■地球儀とは?
地球儀とは、球体の表面に世界地図を張りつけた三次元の地図をさします。本来、地球は球体なので、
その表面情報を、平面地図で正確に表現することはできません。
そこで、さまざまな投影方法を用い、地球の曲面を平面に置きかえる工夫がされています。
しかし、完全に歪みのない世界地図を作ることは困難です。
一方、地球儀は球体がベースになっているため、このような歪みなく、
ほぼ完全な地球を作り出すことができます。
そのため、地球儀上の大陸、島々の形状や、それぞれの相対距離は、
非常に正確なものとなっています。地球儀はその正確さにおいて、
平面地図にはるかに優っているといえるでしょう。
このように、正確さに優れる地球儀ですが、携帯するには難点があります。
それは、地球儀の形をみれば一目瞭然です。困ったことに、地球儀としての正確さを求めるほど、
大きな地球儀が必要になり、運ぶ意欲はさらに失せます。しかも、地球儀は場所をとる上、球体であるため、
固定するにも一苦労です。地球儀を地図のように壁に飾ることもできません。
さらに、平面地図なら、スケールで簡単に距離が測れますが、地球儀ではそうもいきません。
そのため、航海では、今でも平面地図が使われています。地球儀は正確さという優れた特性をもちながら、
地図としての利便性に欠ける不思議なツールといえるでしょう。
■地球儀のしくみ
平面地図上の位置は、X座標とY座標を指定して点(x, y)で表すことができます。
こちらは中学校で習う数学です。
また、地球儀も、3次元座標を用いれば、点(x, y, z)と表すことができます。
しかし、地球儀は3次元物体というものの、実際に使用するのは地球儀の表面のみです。
地球儀の内部(地下)まで表現する必要はありません。
そこで、地球儀では、もっと分かりやすい位置特定方法が使用されています。
地球儀をよく見ると、その表面に横線と縦線が何本も描かれていますが、
その交点によって位置を特定するわけです。地球儀の縦線上の目盛は緯度であり、
横線上の目盛は経度となります。
緯度は、地球儀の南北方向の位置を表します。
まず、地球儀の北極点と南極点を含む平面で、地球儀を真っ二つに割ります。
すると、その断面は一番大きな円になるはずです。これを大円と呼びます。
この大円の中心点から地球儀の赤道上の点を結ぶ直線を基本線とします。
つぎに、知りたい地球儀上の点と、地球儀の中心点とを結ぶ直線を引き、
その直線と、さきの基本線との角度を緯度とします。そして、赤道上の点を緯度0度とし、
北極点を北緯90度、南極点を南緯90度として表します。これで±180度となり、
地球儀の南北方向のすべての位置が表すことができます。
経度は、地球儀の東西方向の位置を表します。
先に述べた大円を『子午線』とよびますが、この子午線の地球儀上の角度で表すわけです。
イギリスのロンドンの旧グリニッジ天文台を通る子午線を基準に、
東方向に180度、西方向に180度まで表します。地球儀全体で360度となり、
地球儀の東西方向のすべての位置を表わせることがわかります。
また、地球儀1周で1日となるため、 360度÷24時間=15度
となり、地球儀上で経度が15度違うと、1時間の時差が生じることになります。
ここで、緯度・経度は、『○○度△△分××秒』と表されますが、これは60進数で表されるからです。
1度は60分で、1分が60秒となります。時計と同じですね。
地球儀で面白いのは、北極や南極に近いほど、経度1度があらわす距離が短くなるということです。
逆に赤道では、経度1度の示す距離は最長となります。
これは、地球儀を見ればすぐに理解できます。
世界一周を競うとして、もっとも有利なのは北極と南極で、もっとも不利なのは赤道です。
そのため、地球儀上で距離を表現するには注意が必要です。
『海里』という単位が、海上航海でよく使われます。
『海里』は地球上の距離を表す単位で、『地球の大円上における1分の長さ』です。
しかし、地球儀の大円といっても厳密には、場所によって長さが違うわけで、いろいろ不便です。
これは地球が完全な球体でないことからきています。
そのため、今日では、1海里は1852メートルと正確に定義されています。
また船舶の速度を表す単位で『ノット』がよく使われますが、1ノットは時速1海里、
すなわち時速1852mを意味しています。
■地球儀の歴史
世界最古の地球儀は、
紀元前2世紀、古代ギリシアのクラテスによって作られたといわれています。
しかし、地球規模の探検がはじまったのは15世紀後半で、
紀元前2世紀ごろ、地球のほとんどは未知の世界でした。
そのため、クラテスの制作した地球儀に描かれた大陸はわずか4つでした。
しかし、地球儀が作られたということは、この時代すでに地球が球体であることが分かっていたことにもなります。
この時代活躍した船とえいばガレー船ですが、陸地を見ながらの航海がせいぜいで、外洋航海には耐えられませんでした。にも関わらず、
地球が球体であると知り得たことは、驚嘆に値することといえます。
中世にはいると、キリスト教世界では、科学がむしろ後退していきます。
すべての価値のよりどころが、宗教的価値観となったからです。
真実を追求する科学的アプローチはさげすまれ、キリスト教世界の宗教的価値観が西欧世界を覆います。
それは地図においても反映され、世界は平面であり、その果ては燃えさかる地獄または、
怪獣の地という世界観が信じ込まれました。当然、地球儀も忘れさられます。
この時代は、むしろイスラム世界の方が科学が進歩していたといえます。
そして、地球儀もイスラム世界でしっかり作られています。
15世紀になると、イタリアを中心に、ルネサンスがおこりました。
