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スモールトーク雑記

■のっこちゃんの夢・予知能力は存在するか? 2020.07.18

母は子供の頃から、不思議な能力があったという。

「あした、◯◯さんから手紙がくる」と言うと、翌日、本当に◯◯さんの手紙が届く。しかも、的中率は100%。

ただし、配達される郵便物がすべてわかるわけではない。閃くものと閃かないものがあり、閃いたものは必ず的中する。つまり、受け身のパッシブ型。目的を絞って予知するアクティブ型ではない。だから、競馬とか株はムリ。

なんの役に立つのだろう・・・

そのせいか、家族の反応もイマイチだっという。母曰く、必ず当たるのに、家族は驚いておしまい。1分後には違う話で盛り上がっていたという。

その話を、叔母(母の姉)と叔父(母の弟)に確認したところ、「あー、そうそう、そんなこともあったわ」でおしまい。やってることの凄さと、実益と評価の低さのギャップが凄まじい。

この能力は母が成人してからも続く。父との結婚話が出たとき、不思議な夢をみたという。母は海辺に立っている。すると、水平線のかなたから神々しい宝船が向かって来る。「大吉」と確信した母は、結婚を決断したという。ただし、この夢が的中したかはどうかはさだかではない。

聞いてみたら?

どんでもない!

ヘタに問い詰めて、あんたのせいで、大ハズレだったわ、と言われた日にゃ、立つ手がないから。

じつは、古今東西、この手のピソードは枚挙にいとまがない。なかには、大きく歴史を変えたものもある。たとえば、古代ローマのコンスタンティヌス帝の予知夢

312年、古代ローマで二人の政敵が争っていた。イタリア・アフリカを支配するマクセンティウスと、ガリア・スペインを地盤とするコンスタンティヌスである。ともに西方ローマ帝国の統一皇帝を狙う実力者だった。

312年春、コンスタンティヌスは軍を率いて、ガリア(現フランス)からアルプスを越えてイタリア北部に侵攻する。一方、マクセンティウスは、コンスタンティヌス軍が存外に少数だったので、野戦を決意する。

その数日前のこと。

コンスタンティヌスは不思議な白日夢をみた。正午に日輪を背に十字架が現れ、そこに「これにて、勝利せよ」と刻まれていた。さらに、自分が見た天国のしるしを用いて、敵と戦うようお告げを受ける。感動したコンスタンティヌスは、兵士たちに盾に十字架のしるしを描くよう命じた。

312年10月28日、両軍はローマ市の西にあるミルウィウス橋で対戦した。

コンスタンティヌス軍が進軍を開始すると、突然、橋が崩れ落ち、マクセンティウス軍は川へ投げ出された。マクセンティウスと兵士たちは、川岸に泳ぎ着いたところで皆殺しにされた。勝利したコンスタンティヌスは、翌日、西方ローマ帝国の正帝として迎えられた。コンスタンティヌスの白日夢は的中したのである。

このエピソードは、有名な歴史事件によって正当化されている。世界史の教科書にも出てくる「ミラノ勅令」だ。

313年2月、コンスタンティヌスの署名入りで、この勅命が発せられ、信仰の自由が承認された。迫害され続けたキリスト教はローマ帝国で公認されたのである。その後、コンスタンティヌスは西方ローマ帝国の唯一の正帝となったが(コンスタンティヌス1世)、キリスト教の擁護は続く。キリスト教会のモメゴトにまで乗り出したのだ。

当時、キリスト教会は「イエス キリストは神性をもつか?」で、二派が争っていた。

そこで、この問題を調停するため、ローマ皇帝コンスタンティヌス1世は、325年、トルコの町ニカイアで会議を開催した。歴史上有名な「ニカイア公会議」である。

この公会議で、アレクサンドリアの司祭アリウスはこう主張した。

「神は絶対の存在であるがゆえに、始まりはなく、生まれることもない。しかし、キリストは生まれた者であるゆえ、神と同一ではない。キリストは神の子、つまり神の意志によって存在するのであり、それゆえ、神のような絶対的な神性をもつものではない」

