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スモールトーク雑記

■3Dプリンタ 2009.10.05

得意先が本社を移転したので、役員全員(3人)で挨拶に行った。さすがは上場企業、秋葉原のど真ん中に、本社ビルがドーン!だけど、なんでアキバなんだろう?商売はアキバと何の関係もないのに。

夜、得意先と会食。専務と部長が口をそろえて、アキバはなじめないとボヤく。たしかに、今のアキバは、オジさんが心安まる街ではない。さては、オーナーの独断?ところが、目の前の松阪牛に気を取られ、理由を聞くのを忘れてしまった。

今回の出張はこれでおしまい、のはずだったが東京まで来て、晩飯食って帰るのはちょっと・・・ということで、翌日、再びアキバへ行った。

特に行くあてもないので、社長の知り合いの会社にお邪魔することにした。狭いビルの一室に、所長(72歳)、部長(50歳代?)、社員2人(40歳代?)だけ。おっさん4人組・・・異様な雰囲気。

ところが、話してみると、けっこう明るい。年の功か、ジョークもさえて、みんな和気あいあい。なんか楽しそうだ。全員、一丁上がりで、燃えるような熱意はないが、ダラダラでもない。初めて見る不思議な社風だ。

ところが、そのさびれたビルの一室で・・・

僕は「未来」を見た。

机におかれた1本のモンキーレンチ。長さ10cmほどのレプリカで、半透明の樹脂でできている。スクリューギアを回すと、レンチの幅が変わる。おー、すごい!

だから?

注目すべきは、モンキーレンチの精巧さではなく、製造方法にある。なんと、3Dプリンタで印刷したのだという。「3次元物体」を印刷?久々に、技術者ゴコロが騒いだ。

ところが、話を聞くと、原理は意外にシンプル。以下、その製造方法

・・・

まず、3次元形状の設計図をつくる。Max、Maya、LightwaveなどのCGソフトで、モデリングすれば、それが設計図になる。次に、その設計図をもとに、形状を地図の等高線のようにスライスし、下から上に順番に実体化していく。それだけ。

スライスを実体化するには、「光造形」という方法を用いる。スライスごとに、特殊な樹脂(液状の光硬化性樹脂)の平面板を用意し、実体化する部分に紫外線をあてる。すると、その部分だけが硬化し、実体化される。この作業は二次元処理なので、「印刷(プリント)」。この二次元印刷を等高線の高さ方向に繰り返せば、3次元形状が実体化される。つまり、「3Dプリンタ」。

最後に、実体化されなかった部分(紫外線をあてない)を取り除く。この部分は柔らかいので、ポロポロとれて、気持ちがいい。中から3次元オブジェクトが現れると、ちょっと感動。

3Dプリンタは、一体成形なので、鋳型や切削が不要だ。だから、手間もかからない。しかも、スライスの積み上げなので、自由度が高く、複雑な形状もOK。なんと、ボトルシップまでできてしまう。

口の小さなボトルの中に、大きな帆船が入っているアレ。たねあかしは、小さなパーツにばらして、ボトルに入れ、中で組み立てる。

タネでもなんでないけど、子供の頃は、不思議でならなかった。ところが、スタートレックの「転送」を観て、「これや!」と感動したことを覚えている。

冗談はさておき、そんな魔法のボトルシップも、3Dプリンタなら簡単に作れる。

ただし、素材に問題がある。周囲の温度が50度を超えると、固体を維持できないという。ドロドロ溶け出す?ん~、ちょっとコワイ。

できあがったオブジェクトは、じつに滑らかだ。目を凝らしても、スライスの段差は見えない。その秘密はスライスのピッチにある。わずか16ミクロン(0.016mm)。この3Dプリンタのウリは、ココらしい。

ところで、開発したのはどこの誰?むろん、先の4人組じゃない。イスラエル。ファイアウォールを発明したのも、名戦車メルカバを開発したのも、イスラエル。先入観もあるが、「ドキドキする発明=ユダヤ人」?

この3Dプリンタで、心底感動したのは、テクノロジーではなく、機能。形状データさえあれば、何でも実体化できる!僕の子供ゴコロには「魔法」に見えた。

今は、形状しかコピーできないが、遠い未来には、材質までコピーできるかもしれない。そうなれば、スタートレックのレプリケーター(複製器)だ。とはいえ、今の「形状コピー機」でも、十分商売になる。

たとえば、アキバの中央通りに、ガラス張りの店舗をかまえる。そこで、フィギュア、戦車、宇宙船、城の3D印刷を実演する。さらに、それを即売。きっと、人だかりができるだろう。

そうなれば、形状データを持ち込んで、これを作ってくれとせがむオタクも出てくるだろう。データをメールに添付すれば、地方からでも注文できる。

新築するとき、マイホームのミニチュアがもらえたら、どんなに嬉しいだろう。3Dプリンタならカンタンだし、建築業者のウリにもなる。

自分だけの宇宙船、飛行機、戦車をモデリングして、3Dプリンタで、サクサク実体化・・・考えただけで、ワクワクする。ひょっとして、プラモデルはなくなる?

すっかり興奮した僕は、彼らに自分の思いを打ち明けた。「個人でこのプリンタ買います。いくらですか?」

「えーと、たしか、5000万円・・・」

by R.B

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