年で売上が33%も減っている(利益にあらず)。これはもうムチャクチャ。普通の会社なら飛んでいる。売上が33%減るということは、その会社の1/3が価値がな、
と宣言されているようなもの。何が悪い、どこがおかしい、以前に、会社として成立していない。
さらに重要な点は、NECの顔が見えないこと。具体的には、NECって何の会社?
パナソニック、ソニーは家電、シャープは液晶、日立は重電(家電以外の電機製品)、トヨタは自動車、あの破綻したサンヨーでさえ、太陽電池!
では、NECは?
何も思い浮かばない・・・もう、終わっているのかも。
ここまでくると、選択肢は2つしかない。
1.身売りする(中国企業なら買ってくれるかも?)
2.凄腕の経営者をむかえる。
IBMを蘇らせたルイス・ガースナー、日産を死地から救ったカルロス・ゴーン、東芝を再建した土光敏夫(故人)etc
ところが、NECが選択したのは、第3のプランだった。
何の責任もない社員の大量リストラ・・・しかも、やり方がえげつない。
東京・神保町にある本社機能を、宮城県白石市の白石事業所に移すという。予定では、東京本社の従業員240人の半数、仙台本店の従業員の一部を、白石事業所へ異動させるらしい。
経営が苦しくなれば、地価の安い田舎に移るのは仕方がない。だが、問題は「田舎」ではなく、「放射能」。白石市は、福島第1原発から70キロメートルしか離れていないのだ。
白石市の空間放射線モニタリング情報をみると、「0.2マイクロシーベルト毎時」前後。通常の4倍の放射線量、ICRP(国際放射線防護委員会)の安全基準すれすれだ。
ところが、この安全基準があてにならない。「放射能に安全基準はない」という説があるほど(直線仮説)。この説によれば、「放射線量がどんなに微量でも、それに比例して突然変異が起こる」
普通ならビビって当然、人間は普通の環境でも、ガンになるのだから。
神保町から田舎へ、それだけなら大したことはない。失業するよりはマシ、衣食住は確保できるのだから。それに、僕もそうだが、都会より田舎が好きな人もいる。
しかし、放射能なら話は別だ。白石市の人には申し訳ないが、NECの社員は、「放射能か失業か?」・・・究極の選択を迫られている。
これはどう見ても、「本社移転」を口実にした新手の「人員削減」である。しかも、原発事故という国の不幸を、巧みに利用している。悪魔の所業、と言われても仕方がない。
じつは、「2ちゃんねる」でも、この問題のスレが立ち、「放射能リストラ」で話が沸騰している。人員削減はやむをえないにしろ、他にやりようがあったろうに。
もし、どうしても人員削減をやりたければ、まずは、経営陣でしょ。3年間で売上が2/3なら、社員に責任はない。辞めるべきは、決定権をもち、高禄をはむ経営陣だ。どうかしてるぞ、NEC。
NECは今後、成果主義も徹底するという。「年齢給」を撤廃し、完全成果主義で昇給を決めるらしい。つまり、年功序列の廃止。
確かに、会社が危なくなったら、
1.人員削減
2.事業のスクラップ&ビルド(これが本当のリストラ)
3.成果主義の徹底
は必要だろう。
だが、NECは関係ない。3年で売上が2/3なら、「立て直す」次元ではない。「背骨」が折れているのだから。
それに、こういう苦しまぎれの成果主義は、問題を悪化させることが多い。
もちろん、ここで、一部のエリートがリッチに、残る全員が貧乏なんて可哀想・・・的な浮いた話をするつもりはない。もっと、現実的に、会社の競争力が失われる可能性があるのだ。
もし、ろくな準備もなく、付け焼き刃で「成果主義」を徹底すれば、何がおこるか?
