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スモールトーク雑記

■ウィズコロナ・県をまたぐ移動制限解除でぶりかえす感染拡大 2020.07.04

新型コロナが一服しそうでしない日本。終息はもとより、収束にもほど遠い。

先日、当地石川県で、17日ぶりに新型コロナの感染が確認された。感染者は東京在住の30代女性で、移動制限が解除された翌日に、石川県に帰省。ところが、その日のうちに38度台の発熱、2日後には新型コロナと診断された。公開された行動履歴をみると・・・

6月18日:腹痛。

6月19日:都道府県境をまたぐ移動の自粛要請が全面解除。

6月20日:石川県に帰省。38度台の発熱。

6月21日:県内の医療機関を受診。

6月22日:新型コロナと判明。

なんともわかりやすい。17日続いた「感染者ゼロ」を破綻させた原因は明らだ。「都道府県境をまたぐ移動制限」が解除されたこと。それにあわせ、この女性が東京から石川県に移動したこと。

移動制限が解除されたから、問題ない?

ノー!

移動制限が解除されたから、罰則がないから、自由に移動していいわけではない。症状があるのに、県境を越えて移動するのは、非常識だろう。移動に使った新幹線や飛行機での感染、帰省後の家族への感染の可能性があるから。山梨の某女性のように、感染を知りながら、ゴルフや飲み会に参加した形跡はないから、友人・知人への感染はないだろうが。

そもそも、地方は、新型コロナを持ち込まれると一大事なのだ。都心部にくらべ、医療インフラが脆弱だから。つまり、カンタンに医療崩壊する。それを承知の上でやるなら、迷惑どころか犯罪だろう。

たとえば、新型コロナ対応のベッド数。空きが少ない順に・・・

1位:北海道

2位:石川県

3位:大阪府と東京都

4位:埼玉県

※2020年6月時点

つまり、石川県は、日本で2番目にベッド数が不足している。そんな脆弱な医療体制の地域に、感染者が突出している東京から来県。しかも、症状があるのを知りながら・・・

だから、自粛警察が出動するのだ。普段は冷静で、良識派で知られる友人も、県外のナンバーを見つけると目を三角にして「帰れ、帰れ!」

ドライバーに聞こえるはずもないが、中には聞こえるように怒鳴る人もいるという。コワイコワイ。

最近、ネットで面白い記事を見かけた。

岩手県は、いまでも新型コロナの感染者がゼロの聖域だ。その岩手県に住む父親とその子のLINEが話題になっている。

子:そろそろ帰っていいかな

父:絶対に帰るな。岩手1号はニュースだけではすまない

笑えるけど、半分ナットク。

そもそも、政府が「性善説」を建前に、ぬるいことをやっているから、こんなことになるのだ。ところが、法律があるのは、国が「性悪説」を採っているから。どっちですか?矛盾してますよね。

話をもどそう。

安易で、根拠のあいまいな「緊急事態宣言の解除」や「県をまたぐ移動制限の解除」は、新型コロナの感染拡大を助長する。事実、解除のあと、首都圏は感染者が急増。それに引きずられるように、全国の感染者数も増えている。

とくに、首都圏は、キャバクラ、ホストクラブでの感染が多く、大きなクラスタが発生している。

PCR検査を増やしたからだって?

それで感染者の数が減ったことになりますか?感染者が増えたか減ったかが問題ですよね。バカじゃない。

それでも、政府も都も手を打たない。そして、テレワークはなし崩し、サラリーマン諸氏は、満員電車に詰め込まれ、感染に怯えながら通勤している。冷静に考えれば、狂気の世界だ。

古い友人が、地方の国立大学の学部長になった。彼は統計学のスペシャリストで、僕はコンピュータ一筋、そこで、情報交換のため、大学に招聘されることになった。

ところが、日程が決まらない。なぜか?

この大学は、県外から招聘することも、招聘されることも禁止だという。特に、東京と石川県は絶対NG。新型コロナの汚染地帯だと思われているのだ。東京と石川県は、人口あたりの感染者数でトップを競っているから、当然だろう。僕が首長なら、この事実を心底恥じる。いや、そんなことで恥じ入るようでは政治家になれない?

ですよね。

もっとも、くだんの首長は、自分が任された都道府県が「招聘禁止の汚染エリア」と認定されていることも、知らないだろうが。

一方、海外はもっと悲惨だ。

2020年7月、世界の新型コロナウイルスの感染者数が1000万人を超え、収束する気配はない。米国に次いで多いのがブラジル、ロシア、インド。共通するのは、人命より「目先の」経済を優先していること。

2020年6月30日、WHOはこんな警告を発している。

「新型コロナは終息に近づいてさえいない。パンデミック(世界的大流行)は加速している」

にもかかわらず、海外渡航を緩和する国が増えている。これにはビックリだ。だってそうではないか。

「人間の往来」が増えれば増えるほど、感染が拡大し、大勢が死ぬことは、明々白々だから。

というのも、人間の移動量と感染拡大が正の相関関係にあることは、データが示している。さらに、人間の接触によって感染が拡大する仕組みもわかっている。相関関係と因果関係が成立しているのだから「真」であることは間違いない。

ではなぜ、世界の指導者たちは移動を緩和するのか?

