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スモールトーク雑記

■アフターコロナ・人間性のリトマス試験紙 2020.06.20

アフターコロナの世界を予測してみよう。

想定される未来は2つ。

第一に、すべてが元に戻る。

14世紀の「ペスト」も、19世紀の「コレラ」も、20世紀の「スペイン風邪」も、最終的に人類は立ち直れた。だから、今回も・・・

たしかに一理ある。今もこうして、のんきに作文しているのだから。ただし、すべて元通りというわけではない。

じつは、マスメディアが報じていないことがある。

まず、14世紀のペスト。感染の「拡大→収束」のループが、19世紀まで続いたのだ。つまり、完全に収束するまで「500年」かかっている。そして、より重要なことは、これを機に、社会が大きく変ったこと。暗黒の中世から近代社会に踏み出したのだ。

5~14世紀の中世ヨーロッパは暗黒の時代といわれた。人々は、キリスト教の厳しい教えを守り、息が詰まるような毎日。しかも、司法の一部までが教会に牛耳られていた。たとえば、無実の人々が火あぶりにされた魔女狩り。この忌まわしい魔女裁判を仕切ったのは国王ではなく、教会だった。

つまり、この時代、カトリック教会は国王に匹敵する権威だったのである。

論より証拠、それを示す風景がある。この時代、町や村で一番高い建物は教会だった。ところが、今、一番高い建物は役所(都庁・府庁・県庁)か商業ビル。一番高い建物が最高権威を表わすのは、今も昔も変わらない。

ではなぜ、ペストを機に、最高権威が入れ替わったのか?

ペストが大流行したとき、人々は神と教会にすがった。ところが、聖職者たちは為すすべがなく、ただ祈るだけ。その横で、人間がハエのように死んでいく。結果、教会は民衆の信頼を失ったのである。

そして、19世紀のコレラ。ヨーロッパを中心に猛威をふるい、多くの人が命を落とした。ところが、それを機に細菌学や免疫学が生まれた。さらに、顕微鏡や注射器など医療機器も発明された。コレラの災厄で、人類は呪術から近代医療へステップアップしたのである。

一方、1918~1920年のスペイン風邪は、よくわかっていない。推定死者数も、1700万人~1億人と10倍近くバラつく。第一次世界大戦(1914~1918年)と重なったことが大きいだろう。この史上初の世界大戦では、軍民あわせて、数千万人が戦死した。二重の災厄で混乱の極み。そのため、疫病で何が変わったかを特定するのは難しい。

というわけで、過去のパンデミックで人類は生き延びたが、すべて元に戻ったわけではない。アフターコロナも、たぶんそうなるだろう。人類は立ち直るだろうが、何かが変わる。

まず、「接触社会 → 非接触社会」は避けられない。

欧米の感染者や死者が、アジアより多いのは、ハグやキスが多いから。もっともらしい説だが、たぶんあたっている。というのも、データをみると、強い相関関係があるから。さらに、新型コロナは飛沫や接触で感染するので、因果関係も明々白々。相関関係と因果関係が成立すれば、真実と考えていいだろう。

最近、web会議、スカイプで打ち合わせ、webセミナーが増えた。リアルな現場でないことに違和感を感じる人もいるが、僕は気にならない。仕事の本質は「問題解決=データ+ロジック」で、相手の顔色をみることではないから。キャラと根回しと忖度(そんたく)で仕事をする時代は終わったのだ。

つぎに「グローバル化 → ブロック化」。

これまで、経済はグローバリズムが大前提だった。コストとスピードを最優先に考え、最適の国で生産する。自国の労働者を雇い、自国に納税し、自国に貢献するつもりはサラサラない。自国主義ではなく世界主義。その方が、利益が大きいし、世界にも貢献できるから、絶対正義!こんな軸のずれたキレイゴトで、グローバリズムが正当化されてきたのだ。

冷静に考えてみよう。

グローバリズムは、国や地域の多様な価値観を破壊し、マネーという唯一無二の価値観で統一する。ファシズムを彷彿させる恐ろしいやり方だが、全体主義よりタチが悪い。全体主義は「全体の利益>個の利益」だが、グローバリズムは「個の利益>全体の利益」。

ただし、ここで言う「個」は、みんなそれぞれ、を意味しない。国際NGO「オックスファム」によれば、世界の富の82%が、世界の人口の1%の人々に独占されているという。その上に君臨する究極の富裕層のことだ。つまり、グローバリズムは「絶対正義」ではない。

そのグローバル経済で生まれたのが「サプライチェーン」だ。

生産プロセスを最小単位に分割し、最適の国と地域に配置し、それを巨大なネットワークでつなぐ。その長大で複雑なシステムを「サプライチェーン(供給の鎖)」とよんでいる。

ところが、新型コロナで、サプライチェーンが寸断された。国家間の移動が禁止され、EUでさえ国境封鎖なのだから。ところが、部品1つ欠けても、モノが完成しない。事実、今回必要になったシンプルなマスクでさえ、入手できなくなった。

