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スモールトーク雑記

■アフターコロナ・健全なディストピア 2020.06.06

自業自得ですまされない・・・そんな社会が来るかもしれない。

たとえば、タバコ。

狭っ苦しいタコ部屋に詰め込まれ、黙々(モクモク)と吸い続ける喫煙者たち。肺は真っ黒に染まり、細胞は破壊され、血管は損傷し、心臓は疲弊する。老化と高血圧が進み、最期はガンか心筋梗塞か・・・しかも、タバコ代の63%は税金。

ありえない、バカじゃないのか?

でも、他人に迷惑かけてるわけじゃないし、ガンになって死んでも、自業自得ですから~

は、これまでの話。ところが、最近、不穏な言説を見かける。

「喫煙で、健康を害したり、ガンになったら、自業自得ではすまない。医療費が増大し、健康保険制度を毀損するから、当人だけではなく、みんなが迷惑する」

というのも、日本の健康保険制度は世界に誇る「国民皆保険制度」。国民全員が公的医療保険に加入し、病気やケガをしたときの医療費を、みんなで負担する。元々身体が弱い人、運悪く事故にあった人、収入が少ない人にメリットがある。ふつうに考えれば、合理的な相互扶助システムだ。

一方、健康で医者いらずの人にしてみれば、保険料の掛け損。とはいえ、今健康でも、いつ大病をするかわからないから、ま、いっか・・・がこれまでのロジック。

ところがこれからは・・・不慮の病気や事故はしかたないが、喫煙はどうなんだ?

健康を害すると知りながら、我慢できない、やめられない。家族や医者から、散々注意されても馬耳東風、結果、身体は蝕まれ、病を患う。そんなだらしのない人間の医療費を、医者いらずの健康人の保険料で支払うのはおかしい。一体どこが相互扶助なのだ?

つまりこういうこと。

本来、喫煙は自己責任なので、禍(わざわい)がおきても、他者の助けはえられない。ところが、治療費はみんなの健康保険で払うから、実際は他己責任。

さらに、健康保険を使えば、みんなの保険料が減るから、自業自得ではすまない。つまり、自業全損。

血も涙もない話だが、ロジックとしては成立する。ことの発端は今回の新型コロナだろう。

2020年4月、日本で感染が拡大し、緊急事態態宣言が発令された。コンサート、映画、飲食、パチンコなど3密は営業自粛、さらに、個人も外出自粛。ところが、日本は罰則がないので、ルールを破る者が続出した。これまでは、自己責任、自業自得ですまされたが、疫病はそうはいかない。1人でもルールを破れば感染が拡大し、社会全体に害が及ぶからだ。

結果、「自業自得の悪(相対悪)」が「社会悪(絶対悪)」にグレードアップし、国民総意のもと、強烈なパッシングをあびている。

たとえば、「自粛警察」。

彼らは、感染拡大を防ぐべく、無給で活動している。県外のナンバーの車を見つけたら、白い目でみたり、口に出して非難したり、写真を撮って投稿したり。ある女性は、自分がコロナに感染しているのを知りながら、バスで移動し、飲食会やゴルフに参加。それがバレて、パッシングをあび、SNSで実名と写真が公開された。

キレイゴトしか言わない政府やマスメディアや識者は、ヤリ過ぎと、弱々しく反応したが、国民は納得しない。ルールを破って社会を危険にさらす方が悪い!政府も「3密を自粛せよ」と言っておきながら、それをフォローしたらやめろって?どっちやねん、はっきりしろ!というわけだ。

つまり、1ミリでも「社会悪」なら、陰湿で強烈なパッシングが始まる。

じつは、このロジックには普遍性がある。

タバコがダメなら、健康に悪いものはすべてダメ・・・

たとえば、飲酒。アルコールは、ストレス解消になるが、飲酒が常態化すると、体を壊し、アルコール依存症になる。逮捕はされないが、薬物依存と同じ。家族に迷惑がかかるし、脳が劣化し、犯罪や事故をおこすこともある。くわえて、医療費が膨らみ、健康保険を直撃する。つまり、自業自得ではすまない。

タバコ、酒がダメなら、肉食も・・・

ベジタリアンは健康で、肉食は不健康という説がある。もしそうなら、肉食は医療費がかさみ、健康保険を毀損する。さらに、畜産は農耕より生産効率が悪い。生産量が同じなら、畜産は農耕より広い土地が必要なのだ。そのぶん、森林伐採が進み、二酸化炭素の排出量が増え、環境破壊が進む。だから自業自得ではすまない。

つまり、肉食は「医療費」という損得の正義と、「環境」という絶対正義で挟撃されているのだ。

このロジックは、日本で深刻な問題を生むだろう。「2025年問題」だ。第一次ベビーブーム世代が後期高齢者となり、医療や介護などの社会保障費が急増する。結果、「不健康=社会悪」という文脈で、高齢者が差別されるかもしれない。コロナ禍のようなグローバルな緊急事態では、社会の冗長性が失われ、弱者を思いやる余裕も消し飛ぶのだ。

じゃあ、酒もタバコもやらず、草だけ食べて(ベジタリアン)、暮らすとするか。

それだけでは不十分!

