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週刊スモールトーク (第549話) ジャニーズ帝国の興亡~J-POPの捕食者~

カテゴリ : 人物娯楽社会

2023.09.15

ジャニーズ帝国の興亡~J-POPの捕食者~

■ジャニーズ帝国とグッチ帝国

グッチは世界に、ジャニーズは日本に冠たるブランドだ。

業界こそ違うが、それぞれ頂点に立っている。

ジャニーズ事務所は、男性アイドルのプロデュース専門の芸能プロダクション。グッチ社は、バッグ・サイフなどの皮革製品をはじめ、服、宝飾品、香水まで手がけるファッションブランドだ。

ジャニーズとグッチには、もう一つ共通点がある。

世紀の大スキャンダルに見舞われたこと。

まずはグッチ。

1995年、第3代目当主のマウリツィオが、殺し屋に暗殺された。殺しの依頼人は、なんとマウリツィオの妻だった。

つぎにジャニーズ。

2023年、創業者のジャニー喜多川が、事務所の未成年アイドルに性的虐待をしていたことが発覚した。

この2社のブランド力と事件の深刻さを考えれば、世紀の大スキャンダルといえるだろう。

ところが、その後、グッチは危機を乗り越え、今も世界最強のブランドとして君臨している。

では、ジャニーズは?

グッチのようによみがえるのか、それとも、消滅するのか?

それは、ジャニーズ事務所の対応次第。

ところが、事務所にそんな危機感は感じられない。「ジャニーズ」ブランドが消滅するとは夢にも思っていないようだ。最終的に必ずそうなるのに。

今回の事件を、時系列で見ていこう。

2023年3月、イギリス公共放送BBCが、特集番組「J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル」を放送した。

内容は衝撃的だった。

ジャニーズ事務所の創業者、ジャニー喜多川が、事務所所属の未成年男性アイドルに性的虐待を行っていたというのだ。しかも、被害者の数は数十人から数百人、期間は数十年におよぶという。前代未聞の大スキャンダルである。

マスコミは「性的虐待」と報じているが、いわゆるセクハラとは次元が違う。

ペドフィリアしかもしれない。

ペドフィリアとは、児童にのみ性的欲求を抱く精神障害と定義されている。病気ではなく障害というのは、どこが悪いというわけではなく、気質だから。当然、根本的な治療法はない。

■異常気質とDNA

人間の性的欲求は多種多様である。

その多くは、成人した異性に向けられるが、同性愛(ホモセクシュアリティ)、小児性愛(ペドフィリア)、死体愛(ネクロフィリア)まである。まさに多種多様だ。

これらは異常気質とされるが、じつは、「異常」は「悪」ではなく、数が少ないから。多数派の方が声が大きいので「悪」にされただけ。

ではなぜ、そうなったのか?

異性愛以外は、子孫を残せないので、遺伝的に淘汰されたのだろう。だから、少数なのである。つまり、正常か異常かは、自然淘汰の話で、そこに倫理を持ち込むのは、多数派の都合にすぎない。

最近話題の「LGBT」も同じ。

LGBTは、レズビアン 、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字をとった略語だが、性的少数者をさす。その主張は「生来の性質なのに、多数派(マジョリティ)の原理で、少数派(マイノリティ)を差別するのはおかしい」

それはそうですね。

でも、よく考えもしないで、社会実装すると様々な問題がおきる。女性を自称して女性用トイレや公衆浴場に入ってくる男性はどうするのか、なんて単純な話ではないのだ。

さらに、異常気質が犯罪につながることもある。今回のジャニーズ事件のように。

というわけで、異常気質は、善悪で論じるのは不毛だが、社会問題を引きおこす可能性がある。

では、「異常気質」とは?

少数派の気質。

「気質」とは、人間が生まれ持った性質で、「遺伝子」によって決定される。

ところが、他に、DNA、染色体、ゲノムなど類義語があり、ややこしい。

そこで、「遺伝子」の世界一わかりやすい解説!

「遺伝子」とは、文字どおり「親から子に遺伝する性質」である。父親の配偶子と母親の配偶子の組み合わせで、子供の遺伝子が作られる。遺伝子は、いわばヒトの設計図で、それを元にヒトが製造される。つまり、遺伝子の違いが、ヒトの個体差(身体+知能+性格)を生むのである。

では、DNAとは?