というわけで、アフターコロナの世界では、サプライチェーンは見直されるだろう。サプライチェーンは過去のもの、と言い張る識者もいるが、それはない。サプライチェーンは、効率性に加え、冗長性が考慮されるのだ。つまり、最悪のリスクに備え、多少のムダを容認する。一方、医療品などの戦略物資は国内で囲い込むようになるだろう。地産地消に回帰するわけだ。

つまりこういうこと。

アフターコロナの世界では、「自由経済 → 保護主義経済」、「企業の利益 → 国家の利益(国家安全保障)」が進む。それを実践してきたのが、米国のトランプ大統領だから、先見の明があったのかもしれない。

さらに、消費構造も変わるだろう(とくに日本)。

今回のコロナ禍で、人々は家にこもり、生活に必要なもの以外ほとんど何も買わなくなった。これまで、日本経済は不要不急の消費で支えられてきた。たとえば、外食、接待に欠かせないクラブやキャバクラ、旅行、嗜好品。それが、新型コロナに直撃されたのだ。

外出制限で、巣ごもりになれば、何がおきるか?

外出しないから、衣料、化粧品、外食が不要になり、必要最低限の生活品しか買わなくなる。さらに、病院までが売上が激減したという。コロナ患者を受けいれた大病院はしかたがないが、個人の医院まで!?つまり、生存に必要不可欠な医療の中にも、不要不急があったのだ。

アフターコロナの世界では、不要不急な商品やサービスはガラクタとみなされ、業界そのものが立ち行かなくなるだろう。その前兆が、今のリーマンショックを超える大不況なのだ。

一方、株価は堅調である。

なぜか?

世界中で、政府が大金をばらまいている。日本なら、個人向けの「10万給付金」、企業向けの「持続化給付金」。ただ、マネーをいくら投入しても、消費マインドが冷え込んでいるから、実需にはつながらない。結果、多くのマネーが、実体経済ではなく、投資に向かう。だから株価が堅調なのである。

さらに、人間の価値観と意識も変わる。

これまで、自業自得ですまされたことも、非難をあびるようになる。コロナと共存する世界では、好き勝手やると社会全体に迷惑がかかるから。国民はすべからく、言動に責任をもつべし、そんな「健全なディストピア」が現実になるかもしれない。それを助長する勢力も出現している。自粛警察だ。それに眉をひそめる人もいれば、支持する人もいる。価値観の相違が、新たな対立を生むだろう。

さらに、社会的弱者に対する意識も変わる。

2020年6月4日、新宿区が、期限前にネットカフェ難民をホテルから退出させた。生死に関わることなので、大問題になるかと思いきや、マスメディアや世論の反応は冷静だった。働いている人でさえ、困窮しているのだから、弱者切り捨てもやむなし、と考える人が多いのだろうか。ホテル代も食費も税金なので、納税者が困窮しているのに・・・という論法もあるのかもしれない。

家族関係も変化しつつある。

テレワークで、絆が深かまる家族もあれば、破綻する夫婦もいる。ずっと顔をつき合わせていると、これまで気づかなかった「不都合」が生じるのだ。

つまり、コロナ禍は人間性を判定する「リトマス試験紙」になっている。貧すれば鈍するで、これまで表面化しなかった「人間性」があらわになり、新たな対立と衝突を生んでいる。

会社にも「リトマス試験紙」もある。

コロナ以前は、会社は儲けてナンボ、赤字は「悪」です。でも、黒字を確保した上で、社会貢献するのは立派ですね、ぐらいの評価基準だった。ところがこれからは違う。新しい評価が生まれるのだ。

たとえば、海外出張。

現在、渡航制限が出ているので、海外出張に制限をかける会社が多い。一番多いのは、不要不急はNG、必要火急はOKだろう。ところが、不要不急か必要火急かは会社によって、上司によって違う。総務経理は、僕たち関係ないもんね!つまり、不公平が表面化している。しかも、命がかかっている。

組織運営で、最悪なのは「不公平」が生まれること。みんなが損する、なら救いはある。みんな大変なんだから、仕方がないでしょ、で説得できるから(全員が納得するとは限らない)。だが、一部の人間だけが得したり、損したりでは、説得するすべがない。結果、組織全体の士気が低下する。一旦これがおきると、もとに戻すのは至難だ。経営陣を総入れ替えするしかない。でないと、社員は信用しないから。

今回のコロナ禍で、不公平を完全に排除した会社がある。例外を認めず、海外出張は一切禁止!それを社員と取引先に通達したのだ。「会社の売上より社員の方が大事」を高らかに宣言したわけだ。社員の士気と忠誠心は向上したことだろう。どうせ働くなら、そんな会社で・・・リクルート効果もある。ただし、キャッシュフローが悪化する中、これをやると会社が破綻する。経営は本当に難しい。

つまりこうこと。

アフターコロナの世界では、会社も家族も「人間性」が見直される。つまり、その人がどんな人かが問われるのだ。平時では表面化しない本性。それが、非常事であぶり出されるわけだ。貧すれば鈍する・・・晩節を汚さないためにも、日頃から備えるとしよう。

by R.B

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