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スモールトーク雑記

■就活 (企業の裏事情) 2011.01.30

最悪の就職氷河期、学生にしてみれば、理不尽に思うこともあるだろう。

中でも納得いかないのは、学歴による足切り。

以前、地元の私大生から、こんな話を聞いた。彼は、県内の上場企業をねらっていた。解禁日、さっそく会社説明会に申し込むと、すでに「満員御礼」。いくらなんでも早すぎるやろ!友人(地元の国立大生)に聞いたところ、その後、普通に申し込めたという。

つまり、この会社は、説明会の時点で、足切りしていたのである。でも・・・今どき珍しい話ではない。

最近、学生にIDを入力させ、有名大学の学生にだけ重要な情報を開示するサイトもある。まさに、学歴至上主義・・・もちろん、すべての企業がそうというわけではないが。人間の実力は学歴だけでは決まらない。これはあたりまえ。事を成し遂げた人物の学歴をみれば、一目瞭然だ。

そもそも、学歴の意味するところは、「読み書きソロバン」、つまり、

1.計数の理解力

2.言語の理解力

につきる。

ところが、社会に出ると、

1.ヴァイタリティ(エネルギー)

2.パーソナビリティ(人間力)

3.創造的思考力(新しい価値を生み出す力)

4.状況適応力(環境に適応し生き抜く力)

5.ストレス耐力(プレッシャーに耐える力)

6.統率力(組織や人間を束ねる力)

などが重要になる。

ちなみに、これらの因子は、「読み書きソロバン」とは関係がない。

ではなぜ、企業は、学歴にこだわるのか?合理性に欠くし、あまりにも理不尽。だが、企業には、そうしなければならない理由があるのだ。

その昔、学生は大学の掲示板に貼られた求人票の中から、会社を選んだものだった。これなら、企業は来て欲しい大学にだけ求人を出し、学生はその中から選ぶ。つまり、企業も学生も選択肢は限られ、
そのぶん、手間いらずだった。

ところが今では、マイナビ、リクナビなどの就活サイトが登場し、就活の効率が劇的に向上した。

まず、企業は、就活サイトを運営する会社と契約し、代金を支払う(オプションによって金額は異なる)。すると、その企業の求人広告が就活サイトに公開される。

一方、学生は、就活サイトに登録すれば(無料)、サイトに登録された企業情報を閲覧できる。条件付き検索が可能なので、手間はかからない。もちろん、エントリーや応募も可能。そして、一番のポイントは、複数の会社に「一括エントリー」できること。これで、学生のエントリーの手間は劇的に減った。結果、人気のある大手企業に、エントリー・応募が急増することになった。企業にとって嬉しい?とんでもない!

大手の人事担当者はこう思っている。昔なら、ウチなんか来なかった大学からも、応募がポンポン来る。それもこれも、就活サイトのおかげ?だけど、こんな数、とてもさばききれない。さて、どうしたのものか?

以前参加した面接官セミナーで、大手食品会社の採用担当者が、こんなことを言っていた。「うちは、エントリーだけで5万人なんですよ。全員チェックするなんて、ムリ。だから、エントリー段階で、ふるい落とすしかないんです。人手が足りないので、学歴で決めるしかないですね。きっと、優秀な子も落としてるんだろうなぁ、と悩みながらやってます」

これが企業側の本音、裏事情なのである。とはいえ、足切り(一次選考)するにも、他に方法はないものだろうか?

最近、よく利用されるのが「エントリーシート」だ。企業に提出する自己PR資料のことである。ただし、本人が書いたとは限らないし、エントリーシートを添削する業者まである。それに、自分が書いたとしても、表現力のチェックにしかならない。こんなものに、どんな意味があるのだろう?

