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スモールトーク雑記

■東日本大震災・2011年4月21日 2011.04.21

東日本大震災を目の当たりにして、リーダーのあるべき姿について、考えさせられた。

今回のような大惨事では、わずかな判断ミスや、一瞬の迷いが、「犠牲者の数」を増大させる。しかも、失われた命は二度ともどらない。つまり、取り返しがつかないという点で、他の問題とは根本が違う。だからこそ、人の上に立つ者は、卓越した「危機管理能力」が必要になる。

1986年11月15日、伊豆大島の三原山が噴火した。当初は、噴火を見ようと観光客が押し寄せるほどで、島はルンルンの観光気分だった。

ところが、11月21日、事態は急変する。溶岩が流れだし、町に迫ったのである。島民を南部に避難させたものの、大型船が接岸できない。このままでは、町も島民も溶岩に丸のみにされる。

このとき、事態の収拾を一任されたのが、時の官房長官、後藤田正晴だった。中曽根政権は、島民の運命を彼に託したのである。中曽根首相は、「責任はすべて自分が負う」と約束し、超法規的な権限を御藤田に与えた。御藤田は、官民を問わず、船舶をかきあつめ、1人の例外も許さず、全島民を避難させたのである。観光客と島民をあわせると、1万5000人にのぼったという。

この迅速かつ徹底した避難作戦が功を奏し、犠牲者は1人も出なかった。もし、この時、島民の「郷土愛」や「財産」に耳を傾けていたら、もし、噴火がさらに拡大していたら、大惨事になっていただろう。

危機的状況おいては、人命を第一におき、他のすべてを切り捨てる覚悟が必要だ。もちろん、それを住民に期待するのはムリ。だから、リーダーは、非難を一身にあび、全責任を負う覚悟で、決断、実行するべきなのである。

生前、後藤田正晴は、「カミソリ後藤田」の異名をとったが、その卓越した「危機管理能力」は、後世の語りぐさとなった。

さて、今回の東日本大震災はどうだろう?首相は管さん、官房長官は枝野さん、彼らの指導力はいかに?

枝野さんは言葉は明瞭だが、内容はスカスカ。いつまでに、何をどうしたら、どんな効果があるのか、確信犯的にぼかしている。さすが、弁護士。だけど、そろそろ非難覚悟で、国民のために働いたら?

一方の管さん。やる気満々はいいのだが、すぐにキレるのが問題だ。そのため、「使用済み”管”燃料棒」とやゆされ、彼がメルトダウンしないよう、周囲が気遣っているという。また、しょちゅう、当たり散らすので、周囲の人たちが、「被爆者の会」を結成しているという。笑えないジョークだ。

そんな管さんだが、損しているなぁ、と感じることがある。

管さんが、放射能汚染地域について、「10年、20年住めない」と発言し、被災者やマスコミからボコボコにされた。避難命令が出た福島県飯舘村では、102歳の男性が自殺したこともあり、管パッシングがヒートアップしている。

飯舘村の菅野村長にいたっては、「少しでも早く戻れるようにするのが『政治家の仕事』なのに、これが政治家の言葉なのか。全く悲しくてならない。直ちに抗議する」と涙ながらに訴えたという。

だが、この村長は間違っている。

「政治家の仕事」とは、現実を受け入れ、国民、村民の命を守ることであって、偽りの希望を持たせることではない。年配者にとって、故郷を離れるのは辛いだろうが、子孫のことを忘れていないか。チェルノブイリ原発事故では、子供たちの甲状腺ガンが増加したのは5年後で、ピークをうったのは10年後だった。つまり、10年経たないと、どんな災いが進行しているかわからないのだ。

それでも、「故郷に戻る」を大前提とすることが正しい?原子力の専門家でなくてもわかることがある。

1.放射性物質はまだ放出している。

2.放出が数十年続く可能性もある。

3.その間、放射性物質は増え続ける。

4.その大半が大地に蓄積し土壌と植物と大気を汚染する。

5.放出が止まっても、放射性物質を除去するには何年、何十年もかかる。

以上は単なる憶測ではない。チェルノブイリを見れば明らかだ。それだけではない。すでに放出された放射性物質の量は、チェルノブイリ原発事故を超えたという学者もいる。爆発で吹き上げていないので、拡散しないだけのこと。もちろん、出たものは大地にとどまっている。

こんな状況で、被爆地に住んでいたとしたら、僕なら子孫のために、故郷をあきらめる。仮設住宅で暮らす2年の間に、政府や東京電力に怒鳴り込んで、関西で就職口をさがしてもらう。たとえ、政府がもう安全と発表してもだ。もし、さらに事態が悪化し、日本列島全域が放射能に汚染されれば、子供を連れて、チベットでも南極でも行く(北極はムリだけど)。命さえあれば、やり直せるから。

以前、管さんが、「最悪なら東日本がつぶれる」と発言し、大ひんしゅくを買ったことがある。だが、東工大卒の管さんの論理的思考力をなめてはいけない。京都大学の助教授によれば、「もし、格納容器が爆発したら、半径700km圏が避難区域になる」という。

首都圏どころか、北海道から岡山県までが避難対象区域。この人は御用学者ではないので、本音で言っている可能性がある。政府もマスコミも国民も、放射能を甘く見ていないか?個人的には、管さんが提案した「エコタウン」構想には、大賛成だ。放射能汚染地域から遠く、津波がこない高台に、新しい都市をつくる。

それが、どうして非難を浴びるのかわからない。たとえ、故郷から遠く離れた「強制移住」になったとしてもだ。年配者が郷土愛に執着し、子孫を放射能リスクのある地域に住まわせたとする。もし、チェルノブイリのように、5、10年後に甲状腺ガンが急増したら、どうするのだ?もう死んでいるから関係ない?それはないだろう。

政府、マスコミ、国民すべてが、25年前の後藤田正晴の避難作戦を、思いおこすべきだ。島民の命を最優先にし、例外なく、強制避難させる・・・我々がなすべきことは、現実を受け入れ、現実的に対処すること。過去を振り返るのは、それからでも遅くはない。大切なのは、頭のてっぺんから、足のつま先まで、「リアリスト」であること。でないと、判断を誤ったあげく、取り返しがつかなくなる。

by R.B

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