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週刊スモールトーク (第571話) 2027年 AGI誕生~アッシェンブレナーの告白~

カテゴリ : 社会科学経済

2024.08.19

2027年 AGI誕生~アッシェンブレナーの告白~

■隔月スモールトーク

人生、何がおこるかわからない。

週刊スモールトークの更新が、2ヶ月も中断したのだ。

「週刊」どころか「月刊」もこえて「隔月」・・・シャレにならない。連載をはじめて20年になるが、こんなこと初めてだ。

頭のネジがゆるんだとか、あの世に旅立ったとか・・・そんな深刻な話ではない。ウェブサイトにログインできなくなったのだ。もちろん、IDやパスワードの入力ミスではない(頭のネジは締まってます)。

修復を依頼した業者は、しょっぱな、記事が800ページもあることに驚いた様子で、こんな巨大サイトみたことないという。これにSEO対策のプラグインの膨大なデータがからみあい、古いバージョンのWordPressも悪さし、グチャグチャ、データベースもおかしくなってるのこと。

状況が深刻そうなので、修復をあきらめて、データを丸ごと新しいサーバーに移し替えることになった。

ということで、週刊スモールトークの再開です。

ところで、何の話だったっけ?

そうそう、AGI(人工汎用知能)が出現したら「本が消える」という話。

不穏な響きあり・・・でも根拠がある。

AGIは、人間の仕事を段階的に奪っていき、最終的に丸取りする。何をやっても人間より上手くやるから、当然だ。強欲な経営者が、電気を与えるだけで文句一つ言わず、24時間365日働く機械をさしおいて、有給だ、昇給だと注文の多い人間を雇用するわけがない。立場をかえて考えれば、誰でもわかる。結果、人間は学ぶ必要がなくなり、本も読まなくなる。

でも、学ぶのためではなく、楽しむための小説もあるけど?

それも不要。

AIに「こんな小説を書いて!」と頼めば、その場で書いてくれる。

ただし、2024年現在、猛威をふるう生成AIではムリ。

ストーリーを筋書きとして理解できないから、言葉のつなぎででっちあげているだけ。だから、文章はまともだが、ストーリーはなんかヘン。たとえ、まともな小説があったとしても、それは人間が事細かに、しかも、何度何度も指示しているだけ。これが、言葉を統計学的につなぐ生成AIの限界なのだ。

だが、AGIは違う。数学的、論理的な思考ができるから、ストーリーも筋書きとして理解できる。

つまりこういうこと。

5000年もの間、人類の文明と文化を支えてきた由緒正しい「本」が、「こんな本を書いて!」的なノリで「チャット(おしゃべり)」に呑み込まれるわけだ。

というわけで、AGIが誕生すれば「本」は消えゆく運命にある。

では、それはいつか?

2027年、遅くとも2029年。

■AGIは2027年に誕生

AGIは、人間のようになんでもできるAIで「汎用型AI」という。

一方、今流行の生成AIは、限られたことしかできない「特化型AI」だ。

生成AIのマザーは「大規模言語モデル・LLM」で、整形されたテキストを大量に学習している。言葉を巧みに操り、とくに、要約なら、どんな賢い人間もかなわない。

ところが、数学的・論理的思考は苦手、というか、基本的にできない。

たとえば・・・

「9.11と9.9のどちらが大きいですか?」

とChatGPT(生成AI)に問うと、

「9.11と9.9を比較すると、9.11の方が大きいです」

と素速く誤答する。「数える」のではなく、「言葉のつなぎ」で解答しているからだ。つまり、数学の問題を国語で解いている。

この問題を突破しないかぎり、AGIには到達しない。

ところが、あと、3年でAGIが誕生するという。

マスメディア御用達のうさん臭い識者が言うなら、気にもとめない。

ところが、言い出したのは、元OpenAI社員のレオポルド・アッシェンブレナーだ。

彼は、OpenAIで超知能の安全性を研究するスーパーアラインメントチームに所属していた。ところが、チームは解散し、2024年4月に解雇された。会社の機密情報を漏らしたのが理由らしい。彼は、その2ヶ月後、165ページのテキストを公開し、AGI 2027年説を提唱した。

