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週刊スモールトーク (第173話) 世界の名言(2)~人生編~

カテゴリ : 思想

2012.07.15

世界の名言(2)~人生編~

■生活編

かたくるしい偉人の名言がつづいたので、ここで、
「庶民のための人生名言」

まずは、結婚問題から。

もし、あなたが、結婚を迷っているとしたら・・・ギリシャの大哲学者ソクラテスは、こうアドバイスしている。

とにかく結婚しなさい。もしあなたが良い妻をもつなら、あなたは幸福になるだろう。もし悪い妻をもつなら、あなたは哲学者になるだろう。どっちにしろ、君にとっては、よいことだ」

うのみにしてはいけない。ソクラテスの奥さん「クサンティッペ」は、悪妻の代名詞として、その名は歴史にとどろいている。この妻にして、この大哲学者ありというわけだ。だが、ここは冷静に考えてみる必要がある。悪妻に散々苦しめられたあげく、オツムが弱くて哲学者になれなかったら、どうするのだ!だいたい、数の上では、哲学者より、可愛くて気だての良い娘の方が多い(たぶん)。どちらが当たる確率が高いか、考えるまでもない。

であれば、気だての良い娘にめぐりあったら結婚し、そうでなければ結婚しない、が正しい選択だろう。もちろん、この教訓は女性の立場でも成立する。

というわけで、ソクラテスの名言なんて、ただの負け惜しみじゃないのか。もしくは、後世の男たちを道連れにする陰湿な策略?ソクラテス、性格悪いぞ・・・

でも・・・

これでは話が前に進まない。ここは、大哲学者ソクラテスの名言を半分真に受けて、話を進めることにしよう。というわけで・・・とにかく結婚しなさい!

ところが、ソクラテスのお言葉もここまで。伴侶の選び方、結婚生活の送り方については何のアドバイスもない。一方、宗教がこんな哲学の不備を代弁している。この2つのアドバイスを一撃にした名言があるのだ。出所はユダヤ教の聖典「タルムード」・・・

結婚する前は目を大きく見開いておきなさい結婚した後は半分閉じておきなさい

金言だ!でも、わかっちゃいるけど、許せない・・・まぁ、それはお互い様。ということで、2人でこの格言をかみしめて、精進努力することにしよう。自分をだましているような気もするが、夫婦げんかは犬も食わないというし、結婚は人類永遠のテーマだし、まぁ、このへんでやめとこう。

つぎに、人をだまそうとしている人へ。マーフィーの法則によれば、

「ときには、すべての人々をだますことができる。ある人々は、いつでもだますことができる。ただし、ママはすべてお見通しだ

心当たりがある。今後は、ママには気をつけよう。

つぎに、失敗について。長い人生、誰でも大きな失敗は一度ならずあるだろう。ジョンサラックはこう言っている。

失敗は大きく2つある。考えたことを実行しなかった場合と、考えずに実行してしまった場合」

まぁ、たしかに。失敗を2つに仕分けしたところで、何の解決にもならないのだが、子供の説教には使えそうだ。知識として覚えておこう。この格言と良く似たので、こういうのもある。

やって失敗した後悔よりやらなかった後悔の方が大きい

これは深そうだ。やって失敗すれば、あきらめもつく。でも、やらなかったら・・・成功していたかも、という不毛の後悔が一生つづく、というわけだ。では、挑戦あるのみ?いや、真に受けないほうがいい。失敗の程度によるからだ。失敗が破産や死につながるなら、やらないほうがいい(言うまでもない)。もっとも、やる前に結果がわかるくらいなら、苦労はしないのだが。ということで、何ごとも慎重に・・・

つぎに、良心と野心について。

野心のために良心を犠牲にすることは、灰を得るために絵を燃やすようなものだ

お見事!で、どこの誰の言葉?中国のことわざ。え?尖閣諸島や南沙諸島問題で、なりふり構わぬあの中国が?イエス!まぁ、総論賛成、各論反対ということで。総論も賛成した覚えはないって?はいはい。いい格言なのにねぇ。

■仕事編

サラリーマンを長いことやっていると、いろんなことが見えてくる。何をやってもうまくいかない、それが何年も続いたら・・・やり方がまずいから?努力が足りないから?才能がないから?運がないから?それもあるかもしれない。でも、行き着くところ・・・

反対車線(対向車線)を走っている

ということで、同一車線に乗ろう。

つぎは、ケンカの話。ムカツク奴がいる。みんなの前で、論破して、恥をかかせてやりたい。でも、そうすれば、事態はさらに悪化するかも。とはいえ、放っておけば、つけあがるし、だいいち、俺の立場がない。さて、どうしたものか?

