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スモールトーク雑記

■新型コロナ・航空運賃を税金で払う日本 2020.02.18

人間の資質は、平常時に隠され、非常時に露見する。

今回の「新型コロナウィルス(COVID19)」もしかり。

2月の初め、政府もメディアも識者も「日本は感染者数が少ないので、大ごとにはならない。正しく恐れよう」と言葉遊びするほど、余裕だった。一方、感染を食い止めるといいながら、チャーター便の帰国者を検査もせずに帰宅させたり、入国制限も「武漢→湖北省→浙江省」と、場当たり的にだったり。言っていることは東へ、やってることは西へ、どっちやねん?

ところが、2月16日、状況が一変する。政府は初めて「感染拡大は避けられない」を認めたのだ。今後は、検査体制と感染者の治療に重点を移すという。日本人の感染者が急増し、日本人から日本人への感染も確認されたからだ。

2週間前の方針と余裕はどこへいったのだ?

状況が変わったから仕方がない?

状況は変わっていない。単に予測できなかっただけ。事実、東北大学の押谷教授のように、早い段階で、現況を予測していた学者もいたから。

2月3日に、押谷教授はこんな警告を発している。

・中国以外で最初に感染拡大するのが日本になる可能性は十分ある。すでに、感染連鎖が成立している可能性もある。それが、ある日突然、顕在化する。

・日本政府は、湖北省滞在の外国人の入国を拒否するなど、水際対策を強化しているが、今となっては遅すぎる。

・今回の感染症は人類が経験したことのない、まったく新しいタイプの呼吸器ウイルスによる感染症だ。今夏の東京五輪までに収束している可能性は低い。

みごとに的中している。

というわけで、今回の「非常時」の対応や発言で、政治家、専門家、識者の中身が垣間見えた。誰がリーダーにふさわしいか、誰が正しいか、そして、誰がミスリードするか、誰がウソをつくか・・・その名前と発言と結果をひも付けして、記憶にとどめよう。二度と騙されないように。

一方、日本政府の対応が、すべてまずいわけではない。

武漢にいた日本人が、政府チャーター便で帰国した。こんな大技が繰り出せるのは政府のみ。迅速な対応で、なによりだった。帰国者も家族も安堵しているだろう。

しかし、問題はその後だ。

帰国者は民間のホテルに収容されたという。政府が無理矢理押し込んだのだろうが、ホテルは「収容所」ではない。もし、その中に感染者がいたら、どうするのだ?

ホテルの手すり、部屋のドア、レストランの椅子、テーブル、食器から、カンタンに感染する。

民間のホテルが、このリスクをコントロールできるのか?

従業員の安全は?

心ない風評被害をたてないように?

風評被害なんて、言っている場合ではない。「実被害」が出る可能性があるのだ。相手は伝染病なんですよ。

パンデミックとは、感染が爆発的に拡大すること。だから、「封じ込め」と「隔離」が欠かせない。

問題はどこに隔離するか?

ベストは、航空自衛隊の基地だろう。チャーター便を基地に着陸させ、そのまま隔離する。軍事基地はセキュリティが高く、部外者がウロつく心配もない。そもそも、軍事施設なので、最高レベルの危機管理体制が敷かれている。だから、「隔離」にはうってつけ。それに、今は戦時ではないから、自衛隊も対応する余裕はあるだろう。帰国者も家族も国民も安心だろうし。ところが、実際は羽田に着陸し、収容されたのは千葉県の「勝浦ホテル三日月」だった。

なぜか?

わからない。

わからないことは、まだある。

政府チャーター便の運賃を誰がもつか?

パンデミックを前に、カネの話なんか、さっさと決めればいいのに、もめにもめた。

1月30日、菅官房長官が、運賃を「本人負担」とする政府方針を発表した。請求額は、エコノミークラスの片道正規運賃「8万円+税金」ナリ。いわく「従来、内戦など本人の意思にかかわらず退避をお願いせざるを得ない場合を除き、負担をお願いしている」

ところが、すぐに反対の声があがった。「政府負担」にすべし!

自民党の二階幹事長:「突然の災難だから、本人だけにすべて負担させるのではなく・・・」

立憲民主党の杉尾議員:「運賃をすべて政府が負担してはどうか」

公明党の山口代表:「不安とリスクを抱えてやむを得ず帰国された方々なので、政府がきちっと負担すべき」

どんだけ、アタマ悪いの?

まず、「政府負担」といえば、聞こえがいいが、実質「税金」。つまり、納税者一人一人に請求書が行く(実際は知らないうちに徴収される)。

大した金額じゃないから、ケチなこというな?

金額ではない、筋が通るかどうかの問題。私財なら好きに使えばいいが、税金は国民のお金、筋の通った説明が必要だ。

では、政府負担を主張する議員先生方の説明は筋が通っているか?

ゼンゼン。

冷静に考えてみよう。

旅行者は遊びに行ったのだ。だから自分で払うべき。そもそも、旅費は、行きも帰り自分が出すでしょう。

ビジネスマンは営利目的で行ったのだ。だから、会社が払うべき。そもそも、ビジネスマンは旅費は会社が出すでしょう。

つまり、旅行者だろうが、ビジネスマンだろうが、何様だろうが、航空運賃は、「本人負担」があたりまえ。搭乗者でも、当事者でもない納税者が、なぜ、負担しなければならないのか?

たまたま、疫病が流行して、帰国が早まっただだけ。早まったから、帰りの航空運賃だけ無料にします、はおかしいでしょう。もちろん、ANAの持ち出しではない。つまり、「国民負担」。

この理屈、ゼンゼンわからない。

何をどう考えたら、こんな結論に行き着くのか?

もし、僕が武漢がいたとしたら・・・政府がチャーター便を出してくれるだけで、感謝!感謝!感謝!生きて帰れるだけで丸儲け。カンボジアのように、首相が「カンボジア人は中国に残り、中国人とともに病気と戦え」と公言する国もあるのだから。

どうしても、「本人負担」が可哀想だと思うなら、言い出した議員先生で折半すればいい。かっこいいですよ!絶対にやらないでしょうけどね。

突然の災難だから、不安とリスクを抱えてやむなくだから、「国民負担」というのは、こういうことなのだ。ではなぜ、こんなねじ曲がった論理が飛び出すのか、しかも、よりによって国の最高機関「国会」で。

おそらく、理由は2つある。

第一に、この状況で、「本人負担」を主張したら、国民に嫌われると思っているから。日本はおかしな国で、道理や合理性より「人情」が尊ばれる。あいつは、理屈こき、人間味にかける血も涙もない奴、というわけだ。

第二に、議員先生は、自腹を切るわけではないから、痛くもかゆくもない。「国民負担」を「政府負担」と言い換えて、美談にしようとするフシもある。その場合、手柄は国民ではなく、言い出した議員先生にいく。負担するのは「国民」ではなく「政府」だから。

最初に、菅官房長官が発表した政府方針「本人負担」は筋が通っていた。ところが、結局、筋論が人情論に押しつぶされてしまった。その後、マスコミからも国民からも非難の声はあがらない。「血も涙もない奴」と言われるのイヤなのだろう。本当におかしな国だ。

というわけで、今「本人負担」を主張する政治家はいない。

それより気になるのは、カンタンに「政府負担=国民負担」がまかり通る風土。そんな軽いノリで、税金使ってるから、世界有数の財政赤字大国になるのだ。

ところで、コストカッターの財務省はどう思っているのだろう?

ちょっと待てよ、その前に、くだんの議員先生の報酬も税金だった。あらら・・・

《つづく》

by R.B

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