一方、OpenAIのCEOサム・アルトマンは、AGIは2027年~2029年に誕生すると言っている。さらに、OpenAIは、AGIに至る5つのフェイズを開示した。

【第1フェイズ:ChatBot(チャットボット)】

おしゃべりAI。2022年11月、ChatGPTが実現した。長年、AIの判定基準だったチューリングテストを突破したことは間違いない。

【第2フェイズ:Reasoners(リゾナー)】

数学的・論理的に考えるAI。前述したように、現在の大規模言語モデルは、理詰めで考えているわけではない。数学の問題も国語で解いているのだ。そこで、OpenAIは「strawberry(旧名:Q*)」で、この問題を突破しようとしている。GoogleのDeepMind社は、2024年、数学推論と幾何学問題を解くAI「AlphaProof」と「AlphaGeometry 2」を開発、国際数学オリンピックで銀メダルレベルのスコアを達成したという。

ただ、これで汎用的な論理思考を獲得したとはいえない。まだ特化型AIの域を出ないだろう。まぁでも、言葉をつなぐだけの大規模言語モデルから、理詰めで推論するAIへの第一歩なのかもしれない。

【第3フェイズ:Agents(エージェント)】

大きな目標を与えるだけで、細かなプロセスを自分で段取りして実行するAI。一部、実現している。たとえば、購入したシューズの写真をみせて、返品したいと指示すれば、写真から型式を特定し、メール履歴から購入日と購入先を特定し、返品処理をすべてやってくれる。

【第4フェイズ:Innovators(イノベータ)】

新しい発見・発明をするAI。これが実現すると、AIが、1日、何万、何十万という論文を発表するようになる。人間の研究者は、とても対応できない。学会も、AIがリモートで出席する場になるだろう(最終的には学会も消滅する)。いずれにせよ、知の頂点にたつ研究者は、頭を突き合わせて、履歴書を書くことになる。

【第5フェイズ:Organizations(オーガナイゼーション)】

政府、企業、団体などの組織を構築するAI。異なるドメイン、あらゆる要因を一気通貫で思考し、問題解決する。最初は、複数のモデルのハイブリッドになるだろうが(Sakana AIのように)、最終的には一つのモノリシック(一枚岩)のモデルに帰結する。なぜなら、ハイブリッド(混合技術)は一過性のテクノロジーにすぎないからだ。過去のハイブリッドな機帆船、ハイブリッドICをみればあきらかだ。

というわけで、AIの当事者の主張を信じれば、AGIはあと数年で誕生する。

本当にそうなるのか、気に病む必要はない。

あと数年でわかることなので。

■2024年のAGI開発状況

2024年8月時点の「AGI開発状況」を俯瞰しよう。

第1フェイズはすでにクリアした。

第2フェイズはヒントを見つけたかもしれない。

第3フェイズは一部実現している。

一方、第4と第5フェイズは、新しいイノベーションが必要だ。具体的には、相関関係だけでなく、因果関係を論理的に推論できること。もちろん、人間脳にできることは、機械仕掛けでもできるはず。ということで、AGIは2027年頃に誕生しても不思議ではない(個人的直観です)。

「AGI 2027年誕生」を後押しする要因はまだある。

AGI開発のプレイヤーは、なりふりかまわず全力疾走すること(予算、コスパはドーデもいい)。

なぜなら、AGI開発は軍拡競争と同じで、負けたら意味がないから。企業も国家も自身の「存続」がかかっているのだ。

AGIは「タイムマシン・ビジネス」で、一番乗りした者が総取りする。

2位じゃダメなんですか?

