クラブとキャバクラ(3)~モテる男の条件~
■男はなぜキャバクラに行くのか?
世界に冠たるコンピュータメーカーの営業マンから、こんな質問をされた。
「キャバクラでモテる方法ないですかね?」
別に、彼と、キャバクラ談義で盛り上がっていたわけではない。このメーカーがリリースした最新鋭コンピュータを熱く語りあっていたとき・・・ひょうたんから出た駒。
というのも、このコンピュータは、今、流行のビッグデータ、機械学習、人工知能(AI)にも対応可能なHPC(高性能コンピュータ)なのだ。そんなハイスペックなコンピュータを日記帳代わりに使うわけにもいかない。そこで、
「キャバ嬢から来るメールが、営業メールかマジメールかを判定する人工知能」
の話で盛り上がったわけだ。一般に、人工知能は、ホンマモンの「強いAI」と、パチモンの「弱いAI」があるが、これは後者(前者はまだ発明されていない)。なので、手頃なアプリケーションといえるだろう。
手頃?本当に作れるの?
はい、作れます!
まず、キャバ嬢のメールを無料で判定するウェブサイトを立ち上げる。すると、鼻の下をのばした男性諸氏から大量のキャバ嬢メールが届く。
そのメールを、片っ端からシステムに食わせ、機械学習させ、判定精度を上げる。そして、実用レベルに達したら、有料にする。普通のサービスなら、これで見向きもされなくなるのだが、これは違う。
プライベートでキャバクラに通う男性諸氏の目的は一つしかない。ホステスを陥落させること。その場合、見込みのないホステスにおカネを使うのはムダ。限られた資金を見込みのあるホステスに集中投資する方がいい。つまり、メールで本気度が分かれば、時間とおカネの節約になるのだ。だから、有料にしてもお客は減らない(たぶん)。
ただし、一つ問題がある。そのメールが「営業メール」か「マジメール」かわからないと、コンピュータは学習できない。キャバ嬢に聞いても、「マジメール」と言い張るだろうから、「学習」そのものが成立しないわけだ。ダメじゃん・・・
ところが、うまい方法がある。
キャバクラと提携して、キャバ嬢に「営業/マジ」タグ付きのデータ(メール)を量産してもらう・・・のではない。
機械的にやる方法があるのだ。
どんな?
それをペラペラしゃべったら、会社クビでしょ!
それに、話はソコではない。
じつは、この「キャバ嬢メール判定システム」から、
「キャバクラでモテる方法ないですか?」
に話がワープしたのだ。
ところで、答えは・・・あります!
札束をばらまく?
今どき、古い手ですね、品もないし・・・ホステスは、その場は喜んでくれるだろうけど、心の中で軽蔑している。シャンパンを抜いてくれる方がまだマシ、とホステスは思っている。
ただし、シャンパンはピンキリで、安いものでも1万5000円。スッポ~ン、というあのバカッぽい音とともに万札が飛んでいくわけだ。
しょぼーん・・・ビンボー人はムリ。
ビンボー人が、なぜキャバクラに行くのだ?とツッコミが入るのは必定だが、それはておき、おカネのない人はどうやったら、もてるのだ?
下心を捨てて、その場を楽しむこと。
それでモテるとは限らないが、嫌われることはない。
嫌われないだけ?
じつは、嫌われないだけで、かなりのアドバンテージになる。なぜなら、お客の大半はホステスに嫌われているから。
というのも・・・
ほとんどのお客は、下心満載で、お店に口説きに来る(特に個人で来るお客)。それだけではない。サワる、グチる、下ネタ、さらに、店外に連れ出して、「オレと付き合ってくれ」・・・これでは、女の子に嫌われてあたりまえ。「イケメン」、「独身」、「金持ち」の三拍子そろっていれば別だが。
ホステスはこう思っている・・・
モテない男、冴えないおっさん、黄昏れエロジジイの相手をしているのは、あんたがお客さんだから。早い話、おカネのため。それなのに、何が悲しくてプライベートで付き合わなきゃいけないの、この愚か者!