DNAは、生物の遺伝情報を含む分子で、二重らせん構造になっている。その2本のらせんの間に、アデニン、チミン、グアニン、シトシンという4種類の「塩基(化学物質)」が並んでいる。この「並び方」が遺伝情報で、それがヒトの個体差を生むのである。

一方、DNAは、遺伝情報を持っている部分と持っていない部分がある。その中で、遺伝情報を持っている部分を「遺伝子」という。つまり、遺伝子はDNAの一部なのである。

これで遺伝子とDNAがつながりました。

さらに、DNAがもつ遺伝情報を総称して「ゲノム」とよんでいる。つまり、DNAはハードウェア(化学物質)で、ゲノムはソフトウェア(遺伝情報)なのである。

では、染色体とは?

染色体は、DNAとタンパク質をいっしょにしてパッケージしたもの。染色体は、ヒトの細胞は37兆個すべてに入っている。染色体はヒトの設計図だから、身体のどこからでも、ヒトの設計図をとりだせるわけだ。しかも、設計図さえあれば、ヒトを完全に製造できる(理論上)。

ここで、遺伝子用語を整理しよう。

ヒトの個体差(身体+知能+性格)は、遺伝子で決まる。遺伝子の実体はDNAで、それがパッケージングされ、細胞に格納されたのが染色体。その染色体はヒトのすべての細胞に入っている。そして、DNAの遺伝情報(ソフトウェア)を総称してゲノムとよんでいる。

これで、遺伝子の知識は完璧です。

■ジャパネットたかたの対応

異常気質の「異常」は「善悪」ではなく人間の頭数で決まる。つまり、少数派が異常で、多数派が正常になるわけだ。

だから、ジャニー喜多川がペドフィリアだったとしても、それ自体は問題ではない。

だが、そのような気質をもつ人間が、未成年男子アイドルの芸能プロダクションのトップになると、リスクが極大化する。未成年相手に性的欲求を満たすには、最適、最強の立場だからだ。さらに、ふつうのセクハラよリ深刻なのは、被害者が未成年であること。これは罪深い、気持ち悪いですまないから。

事件後の記者会見で、ジャニーズ事務所は「噂レベルでしか知らなかった」と言葉を濁したが、誰も信用しないだろう。部外者の間でも知られていたから、当事者が知らないわけがない。確固たる証拠はなくても、アヒルのよう鳴き、アヒルように歩けば、それはアヒルなのだ。

つまり、ジャニーズ事務所は、創業から数十年間、コンプライアンス(法令遵守)もガバナンス(企業統治)も破綻していたのだ。それが露見したのだから、創業以来の危機と言っていい。

ところが、ジャーニーズ事務所には、そんな危機感は感じられない。

事件後の対応をみてみよう。

2023年5月、藤島ジュリー社長は、公式ホームページで、性的虐待については知らなかった。さらに、引責辞任もしないと明言した。

ところが、3ヶ月、状況が一変する。

2023年8月、再発防止特別チームが、調査報告書で「社長の辞任」を提言。すると、翌9月、藤島ジュリー社長は引責辞任し、所属タレントの東山紀之を社長に譲ると発表した。

お気づきだろうか。

不祥事の対応としては、最もまずいやり方だ。

まず、ワタシ悪くないですから。つぎに非難が始まると、一部間違ってました。さらに非難がヒートアップすると、全部間違ってました、辞任します。ズルズル、ダラダラ、真実を隠し続けたあげく、最後は破綻する。

それなら、初めから認めとけばよかった?

後の祭りです。

データの相関関係でいうと、不祥事は最初に非を認めた方がうまく。これは因果関係も成立している。なぜなら、ゴールは一つで(全部バレる)、そこに1日でいくか、1ヶ月かけるかなので。

ところが、過去の不祥事をみると、ほとんどの企業は、ズルズル、ダラダラ。記憶によれば、ちゃんと解決したのは「ジャパネットたかた」ぐらいだろう。

2004年3月、ジャパネットたかたで、顧客リストが社外へと流出したことが発覚した。持ち出したのはジャパネットたかたの元社員だったが、この時の会社の対応はみごとだった。

発覚当日から、48日間、広告と商品販売を自粛。同時に、調査チームを立ち上げて対応を進め、マスコミや捜査機関に対し、すべての情報を公開すると約束した。初めから全面的に非を認め、お詫びに徹したのである。

