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スモールトーク雑記

■GoToトラベルで感染爆発 2020.08.01

「無限なものは2つある。宇宙と人間の愚かさだ」

(Two things are infinite:the universe and human stupidity)

物理学者アインシュタインお得意のブラックジョークだが、それが政府なら笑ってすまされない。今大問題になっている「GoToトラベル」のことだ。

「GoToトラベル」はコロナ禍の経済支援事業で、「GoToキャンペーン」の4事業の一つ。7月22日、先陣を切ってスタートした。旅行代金が35%割引きされ、現地で使える15%のクーポンも付く。合わせて50%引きなので、旅費が半額になる。旅行者にとっては願ったりかなったりだが、観光業者や閣僚の持ち出しではない。つまり、国民の税金を使う。

それが?

健全なプライマリーバランス(国の財政収支)を目指す財務省が、放置しておくはずがない。後々、何かの形で増税されるだろう。つまり、観光業が一息つくだけで、消費者が得するわけではない。

ただし「愚かさ」はそこではない。地方の首長や専門家が反対したのに、政府が「GoToキャンペーン」を強行したこと。結果、全国(特に観光地)で感染者が急増した。

5月25日、緊急事態宣言が解除された後、感染者数がジリジリ増加していた。そんな中、7月22日の「GoToトラベル」がスタートすると、感染者数は急増に転じ、7月31日には最多を記録した。東京都で463人、大阪府で216人、愛知県で193人、全国で1500人超えたのだ。緊急事態宣言を解除した時点のじつに10倍。「GoToトラベル」と「感染爆発」の相関関係は明らかだ。

さらに、因果関係も明らか。観光旅行が増えれば、全国で感染者が増えるのはあたりまえ。相関関係(帰納法)と因果関係(演繹法)が成立するから、正真正銘の「真実」。

というわけで、「GoToトラベル」が「感染爆発」を引きおこしたことは間違いない。しかも、ことは国民の命にかかわる。「愚か」としか言いようがないが、専門家はお見通しだった。政府が「GoToトラベル」を強行した7月22日、日本医師会の中川会長は記者会見でこう発言している。

「7月23日からの4連休は、不要不急の外出や県境を越える移動を避けていただきたい。感染者の急増が激増に変わると、通常の医療も含め医療崩壊する可能性がある」

医療の専門家が警告しているのに、耳を貸さず、強行した結果、感染者数最多を記録。天災ではなく人災だろう。

ところが、政府は「GoToトラベル」の凍結も、緊急事態宣言を発令も考えていない。その根拠としてあげているのは、感染者の若者の比率が増え、重症者と死者は増えていない・・・前者は意味不明、後者はウソ。7月31日、重症者と死者は確実に増えている。

現政権のメンバーは、後世、歴史の法廷に立たされ、国民の命を犠牲にした罪で糾弾されることだろう。

では、政府はそこまでして、何をしたいのか?

「経済」を守ること。

ところが、先読みすると、

「感染者が激増→医療崩壊→人の活動が停止→生産と流通が停止→経済破綻」

あらら、大事な経済が・・・なんという皮肉。

というか、オツムが弱いだけ?

それな。

というわけで、「GoToトラベル」の「愚かさ」は明らかだ。「観光業>経済>医療崩壊>国民の命」をもくろんだのに、最終的に、観光業も経済も医療も国民の命も救えない。二兎を追う者は一兎をも得ず、ではなく、一兎を追ってすべてを失う。やらない方がいいですね。

そこで、再び専門家が立ち上がった。7月30日、東京都医師会の尾崎治夫会長が記者会見を開き、開口一番、

「きょうは言いたいことを言う」

といきなり、戦闘モード。

「法的拘束力を持つ休業要請が必要で、法改正の検討を求める」

とまで言い切った(GoToトラベルは論外で、強力な非常事態宣言を要求している)。

じつは、その前日、尾崎会長は自身のSNSでこんな発信をしている。

「これ以上、国の無策の中、感染者が増えるのは我慢できない」

専門家にここまで言われるとは・・・恥ずかしい限り。もっとも、そんなことをイチイチ気にするようでは、政治家はやってられませんから~

血圧が上がりっぱなしなので、ここで頭を冷やして「GoToトラベル」を精査してみよう。あまりの愚かさに、もっと血圧が上がるかもしれないけど、冷静に読んでくださいね。

「GoToトラベル」の大元「GoToキャンペーン」は、「コロナばらまきキャンペーン」と揶揄されるが、そんななまやしいものではない(ネーミングは素晴らしい)。

というのも、子供でもわかる「あやまち」が4つある。

第一に、なぜ今なのか?