これに対し、アレクサンドリアの主教アタナシウスはこう反論した。

「父である神と、子であるキリストは、同じ神性をもつ」

どっちが筋が通っているかは一目瞭然だが、宗教は合理性がすべてではない。勝利したのはアタナシウスだった。アリウス派は異端とされ、破門されたのである。

もし、「コンスタンティヌスの白日夢」がなければ、キリスト教はその後も、迫害され続け、今のような世界宗教になっていなかったかもしれない。

ローマにあるコンスタンティヌスの凱旋門にはこう刻まれている。

「この救いの御しるしにより、私はあなたの都市を僭主から救い出し、自由を取り戻しました」

というわけで、歴史を変える予知もあれば、1分で話題から消える予知もある。

ただ、この手の予知能力は、科学的に証明されたわけではない。火のない所に煙は立たないというから、何かあるかもしれないが。先の「コンスタンティヌスの白日夢」のように。さらに、企業家、軍人、芸術家、棋士、アスリートの中にも、人智を超えた成果をあげる人がいる。

たとえば、将棋界の藤井聡太七段。

2020年7月16日、第91期棋聖戦で藤井七段は、渡辺明棋聖に勝ち、史上最年少でタイトルを獲得した。

宿敵の佐藤天彦九段は、藤井七段をこう称している。

「一人だけ小数点第2位まで見えている」

佐藤九段によれば、藤井七段は、ほとんどの棋士には「見えない手」を打つことがあるという。「考えない」手で、ふつうは、選択肢として意識に浮上してこない。

ただし、佐藤九段は、藤井七段を予知能力者とは言っていない。棋士らしく、科学的、論理的に説明している。具体的には「圧倒的な計算力」。先の「考えない」手と矛盾するが、本筋と関係ないので、話を前に進めよう。

佐藤九段曰く、藤井七段は、難解な局面においても、10手、20手先まで読んでいる感じがする。将棋の歴史の中でもこれだけ先を読める人がいたのかと。

渡辺明棋聖との棋聖戦第2局で、藤井七段の打った手が話題になっている。最強の将棋ソフトが、最初はベスト5にも入らないと判断した手が、6億手以上を読むと最善手として浮かび上がったという。しかも、思考時間は23分。

23分で6億手?

絶対ムリ!

藤井七段は天才だろうが、人間脳には限界がある。

コンピュータはシリコン製で、情報は電気信号で伝わるので、光速。一方、人間脳はタンパク質で、情報は神経伝達物質で伝わるので、光速の300万分の1。だから、一手一手、シーケンシャルに6億手読むのはムリ。ただし、別のアプローチで読んだ可能性はある。

僕は将棋のルールも知らないから、偉そうなことは言えないが、これは将棋ではなく物理の問題なのだ。物理的に不可能なものは不可能。というわけで、佐藤九段の科学的説明もここで行き詰まる。

SF作家アーサー・C・クラークはこう言っている。

「十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない」

裏を返せば、魔法と見分けがつかない超常現象は、十分に発達した科学で説明できる?

話を母にもどそう。

母のパッシブ予知能力は、歳をとると消滅してしまったという。もっとも、なくても困らないので、落ち込んでいる様子はない。90歳を超えたのに、毎日、新聞を隅から隅まで読んで、わからないカタカナ単語を書き出して、僕が遊びに行くと、質問責めにする。さらに、TVのクイズ番組は欠かさず観て、東大生に勝ったと自慢している。

ひょっとして、母の予知能力も「圧倒的な計算力」による!?

