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スモールトーク雑記

■IBMサミット2016・ロボットOSの野望 2016.06.12

2016年5月、東京で「IBM Watson Summit 2016」が開催された。

毎年、この時期に開催されるIBM最大のプライベートショーだ。

今年の特徴は・・・

来場者多すぎ!

会場はグランドプリンスホテル新高輪・国際館パミールで、昨年と同じなのに、今年はキャパオーバー。とくに、3階フロアの混み具合はハンパなく、目と鼻の先のトイレに行くまでに数分かかった。

つぎに、方針が大きく変わった。

昨年は、IBMの商品・サービスが網羅的に紹介され、さながらIBM王朝の満漢全席だった(清朝の最高級宮廷料理)。ところが、今年は一転して個別の商品にフォーカスしている。

それが「Watson」。「IBM Watson Summit 2016」とショーの名称まんまなのでわかりやすい。

じつは、米国IBMは2016年現在、四半期決算で15期連続減収。伸び盛りのIT業界にあって、不名誉な話だ。

かつて、大型コンピュータ全盛の時代、IBMはコンピュータ業界の王族だった。ところが、その後、大型コンピュータはパソコンに取って代わられ、やがて、ハードからソフトの時代へ、さらに、ソリューション事業へ、そして、現在の主流はクラウドサービス・・・IBMはいつも半周遅れなのだ。

そのIBMの起死回生のバズーカが「Watson」なのである。

「Watson」はIBMが開発したコグニティブシステム(認知マシン)だ。膨大なデータ(ビッグデータ)から、人間が見逃すような相関関係を見つけ、新しい知見を獲得したり、未来を予測したり・・・一種のAI(人工知能)といっていいだろう。

2016年現在、世をあげての第3次人工知能ブーム。

第1次、第2次ブームは大失敗だったから、3匹めのドジョウかもね、と皮肉る人もいるが、今回は成功するだろう。人間脳のような「汎用知能」をあきらめて、「専用知能」に賭けているから。

ちなみに、前者を「強いAI」、後者を「弱いAI」とよんでいる。そして、現在の第3次人工知能ブームをささえているのは「弱いAI」。2011年、人間のクイズ王を破ったWatson、2016年、囲碁のトッププロ・李世ドルを破ったアルファ碁(AlphaGo)も、すべて弱いAIだ。

弱いAI?

志低いなぁ、早い話、専門バカじゃん・・・なのだが、そのバカな専門が「未来予測」ならことは重大だ。

だってそうではないか!

「未来予測」が可能なら、世界はすべてお見通し、「勝ち」が約束されている。

たとえば、金融商品の価値は「値上がり率」に帰着する。つまり、値上りを予測できるか否かがすべて。しかも、そこに生き死にがかかっている。サブプライムローンで破綻したリーマンブラザーズを思い出そう。つまり、金融の勝ち負けは、未来予測の精度にかかっているのだ。

そのため、金融の世界では、AIの手法を取り入れた「FinTech(Financialtechnology)」が主流になりつつある。機械学習機能をそなえた強力な予測マシンだ。

今回の主役「Watson」も、ビッグデータから知見(ルール)を見つけるのだから、初歩的な「未来予測」といってもいいだろう。そして、その進化の先に鎮座しているのは、政治、経済、外交、軍事・・・世界を丸ごと未来予測するマシン。

まだ広く認知されていないが、このような人工知能を「予期知能」とよんでいる。こんなものができたら一大事、世界は一変する。すべてお見通しの知性が出現するのだから、神が実在することになる。まさに「デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)」。

「IBM Watson Summit 2016」に話をもどそう。

そこで、僕は未来を見たのだ(これも立派な未来予測)。

その未来というのが・・・

人工知能&ロボットが人間の仕事を奪う暗い世界。それが、何の驚きも、感動もなく、淡々と伝わってきたのだ。

ショー2日目の5月25日、「対話型ロボットが拓く新たな世界」セッションがあった。コテコテの技術セミナーなのだが、確定した未来が読みとれた。それは、怠け者にはハッピーだが、働き者には暗い未来だ(仕事を丸取りされるから)。

ここでいう「対話型ロボット」は、工場で黙々と機械を組み立てるロボットや、駆け足や階段上りが自慢のアシモではない。人間と対話できるロボットだ。

たとえば、ソフトバンクのペッパーや、ハウステンボス・変なホテルの接客ロボット。

IBMはこの「対話型ロボット」の独占をもくろんでいるのだ。ただし、自動車の「T型フォード」やパソコンの「IBMPC互換機」のように、ロボットのデファクトスタンダードを作ろうとしているわけではない。

かつて、マイクロソフトはMS-DOSとWindowsでパソコンを支配した。そして、今、GoogleはAndroidでスマホとタブレットを支配しようとしている。つまり、基盤ソフトをおさえれば、市場を支配できるのだ。基盤ソフトとは、OS、これにアプリの統合開発環境を加えれば無敵だろう。

そこで、IBMは、ロボットの基盤ソフトをおさえようとしている。そうすれば、来るべき巨大市場「ロボット」を支配できるから。

《つづく》

by R.B

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