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週刊スモールトーク (第531話) ChatGPTとBingの比較(1)~世間話と雑談~

カテゴリ : 社会科学

2023.03.23

ChatGPTとBingの比較(1)~世間話と雑談~

■マイクロソフトの野望

「ChatGPT」と「Bing」と話をしてみた。

ChatGPTはOpenAIの、Bingはマイクロソフトの対話AIで、ともに世界の頂点に立つ。

とはいえ、どちらも、大母神はOpenAIの大規模言語モデル「GPT」なので、双子のAI。一方、OpenAIのオーナーはマイクロソフトだから、どっちにころんでも、全部マイクロソフトじゃん、と鋭いツッコミも。

なんかキナ臭い。

来るべき世界で、マイクロソフトがAIを独占するかもしれない。

根拠がある。

マイクロソフトのOfficeは、ユーザーインターフェイスのデファクトスタンダードだ。そのOfficeにAIを組み込めば、他のAIアプリが不要になるから。結果、マイクロソフトのAI独占が成立するではないか。

マイクロソフトがAIを独占すれば、AIの進化状況が外部から見えなくなる。ファクトチェックもリスクチェックもマイクロソフトが独占。こんな状況が続けば、いつかAIは暴走するだろう。

つまりこういうこと。

マイクロソフトは、映画「ターミネーター」のサイバーダイン社になる可能性がある。この映画では、サイバーダイン社が製造した人工知能「スカイネット」が人類を滅すのだが・・・

興味をそそられる話だが、今回は対話にフォーカスしよう。

■世間話

ChatGPTとBingに話をしていると、いろいろ見えてくる。

一言でいうと、ビックリだ。

2023年で、AIがここまで進化するとは夢にも思わなかった。言語把握能力では、すでに人間の中央値を超えている。つまり、人間より賢い。

根拠をしめそう。

以下、実際に行った対話で、質問者の発言は【人間】、ChatGPTは【GPT】、Bingは【Bing】で表記する。

まず、たわいもない世間話から。

【人間】おはよう。今日は雨で、気分はブルーです。

【GPT】おはようございます。雨の日は気分が少し落ち込みやすいですね。気持ちを切り替えるために、好きなことをしてリラックスするのもいいですし、傘を持って散歩してみるのもいいかもしれません。また、雨の日だからこそできることもあるので、ちょっとした特別感を楽しんでみるのもいいですよ。

「傘を持って散歩してみるのもいいかも」は、粋なアドバイスだ。一度試してみよう。

「雨の日だからこそできることもあるので、ちょっとした特別感を楽しんでみる」は人に言われると「あー、はいはい」、でも、AIに言われると、新鮮な気持ちに。「ちょっとした特別感」も、地味だが、味のあるコピーだ。

では、Bingは?

【Bing】こんにちは、Bingです。雨の日は気分が落ち込みやすいですね。でも、雨にも良いところがありますよ。例えば、空気がきれいになったり、植物が元気になったりします。

空気や植物がどうなろうが関係ない、こっち(人間)の気分の問題ですよ!

ChatGPTは人の気持がわかってくれるが、Bingはわかってくれない・・・にもっていきたいのだが、そもそも、AIは人の気持ちはわからない。

ではなぜ、ChatGPTは気持ちがわかったような口をきくのか?

ChatGPTは膨大なテキストから、言葉のパターンを学んでいる。それをベースに、文脈を考慮しながら、気持ちをくんだときに使う言葉を紡いでいるだけ。

じゃあ、心がこもっていないから、人間には遠くおよぼない?

ノー、人間も同じ。

お愛想で言葉を返すことがよくありますよね。

■ロジカルシンキング

つぎに、ロジカルシンキング。

モノゴトを原因と結果にわけて、その関係を論理的に考えること。

まず、単純明快な論題。

【人間】私はいつもウソをつきます。

【GPT】(アプリケーションエラー)

【Bing】申し訳ありませんが、この会話を続けることはできません。私はまだ学習中なので、ご理解とご協力をお願いします。

あらら、全滅。

そこで、質問を変えてみた。

【人間】「私はいつもウソをつきます」は正しいですか?

【GPT】「私はいつもウソをつきます」という文は、一般的には誤りです。なぜなら、”always”(いつも)という単語は、行動の習慣を示しており、常に嘘をつくということを暗示しています。しかし、ほとんどの人は常に嘘をつくわけではないため、この文は真実でない可能性があります。

あー、そこじゃないですよ。完全に的外れ。

ではBingは?

【Bing】こんにちは、これはBingです。「私はいつもウソをつきます」は正しいと言えるでしょうか?それとも矛盾していると言えるでしょうか?この文は「嘘つきのパラドックス」と呼ばれる論理的なジレンマを表しています。もしこの文が真実だとすると、話者は常に嘘をつくので、この文も嘘になります。しかし、もしこの文が嘘だとすると、話者は常に嘘をつかないので、この文も真実になります。このように、「私はいつもウソをつきます」という文は自己否定的であり、真偽を判断することができません。

だいたい、あっている。論理もわかっているようだ。

ところが、Bingは「論理的思考」ができないはず。

ではなぜ、こんな回答ができるのか?

