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週刊スモールトーク (第458話) 国際金融資本(1)~世界を左右する勢力~

カテゴリ : 社会経済

2020.10.03

国際金融資本(1)~世界を左右する勢力~

■米中対立の行く末

米中対立は、世界のパワーバランスを左右する第一原理「環太平洋圏の覇権」による。

国の存亡にかかわる国家安全保障の問題なので、外交では解決不能。このままでは、偶発的局地戦が発生し、核戦争に突入するかもしれない。というのも、中国は通常戦で負けて、引き下がる国ではないから。

つまり、行き着くところ、米中核戦争

米中?

核ミサイルを撃ち合うのは米中だが、日本も対岸の火事ではすまない。

在日米海軍司令部がある横須賀が、核攻撃を受ける可能性がある。日本は米軍の前哨基地なので、あたりまえ。敵の重要拠点を叩くのは戦争の常道だろう。

とはいえ、受け入れがたい未来だ。回避する方法はないのだろうか?

一つある。

米中が人の道に外れた秘密の取り引きをすればいい。「環太平洋圏の覇権」を折半するのだ。具体的には「日本・台湾・東アジアは中国のもの、オーストラリアを含むグアム以東は米国のもの」。取引の材料にされる国はたまったものではないが、米国が呑めばカンタンに成立する。トランプ政権ではムリだが、親中の民主党政権ならありうる。

では、2020年11月のアメリカ大統領選次第?

話はそうカンタンではない。もう一つ考慮すべき勢力が存在するのだ。世界のパワーバランスを左右する黒子「国際金融資本」。

国と地域を超えて、世界中の政府、企業、不動産に投資する資本家の中の資本家。キングオブ資本家で、神様よりお金持ち。具体的には、ロックフェラー、ロスチャイルドなど欧米の巨大資本家からなる複合体と言われる。

彼らは「グローバリズム」をかかげ、国と地域を超えて、世界を一体化しようとしている。世界が一つになれば、ヒト・モノ・カネの流れ加速し、みんなハッピー?

とんでもない。

世界が一体化すれば、国や地域に根づいたルール・文化・生活様式が破壊される。あげく、すべてが世界共通の価値「マネー」に一元化される。何ごともカネ次第というわけだ。しかも、そのマネーの元締めは国際金融資本・・・グローバリゼーションで一番得をするのは誰か?

周囲で、グローバリズム、新自由主義を標榜する人がいたら要注意。彼、彼女が、日本が破綻しても逃げ場があるほどの大金持ちなら、国際金融資本の代理人、そうでないなら、利用されているだけ。

グローバリズムの弊害はそれだけではない。実体経済にもあらわれている。

現在、モノやサービスは、生産プロセスが細分化され、それぞれ最低コストの国や地域で生産される。その産物は需要に応じて世界中で消費される。このようなグローバルな供給・消費の連鎖を「サプライチェーン(供給の連鎖)」とよんでいる。

その反対言葉が「地産地消」、その地域で消費されるモノ・サービスはその地域で生産される。

サプライチェーンは、AI&ロボットを除けば、究極のコストダウンをもたらす。一方、有事にはめっぽう弱い。それが、今回のコロナ禍でも露見した。

たとえば、世界中で発生したマスク不足。マスクはほとんど中国で生産されていた。ところが、新型コロナが中国を直撃し、生産がとどこおる。その後、世界中でロックダウンが始まり、ヒトとモノの流れも止まった。結果、サプライチェーンが破綻し、マスクが世界から消えたのである。

生活に欠かせない、命にかかわる商品は、高くついても、地産地消が望ましい。そんなあたりまえのことに、初めて気づいたわけだ。「グローバリズム=効率至上主義=拝金主義」のリスクがここにある。

サプライチェーンは、グローバリゼーション(グローバル化)を体現している。その頂点に君臨するのが国際金融資本だ。ただし、彼らは自らモノやサービスを生産しているわけではない。生産する会社に投資しているのだ。

彼らが求めるのは、優れたプロダクトやサービスや画期的な発明ではない。もっと普遍的で強力なパワー「マネー」なのだ。

彼らは、最も効率の良い国や地域に投資し、資産を増やすことに余念がない。皮肉を言っているのではない。どんなつつましい家でも、少しでも資産を増やしたいと思うだろう。つまり、資本主義世界では、「資産を増やす」は自然の摂理なのだ。

とはいえ、国際金融資本とはいえ、しょせんはタダの?大金持ち。

それがなぜ、米中対立のような世界のパワーバランスに影響を与えるのか?