ルネサンスは、かつて西欧世界で興った古典文化を復興しようとする運動を指しています。
この運動により、窮屈な宗教観から解放され、さまざまが文化が花開きました。そして、地球球体説も復活し、
地球儀も作られるようになります。
現存する最古の地球儀は、1492年、ドイツ人のマルチン・ベハイムが製作したものです。
彼が作った地球儀は、現在もドイツのニュルンベルクにある博物館に保存されています。
この地球儀は、直径50センチほどの大きさで、経線や緯線は描かれていませんでした。
当時、ニュルンベルクの町は、地球儀の製造がさかん町でしたが、ここで作られる地球儀は実用品というよりは、
装飾品という位置づけした。高価なものがほとんどで、購入者は王侯貴族や裕福な商人に限られていたようです。
ちなみに、この地球儀が作られた1492年は、コロンブスがアメリカ大陸を発見した年でした。
■製品としての地球儀
バーチャル地球儀が人気です。その大半は、パソコン上で動くソフトウェアですが、実物の地球儀にくらべ、さまざまなメリットがあります。
まず、データ変更が容易なため、国名や国境線などの地図情報がかわっても、ただちに変更することができます。
また、パソコンの特性を活かし、拡大・縮小はもちろん、ランダム検索も可能、さらに無限の情報を追加することもできます。
やはり、実用的な地図という点では、バーチャル地球儀は、実物の地球儀を上回っているようです。
しかし、実物の地球儀には、バーチャル地球儀では実現できない独特の価値があることも事実です。
実物の地球儀は、現代でも根強い人気があります。
バーチャル地球儀のような利便性はありませんが、別の付加価値があるからです。
どっしりとした重量感があり、触ることもでき、何よりバーチャル地球儀にはないリアルな存在感があります。
実用品というよりは、心を癒す装飾品といったほうがいいかもしれません。
例えば、純銀製の地球儀があります。
地図情報は、はなはだ心許ないものですが、なんといっても純銀です。
素材としての圧倒的な価値が存在するわけで、バーチャル地球儀ではとてもマネのできないものです。
磁力で宙に浮く地球儀もあります。この地球儀は、地球儀本体を物で固定するのでなく、磁力で固定するというのが最大のミソです。
触るとフラフラ揺れ、なんともいえないアナログな気分に浸れます。
触感にうったえる独自な地球儀で、実物地球儀ならでは製品といえます。
また、 球体内部が照明になっている地球儀もあります。
これは地球儀+装飾品+照明機能をそなえたもので、これまたバーチャル地球儀ではとてもマネのできないものです。
さらに、地球儀と時計を一体化し、世界の都市の現地時間を知らせるという変わった地球儀もあります。
こちらは、バーチャル地球儀でも実現できますが、やはり、実体のあるものはそれなりの価値観を感じることができます。
日用品のアクセサリとしての地球儀もあります。
キーホルダー、ペンダント、携帯ストラップなどに付属した地球儀です。
地球儀の地図機能は期待できませんが、なんとなく洒落た気分になれます。
また、しゃべる地球儀もありますが、地球儀みずから語りかける能動的地球儀という点で、面白い製品です。
これらの実物の地球儀には、バーチャル地球儀でも実現できるものもありますが、やはり、実物の地球儀ならではのものが多いようです。
バーチャルな電子地球儀は、しょせん仮想世界。ニセ物というわけではありませんが、実物の地球儀の”本物感”にはかなわないのかもしれません。
■地球儀あれこれ
聖徳太子の地球儀。『オーパーツ』という言葉があります。
これは、その時代に存在するはずのない物をさす名称です。
例えば、1億前の恐竜時代の地層から、自動車の部品が発見されたとすれば、それはオーパーツといえます。
そして、地球儀にも、このオーパーツらしきものが見つかっています。
兵庫県の斑鳩寺には、手のひらにのるほどの小さな球体が伝わっていますが、それが地球儀かもしれないのです。
斑鳩寺は聖徳太子が建立したとされ、その目録の中に『地中石』という記載が確認されています。
そのためこの地球儀は、『聖徳太子の地球儀』と呼ばれています。
確かに地球儀という視点で見ると、ユーラシア大陸やアメリカ大陸らしきものが描かれています。
また、この地球儀には、位置から推測すると、南極大陸やムー大陸らしきものもあります。
むろん南極大陸が発見されたのは、19世紀に入ってからであり、聖徳太子が生きた7世紀にはまだ知られていないはずです。
また、ムー大陸もアトランティス大陸ほどの信憑性はありませんが、完全否定もできない謎です。
こうして『聖徳太子の地球儀』は、謎に満ちたオーパーツとして注目をあびています。
■ガイアチャンネルにおける地球儀
ガイアチャンネルでは、地球を地球儀としてとらえ、管理しています。 地球儀はその表面が球面であるため、平面地図にくらべ、管理が若干難しくなっています。 そこで、地球儀を完全な球面として管理するのではなく、小さな四角形平面のブロックに分割して、管理しています。 ガイアチャンネルでは、地球儀を、経線方向に80ブロック、緯線方向に40ブロックにそれぞれ分割し、管理しています。 それぞれのブロックは四角形ポリゴンを形成し、それぞれのポリゴンに対応する地球マップ画像が各ポリゴンに張りつけられます。 この張りつけは、平面として処理されるわけですが、全体として見たとき、丸い地球儀にとなって見えるわけです。 分割するブロック数が多いほど、地球儀はより丸く見えますが、その分、処理時間もかかり、CPUに膨大な負荷をかけてしまいます。 そこで、これらの3D処理は、3D描画専用のチップにより高速描画されています。 こうして、滑らかな地球儀が描画されることになります。