相手がバカなら、やめとく。なぜって?もし、言い合いになれば、

はた目で見ると、どっちがバカかわからない」(マーフィーの法則)

世界の99%の人が組織で働いている。もし、努力の甲斐あって、あなたがリーダーになったとする。そこで悩むのが組織運営だ。ベンチャーなら、スピード優先だから、1人で決断?ところが、今どきの研修会に出ると、
「合議制でやるべし、スタッフのコンセンサス(同意)もとること」
などなど、独裁をトコトン否定される。やっぱり、会議を開いて、討論して、行き着くところは合議制かなぁ~

ノー!

会議に十分時間をかければ、最後は「意味論」になる

「意味論」は哲学談義で、「結論&決断」にはなじまない。というか、水と油。スタッフの意見をヒアリングしたら、1人で決断すべし。そして、責任はすべて自分が負うこと。それがリーダーというものだ。あと、これはおまけだが、こういうのもある。

委員会とは1人分の仕事をしている12人のこと」(マーフィーの法則)

笑える名言だが、「三人寄れば文殊(もんじゅ)の知恵」が名言や迷言かは、事と次第によるということ。たとえば、アップルのiPhone。ソフトバンクがいち早く採用できたのは、孫社長の独裁のおかげ(良い意味で)。ドコモが、いまだに採用できないのは「委員会」のせい。

ドコモは、「みんな」で「いろんなこと」を考えすぎたのだ。その結果、一番大切な事を忘れてしまった。言い過ぎ?そんなことはない。ドコモにとって最優先事項とは、どんな条件をのんでも「iPhone」を採用すること

なぜか?

ドコモがiPhoneを採用しないと、ライバルのソフトバンクとauが喜ぶから。逆に、ドコモがiPhoneを採用すれば、ソフトバンクとauの売上は確実に落ちる。それほど、iPhoneには競争力がある。ではなぜ、ドコモはiPhoneをバッサリ切ったのか?他の選択肢、AndroidとWindowsPhoneがあるから。

ところで、AndroidやWindowsPhoneは、iPhoneに対してどんなアドバンテージ(優位性)があるのか?じつは、その「問いかけ」に意味はない。なぜなら、AndroidとWindowsPhoneはアドバンテージに依っているのではなく、アップル以外のメーカーが生き残るための方便に過ぎないからだ。そんな消去法に未来はある?

その答えとなるのが、マイクロソフトの「サーフェス」、グーグルの「ネクサス7」だ。この2つはアップルのiPadに対抗するタブレット端末だが、マイクロソフトとグーグルがハードに進出したことに注意が必要だ。つまり、ビジネスモデルが、アップル同様、ハードとソフトを含む一気通貫に変更されている。それが意味するところは、マイクロソフトもグーグルも、ハードメーカーに頼らない、つまり、「生き残る方便」ではなく「ガチでいく」。

だから、ドコモほどの企業が、未来を直視しようとせず、目先の事情や方便に執着するのが不思議でならない。iPhoneとiPadを取り込んで、総攻撃をかければ、ソフトバンクとauは窮地に立たされるのに。ドコモ変えようかな・・・

つぎに、リーダーの孤独について。もし、あなたがリーダーなら、毎日こう思っているかもしれない。あれはどうなった?これはどうなった?なんでいつも、俺だけ気をもまなきゃいけない。バカばっかだろ。仕事しろよ、おまいら!

そんなこんなで、朝から晩まで、怒鳴りまくる毎日。一方、お気軽のAは、出世コースからはずれたせいか、ガミガミ言わないし、面倒見もいい。だから、Aは「道徳的な人物」として一目置かれている。そこへいくと、俺なんか、問題解決が取り柄の、不道徳の権化!ムカツク話だ。

だが、よく考えてみよう。

あなたは問題を解決している。つまり、「価値」生んでいるわけだ。そして、Aはそのおこぼれに預かっているだけ。だから、会社や組織が必要としているのは、Aではなく、あなた。これは否定しようのない絶対的真実である。報酬は、道徳に対して支払われるのではなく、「生んだ価値」に対して支払われるのだから。