■国際金融資本の正体

じつは、「国際金融資本」には、大きな誤解がある。彼らは経済人ではない。政治家なのだ。

しかも、万世一系、同じ血統が、富とパワーを継承する。つまり、資本主義世界が続く限り、存在し続ける。これが、一般企業との大きな違い。「継続は力なり」とはこのことなのだ。

一般企業はトップが変われば方針も変わる。さらに、トップには任期があり、生物寿命もある。だから永続性はない。そもそも、会社の最高権力者は社長ではない、資本家なのだ。社長も役員も、大株主の一声で、カンタンにクビが飛ぶ。

たとえば、最近おきた「大戸屋のTOB」事件。外食大手のコロワイドが、定食チェーンの大戸屋への敵対的TOBを仕掛け、株の買い占めに成功した。結果、コロワイドが大戸屋の経営権を握った。どちらが経営者にふさわしいかではなく、株(マネー)を握った方が勝ちという話。

つまり、資本主義世界の最強者は、労働者でも経営者でもなく、資本家。そして、その頂点に君臨するのが国際金融資本なのだ。

国際金融資本は、金儲けが目的だが、手段は経済にとどまらない。政治・外交・軍事、あらゆる分野で介入する。マネーという最強パワーを駆使して。というのも、この世界は政治も外交も戦争もカネが物を言う。昔から「地獄の沙汰もカネ次第」と言うではないか。

では、国際金融資本は、米中対立にどんな影響を与えるのか?

これまで、国際金融資本は中国に寛大だった。中国を資本主義世界の仲間に入れれば、投資の機会が増え、儲けも増えると期待したのだ。さらに、米国の政権には、共和党、民主党をとわず、国際金融資本にくみする一派が存在する。だから、中国は台頭できたのである。

ところが、中国のグローバーリズムは異質だった。中国の「一帯一路」はその象徴だろう。一見すると、グローバリズムだが、マネー・ファーストではなく、中国共産党・ファースト。つまり、頂点に立つのは、資本家ではなく中国共産党なのだ。そんなカンタンなことにやっと気づいたわけだ。

鄧小平以降、中国はその野望をひた隠しに隠してきた。欧米の資本主義に同調するかのように振る舞い、欧米のヒト・モノ・カネを呑み込み、利用したのだ。

鄧小平は、あの過酷な毛沢東支配下で生き延びた傑物である。ブレない信念と現実に適応する柔軟さがある。あのままいけば、中国が、GDPで米国を抜き去るのは時間の問題だった。米国の人口は3億、中国は14億だからあたりまえ。野心をあらわにするのは、それからでも遅くなかったのだ。ところが、なぜか、習近平は先を急いだ。1位になる前に、野心をむき出しにしたのだ。結果、世界が一気に警戒してしまった。

とくに顕著なのが米国のトランプ政権だ。ことの発端は、2018年10月4日、ハドソン研究所でおこなわれた米国ペンス副大統領の演説。その中で、ペンス副大統領はこう言い切った。

中国は、国内では他に例を見ない監視社会を築いており、ジョージ・オーウェルが小説「1984年」で描いた人間生活の支配システムを構築しようとしている。

「1984年」は全体主義国家を描いた究極のディストピア。国民は、双方向テレビジョン「テレスクリーン」と、あちこちに仕掛けられたマイクで、常に監視されている。行動も思想も制限され、基本的人権は生存権のみ。救いのない国民生活が淡々と描かれている。ペンス副大統領は、中国をそれになぞらえたわけだ。

「1984年」は、映画(DVD)もあるが、小説の方がおすすめ。ストーリーにくわえ、文体も秀逸で、文学としても読みごたえがある。一読の価値あり。

というわけで、米国のトランプ政権は中国を完全に敵対視している。さらに、国際金融資本も警戒モードへ。中国のグローバリズムが、国際金融資本と相容れないと気づいたのだ。