ということで、選考対象者を一気に絞り込むには、学歴しかない、と大手は考えている。学生が「一括エントリー」でくるなら、企業は「一括足切り」で対抗?笑えない話だ。

それに、企業の中には、学歴の有効性を信じる人が意外に多い。実例をあげよう。

ある会社では、学生の履歴書に学歴を書く欄がない。にもかかわらず、後で、合格者を調べると、有名大卒が圧倒的に多いという(球団経営会社の採用担当者の話)。

もちろん、この会社は学生を、計数理解力や言語理解力だけ見ているわけではない。シビアな面接で、

1.ヴァイタリティ

2.問題解決力

3.ストレス耐力

を入念にチェックしている。

にもかかわらず、有名大卒が残るのだという。

例をもう一つあげよう。大学時代の友人が、大手電機メーカーで特許部長をやっている。彼も僕と同様、学歴無用論者だった。ところが、子会社に出向し、考えが一変した。

出向先で見たものは、親会社とは桁外れに見劣りする特許部員だった。特許は、どんな素晴らしい発明でも、些細なミスで、無用の長物になりうる。特許部員には、論理的思考力はもちろんだが、計数理解力、言語理解力、英語力、工学知識も必要だ。

ところが、彼が特許出願文書をチェックしていると、日本語になってないやろ・・・こんな英単語も知らんのか・・・はぁ?一体、何考えてんだ?という具合で、朝から晩まで、お怒りの毎日となった。
あげく、「おまえ、中学校で勉強やり直してこい!」と言い放つ始末。元々、温厚な人物なので、よっぽど、腹にすえかねたのだろう。

彼によれば、有名国立大と早慶あたりなら、こんなことはないという。たしかに、仕事が特許なら、基礎学力は必須だろう。

さらに・・・

ある大手企業の採用担当者から聞いた話。新入社員が配属され、しばらくすると、人事部にクレームがくるという。

「なんであんなの採ったんだ?どんな選考やってるんだ?」

ところが、これが、有名大卒だと文句がこないのだという。だから、彼は有名大卒に執着している。採用担当者にしてみれば、学歴は「担保」というわけだ。

最後に・・・

以前いた会社(上場企業)で経験したこと。ある日、有名大卒の新入社員がヘマをやった。すると、みんな口をそろえて、

「へぇ~、あいつでも失敗するんだ」

別の日、無名大卒の新入社員がヘマをやった。すると、上司が、

「やっぱりな、いつかやると思ってたよ」

・・・

ヒドイ話である。

ここで、就活の企業側の本音、裏事情を整理しよう。

もし、応募者の数が処理能力を超えるなら、足切りはやむえない。その方法は?

数が多い場合、「統計学」が最も有効だ。それが学歴というわけ。つまり、学歴で選ぶのが一番効率がいい・・・これが企業側の論理なのである。

だが、学歴がパッとしなくても、悲観することはない。就活・必勝法が、ちゃんとあるのだから。

それに、忘れてならないのは、内定をもらうより、入社した後のほうが大切だということ。内定は一瞬、その後は40年もあるので。

ところで、学歴は入社後も有効?

ノー!

大手といえど、入社した瞬間、学歴は関係なくなる(一部例外あり)。つまり、その後は実力次第。

もちろん、外資系は、もっと過酷な「実績主義」。つまり、実力があっても、結果が出ないとダメ。

ということで、学歴は入社時だけ有効、と考えた方がいい。

さてここで、遠い昔の僕の就活・・・

ある日のこと、研究室の教授によびだされ、会社見学に行くように言われた。その会社は、船舶用のレーダー、ソナー、魚群探知機、衛星通信などを製造する一部上場企業だった。

指定された日に会社に行くと、なんか様子がおかしい。虎ノ門にある本社に連れていかれ、部屋に入ると、社長を真ん中に、役員がズラリ。役員も見学対象?

・・・

ところが、矢継ぎ早に質問がくる。

あれ、これ面接?

社長:「君の支持政党は何かね?」

僕:「はいっ、自民党です!」(当時は社会党や共産党と答えるのはタブーだった)

社長:「ところで、前の選挙だが、投票に行ったかね?」

僕:「・・・すみません、行ってません」

役員爆笑。結局、僕はこの会社に入社することになった。古き良き時代のぬる~ぃお話・・・

その後、Uターンし、2度転職したが、仕事の内容を変えたことは一度もなかった。「コンピューター=趣味・遊び=天職」で、コンピュータ技術を片っ端から習得していった。だから、他社からよく声がかかった(今はナシ)。

ここで言いたいのは、手に職があれば必ず道は開けるということ。「価値を生む力」こそが、”銀の弾丸”なのだから。

by R.B

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