もう一つ大切なことがある。小さな組織は電車ではない、機関車だということ。駆動しているのは、先頭車両だけ、つまり、あなたしかいない。だから、世界は小さいかもしれないが、あなたは世界の中心にいる。それに、Aが道徳的な人間だからといって、ひがむ必要はない。なぜなら、

道徳的な人間とは、問題から遠ざかっている人のことである

■品質哲学

つぎに、電機、衣料、食品、おもちゃ、サービス、あらゆる産業のキモとなる「品質」について。働く人のほとんどが、この問題で頭を悩ませている。たとえば、品質とコストのバランス。時間を掛ければ、品質は上がるが、そのぶん、コストがかさむ。それに、納期が遅れれば、販売計画が狂って、販促、営業部門にもしわ寄せが行く。その追加コストはバカにならない。ということで、良い落としどころはないものか?

まずは、世界一のお金持ち会社マイクロソフトから。この会社の品質哲学は明快だ。

Good enough!

聞こえはいいが、ちゃんと翻訳すると、
こんくらいでいいんじゃね

マイクロソフトは、Windowsの前のMSDOSの時代から、バグがあると分かっていても、そこそこ動けばOKで出荷してきた。そして、バグが露見すれば、修正してバージョンアップ版として販売する(有料!)。「完全なもの」を作るつもりはサラサラなく、初めから、品質とコストの折り合いをつけていたのだ。その落としどころというのが、

「Good enough(ま、いんじゃね)」

というわけだ。ただ、マイクロソフトの名誉のために補足すると、これがソフトウェア業界の常識。

では、ハードの世界はどうなのだろう。今日本は、イギリスが言い出した品質の国際規格「ISO9001」が幅を利かしていて、製造業はこれがないとダメ、みたいな風潮がある。以前、在籍した物流システム会社もISO9001を取得したが、その経験から言うと、
「ISO9001と品質は何の関係もない」

ところが、最近、近所の瓦屋まで「ISO9001を取得した。「お上」と「外国」に弱い日本体質、ここに極めり。悲しい話だ。

では、世界最高品質を誇るトヨタは?じつは、トヨタはISO9001を取得していない。なぜか?トヨタの社内規格は、ISO9001よりはるかに厳しいから。まぁ、瓦といっしょにされてはたまらないが(瓦を蔑む意図はありません)。

ところが・・・

そのトヨタが、「ま、いいんじゃね」品質のマイクロソフトより預金が少ないという事実をご存知だろうか?この恐るべき事実から、哀しい迷言が生まれた。

「商売の極意は、『完全』ではなく、『ま、いいんじゃね』」

驚くべきことに、あのマーフィーの法則でさえ、この迷言を支持している・・・

英知とは、完璧の一歩手前でとどまるタイミングを知っていることである

(その昔)技術者としては、寂しい限りだ。このままでは腹の虫が治まらない。そこで、反撃に転じることにする・・・名付けて、テッキーの逆襲。
(テッキー「techie」とは、ハイテクオタクのこと)

まずは、同じマーフィーの法則で反撃しよう。

思慮分別のある人間は何も成し遂げられない

そのとおり!完璧の一歩手前とか、品質とコストのバランスとか言っている間は、何も成し遂げられない。もちろん、ここで言う「成し遂げる」とは、世界を変えるような商品やサービスをさす。いいこと言うなぁ。調子が乗ってきたところで、力強い見方に登場してもらおう。故スティーブン・ジョブズだ。

スティーブン・ジョブズはアップルのCEOでありながら、商品のスペックはもとより、デザイン、操作性、さらには、梱包材にまで口を出したという。一切の妥協を許さない完全主義者だったのだ。スティーブン・ジョブズの大好きな言葉、

「Stay hungry, Stay foolish(貪欲であれ、愚直であれ)」

は彼の人生そのままだ。

それを物語るエピソードもある。ジョブズは、iPhoneの開発で、徹底した「小型化」を命じていた。ある日、技術者がサンプルを持ち込んだところ、ジョブズはそれを水槽に放り込み、ブクブクが泡が出るのを確認して、こう言ったという。
「酸素のスペースがあるから、まだ小さくできる」

ずっとネタだと思っていたのだが、2012年6月に発売された「MacBookProRetinaディスプレイモデル」を見て、本当かもしれないと思った。新しい「MacBookPro」はそれほど完成度が高いのだ。他社のノートパソコンとは似て非なる物と言っていい。

