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スモールトーク雑記

■伊勢志摩サミットで世界は変わったか? 2016.06.04

2016年5月26日、日本で2つのサミットが開催された・・・伊勢志摩サミットとIBMサミット。

若い女の子100人に聞きました・・・

どっちのサミットが重要?

伊勢志摩サミット!

IBMサミットなんて聞いたことないしー、でも、伊勢志摩サミットは「主要国首脳会議」だしー、エラそーじゃん!

もっとも、伊勢志摩サミットで世界が変わるとは、誰も思っていない。

議長国の安倍首相は「世界経済はリーマン・ショック並みの危機に直面している」とぶちあげ、主要国に財政出動を求めたところ・・・

海外から「消費増税延期の口実じゃん」と非難の声があがった。とはいえ、消費増税をゴリ押しすれば、株価は急落し、一体何を考えているのだ、と国内で非難をあびたに違いない。

トップリーダーはつらい。

一方のリーダー、オバマ大統領も、広島を訪問し、歴史的偉業と讃えられるかと思ったら、ビミョー。

71年前、明るい、雲一つない朝、空から死が舞い降り、世界は変わった。閃光と炎の壁が都市を破壊し、人類は自らを破壊する術を手に入れたことを証明した。

なぜ、われわれは、この地、広島に来るのか?

かつて解き放たれた恐ろしい力について考えるため、10万人を超える日本の男女、子供、何千人もの朝鮮民族、十数人の米国人捕虜の死を弔うためである・・・

魂を揺さぶる素晴らしい演説だ。しかも、日本人、朝鮮民族、米国人にも配慮し、まったくスキがない。それでも、究極の唯我独尊男、Mr.トランプは「なんで真珠湾の話をしないのだ!」とケチをつけた。

リーダーの宿命と思って、あきらめるしかないですね。どのみち、何を言っても、ケチがつくのだから。

でも・・・オバマ大統領はやることはやったと思う。

米国の現職大統領としてはじめて、広島を訪問し、被爆者と面会し、抱擁までしたのだから。パーフォーマンスとか、ええかっこしい、とか、うがった見方はいくらでもあるが、ふつう、ここまではやらない。大きな壁をいくつも越えなければならないから。

もっとも、オバマ大統領は、この手の「魂を揺さぶる」が大好きで、脳内エンドルフィンどくどくなのだが。

彼は、核保有国のリーダーでは珍しい「核なき世界」の支持者。だから、わざわざ、広島までやって来たのだ。

では、なぜ、謝罪をしなかったのか?

そして、

なぜ、日本人は非難しなかったのか?

米国のポチだから、予定調和の儀式だから、もあるが、一番の理由は、日本は「恥の文化」だから。

つまり・・・

日本人は、どこぞの国のように、過ぎたことを蒸し返して、難癖つけるのはみっとない(恥)と思っているのだ。

じつは、「日本=恥の文化」を言い出したのは日本人ではない。

米国の文化人類学者ルース・ベネディクトである。彼女は、「菊と刀」を著して、独自の日本文化論を展開した。しかも、驚くべきことに、一度も日本を訪れていない(来日する直前に死去)。

ははーん、さては、米国人が妄想した日本文化論?

猫でもわかる式の、ウケねらいの、カタログ的な日本人観?

ノー!

彼女の著書「菊と刀」は難解だ。線の文ではなく面の文だから。400ページ(日本語版)にもおよぶ長大な文言は広大な面を構成し、互いに複雑にからみ合っている。書く方も、読む方も、強靱な思考力が求められる。かの大女優エリザベス・テーラーを上品にしたような容貌からは想像もつかない。

というわけで・・・

あんな恐ろしい原子爆弾を、広島や長崎に投下するなんて、狂気の沙汰だ、謝れ!

と、日本人は言わないのである。みっともないから。

もう過ぎたこと、あれは戦争だったのだ。それに、秘密でもなんでもないのだが、日本にも原子爆弾の開発計画があったのだ。

では、なぜ、日本は原子爆弾を使わなかったのか?

作れなかったから。

それじゃ、米国を責めることはできませんね。

日本が原子爆弾の開発に成功していたら、必ず使っていたから。だから、日本に、米国の原子爆弾投下を責める資格はない。

そもそも、太平洋戦争がなければ、広島と長崎の原子爆弾投下はなかった。その太平洋戦争を始めたのは日本なのだから、米国を責めるのは二重に筋違いだと。

しかし・・・

それこそ、二重に筋違いなのだ。

太平洋戦争は、日本が引き起こしたわけではない。引き金は真珠湾攻撃だが、そのはるか前から、米国は日本をつぶそうと目論んでいたのである。

太平洋戦争の30年前・・・1904年2月8日、日露戦争が勃発した。

原因は、ロシア帝国が朝鮮半島と満州を支配しようとしたから。

そうなれば、大日本帝国は日本海をはさんで、ロシア帝国とにらめっこ。国の安全保障が脅かされるのは明らかだ。そこで、ロシア帝国の野望を粉砕しようとしたのである。

戦いは、日本軍が連戦連勝した。

ところが、国力では、

ロシア帝国>>大日本帝国

そのため、日本はヒト・モノ・カネが尽きかけていた。常備軍が20万人なのに100万人が動員され、兵の補充もままならない。さらに、労働者の数が激減し、国内の生産が落ち込んでいた。このままでは国がもたない。

一方、ロシアも、1905年1月に「血の日曜日事件」が発生し、国民の不満は爆発寸前だった。民が飢えているのに、なんで日本と戦争なんかしているのだと。事実、その12年後にロシア革命が勃発し、ロマノフ王朝は倒壊する。

つまり、日本もロシアも戦争続行は不可能。だから、講和を望んでいたのである。

1905年9月5日、日本とロシアはポーツマス条約を締結した。仲介したのは米国のセオドア・ルーズベルト大統領である。戦勝国の日本は、ロシアから満州の利権を継承した。その血脈「鉄道」を管理するため「南満州鉄道株式会社」も創業された。

ところで、なぜ、米国は仲介を買って出たのか?

