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スモールトーク雑記

■面接官セミナーに行く 2010.11.21

この2年間で、新卒を6人も採用したのに、期待に応えたのは2人だけ。あとは、心の病気、体の病気、どこにも異常はないけど、ヤル気がちょっと・・・などなど、戦力にはほど遠い。これも、
おゆとり様(ゆとり世代)
のせい?

昔なら、「話にならん!」の一声で一件落着だったのに、今では、法律も社会も社員の味方で、回り回って人事の責任になる。

とはいえ、ウチみたいなベンチャーは、人事部も人事課もない。あるのは、「管理部=経理+総務+人事+ネットワーク管理」

しかも、管理部長は、開発部長が兼任(僕)!?おいおい、大丈夫か・・・

そんなある日、現況を憂いだ社長が、僕の席にやってきた。「これからは体育会系でいくぞぉ~」と力強く訴え、面接官セミナーの案内を置いて行った。たぶん、行ってこい、というのだろう。

体育会系を否定するつもりはないが、スポーツ大好きで、元気みなぎるイケイケのプログラマー&デザイナー!?ぜんぜんイメージがわきませんけど、とは言えなかった。

それに、今はそれどころじゃない。費用でもめている案件があり、開発炎上中の案件もある。ところが、セミナーの開催日を見て、気が変わった。炎上案件の対策会議が東京であり、その翌日がセミナーの日!まぁ、出張ついでに、行ってみるか・・・

ところが、そんなお気軽な受講者は僕だけだった。参加者は8名で、すべて人事担当者。しかも、鼻から気合いが入っている。初めに自己紹介があったが、「出張ついでに、ちょっと参加してみました・・・」とはとても言えなかった。

この面接官セミナーを開催したのは、ウチが適性検査を依頼しているS社。講義は30分そこそこで、ほとんどが演習。さすが、外資系、時間対効果は抜群だ。

まず、学生の面接映像(本物)を観て、受講者が点数をつける。その結果を講師がコメント。さらに、受講者を2つのチームにわけ、チーム単位でディスカッションし、発表する。これを、延々と繰り返すわけだ。

不思議なことに、セミナーも後半になると、いっぱしの面接官になったような気がしてくる。”付け焼き刃”もいいとこなのに。もちろん、他の受講者は別。大きくうなづきながら、熱心に聞き入っている。こっちは、ホンモノの面接官だ。

それでも、このセミナーに参加したおかげで、「面接=サイエンス」ということは理解できた。面接官は、主観を封印し、「面接者の行動予測」に集中するべし。一般に、就職面接では、

1.ヴァイタリティ(エネルギー)

2.問題解決力(エンジン)

3.ストレス耐力(装甲)

がチェックされる。この3つは、あらゆる職種に有効だからだ。

午後からは、この3つの因子をあぶりだす方法を学んだ。面接者に対し、「これまでに最も困難な目標に挑んだ経験を話してください」という質問を投げかけ、反応を見るのである。

まず、3人の学生の面接映像(本物)を観て、受講者がそれぞれ、順位をつける。その中で、一番評価が高かったのは、「インドのスラム街で1ヶ月過ごした」学生だった。あれ?どこかで聞いたことがあるような・・・長澤まさみの「ガンジス河でバタフライ」?

「ガンジス河でバタフライ」は、2008年に放映されたテレビドラマ(視聴率は低かった)。長澤まさみ演じる主人公・高野てるこは、何の取り柄もない女子大生。そこで、就職面接対策に、「ガンジス河でバタフライ」を思いつく。うまくいけば、先の3つの因子をアピールできるし、インパクトも超弩級。

つまり・・・

「インドのスラム街」の話は、「ガンジス河でバタフライ」そのもの。もっとも、「インドのスラム街」の学生は、「ガンジス河でバタフライ」を真似たわけではない。彼の面接の方が10年も古いので。

まぁ、どっちにしろ、魂胆はみえみえ。とはいえ、「インドのスラム街で一ヶ月過ごす=3つの因子のスペックが高い」も確かだ。当然のように、受講者8人のうち6人が、最高の評価をした。

たまたま、低い評価をした一人が、僕の隣の席だったので、理由を聞いてみた。

「彼の評価はなぜ低いんですか?」

「確かにヴァイタリティはあるし、地頭(じあたま)もいい。だけど、このタイプは10年経つと、9割がいなくなるんですよ」

んー、なるほど。

そして、低い評価をしたもう一人は、僕だった。なぜか?

この学生は、「インドのスラム街で暮らす」というだれかれできない困難を克服した。ヴァイタリティ、問題解決力、ストレス耐力、いずれも優れていることは確か。

ところが・・・

彼は、何の価値も生んでいない。

これほどの力があれば、できることは他にもあったはずのに、なぜ、「インドのスラム街」なのか?

彼がスラム街で1ヶ月暮らしてみたところで、思い出以外、何も生まないのに。グループホームで洗濯するほうが、よほど社会的価値がある。

こういう人間は、たとえ力があっても、それを、「自分の価値」にしか使わないものだ。つまり、「社会的価値」を生むとは限らない。だから、組織には向かないのである。

どうして、そう言い切れる?

若い頃の僕がそうだったから(能力は大したことなかったけど)。

ということで、面接官もいろいろ、学生さんは大変なのである。

by R.B

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