さらに、高田明社長は会社の清算まで視野にいれていたという。

消費者にしてみれば、「そこまでやらなくても、なくなったら困るし(利用してます)」。

このような真摯な態度と対応が、世間の信頼を獲得したのである。その後、ジャパネットたかたが大発展したことは周知だ。

■ジャニーズ事務所の対応

一方、ジャニーズ事務所は、ビジネスを自粛する気配はない(2023年9月)。

さらに、社長は東山紀之に譲ったが、藤島ジュリーは「代表取締役」にとどまっている。

これにはビックリだ。

代表取締役は、文字どおり取締役会を代表するエライ人。そして、取締役会は、会社の最高決定機関。つまり、藤島ジュリーは、今も最高権力者なのだ。

ただし、代表取締役は何人いてもいいし、肩書が会長でも、社長でも、専務でも、平の取締役でもいい。

であれば、代表取締役も大したことはない?

大したことはあります。

でも、会社で一番エライのは株主です。

ちなみに、藤島ジュリーは、ジャニーズ事務所の株を100%もっている。これなら、会社では天下無双である。

東山紀之社長も代表権をもっているが、藤島ジュリーの足元にも及ばない。なぜなら、株を100%もつオーナーなら、社長や取締役の首のすげ替えも思いのまま。それどころか、誰の許可もえず、勝手に会社を解散できるのだ。早い話、株式会社は株主のもの。

ということで、新体制の権力構造は、旧体制と変わらない。藤島ジュリーが最高権力なのだ。これでは、ガバナンス(企業統治)は効かない。ガバナンスが効かないと、コンプライアンス(法令遵守)もムリ。

マスコミがそこを突かないのが、不思議でならない。経済を知らないのか、事務所に忖度しているのか、まぁ、どっちにしても、真実にはほど遠い。マスコミの役目は、国民に真実を伝えることですよね。

とはいえ、壇上で「針のむしろ」の藤島ジュリーも東山紀之をみていると、悪人にはみえない。この二人は、ジャニー喜多川の尻拭いをさせられているだけなのだ。罪は、犯罪を見て見ぬふりをしたこと。それに尽きるだろう。

一番悪いのはジャニー喜多川だが、彼も生来の性欲を満たしただけ。相手が成人の異性でないからといって何が悪い(好みの問題)、それにみかえりも与えたことだし・・・というカンカクで、犯罪の意識もなかっただろう。

であれば、それを止めなかった周囲が悪いという話になるが、それも酷だ。

というのも、会社の代表取締役で100%株主相手に、勝ち目はない。これは身を持って体験したから、間違いない。現場は、勧善懲悪が通用する世界ではないのだ。力と力がぶつかり合う世界で、通用するのは一つ、弱肉強食の力学。

でも、問題提起ばかりでは、何もならない。

まずは問題解決でしょ!

はい、そうですね。

■ジャニーズのビジネスモデル

では、ジャニーズ事務所はどうすればいいのか?

ジャパネットたかたの対応は、参考にならないだろう。

この事件は、社長や会社そのものではなく、元社員の犯罪だった。だから、初めに非を認めて、迅速に再発防止を推進すれば、信頼は回復できる。事実、それを実行して、ジャパネットたかたは、みごとによみがえった。

ところが、ジャニーズ事件は、創業者で長年社長をやった人物が主犯だった。しかも、被害者は所属タレントだったのだ。つまり、会社とブランドが失墜し、タレントも毀損。ほぼ全滅である。

この状況で、再発防止は虚しい響きでしかない。ジャニー喜多川のような社長は、めったに出現しないから、再発防止は重要ではない。問題の本質は、そこではなく、ブランドの根本が失墜したこと。それを回復するにはどうしたらいいか、そこに尽きる。

再発防止が重要でないという点では、グッチ家の暗殺事件の方が参考になるかもしれない。

1995年、グッチ家の第3代目当主のマウリツィオが、殺し屋に暗殺された。殺害を依頼したのは、マウリツィオの妻というから、世紀の大スキャンダルだ。だが、滅多におこらない事件なので、再発防止と言われても。そもそも、グッチ一族に非はない。

しかも、現在のグッチは、グッチ一族の手を離れ、フランスのファッションコングロマリット「ケリング」の構成企業になっている。同族経営より世界企業の方が、ガバナンスとコンプライアンスが守れるから、信頼も得られやすい。事実、事件後も、グッチのブランドは1ミリも揺るがない。

では、ジャニーズ事務所も、どこかの会社に売却すればいい?