はい、ダメです。

タイムマシンを発明したら、売って儲けるバカはいない。過去にもどり、まずライバルを蹴散らす。さらに、失敗しても過去にもどれば、何度でもやり直せる。つまり、タイムマシンは、先行者が総取りする最終兵器なのだ。

AGIもタイムマシンと同じ。

AGIは、発明・発見をこなすので、イノベーションを独占できる。さらに、政治・経済・外交・軍事すべてが、究極まで最適化されるので圧倒的優位に立てる。つまり、AGIに一番乗りした者が、総取りするのだ。

そんなこと、目端の利く連中は、みんなわかっている。だから、IT企業の有名どころは、AGI開発に血眼なのだ。

フロントランナーは、OpenAIとグーグルと目されるが、プレイヤーは多い。ベンチャーはもちろん、巨大企業も参戦している。

まずは、メタ(旧フェイスブック)。

メタは、2024年1月、AGIをめざし、2024年末までに、エヌビディアのGPU「H100」を35万基導入すると宣言した。

「GPU」とは、AIの学習と推論に特化したハードウェアで、AI開発の心臓である。2024年現在、そのデファクトスタンダードがエヌビディアの「H100」なのだ。ちなみに、H100は1基「590万円」なので、メタのAIスパコンは2兆円なり(サーバー本体、電源、冷房設備、建物、人件費はのぞく)

プレイヤーはまだいる。

テスラモーターズとスペースXを率いるイーロン・マスクだ。

彼は、AGIは危険だから、安全が確保できるまで、開発を止めるべきだと言いつつ、自前のAIスパコンをせっせと構築している。この恥ずかしい言動を、隠そうともしない。マスクは、2024年7月、テネシー州メンフィスで「Gigafactory of Compute」を稼働させたと発表したのだ。このAIスパコンは、約10万基のエヌビディアのGPU「H100」を搭載しているという。こちらは6000億円なり(付帯物はのぞく)。

■ASIへの道

というわけで、AGI開発は金に糸目をつけない。

マスクは6000億円で、メタは2兆円なのだから。

ところが、OpenAI CEOのサム・アルトマンは、それどころではない。総額750兆円~1000兆円の資金調達を計画中と公言したのだ。

どこに、そんなお金がかかるのか?

サム・アルトマンはGPUまで内製化しようとしているのだ。GPUは、現在、エヌビディアがほぼ独占しているが、それに挑むわけだ。

それにしても、1000兆円なら、日本のGDPの2年分!

もっとも、それだけかけても、エヌビディアのGPU支配は崩せないだろう。エヌビディアは、ハードウェア(GPU)とソフトウェア(CUDA)を握っているからだ。つまり、AIの心臓と肺を支配している。ビジネスは、最後は資本が勝つが、AIビジネスはそうカンタンにはいかない。最も重要なのは「幸運(ラッキー)」だろう。GPT2からGPT3に進化したのも、それだったのだから。

とはいえ、AIは金食い虫であることに変わりはない。

アッシェンブレナーの予測によると、AIスパコン(巨大なデータセンター)は・・・

(1)2024年までに、「100メガワット」の電力と「10万台」のGPUが必要になる。コストは「数十億ドル(7500億円)」。

(2)2026年までに、「1ギガワット」の電力(大型原子炉並み)と「100万台」のGPUが必要になる。コストは「数百億ドル(7兆5000億円)」。

(3)2028年までに、「10ギガワット」の電力(米国の各州で生成される電力)と「1億台」のGPUが必要になる。コストは「1000億ドル以上(15兆円)」。

金に糸目をつけない、どころの話ではない。

採算とれるの?

だから、AIはタイムマシン・ビジネス、採算は関係ない。目的は一つ、世界を支配すること。だから、予算、コスパ、マネタイズ、お金なんかドーデもいい。

これらの要因ベクトルを合せれば、3年後の2027年に、AGIが完成しても、不思議ではない。

AGIが発明されれば、つぎはASIだ。

ASI?

人工超知能のことだ。

アッシェンブレナーは、AGIが発明されたら、ASIは1年以内と予測している。

なぜなら、ASIは人間ではなくAGIが開発するからだ。

AGIが何万、何十万もコピーされ、同時に並列に開発を進めるのだ。人間が開発する何万倍、何十万倍の速度で進むことは間違いない。

想像を絶する世界だ。

《つづく》

by R.B

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