一方、トランプ政権は、昨今の米国政権で唯一、国際金融資本と対立している。トランプ大統領が目指すのはアメリカ・ファーストだが、国際金融資本はマネー・ファーストだから。

さらに、トランプ大統領は、アメリカを古きWASP社会に回帰させようとしている。「WASP」とはアメリカ合衆国の創設者たち・・・White(白人)、Anglo-Saxon(アングロサクソン)、Protestant(プロテスタント)の略語。一方、国際金融資本は、人種も宗教も興味はない。カネ儲けには関係ないから。むしろ、マイノリティを擁護してWASPを崩壊させようとしているのかもしれない。

これまで、米国は移民を積極的に受け入れてきた。結果、人種のるつぼに。さらに、宗教のるつぼでもある。キリスト教プロテスタントは半数で、あとはカトリック、ユダヤ教、イスラム教、仏教、ヒンズー教が占める。すでにWASPは崩壊しているのかもしれない。とはいえ、人種と宗教のるつぼが、多様性とダイナミズムを生み、米国を発展させたことも事実だ。

というわけで、トランプ大統領は四面楚歌。移民も、国際金融資本支配下のマスメディアもウォール街も新自由主義もすべて敵。対中では、国際金融資本と利害が一致しているが、共同戦線を張っているわけではない。

ややこしい。だから、昨今の世界のパワーバランスは読みづらいのだ。

■日本の行く道

でも一つ疑問が・・・

中国式グローバリズムの支配者は中国共産党だが、国際金融資本式グローバリズムの支配者は大資本家。

一体、何が違うのだ?

狩る側が違うだけで、狩られる側は同じではないか。

世界中が実験場され、狩り場にされ、庶民が収奪されることに変わりはない。中国式はあからさまに、国際金融資本式は気づかれないようにこっそりと・・・どっちがいいですか?

話を一旦整理しよう。

2020年の世界情勢を俯瞰すると、

・中国共産党Vs.米国トランプ政権

・中国共産党Vs.国際金融資本

さらに、

・中国共産党は「中華・ファースト」

・トランプ政権は「アメリカ・ファースト」

・国威金融資本は「マネー・ファースト」

あらら、バラバラじゃん。

ところで、日本は?

政界と経済界には、中国共産党または国際金融資本に忖度する一派が存在する。これは秘密でもなんでもなく、周知の事実。彼らは、中国共産党や国際金融資本の代理人であって、「日本ファースト」ではない。日本がおかしくなったときの逃げ道を確保しているに違いない。

ただし、例外もある。前首相の安倍晋三・・・彼だけはこの世界のカラクリを見抜き、日本・ファーストを目指していた。彼の8年間の司政がそれを示唆している。

世界は複雑にみえるが、一つだけ確かなことがある。

習近平もトランプもプーチンも愛国者であること。愛国者・・・日本では死語になっているが、トップリーダーが国の利益を優先するのは当然だろう。日本の政治家が、中国ファーストや国際金融資本ファーストや私利私欲ファーストでは困るのだ。

習近平もトランプもプーチンも、基本「○○ファースト」だが、自国の利益を極大化するために、他国とくっついたり離れたり、合従連衡(がっしょうれんこう)の繰り返している。そのぶん、世界情勢が見えにくい。

ただし、本質が難しいわけではない。要因とからみが多く、処理しきれないのだ。つまり、論理的難しさではなく、数の問題。この手の問題は、AIの方が向くだろう。AIは、人間と違って、水も漏らさぬ論理でたたみこむから。つまり、漏れがない。

というわけで、メディアが流す浅い情報をうのみにしてはいけない。騙される可能性があるから。メディアと国民の利害は一致しなのであたりまえ。

さらに、情報の発信側も、意図的に騙す人、騙されている人もいるから、ややこしい。まぁ、時間軸を拡張して言動をつなぎあわせれば、どちらかわかるのだが。

では、われわれは今、何をすべきなのか?

複数のソースから情報を集め、整合性をチェックし、真実を見極める。さらに、日本のために働いてくれるリーダーをみつけ、唯一の権利「選挙権」を行使して、国政に参加する、それしかないだろう。

日本が私利私欲に走るリーダーに蹂躙され、国民が食い物にされてはたまらないではないか。

《つづく》

by R.B

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