ホステスにこの話をすると、顔をのぞき込むように、そして、遠慮がちに、
「ホント、そうなのよねぇ・・・」
と吐露していた。
そして、さらに重要な事実がある。
クラブ・キャバクラでクドいても、陥落するホステスは少ないこと。
相手は、接客のプロであることをお忘れなく。
そもそも、ホステスは、器量もトークも人並み以上なので、ほとんど彼氏がいる。なのに、脈ありと勘違いして、通い続ける人がたくさんいる。騙されてますよぉ~、家一軒分飲む人が後を絶たないわけだ。
あー、やっとれん、そんな所行きたくないわ・・・と、まともな人なら思う。
とはいえ、社用(接待)で行かざるをえない人もいる。その場合、会社経費だからと割り切る方法もあるが、どうせ行くなら、有意義に過ごしたいものだ。
そんな人にお奨めなのが・・・
下心を捨てて、会話を楽しむこと!
ただし、会話を楽しむには条件がある。まず、ホステスを不快にさせないこと。話相手がご機嫌ななめでは、話が弾むわけがない。とくに、キャバクラは若い子が多いし、高級キャバクラのように接客の教育も受けていない。そのぶん、キャラや思いがストレートに出やすいわけだ。だから、相手が不快なら、そのまま自分に跳ね返ってくる。
では、ホステスに嫌われない方法は?
じつは、これはホステスに限った話ではない。奥さん、彼女、娘、さらに、職場の女性にもあてはまる普遍的なルールなのだ。
■夜の店でモテる方法
あなたが若ければ、ふつうにしていればいい(特にヘンな性格でなければ)。問題は歳をとった場合だ。とくに、40歳を超えて、加齢臭がプンプン漂い始めたら、要注意。
「パパ、サラミの臭いがするぅ~」
と娘に言われたら、「芳香」と勘違いしてはいけない。タダの「加齢臭」なのだ。
それだけではない。
髪は薄くなり、顔はパンパン、肌は荒れ、お腹はモッコリ、何を着ても似合わない。そんな哀れな己の姿を認識する必要がある。
どうやって?
等身大の鏡の前に立って、くたびれた肢体を凝視する。その姿をみて・・・女性ならどう感じるかを想像してみる。そこで、現実に気づき、女性に嫌われたくないと、一念発起したら・・・次のことを実践しよう。
1.清潔感のある髪型
ポマードでベッタリ七三分けという意味ではない(端正な顔立ちでないとムリ)。清潔感のある、こざっぱりした髪型にする。髪が薄くて、白髪混じりなら、短く刈り上げた方がいい。それで、薄毛と白髪のハンディは相殺される。ただし、顔がパンパンなら逆効果なので、やめておこう。
女性は意外に髪型を見ていることをお忘れなく。
2.スリムな体型
40歳を超えると、新陳代謝が落ちるので、食欲に任せて食べていると、際限なく太る。太ったら最後、上着はダバダバ、パンツはダブダブ、見るからに「おじさん体型」、別名「ビヤ樽」。カッコ悪い、暑苦しい、あっちへ行って!が若い女性の本音です。
だから、40歳超えたら、食べる量を劇的に減らすこと。朝しっかり食べないとダメですよ~、は迷信に過ぎない。父は若い頃から、ずーっと朝食抜きだったが、88歳でぴんぴんしている。しかも、スリムでカッコいい。
ということで、おすすめは・・・
オバマ大統領、ビル・ゲイツ、タモリ、ジャパネットたかたの高田社長が実践している「ファースティング健康法」。一日一食の荒行だが、得られるのは健康だけではない。わかりますね・・・年齢のわりにカッコイイ!
3.似合う服装
服装は、年齢、髪、体型のハンディを緩和してくれる。ただし、頭のテッペンから足のつま先まで、ブランドで固める必要はない。おカネはかかるし、似合う人は少ないし、ヘタをするとチンドン屋・・・コスパは最悪です。
では、どんな服を着たらいいのか?
自分が似合う服(見てカッコいい服ではなく)。
それがわからないから困っている?
では、店員に選んでもらえばいい。ただし、センスのいい店員に頼むこと。店員によって、センスがゼンゼン違うから。
あと、上着は、ジャケットより、シャツにおカネをかけた方がいい。ジャケットよりシャツの方がインパクトがあるし、安くてすむから。
念押しになるが、重要なのは「見てカッコいい」ではなく、「自分が似合う」こと。
4.おシャレな小物
小物は、その人の嗜好や人となりを表す。だから、自分が気に入ったモノを身につけ、個性をアピールすること。
メンドー臭い?