移動や外出を禁止すれば、経済が停滞し、不況になり、選挙に勝てないから。念入りなことに、それを正当化するスローガンも用意されている。

「コロナで死ぬか、餓死するか」

まるで、「錦の御旗(にしきのみはた)」だが、完全に間違っている。根拠は3つある。

第一に、「コロナの死者数>餓死者」になったらどうする?(たぶんそうなる)

「コロナで死ぬか餓死するか」の脅しは「餓死者>コロナの死者数」が前提になっている。つまり、コロナ対策より経済対策を優先する方が「人命尊重」になると言いたいのだ。ところが、「コロナの死者数>餓死者」なら、投げたブーメランが自分に返ってくる。

第二に、コロナの死者数が一定数を超えると、労働力が確保できず、経済活動が停止する。優先したはずの経済が破綻するわけで、本末転倒、笑えないジョークだ。

第三に、新型コロナは未知のウィルスであること。この世で「未知の敵」ほど恐ろしいものはない。我々はそれを歴史から学んだはずだ。

記録に残る史上最悪のパンデミックは、14世紀のペストと20世紀のスペイン風邪だろう。

14世紀のペストでは、世界人口の1/4~1/3が死んだ。しかも、終息するのに500年もかっている。一方、20世紀のスペイン風邪は、世界人口が20億人の時代に、5億人が感染し、1700万~1億人が死んだ。

これほどの大惨事になれば、「金儲け」なんて言ってる場合ではない。経済をささえる労働者が半減するのだから、ライフラインと治安を維持することさえ難しい。この状況では、欧米日の「自由放任主義」は行き詰まり、中国の「国家管理主義」が有利になるだろう。中国万歳!と言っているわけではない。事実を言っているのだ。

そして、肝心なのは、ペストもスペイン風邪も、こんな大惨事になるとは誰も予測しなかったこと。1億人が疫病で死ぬ世界を想像して欲しい。それよりはるかに軽い新型コロナでさえ、欧米では、棺桶が不足し埋葬することもできなくなった。「未知」とはこういうことなのだ。

懸念すべきことはまだある。

新型コロナより恐ろしいパンデミック。たとえば、20年以上前から、科学者たちが警告している「ヒトヒト感染」鳥インフルエンザ。感染力、致死率は新型コロナの比ではない。

さらに、2020年6月30日、中国で、人間に感染する豚インフルエンザが確認された。新型コロナウイルスに続く、新たなパンデミックを引き起こす恐れがあるという。

日本は、別のリスクもある。最近、地震が多いと感じるのは、気のせいだろうか。もし、このタイミングで南海トラフ地震がおきたら、避難することもできない。避難所は3蜜の極みだから。先の御旗を真似るなら「地震で死ぬか、コロナで死ぬか」。

このリスクは地震に限らない。2020年7月4日、熊本県と鹿児島で20万3200人に避難指示が出された。大雨で土砂崩れ、河川の氾濫、冠水が発生したのだ。

破滅シナリオを楽しんでいるわけではない。

新型コロナ・第二波も、鳥インフルエンザも、豚インフルエンザも、南海トラフ地震も、「起こる」ことは確実で、「いつ起こるか?」が問題なのだ。

こんな切迫した状況で、なぜ、為政者は有効な手を打たないのだろう。とはいえ、問題提起ばかりでは、会社と上司の悪口で盛り上がる不毛で楽しい飲み会とかわらない。そこで一つ提案がある。

6月12日、2020年度第2次補正予算が成立した。新型コロナ感染拡大をうけ、過去最大の31兆9114億円。さらに予備費に10兆円が積み増しされた。

この大金を、経済活動の停止に使ってはどうだろう。

1ヶ月間、ライフラインをのぞく経済活動を停止する。外出も移動も禁止(海外渡航も含む)、つまり、1ヶ月限定の戒厳令。その間、コロナの感染者をあぶりだし、隔離・治療する。補正予算をその補償費にあてるわけだ。

この「完全封じ込め」をやらないと、「非常事態宣言→感染縮小→非常事態解除→感染拡大→非常事態宣言」のループに入る。犬が尾を追うごとく、同じことを繰り返すわけだ。今回のぶり返しのように。

未来に待ち構える破滅的なシナリオ。それが現実になるのは時間の問題だ。19世紀、ドイツ統一を主導した、鉄血宰相オットー・フォン・ビスマルクはこう言っている。

「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」

東日本壊滅寸前までいった福島第一原発事故の教訓を思い起こそう。われわれ国民もできることはやろう。不要不急の外出と県をまたぐ移動は自粛する。それだけでも、感染の抑制になると思うのだが。

by R.B

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