社員は、自分がやるべき仕事を、「自分の成績」のタシになるかで決めるようになる。つまり、会社にプラスになるとわかっても、自分の成績に反映されないなら、やらない。
それに、成果主義では、決まった原資(おカネ)を社員で分け合うので、自分の取り分を増やすには、相手をへこますしかない。つまり、助け合うべき仲間が、敵になるわけだ。
そうなれば、社員は間違っても助け合わなくなる(ベンチャー企業なら致命的)。
それに、単純な成果主義なら、失敗をおそれて、難しいことに挑戦しなくなる(ベンチャー企業なら致命的)。
もちろん、成果主義を全否定するわけではない。成果に応じて評価しないと、組織の活力は失われるから。
何が言いたいのか?
プレッシャーで1人1人を緊張させ、能力を引き出す方法では、中長期的にみて、人的資源を消耗するだけ。
”熱い”モチベーションで、個人の能力を引き出し、チームでシナジー効果を生む仕掛けをつくり、レバレッジをかけるしかない。
そして、もう一つ、これに乗ってこない人間は、絶対雇うべからず。
これが、僕がベンチャー企業で学んだこと。そして、毎日実践していること。
ウチみたいな40人ほどのベンチャーなら、経営陣の一挙手一投足が、資金繰りを直撃する。資金繰りが破綻すれば、そこで、ゲームオーバー。明日はない。
言っちゃなんだが、ミニベンチャーの経営なんて、ジャンボジェットを、地上10mで操縦しているようなもの。いや、5mかな・・・
2001年、終身雇用と家族主義経営を守ってきたパナソニックが、希望退職に踏み切った。これは象徴的な出来事で、それ以降、日本の「終身雇用」は崩壊したといっていい。
とはいえ、世界で勝つためには、終身雇用を捨てて、成果主義を徹底するしかない。こんなムチャクチャな円高なら、それしかないだろ?おっしゃるとおり!
じつは、今の日本の低迷は、陰謀とも思える円高が原因だ。政府は何をしている!
世界が何を言おうが、周辺国に”失業を輸出”しようが、自分さえ良ければオッケー~、で、人民元安を強行する中国を見習ったら?
だが、一方で、労働者の雇用と生活を守るのが真の経営者。人減らしで、会社を立て直すのは誰でもできる、という考え方もある。
それに、安易な「人減らし」に頼っていると、「時代の壁」に追い越されることもある。NECのように。
たとえば、CDが登場したのに、レコード針に社運をかけるとか、iTuneが登場したのに、CD・DVDの生産に社運をかけるとか、Googleがソフトをタダで配っているのに、ソフト開発で儲けようとしたり。
会社は、「価値」を生むことによってのみ、存在しうる。だから、価値を生まない社員を抱える必要はないし、会社が傾けば、生き残るために、リストラも必要だろう。
だが、本当に怖いのは、「時代の壁」に追い越されること。そうなると、手の打ちようがない。
話をNECにもどそう。
その昔、NECは、「電電(今のNTT)ファミリー」企業として、陸上通信設備や電話交換機のような地味な商売をしていた。ところが、1970年後半に勝負にでる。
小林会長のもと、「C&C」をスローガンに、総合電機メーカーを目指したのだ。「C&C(Computer&Communication)」は、コンピュータと通信の融合を意味する。10年先を見すえた戦略で(今となればだが)、誰にでも分かる明快さがあった。
そして、1982年、NECはパソコン「PC-9800」シリーズをリリースする。それから、15年間、NECは日本のパソコン市場を独占し、PC98は日本の「国民機」とまで言われた。
さらに、NECは1980年代から、半導体の生産で世界のトップにのし上がる。こうして、NECは、日本を代表するエレクトロニクス企業に変身したのである。
そして、あれから30年たって、NECは再び変身した。今度は悪い方に・・・
しかし、NECには優秀な人材が多い(かった?)。みんな高学歴だし、誰かれ入れなかったので。では、若手のエースが台頭して、NECを立て直すかも?
それはない。
そんな人材がいれば、会社を興すだろうから。
by R.B