日本に恩を売って、満州に進出したかったから。

事実、ポーツマス条約が締結されて、1ヶ月も経たないうちに、米国の先兵、鉄道王エドワード・ヘンリー・ハリマンが来日した。

ハリマンの夢は壮大だった。

「アメリカ→太平洋→満州→ロシア→ヨーロッパ→大西洋→アメリカ」の「世界一周鉄道」を建設しようというのである(但し、太平洋と大西洋は船)。だから、南満州鉄道は必須のピースだったわけだ。

ハリマンは「資金援助」のニンジンをぶら下げて、南満州鉄道の共同経営を申し込んだ。日本にしてみれば、ハリマンの鉄道技術と経営のノウハウはノドから手が出るほど欲しい。しかも、資金まで出してくれるというから、カモネギである。

そんなわけで、話はとんとん拍子にすすみ、1ヶ月後には、桂・ハリマン協定が締結された(桂は当時の首相)。

ところが、ポーツマス条約を締結させて、帰国した小村寿太郎外相は激怒した。9万人の戦死者と、19億円の戦費で勝ち取った「満鉄の利権」を、アメリカと分け合うとは、一体何を考えているのだと。こうして、桂・ハリマン協定は反故(ほご)にされた。

憤慨したのは米国だ。

とくに、日露の講話会議を仲介したセオドア・ルーズベルト大統領は面目丸つぶれ。日本の外債を買ったうえ、講和の面倒までみてやったのに・・・今に見てろよ。

その後、満州をあきらめたアメリカは、機会均等をかかげて、中国進出をもくろんだが、これも失敗した。先に、中国(清国)に進出していた日本、イギリス、ロシアに締め出されたのである。イギリス・ロシアはムカツクけど、イエローモンキーの日本は絶対許せん・・・今に見てろよ。

そんなこんなで、セオドア・ルーズベルト大統領の脳みそは「今に見てろよ、日本」が刷り込まれた。その後、米国の反日感情は悪化の一途をたどり、フランクリン・ルーズベルトでピークアウトした・・・それが太平洋戦争の原因なのである。

つまり、こういうこと。

太平洋戦争の引き金は日本軍の真珠湾攻撃だが、それを引かせたのはフランクリン・ルーズベルトの深慮遠謀。

でも・・・

原因が何であれ、一旦、戦争が始まったら、原子爆弾を使うのはしかたがない。戦争は勝ってナンボ、なので。

でも、本当にそうだろうか?

戦争だから何でも許されるのなら、日本の「バターン死の行進(日本軍の捕虜虐待とされる事件)」も許されるはず。ところが、現実は、原爆投下はOkだが、バターン死の行進は許されていない。事実、後者に関与した日本軍の将官は絞首刑にされ、現在でも、日本軍の悪の象徴となっている。

じゃあ、戦争(ケンカ)は勝った方が正義ってこと!?

論理的にも、道義的にもメチャクチャ・・・子供でもわかる。

一方、原爆を使ったのは、戦争を早く終わらせるため、米軍兵士の犠牲を少なくするため。だから正当、という説もある。

しかし、あの時代の歴史を精査すると、どこからどう見ても・・・原爆投下の正当性はない

つまり、こういうこと。

原子爆弾は、都市一つを丸ごと焼きつくす大量破壊兵器である。そんな恐ろしいモノを、何十万人が生活する町々に落とす・・・

どこか、狂っていませんか?

戦争だろうが何だろうが、原因が何だろうが、どんな事情があろうが、

太陽のような大火球で、10万人の市民を焼き殺す・・・

そんなことが許される?

根本、おかしくないですか?

もし、それが許されるなら、秩序も正義もへったくれもない、野獣の無法地帯だ。「文明社会」など口がさけても言えない。

戦争とは、自国の利益のために、相手国を破壊し殺戮すること。そのため、最小の資源(コスト)で、最大の破壊・殺戮(パーフォーマンス)が求められる。その理想の兵器が核兵器なのだ。だから、戦争が続くかぎり、核兵器はなくならない。このままいけば、いつの日か、全面核戦争が起こるだろう。

だから、ホモ・サピエンスからネオ・サピエンスに進化する以外に、救いの道はない。戦争が愚かな手段だということを、理解するほど進化するしかない。高度に発達した知性のみが、地球上の大原則「弱肉強食」から脱皮できるのだ。

ところが・・・

ネオ・サピエンスが出現する前に、別の種が誕生するかもしれない。ロボット&人工知能だ。

伊勢志摩サミットで世界は変わらない、それはわかっている。

しかし、もう一つのサミット「IBM Watson Summit 2016」が「世界が変わる」を示唆したのである。

《つづく》

by R.B

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