ダメですよ。
それは、好奇心が薄れ、歳をとって、人生が黄昏れている証拠。せっかくの人生、感謝して、楽しく生きないとバチがあたりますよ!
そのためには、好奇心を失わず、おシャレして、若い子たちとのコミュニケーションを大切にすること。小物はそのための道具です、話のネタにもなるしね。
ところで、小物といってもいろいろあるけど・・・
手っ取り早いのは腕時計だろう。
ケータイ、スマホがあるから、いらない?
ノーノー!
腕時計は、計時の道具ではありません。女性のネックレスやイアリング同様、男の大切な装飾品なのです。高価である必要はないが、「おっ」と思わせるモノを選ぶこと。1000円~3000円でも、おシャレな腕時計はいくらでもあります。
ただし・・・
仕事上の会食で、相手が偏屈者なら、
「オレは、パチモンの時計をする奴とは仕事をせん!」
と一喝されることもあるので用心しましょう(本当にあった話)。そんな面倒くさい相手なら、20万円~30万円あたりの機械式腕時計がおすすめ。
ここで、男の見てくれを総括する。
若い時は、何を着ても、何を身に付けても、付けなくても、サマになる。逆に、歳をとると、太って体型が崩れ、何を着ても似合わなくなる。だから、せめて、「清潔感」を保つこと。モテるモテない以前に、相手に不快感を与えないために。
つぎに、トーク(ここからはクラブ・キャバクラのホステス対策)。
1.クドかない、サワらない、グチらない、下ネタを連発しない
すべて、「男の劣情」まんまなので、ホステスは嫌悪感をいだく。そもそも、お店を間違えていません?
2.話が面白い、でも、ガンガン行かない
口が一つ、耳が二つあるのは、一つ話して、二つ聞きなさいという神様のメッセージ。トークに自信がなければ、あえて話す必要はない。聞き倒せばいい。ただし、相づちと笑みは絶やさないように。石田純一はコレらしい。
3.優しくて、気配りができる
これができれば、相手がホステスでなくても、好かれる。老若男女を超えて、人間に好かれる普遍的ルールです。
4.余裕があって落ち着いている
歳を取ったら、若者に勝てるのはコレしかない。
5.ホステスのプライベートに立ち入らない
ホステスとの会話は、あなたにとってはプライベートかもしれないが、ホステスにとってはビジネス。だから、彼女のプライベートをネホリハホリ聞かないこと。100%嫌がられます。ましてや、店外デートに誘うなどもってのほか。指名を外されるのがイヤでデートに応じるホステスもいるが、心の中では・・・
少し前に、「枯れ専」が流行った。
「枯れ専」とは、若い女の子が、同世代の若い男の子より、40歳超のおじさんに憧れるシンドローム。
ははぁ~ん、ジョージ・クルーニーとか、雑誌「LEON」に出てくるような素敵なおじさま・・・ところが、そうとは限らない。シワシワの顔や手がいいとか、加齢臭がいいとか、黄昏れた後ろ姿がいいとか、意味不明のも含め、いろいろある。ただし、上記の「3.~4.」は必須条件です。
早い話が、相手を思いやる優しさがあること。
ただの優男だろ、チャライ・・・
そうではありません。パチモンの優しさは「自信のなさ」からくるが、ホンマモンの優しさは「想像力」からくる。老若男女をとわず、人間にはそれが透けて見えるのです。
■レディー・キラー
その昔、PCゲーム事業をやっていた頃、ゲーム誌の編集スタッフと飲むのが楽しかった。
歴史シミュレーションゲーム「GE・TEN~戦国信長伝~」をリリースしたとき、アスキー出版の「ログイン」にはお世話になった。見開き2ページで攻略法を3回も連載してもらったのだ。その結果・・・ゲームソフト総合ランキングで第3位!そのとき、コーエーの「信長の野望」は6位だった(やったね!)。
そんなご縁で、ログインのスタッフとはよく飲んだ。新宿は怖いので、たいていは渋谷だった。彼らと話をするのがあんまり楽しかったので、クラブやキャバクラとは無縁だった。
ところが、月日は流れ・・・
ログインは廃刊、アスキー出版も消滅した(角川書店に吸収)。気がついたら、クリエーターでも技術者でもなくなっていた。当然、会食の相手も内容も変わる。
取引先の役員とか管理職。一次会で金儲けの話をして、二次会はクラブやキャバクラで時間つぶし。それがイヤというわけではないが、若い頃、渋谷で飲み明かしたあの楽しさにはおよばない。そもそも、雑誌編集のスタッフは物知りだ。だから、コンピュータ、テクノロジー、ゲーム、アニメ、映画、歴史・・・何を話しても楽しかった。
そんな話題を、キャバクラの若い子にふるのは無粋だし、さりとて、高級クラブで、ホステスの付け焼き刃の知識で対応されても・・・話がゼンゼン弾まない。
あー、昔はよかった、あの頃にもどりたい。タイムマシンが作れたらいいな・・・絶対ムリ。
そんなある日のこと、クラブ・キャバクラで楽しむ方法を見つけたのだ。
それが「レディー・キラー」作戦。もちろん、「ナンパ」ではない!