「MacBookPro」は他社の製品とは違い、有り物を集めて、組み立てるという安易さはない。はじめに、天の声(ジョブズの)があって、すべてがその一点にカスタマイズされている。たとえば、ノイズを減らすため、冷却ファンまで一から設計されている。

解体写真をみると、ムダな空間が全くない。CPU、メモリ、バッテリーまでが基板に直づけされている。故障したら、基板丸ごと交換するしかない。このような「拡張性や修理」をスポイルするやり方は、スティーブン・ジョブズの昔からの流儀だ。ただし、アップルの初代PC「AppleⅡ」だけは素晴らしい拡張性を備えていた。が、しかし、これを作ったのは、スティーブジョブズではなく、もう一人のスティーブ、「ウォズニアック」だった。

というわけで、この例外をのぞけば、Mac、iPod、iPodtouch、iPhone、iPadのすべてを、スティーブン・ジョブズが手がけている。そして、これらに共通するのは「モノリシック(一枚岩)」・・・完全無欠でスキがない。

つまり、アップルの品質哲学は、世間の常識、
「ま、いんじゃね(Good enough)」
とは真逆。さらに、ジョブズが画期的だったのは、「品質」にハードとソフト以外の要素も付けくわえたこと。整理すると、
「ジョブズ品質=①機能+②コスト+③操作性+④デザイン+⑤楽しい

このジョブズの尺度を、天下のトヨタにあてはめると、

①機能→OK!

②コスト→OK!

③操作性→なんとか

④デザイン→まぁまぁ

⑤楽しい→不十分

つまり、「⑤楽しい」だけが不足している。今年3月に、プジョー307SWから、カムリハイブリッドに乗り換えた時、ココを痛感した。プジョー307SWは、運転するだけで楽しいのに、カムリにはそれがない。乗り心地は決して悪くないのに。つまり、「Funtodrive」に決定的な差があるのだ。

これは、企業文化と同様、力技で実現するのはムリ。スペックや価格みたいに、数値で表せないから。もっとも、トヨタがココをマスターしたら、世界で敵無しになる。そうなれば、またトヨタパッシングが起こるだろうから、グロスで考えれば得策とはいえない。ということで、トヨタにとって、「⑤楽しい」は「Good enough」がベスト?

■スティーブン・ジョブズの歴史的スピーチ

歴史に残る成功者スティーブン・ジョブズを熱く語ってしまった・・・テーマは「庶民のための人生名言」なのに。ところが、スティーブン・ジョブズは「庶民の人生」のための素晴らしい名言も残している。

2005年6月12日、スタンフォード大学の卒業式で、スティーブン・ジョブズは歴史に残るスピーチをしている。この時、彼は「点をつなげる」、「愛と喪失」、「死」の3つについて語っている。

まず、「点をつなげる」について。

ジョブズは、大学を中退したので、必修の授業にでる必要がなかった。そこで、カリグラフィ(西洋書道)の授業をとって、美しい字の書き方を学ぶことにした。字体の美しさと繊細さに惹かれたからだ。それが人生の役に立つとは、ジョブズ自身も思っていなかったという。ところが、10年後、Macを作るとき、その経験が活かされた。初代Macは、美しいフォントを備え、他のパソコンと一線を画したのである。

もし、「大学中退→カリグラフィの授業」がなければ、初代Macは生まれなかった。もちろん、その時点では、それがMacにつながるとは予想はできなかった。ところが、10年経って、人生を振り返ったとき、
「大学中退→カリグラフィの授業→Mac」
のつながりがハッキリと見えたのである。

つまり、点と点のつながりを予測することはできない。後で振り返って、初めて気づくのである。

スティーブン・ジョブズは、この後、こう続けている・・・

今やっていることが、どこかで「つながる」と信じてください。点と点がつながって道になると信じることで、心に確信が持てるからです。他の人と違う道を歩いていても、自信をもって歩き通せるからです。

そして最後に、ジョブズは「死」についても語っている。

死はすべての人の終着点であり、誰も逃れることはできません。そして、今後もそうあるべきです。なぜなら、死は生命の最大の発明だからです。死は古き者を消し去り、新しき者への道をつくります。ここでは、君たちがその新しき者です。しかし、そう遠くないうちに、君たちも古き者として消えてゆく。あなたの人生は限られているのです。だから、ムダに他人の人生を生きないこと・・・

人生の名言がここにある。

《つづく》

by R.B

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