このロジックの普遍性は強力で、健康や環境の問題にとどまらない。射程距離は、はるか「TVゲーム」までおよぶ。

(大きな声では言えないが)僕は、TVゲームが大好きだ。プレイするだけではなく、企画・制作を生業にしたこともある(GE・TEN~戦国信長伝・下天~)。

これまで一番ハマったのが「ディアブロ3」だ。あろうことか、3ヶ月の貴重な人生を失った。そもそも、ゲームはプレイしても、何の価値も生まない。何かの役に立つわけでもない。人生をムダに消耗するだけ。

とはいえ、やってて楽しいし、誰に迷惑かけるわけでもない。だから、自己責任でやります!人生がムダになっても自業自得ですから~

ところが、先のロジックを適用すると・・・ゲームはプレイすることも作ることも「社会悪」!

優れたゲームは、制作に膨大なヒト・モノ・カネがかかる。さらに、何千万人ものユーザーの時間と電気エネルギーを消費する。それらの社会リソースを、もっと社会に役立つことに使うべき、というわけだ。これを、経済用語で「機会損失」という。

つまりこういうこと。

「不健全なものを楽しむ自由」は「社会悪=絶対悪」とみなされ、断罪される。そんな社会が来るかもしれないのだ。

僕は酒もタバコもやらないし、食事制限して、運動を欠かさず、医者いらず。だから、TVゲームぐらいは目をつぶって・・・が通用しなくなるのだ。

この無敵のロジックは、健康、環境、趣味を超えて、職業にも適用される。

最近、「エッセンシャルワーカー」というコトバをよく聞く。

医療、警察、消防、公共団体、スーパー、ドラッグストア、運送など、ライフラインに関わる労働者のこと。パンデミックが常態化する世界では、「生存」がすべてに優先する。「不要不急」の職業は、チャラい仕事、ガラクタ仕事と蔑まれ、カンタンに失業する(今回のコロナ倒産のように)。

というわけで、若い世代は、職業選択は慎重に!

過去の人気や価値観で選ぶと、えらいことになる。今後、40年も続くのだから。

じゃあ、エッセンシャルワーカーがベスト?

そうとは言い切れない。

AI「東ロボくん」が、偏差値60を超えたから、仕事は全部AIにもっていかれる・・・という壮大な話ではなく、今回のコロナ禍で、病院の売上が激減したというのだ。個人医院で働く知人いわく「患者が激減して、今年の夏のボーナスが半減、なんとかしてくれ!(なんともならない)」

医療サービスは、じつは「不要不急」だった?

そうではない、治療の中身が問題なのだ。

コロナに感染するのがコワイから、病院に行かない → 不要不急

コロナに感染してもいいから、病院に行くしかない → 必要火急

これまで医療費が膨らみ、健康保険制度が破綻寸前だったのは、不要不急の治療が原因だった?

たしかに、近所の内科医院は老人たちのサロンの感があった。診察が終わると、信じられないような量の薬を抱えて帰っていく。本当に必要?気休め?薬品会社を支援するため?

くだんの内科医院は、今、患者が7割減だという。これが医療の本来の姿なのかもれしれない。

ここで、アフター・コロナを総括しよう。

パンデミック(疫病の世界流行)が常態化し、不要不急なモノ・コトは、存在価値が薄れるか、消滅する。それは「企業倒産」や「業界消滅」の形で表面化するだろう。

つまり・・・

必要火急は「善」で、不要不急は「悪」。

健康は「善」で、不健康は「悪」。

健全は「善」で、不健全は「悪」。

健全?

健康であること、「生存」に必要不可欠な仕事をすること、良心に恥じない趣味、社会のために個人の自由を我慢すること。それこそが「健全」、社会の構成員としてあるべき模範!というわけだ。

はぁ~、なんと窮屈な・・・まてよ、地球のルールは「多様性」なのに、人間だけが「善か悪か」のモノカルチャー。なんかおかしくないですか?

ナチスの全体主義を彷彿させる・・・

1939年、ドイツで「T4作戦」が開始された。優生学思想に基づく政策で、遺伝病や精神病者が安楽死させられた。やがて、仕事の遅い人、反抗的な人、あげく、不潔な人までが対象になったという。

「社会の効率」を極限まで追求すると、こうなるのだ。たしかに、コロナ禍のような緊急事態では、社会を守るため、個人の自由は制限されるべきだ。だが、しかし、それを無制限に拡大していくと、窮屈で、血も涙もない社会になる。

つまり、「健全なディストピア」!

こりゃ、ゲームが大罪になるな。今のうちにやっとこう。

by R.B

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