順を追って説明しよう。
今、ハマッっているのが米国TVドラマ「パーソン・オブ・インタレスト」だ。J・J・エイブラムズ×ジョナサン・ノーランの黄金コンビが制作した作品だが、これがマジで面白い。
億万長者にして天才プログラマーのハロルド・フィンチが開発した人工知能「ノーザンライツ」は、犯罪を予知することができる。監視カメラ、パソコン、預金口座の情報を分析し、犯罪の兆候があると、対象者の社会保障番号をはじき出す。ただし、対象者が加害者か被害者かはわからない。そこで、元CIA工作員ジョン・リースが対象者を監視し、犯罪を防ぐという設定だ。
第1シーズン、第2シーズンとダレることなく、物語は盛り上がり、第3シーズンでは、人工知能は恐るべき進化をとげた。自我が芽生え、自らの意志で姿を消したのだ。さらに、第2の人工知能「サマリタン」が起動し、「人工知能Vs.人工知能」のワクワクドキドキの展開へ・・・おっと、話はそこではない。
じつは、このドラマの第3シーズンに、第3話「レディー・キラー(LadyKiller)」というエピソードがある。それを観て、クラブ・キャバクラで楽しむ方法を思いついたのだ。というわけで、名付けて「レディー・キラー」作戦。
まずは、第3話「レディー・キラー」のストーリーだが・・・
人工知能システムは、あらたな凶悪犯罪のターゲットをはじき出した。イアン・マーフィーという青年実業家だが、調査の結果、女たらしと判明した。
というのも・・・
彼は、「アングラー」という出会い系アプリで、好みの女性を捜し、デートに誘う。それだけなら、タダのナンパだが、その後の行動が不可解だった。相手の女性のタイプに合わせて、上流階級風からアーティスト風と、カメレオンのように変身する。しかも、会話を楽しむだけで、深く付き合おうとはしない。ある種の人格障害?
じつは、彼は女たらしでも、人格障害者でもなかった。
「アングラー」に登録された情報で身元を参考にし、彼女が喜びそうな人間に変身する。それから、巧みなトークで女性の望みを引き出し、データベースを構築する。つまり、ビジネスだったのだ。
彼は言う。
「男性は女性の望みをわかっちゃいない。それを調べるんだ。なぜ長続きしないかって?向こうもそれを望んでいない。そこがいいんだ」
これで閃いた!
接待は好きではない。話の合う仲間と飲む方がよっぽど楽しい。でも、その仲間は、遠い昔に解散してしまった。だから、接待を楽しむしかない。そこで、イアン・マーフィーにように、心を変身させて、会話を楽しむことにしたのだ。
キャバクラに行ったら・・・
まず、自分のキャラを捨てる。
そして、指名はしない。そうすると、2時間で数人の女の子と会話ができる。20分ごとに女の子が入れ替わるので、その度に、その子の性格を見抜いて、それに合ったキャラに変身し、会話を楽しむわけだ。
「疑似恋愛」ならぬ、「疑似世間話」、これで退屈から解放される。いろんな女の子、いろんな自分を発見できるから。
こうして、退屈な接待が、それなりに楽しくなった。クラブもキャバクラもいろんな楽しみ方がある。人生は考え方一つだ。
ただし、気になることが・・・「ジキル博士とハイド氏」にならなければいいのだが。
《完》
by R.B