とはいえ、母の人生に傑出したところはない。昔の高等女学校卒で、小学校の教師で終わったから。特徴とえいば、頭の回転と口の回りがかなり速いこと。でも、そんな人はいくらでもいますよね。

先日、そんな母から興味深い話を聞いた。ことは、新型コロナにからむ。

2020年7月現在、新型コロナが収束する気配はない。

東京都で感染爆発が再開し、それに引きづられ、全国規模で感染者が増えている。そんな中、政府は「GoToトラベルキャンペーン」の前倒しを発表、世間から非難をあびた。

東京の感染爆発を地方まで拡散させる信じがたい暴挙だ。Twitterでは「#GoToキャンペーンを中止してください」がトレンド入りし、地方自治体からも相次いで懸念の声が上がった。「政府の人災」と言い切る首長もいる。

そんなこんなで、東京発着、若者と高齢者の団体旅行が割引対象外となった。バランスの良い落とし所と政府は自慢げだが、最悪の決定だろう。

だってそうではないか。

税金を使うのに、一部の国民だけが得をする、不公平の極み。中途半端はやめて、完全に延期すべきだろう。こんなカンタンなことが、なぜわからないのか、不思議でならない。

最近、政府はやることなすことメチャクチャ。気が触れたとしか思えない。それでも、政府がもつのだから、野党も機能していないのだろう。野党は連合するしか道はないのに、「党名」にこだわって、先に進まない。冗談としか思えない愚かさ。こんな議員に税金を使うのはやめて欲しい。

与党も野党もこれなら、未来は一つしかない。

死ぬ人間はみんな死んで、自然収束するのを待つのみ・・・

愚かなリーダーをもつと、こんな情けない思いをさせられるのだ。

今年3月、石川県も初動をあやまり、新型コロナの10万人あたりの感染者が日本一になった。そのとき、石川県で、日本で類をみない大クラスターが発生した。県内の感染者の20%が、一つの病院に集中したのだ。

原因は大きく2つある。

第一の原因は、地方の病院は、医療インフラが脆弱なので、カンタンに医療崩壊する。そして、医療崩壊すれば、パニックがおこり、たくさんの人が死ぬ。

だから、声を大にして言いたい。

「GoToトラベルキャンペーンは、地方にとって人災、殺人幇助である」

第二の原因は、入院患者のほとんどが、治癒困難な高齢者だったこと。だから、院内感染が拡大したのである。それでも、2020年6月、この病院は感染の収束を宣言した。ひとえに、医療従事者のおかげ。

きれいごとを言っているのではない。この病院の隣が叔母の家で、詳細な情報を聞かされた。医師、看護師、スタッフの苦労は想像を絶するものだったという(詳細はここでは書けない)。この医療従事者たちは、GoToトラベルキャンペーンの前倒しをどんな思いで聞いただろう。

じつは、この病院に、母の無二の親友が入院していた。母の話で度々出てくる「のっこちゃん」だ。母が、久しぶりに見舞いに行こうと思ったら、クラスターが発生。母は気がかりだったが、何もできない。そもそも、病院は見舞い禁止なのだ。

母とのっこちゃんは、幼い頃から仲良しこよしだった。家が近所で、母の家によく泊まりに来たという。姉妹同然に育ったわけだ。うまが合い、趣味が合い、学校も同じ、だから生涯の友となったのである。

4月29日、母は不思議な夢をみた。母とのっこちゃんが、二人でちょこんと座って、風景を眺めている。手をつないで、ぎゅっと握りしめている。一言も口をきかない。

目が覚めて、母はのっこちゃんの死を確信したという。後日、兵庫県にいるのっこちゃんの息子から電話があった。

「母は、4月29日、F病院で亡くなりました。母から大切な友人だと聞いていましたので、連絡させていただきました。生前は大変お世話になりました。ありがとうございます」

人間の予知能力は魔法かもしれない。

もしそうなら、アーサー・C・クラークの格言にならい「十分に発達した科学技術」で解明するしかないだろう。

参考文献:
(※1)「世界の歴史を変えた日1001」ピーター ファータド (編集), 荒井 理子 (翻訳), 中村 安子 (翻訳), 真田 由美子 (翻訳), 藤村 奈緒美 (翻訳)  ゆまに書房

by R.B

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