それでは不十分だ。

「ジャニーズ」というブランド名が問題なのだ。

なぜか?

ブランド店がたくさん入ったビルを、ウィンドウショッピングしてみればわかる。グッチやヴィトン、その下のブランド、さらにその下のブランドの品質の違いは一目瞭然だ。つまり、グッチはブランドも価値があるが、商品そのものに絶対的価値があるのだ。

一方、ジャニーズの付加価値はタレントではなく、ブランドそのものにある。

ジャニーズ所属のタレントは、とくに歌がうまいわけでも、ダンスがうまいわけでも、演技がうまいわけでもない。

たとえば、韓国の男性4人のユニット「フォレステラ」。美しい歌声、圧倒的な表現力、すべてが特別だ。しかも、低音からファルセット(裏声)までカバーする。初めて聴いたとき、天上の音楽かと思った。このユニットなら、有名だろうが、無名だろうが、最初の3秒間で観客を魅了する。これが、エンターテイメントの王道なのだろう。

だが、ジャニーズは根本が違う。

ジャニーズ事務所は、テレビやマスコミに対し強い支配力を持っている。それを利用して、同事務所のタレントをテレビに出ずっぱりしたことは周知だ。視聴者には、露出が一番多いタレントが、一番にみえる。歌やダンスや演技は二の次だ。ジャニーズはこの手法でトップスターにのしあがったのである。

これが、ジャニー喜多川が生み出したビジネスモデルだ。

エンタメの王道とはいえないが、ショービジネスとしては成立している。

とはいえ、ジャニー喜多川が、戦略を立てて成功したとは思えない。自分の趣味嗜好を追っかけていたら、たまたまビジネスにつながった。それが「未成年男性芸能プロダクション」なのである。好きでやっているので、圧倒的な競争力がある。だから、あれだけ成功したのだろう。ところが、最後は地に堕ちる。なんと数奇な運命だろう。彼と巡り合った被害者はたまらないが。

■解体的出直し

ジャニーズは、タレントの「芸」でなく、「ジャニーズ」というブランドに依存している。

ところが、ジャニーズの生みの親、ジャニー喜多川は、未成年男性アイドルの捕食者だった。

そんなおぞましい人物の名を冠したブランド名を、使い続けますか?

無条件に支持するファンのぞいて、ブランドは地に堕ちたと考えた方がいいだろう。

事実、大手企業は、ジャニーズ所属タレントの広告起用を見直している。さらに、スポンサーが離れも始まった。日本は「右にならえ」主義なので、今後、ジャニーズ離れは加速するだろう。

さらに、タレントのジャニーズ離れが始まれば一大事だ。ブランドどころか、会社そのものが成立しなくなる。

ジャニーズ事務所に残された時間はあまりない。一刻も早く、抜本的な解決策をうつべきだ。

ただし、選択肢は限られている。というか、一つしかない。

解体的出直し。

具体的には?

私見とことわった上で・・・

まず、ジャニーズ事務所を解体する。会社を精算すれば、藤島ジュリーの手元に1000億円は残るだろう。そのお金で被害者に補償すればいい。カネで解決できる問題ではないが、今はそれしかない。

名前を変えても、ダメ?

ダメです。

名前を変えても「元ジャニーズ」と言われるだけ。タレントに罪はないという理屈もあるが、これはショービジネスの話。純白の絹のハンカチについた血痕は永遠に消えないのだ。もし、消えるとしたら、それ自体が消えるとき。

つぎに、解体と同時に、所属タレントを他のプロダクションに移籍させる。これは、破綻した会社のトップとして最低限の義務である。

ここまでやれば、藤島ジュリーは名誉挽回できるだろう。

ジャニーズの「ブランド」はすでに崩壊している。

だから、ジャニーズの「人間」を救うしかないのである。

では、藤島ジュリーは?

被害者に多額の補償をしても、手元に、ん百億円は残るだろう。それだけあれば、古き良き時代を懐かしみながら、穏やかな余生を送れる。晩年、懺悔の気持ちを込めて、回顧録をだせばベストセラー間違いなし。そのお金を全額寄付すれば、人生は終了。

悪くない人生だ。

by R.B

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