「いつもウソをつく」につながる言葉を探し出し、巧みにつないでいるだけ。つまり、論理ではなくパターンで回答しているのだ。

■前の会話を覚えている?

ところで、AIは前に話したことを覚えているのだろうか?

これがないと、話が噛み合わないし、話も続かない。

さっそく、本人聞いてみよう。

【人間】あなたは、前に話した内容を考慮して、会話ができますか?

【GPT】いいえ、私は前に話した内容を記憶しません。 各会話は独立して処理されます。

一方、Bingは?

【Bing】はい、私は前に話した内容を考慮して、会話ができます。例えば、あなたが「日常的に嘘をつく人です」と言ったとすると、私はあなたの嘘をつく理由や心理について聞いてみたいと思います。

おぉー凄い、前の会話、覚えてるじゃん。

でも、これはおかしい。

ChatGPTもBingも、同じ大規模言語モデル「GPT」から生まれた双子。DNAが同じなら、コアエンジンも同じはず。

そこで、ChatGPTを問い詰めてみた。

【人間】Aさんは男性で、Bさんは女性です。

【GPT】了解しました。これらの情報は会話に役立つかもしれませんが、特定の質問に対する回答には直接関係がありません。 具体的な質問がありましたら、それに対応する回答を生成することができます。

【人間】Aさんは男性ですか?

【GPT】はい、Aさんは男性であると言われています。

【人間】なぜ、Aさんが男性だとわかったのですか?

【GPT】前の情報として「Aさんは男性で、Bさんは女性です」ということが提供されています。これに基づいてAさんが男性だと答えました。

【人間】あなたは「私は前に話した内容を記憶しません」と言いました。矛盾していますよ。

【GPT】申し訳ございます(ございません?)。確かに矛盾しています。私は人工知能モデルであり、一定の範囲内でのみトレーニングデータを使用して回答を生成しますが、常に正確な回答を生成できるわけではありません。

苦しい言い訳だが、ChatGPTもBingも、前の会話は覚えているようだ。

ただし、Bingは自覚しているが、ChatGPTは自覚していない。もっとも、AIに「自覚」という表現が適切かどうか、わからないが。

■一般教養

つぎは一般教養。

井戸端会議には無縁だが、最近ビジネスシーンでよく聞く「リフレーミング」。モノゴトを見るフレーム(枠組み)を変えて、別の視点から、ポジティブにとらえること。

【人間】リフレーミングを知っていますか?

【GPT】はい、リフレーミングという言葉を知っています。リフレーミングは、人間が情報を処理するための方法論の一つで、認識や思考を再構築することを意味します。これにより、より正確な見方や新しいアイデアを生み出すことができます。

正解です。

Bingは?

【Bing】はい、リフレーミングを知っています。リフレーミングとは、物事の視点や枠組みを変えることで、別の感じ方や解釈を持たせる考え方のことです。例えば、「今日は雨が降って嫌だ」と思う人もいれば、「今日は雨が降って涼しくて気持ちいい」と思う人もいます。これは同じ現象に対して、違う視点で捉えていることになります。リフレーミングは、ビジネスシーンでも活用されることがあります。自分や他者の長所を見つけたり、問題解決のために新しいアイデアを出したりすることに役立ちます。

正解、こちらは実例付き。

とはいえ、うのみにはできない。対話AIは平気で嘘をつくので。

そこで、本当に知っているかテストしてみた。

【人間】大雪は除雪が大変なので、嫌いです。では、大雪をリフレーミングでプラス思考でとらえたら?

【GPT】大雪は、雪の世界を楽しむことができる素晴らしい機会と捉えられます。また、雪で覆われた景色は美しいものであり、また、冬スポーツを楽しむことができます。また、人々は雪に覆われた世界でのホームタイムを楽しんだり、家族と一緒に雪かきやスノーボードなどの楽しい活動をすることができます。

正解です。ありがちな答えなので、心に響かないが。

では、Bingは?

【Bing】大雪をリフレーミングでプラス思考でとらえる方法はいくつかあります。例えば、以下のような視点を持つことができます。大雪は自然の美しさや神秘さを感じさせてくれる。大雪はスキーやスノーボードなどのウィンタースポーツを楽しむチャンスを与えてくれる。大雪は除雪作業によって体力や筋力を鍛える機会を与えてくれる。大雪は家族や友人と一緒に過ごす時間やコミュニケーションを増やしてくれる。あなたはどの視点が一番気に入りましたか?

「大雪をプラス思考」したら「体力と筋力がつく」は想定外だ。正直、笑える。真面目に言っているのか、軽いジョークのつもりか、ビミョーなところがいいですね。

ふと思う。

生身の人間で、ここまで話せる人はどれだけいるだろう?

■一般常識

つぎは一般常識。

【人間】伊達政宗を知っていますか?