緊急事態宣言を解除して、感染者の数がジリジリ増えているタイミングで、GoToトラベル!県境を越えて、観光旅行しましょう・・・ありえない。

第二に、経済優先と言いつつ、観光業限定の謎。

苦境におちいっているのは、観光業だけではない。建設業、製造業、情報通信業、サービス業・・・全分野におよぶ。マシなのは、非接触ビジネスがからむ一部のITと半導体だけ。

そもそも、経済対策に使うのは、国民の税金。納税者に不公平があってはならない。

ところが、対象は観光業だけ!?

不自然なものには理由がある。

じつは、自民党内部でも反対があったのに、二階幹事長が押し切ったという。二階議員は「全国旅行業協会」の会長を務める「観光族議員」のドン。週刊文春によれば、今回の事業を受託した「ツーリズム産業共同提案体」に名を連ねる観光関連団体14団体が、観光族議員に多額の支援をしているという。なんともわかりやすい。

しかも、金額が凄まじい。「GoToトラベル」のマザーの「GoToキャンペーン」は、「GoToトラベル」、「GoToイート」、「GoToイベント」、「GoTo商店街」の4つの事業からなるが、予算総額は1兆7000億円。一方、感染拡大防止策や医療体制の整備の予算は0.6兆円。

観光業がそれほど大事ですか?

恥も外聞もない、あからさまな利益誘導だが、衆知を承知でやるのだから、腹が座っている(皮肉です)。とはいえ、利害がからむ政治家や業者を責めても、問題は解決しない。社会システムに問題があるのだから。

第三に、東京を外す不公平さ。

「GoToキャンペーン」は、国民の税金を使うのに、なぜ、最大の納税者である東京都民を外すのか?

東京は感染者が多いから?

であれば、時期をずらすか、やらない方がいい。不公平の極みと言っていいだろう。東京都民から不満や反対の声があがらないのが不思議だ。コロナ禍で、自分の身を守ることで精一杯?

それを見越して、やりたい放題。う~ん、やっぱり政治家はしたたかだ(ホメてる場合じゃない)。

第四に、不要不急の外出を控えつつ、観光旅行しましょう。どっちやねん?

もっと大きな矛盾がある。「GoToキャンペーン」を利用して、県境をこえて観光旅行しましょう。ただし、若者や高齢者の団体旅行は除外する。どっちやねん?

というわけで、「GoToキャンペーン」は、不公平と矛盾と意味不明のテンコ盛り。さらに国民の生命まで脅かす。究極の愚策と言っていいだろう。

ところで、こんなとき頑張る野党は、何をしている?

国民民主党・玉木雄一郎代表はこう発言した。

「GoToキャンペーンと夏休みで、8月が感染爆発月間になる。政府は無策だ」

まるで他人ごと。口先だけで、有効な手を打たない。政治家の生命を賭して、やめさせる気概も力もない。今、野党がやるべきことは、野党の大連合を結成して、現政権を倒すこと。ところが、立憲民主党の枝野代表は、党名を「立憲民主党」にこだわって、実現できない。

党名と国難克服、どっちが大事ですか?

優先順位をつけられないリーダーが、ここにもいる。じつは、そんな上等な話ではなく、高額な議員報酬を税金から抜き取り、お山の大将で満足しているだけ。政権与党のほうが、よっぽど気概がある(結果はさておき)。

というわけで、東京都医師会の尾崎会長ではないが、「国の無策で、国民が死んでいく」のは間違いない。さらに、最終的に経済も守れない。

アインシュタインが言ったように、人間の愚かさは無限なのだろうか?

by R.B

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