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スモールトーク雑記

■Japan IT・9万8000円の人工知能 2016.10.30

秋が深まったのに、やたら暑い日、北陸新幹線で東京に出張した。

金沢駅で、駅弁「越前朝倉物語」を買う。

ふだんは、朝も昼も食べないのだが(ファスティング)、「越前朝倉」に思い入れがあったから。

越前朝倉」家は、戦国時代の大名で、今の福井県を支配していた。本拠地「一乗谷」は美しい町で「小京都」とよばれた。ところが、1573年8月、織田信長に滅ぼされる。戦闘はわずか3日間。血統や往時の権勢を考えれば、あっけない最期だ。

じつは、20年ほど前、一乗谷城跡に行ったことがある。そのとき、得も言われぬ風情を感じ、ツボにはまったのだ。

で、「越前朝倉物語」だが・・・

ekiben_asakura

美しい!

食べるのがもったいないほど。とはいえ、東京の町中を、弁当持ち歩くのもどうかと思い、かみしめながら食べた。

2時間30分で、東京に到着。

ところが・・・ハンパなく暑い!

ノーネクタイで夏物スーツ、それでも汗だくだく。

友人曰く、前日まで涼しく、朝夕は寒いほどだったという。

ひとが出張するときに限って、なんで?

おかげで、こむらがえしになって、ケンケンで歩いた、というのはウソだが、暑さで足がつったのは本当だ。

今回の用向きは、例によってナイショだが、1つだけ公開できる。

オマケで行った「JapanIT2016秋」だ。

IT関連の展示会では日本最大級で、ファッションのパリコレのようなもの。

「8つの展示会を同時開催」と大盤振る舞いだが、単独でやると人が集まらないから。

その8つだが・・・

1.クラウド・コンピューティング(ハードもソフトも他人任せ)

2.Web&デジタルマーケティング(販促も市場調査もWebで)

3.データセンター(データの巨大倉庫)

4.通販ソリューション(通販もWebで)

5.情報セキュリティ(マルウェア・サイバー攻撃対策)

6.モバイル(端末はPCからモバイルへ)

7.ビッグデータ(人工知能の栄養源)

8.IoT(なんでもかんでもネットにつないじゃえ)

お気づきだろうか?

すべて、インターネットがベースになっている。

時代の移り変わりを感じる今日この頃だ。

僕がまだ、素直な新入社員だった頃、この手の展示会は、「マイコンショー」と「エレクトロニクスショー」が双璧だった。前者は、マイコン(マイクロプロセッサーを使ったコンピュータ機器)、後者はエレクトロニクス(電子部品)。どちらも、当時、日本が世界を席巻した分野だ。

その後、マイクロプロセッサー(CPU)も、エレクトロニクスも歯ブラシなみのコモディティになり、死語と化した。話題性がなく、今どきの展示会の冠(かんむり)にはなれないわけだ。

その代わりが、「IT=インターネット=Web」なのだが、これもいつか消える運命にある。

今回のJapanITで、目についたのが「人工知能(AI)」。

ただし、すべて「弱いAI」で、人間のような汎用知能「強いAI」ではない。

弱いAIとは、将棋、囲碁、医療、会計、コールセンター業務など、専門分野に特化した人工知能のこと。

それって「専門バカ」のことで、人工知能とよべないのでは?

とツッコミが入りそうだが、「知能」表現のほとんどが「専門バカ」。だから、「偉大な知能」なんて妄想かもですよ。

JapanITのAIに話をもどそう。

まずは「DatumStudio株式会社」。

ブースの前で、若いスタッフが衝撃的なプラカードをかかげていた。

「9万8000円で人工知能!」

どんな人工知能?

とスタッフに問いただそうと思ったら、

「先着20社様限定で、9万8000円で、フルオーダーメイドの人工知能を作ります」

と先を越された。

一瞬、「どんな人工知能?」を忘れて「フルオーダーメイド」に気がむくと、目ざといスタッフはすかさず、

「フルオーダーメイドが、当社のウリです」

と念押しした。

日本のAIベンチャーといえば、プリファードインフラストラーチャーやGRIDが有名だが、いずれも、プラットフォームがウリ。

プラットフォームとは、AIを構築するための開発環境(道具)。一から、AIを作り込むのではなく、プラットフォームを使って、機械学習させ、モデルを構築する。一旦、モデルができあがると、様々な知的ワークがこなせるようになる。

というわけで、今は、プラットフォームを使ってAIを構築するのが一般的だ(世界的にみても)。

ところが・・・

DatumStudioは、プラットフォームは使わず、フルスクラッチ(一から作り込む)で構築するという。つまり、

貴社だけの、オーダーメイドAIが、9万8000円ポッキリで!

おーマジか!

ウチにしかないAIを使えば、一人勝ち(大儲け)!ウハウハ・・・なんてウマい話、あるわけない。

まず、9万8000円の中身だが・・・

顧客がビッグデータを持っているかいないかで、サービスは2つ分けられる。

ここで、ビッグデータとはAIに機械学習させるためのデータ(教材)と考えていいだろう。なぜ、「ビッグ」データかというと、少ないデータでは、機械学習の精度が上がらないから。

具体的には、

1.顧客がビッグデータを持っている場合

ビッグデータを使ったAIのプロトタイプを作ってくれる。もちろん、プロトタイプ(試作)なので、本格的な運用には耐えられない(大儲けできない)。

2.顧客がビッグデータを持たない場合

こんなデータがあれば、こういうことができますよ、とアドバイスしてくれる。もちろん、実際に作るとなると別途費用が発生する。

つまり、9万8000円ポッキリで、使えるAIが手に入るわけではない。とはいえ、いつも「100万円~200万円」で売っているそうだから、出血大サービスなのかもしれない(先着20社様)。

これを高いとみるか、出血大サービスとみるかは、人によるが、客観的にみて、IBMよりは安いだろう。

IBMの「ワトソン(Watson)」は、使えるかどうか判断してもらうだけで「5000万円」かかる。結果、使えませんでした、で終わったら、どーすんの?

5000万円は返ってこないし、会社に技術やノウハウが残るわけでもない。でも、このプロセスをヘないで、いきなり2億円かけて作って、役に立たない粗大ゴミができたら、困るでしょ、というわけだ。なんか、だまされているような・・・

ちなみに、なぜ「2億円」かというと、IBMは2億円以下の仕事はしないというウワサがあるから。

話を、DatumStudioにもどそう。

オーダーメイドAIなら、どんなことができるの?

プラットフォームを使ったAIと大差はない。

ヒト・モノ・カネの資源の最適分配、スケジュールの最適化、異常検知、カンタンな未来予測、さらに、データの背後に隠れたルール、関連性を見つけてくれる。

オーダーメイド、プラットフォーム以前に、従来のITとかわらないのでは?

機能的には同じだが、決定的な違いがある。

「機械学習」ができること。

データさえ食わせれば、勝手に学習し、どんどん賢くなる(永遠ではないが)。ここが従来のITシステムとの一番の違いだ。

とはいえ、DatumStudio、IBMにかぎらず、AIは買う前に、入念なチェックが必要だ。ワープロや表計算とは違って、何ができて、何ができないか、予測しにくいから。

そして、最も重要なのはコストパーフォーマンス(あたりまえだが)。

2億円かけて、AIこさえて、年に20万円節約できました!

元をとるのに何年かかる?

1000年。

シャレにならん・・・

《つづく》

by R.B

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