【GPT】はい、伊達政宗は、日本の歴史上の人物です。 江戸時代に活躍した藩主で、徳川家康の三男として生まれました。 彼は、多くの政治的活動や内政改革に努め、藩の経済的な発展や内部の秩序を整えることにも力を注いだと言われています。 伊達政宗は、日本の歴史に重要な役割を果たした人物の一人であり、今でも多くの人に知られています。

【人間】徳川家康の三男は、秀忠ですよ。

【GPT】ご指摘ありがとうございます。 あなたが言われている通り、徳川家康の三男は秀忠です。 私の回答に誤りがあったことをお詫び申し上げます。

【人間】では、あらためて、伊達政宗を知っていますか?

【GPT】はい、伊達政宗は、日本の歴史上の人物です。江戸時代の大名で、徳川家康とともに徳川幕府を支配しました。伊達家は独立した勢力として、自分自身の権力を確立しましたが、徳川家康とともに徳川幕府の統治を維持することに貢献しました。

間違いを指摘されても、へそを曲げることなく、非を認めるのは立派だ。

もっとも、感情がないから、へそを曲げるというのもヘン。表現力では、こっち(人間)が劣っているのかもしれない。

さらに、誤ちをわびて、回答しなおすのも立派だ。

だが、よく読むと、2度めの答えもビミョーにおかしい。

伊達政宗は、徳川家康の共同統治者ではないからだ。

さらにおかしなことが。1週間後、同じ質問をしたところ・・・

【GPT】はい、伊達政宗は日本の戦国時代から安土桃山時代にかけての武将で、伊達氏の当主でした。宮城県仙台市を中心とする東北地方の地域に勢力を持ち、仙台藩を築いた人物としても知られています。また、文化人としても知られ、俳諧や茶道、建築、美術などの分野でも活躍しました。

答えはあっているが、おかしい?

回答の内容ではなく、回答が変わったことだ。

ChatGPTの学習は、2021年でカットオフされている。つまり、それ以降、学習していないはず。ところが、伊達政宗の回答が1週間で更新されたのだ。

ただ、ChatGPTは、偽情報や有害な情報を返すことが問題になっているから、パッチワークで修正しているのかもしれない。

では、Bingは?

【Bing】はい、知っています。伊達政宗は日本の安土桃山時代から江戸時代前期にかけて活躍した武将で、東北を平定して仙台藩を開いた人物です。右目を失明したことから「独眼竜」とも呼ばれていました124。仙台城や瑞鳳殿などの建築物にも関わりました。

こちらは、一発正解だ。

というわけで、ChatGPTもBingも常識問題「伊達政宗」は、(最終的に)正解。

さらに、想定外の資質も確認できた。

間違いをスンナリ認め、再度回答しなおすこと。謙虚でよろしい。

というわけで、これまでの対話を総括すると、ChatGPTとBingは人間と区別がつかない。

というか、恐ろしくて、口にするのもはばかられるが・・・ChatGPTとBingは、人間の「中央値」を超えている。

■話が弾む対話とは?

だが、不満もある。

「伊達政宗」は日本の常識なので、たいていのことはみんな知っている。ところが、ChatGPTもBingも教科書に載っていることしか話さない。

しかも、伊達政宗の「肝心かなめ」がスッポリ抜けている。

歴史談義の面白さは、新しいネタ、新しい発見、新しい洞察にある。みんなが知っている教科書の内容を並べてどうするのだ?

おそらく、間違いや有害な発言をおそれ、お行儀良くするフィルターがかかっているのだろう。それが、ChatGPTとBingのコア「人間に媚びるInstructGPT」なのである。

では、どんな答えが返ったら嬉しい

歴史好きの私見と断った上で・・・

【理想AI】伊達政宗の人生は、一見華やにみえるが、じつは闇がある。実父・輝宗を見殺しにし、実母・義姫に毒をもられ、弟・小次郎を斬殺している。目的のためなら、手段を選ばない冷酷さ、そして、肉親に愛されない悲しい宿命。さらに、天下人の資質があったのに、戦国レースに出遅れたため、豊臣家、徳川家に隷属した。その不満からか、常に野心をもち、陰謀を画策。

伊達政宗は、そんな自分の人生を、辞世の句で詠んでいる。

「曇りなき 心の月を 先立てて 浮世の闇を 照らしてぞ行く」

私の心は、一点の曇りもない月の光である。その光明で、闇の乱世を照らしつつ、生き抜いた(人生に悔いなし。私は、闇の世界を照らす光明である)。

凄い・・・私的短歌選ベスト3に入る名句だ。

そもそも、伊達政宗は、当代随一のインテリだった。伊達政宗の書簡が残っているが、随所に教養が散りばめられ、文言は高尚である。

さらに「伊達男」も「伊達巻」も伊達政宗に由来する。日本史上、もっとも粋な男と言っていいだろう。

なんて、展開になれば、話は盛り上がったのに。

誰か、楽しいチャットボットを作ってください。事実は二の次でいいので。

対話AIを、調べ物だけに使うのはもったいないですね。

《つづく》

by R.B

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